この記事でわかること
・公的統計における経理の残業の実数は月8時間(会計事務従事者の超過実労働時間数)
・ただしこの数字は6月分の調査であり、3月決算企業の繁忙期を含まないという限界
・企業規模で残業は2倍違う(1,000人以上は月10時間、10〜99人は月5時間)
・法律上の上限と、36協定で確認すべき数字
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
経理って、やっぱり残業は多いんでしょうか。というのも、前の職場では、決算の時期がとにかくつらくて。
LXキャリア
面談でも本当によくいただく質問です。ただ、ネット上の数字は集計の方法も対象もばらばらで、そのまま比べられないんです。そこでこの記事では、公的統計だけで実態を確かめていきますね。
ネット上には、転職サービス各社が独自に集計した数字が並んでいます。集計方法も対象もばらばらで、そのまま比べられません。
そこで本記事は、公的統計だけで経理の残業の実態を組み立てます。まず実数を示し、次にその数字が何を含んでいないかを説明します。そのうえで、職場による差と法律上の上限を確認します。
結論:公的統計では月8時間。ただし前提がある
先に結論を述べます。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、会計事務従事者の超過実労働時間数は月8時間でした。所定内実労働時間数は159時間です。
数字だけを見れば、残業は多くありません。しかし、この調査は6月分の実績である点に注意が必要です。つまり年間で最も忙しい時期は、この数字に含まれていません。
【実数】職種で比べた経理の残業時間
まず、同じ調査のなかで他の職種と比べてみましょう。同一の定義・同一の月で集計されているため、こちらは直接比較できます。
| 職種 | 超過実労働時間数 | 所定内実労働時間数 |
|---|---|---|
| 管理的職業従事者 | 2時間 | 163時間 |
| 法務従事者 | 4時間 | 159時間 |
| 会計事務従事者 | 8時間 | 159時間 |
| 庶務・人事事務員 | 9時間 | 159時間 |
| 総合事務員 | 9時間 | 157時間 |
| 営業・販売事務従事者 | 10時間 | 158時間 |
| システムコンサルタント | 11時間 | 173時間 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第1表。企業規模計(10人以上)・男女計・一般労働者。数値は令和7年6月分。
事務系のなかでは、経理はむしろ短い部類に入ります。一方で、管理職や法務と比べると長くなっています。つまり「事務職のなかでは平均的、管理部門のなかではやや長い」という位置づけです。
企業規模で残業は2倍違う
次に、同じ会計事務従事者のなかでの差を見ます。ここが最も大きな分岐点です。
| 企業規模 | 超過実労働時間数 |
|---|---|
| 1,000人以上 | 10時間 |
| 100〜999人 | 9時間 |
| 10〜99人 | 5時間 |
出典:同上。男女計。
1,000人以上と10〜99人では、2倍の開きがあります。この差は、開示義務や監査対応の有無で説明がつきます。上場企業では四半期ごとに締めが発生するためです。
ただし、規模が小さければ楽だとは限りません。小規模な会社では一人あたりの守備範囲が広く、繁忙期に助け合える人がいないことも多いためです。したがって、平均時間だけで職場を選ばないでください。
なお男女別では、男が月10時間、女が月7時間でした。
【重要】この「月8時間」が6月分であることの意味
ここが本記事で最もお伝えしたい論点です。賃金構造基本統計調査は、毎年6月分の実績を集計しています。
それなら、月8時間の経理は残業が少ないってことですか?
LXキャリア
実は、6月の数字なので決算の山が入っていないんです。面談でお会いした方にも、前の職場では本決算の時期に月80〜90時間の残業があり、土日もたびたび出ていた、という方がいました。平均より山の高さで見てほしいのは、そのためなんです。
つまり、年間の平均だけを見てもわからないんですね。
日本では3月決算の企業が多数を占めます。その場合、年次決算と申告のピークは4月から5月です。つまり6月は、最大の山を越えた直後の月にあたります。
したがって「経理の残業は月8時間」という説明は、正確ではあっても不十分です。実際に働く人が体感するのは、年間の平均ではなく最も苦しかった月だからです。
年平均で見ると別の数字になる
参考として、年平均を見られる調査も挙げておきます。厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025年分結果確報」では、一般労働者・調査産業計の所定外労働時間は月13.2時間でした。
| 産業(一般労働者) | 所定外労働時間(月・年平均) |
|---|---|
| 調査産業計 | 13.2時間 |
| 運輸業,郵便業 | 24.1時間 |
| 電気・ガス業 | 16.9時間 |
| 情報通信業 | 16.5時間 |
| 製造業 | 14.7時間 |
| 金融業,保険業 | 13.6時間 |
| 卸売業,小売業 | 11.3時間 |
| 医療,福祉 | 6.7時間 |
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」第2表。事業所規模5人以上・一般労働者。
ただし、この13.2時間と先ほどの8時間を並べて比べないでください。調査が違い、集計期間も違うためです。前者は年平均の産業別、後者は6月単月の職種別になります。
そして、毎月勤労統計調査には職種別の区分がありません。逆に賃金構造基本統計調査には年間の推移がありません。つまり「経理の年間平均残業時間」を示す公的統計は、現時点で存在しないのです。
だからこそ、平均ではなく山の高さで判断することをおすすめしています。
👉 あわせて読みたい:経理の繁忙期はいつ?年間スケジュールと乗り切り方
残業は減っているのか|7年間の推移
もうひとつ、時間軸でも確認しておきましょう。毎月勤労統計調査には所定外労働時間の指数があり、長期の動きが追えます。
| 年 | 所定外労働時間指数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2018年 | 117.5 | -1.5% |
| 2019年 | 115.1 | -1.9% |
| 2020年 | 100.0 | -13.2% |
| 2021年 | 105.2 | +5.1% |
| 2022年 | 110.0 | +4.6% |
| 2023年 | 109.0 | -0.9% |
| 2024年 | 109.3 | -2.7% |
| 2025年 | 106.6 | -2.5% |
出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」時系列表第2表。事業所規模5人以上・調査産業計・就業形態計。2020年平均=100。
まず2020年に大きく落ち込み、その後2022年にかけて戻しています。しかし2023年以降は3年連続で減少しました。そして2025年の水準は、2018年(117.5)を大きく下回っています。
つまり残業は、長期で見れば減少傾向にあります。上限規制の施行や人手不足への対応が背景にあると考えられます。ただしこれは全産業の指数であり、経理という職種に限った推移ではありません。
月60時間を超えると割増率が上がる
制度面でも変化がありました。月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引き上げは、2023年4月1日から中小企業にも適用されています。それ以前は大企業のみが対象でした。
したがって、長時間の残業は会社にとってコストが跳ね上がります。だからこそ、残業を減らす提案は経理担当者からでも通りやすくなっています。
残業が多い経理と少ない経理を分ける4つの要因
同じ経理職でも、残業時間は職場によって大きく違います。その差を生む要因は、主に次の4つです。
同じ経理でも、そんなに残業が違うものですか?
LXキャリア
かなり違いますね。たとえば面談でお会いした別の方は、外資系企業の日本法人にいた頃に残業がかなり多く、年収を下げてでも転職したそうです。一方で、今の職場は決算のない月ならほぼ定時だと話していました。そこで、この差を生む要因を4つに分けて見ていきましょう。
1. 上場・非上場と開示業務の有無
上場企業には定期的な開示義務があります。そのため、年次決算のほかにも締めが発生します。一方、非上場企業は年次決算が中心となり、山の回数そのものが少なくなります。前掲の規模別データは、この差を反映していると考えられます。
2. 会計システムと業務の標準化度合い
クラウド会計や経費精算システムが入っている職場では、転記や集計の手作業が減ります。逆にExcelと紙の申請書が中心の職場では、同じ仕事量でも工数が数倍に膨らみます。
3. 人員体制と属人化の程度
「この処理は前任者しか知らない」という状態は、残業の温床です。担当が固定されていると、繁忙期に助け合えません。その結果、特定の人だけが遅くまで残ることになります。
4. 締め切りルールが社内に浸透しているか
実は、これが最も見落とされがちな要因です。営業部門からの請求書提出が締め日を過ぎて届けば、経理は差し戻しと再処理に追われます。つまり経理の残業は、経理以外の部署の運用に強く左右されます。
労働時間の上限は法律で決まっている
残業を語るうえで、法律上の枠も知っておいてください。判断の基準になるためです。
| 区分 | 上限 |
|---|---|
| 原則 | 時間外労働は月45時間・年360時間 |
| 特別条項を結んだ場合 | 時間外労働は年720時間以内 |
| 時間外労働+休日労働は月100時間未満 | |
| 時間外労働+休日労働は2〜6か月平均で80時間以内 | |
| 月45時間を超えられるのは年6か月まで |
出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」。
注意したいのは、月100時間未満という上限が休日労働を含む点です。厚生労働省の解説では、時間外44時間と休日労働56時間のように合計が月100時間以上になれば法律違反になると示されています。つまり時間外だけが45時間以内でも、安心はできません。
36協定は入社前でも確認できる
時間外労働をさせるには、36協定の締結と届出が必要です。そして特別条項の有無は、会社の残業方針をそのまま表します。
そこで面接では、次の3点を聞いてみてください。まず特別条項があるかどうかです。次に、直近1年で月45時間を超えた月が何回あったかを確認します。そして繁忙期の平均残業時間を尋ねます。いずれも会社側が把握している数字であり、答えにくい質問ではありません。
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休日と有給から見る「実際の休みやすさ」
残業時間だけでは、働きやすさは測れません。休みの取りやすさも同時に見てください。
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、年間休日総数の1企業平均は112.4日でした。企業規模別では、1,000人以上が117.7日、300〜999人が116.2日、100〜299人が114.5日、30〜99人が111.2日です。ここでも規模による差が出ています。
年次有給休暇についても実数があります。労働者1人平均の付与日数は18.1日、取得日数は12.1日で、取得率は66.9%でした。いずれも昭和59年以降で最も高い水準です。
経理の場合、取得率そのものより「いつ取れるか」が重要になります。決算期に休みにくい職場では、年間の取得率が高くても実感は伴いません。したがって面接では、繁忙期の有給取得の実態まで確認しておきましょう。
残業を減らす4つの実践方法
ここからは、担当者レベルでも着手できる方法を挙げます。効果が出やすい順に並べました。
| 方法 | 具体的にやること |
|---|---|
| 1. 山を平らにする | 月中に確定した経費と売上を都度計上し、月初に仕事を溜めない |
| 2. 締め切りを社外に伝える | 請求書の提出期限を営業部門と取引先に明文化して共有する |
| 3. 属人化を解く | 自分だけが知っている処理を手順書にし、繁忙期に分担できる形にする |
| 4. 上限を根拠に相談する | 月45時間超が続くなら、36協定の内容を確認したうえで上長に相談する |
なお、システム導入や脱エクセルといった構造的な効率化は、別記事で手順を整理しています。
👉 あわせて読みたい:経理の効率化の進め方|脱エクセル・DXで残業を減らす実践手順/月次決算のスケジュールと進め方【早期化7つのコツ】
それでも減らないなら環境を変える
4つの要因のうち、上場・非上場と人員体制は個人の努力では動かせません。したがって、打ち手を尽くしても改善しない場合があります。
その場合は、環境そのものを変える選択肢が現実的です。求人票の読み方や面接での確認方法は、専門の記事にまとめています。
👉 あわせて読みたい:残業が少ない経理の職場はどこ?ホワイト求人の探し方と見極め方/経理求人の見方|失敗しないチェックポイント10選
残業が嫌で転職するのって、逃げているように見えませんか?
LXキャリア
そんなことはないですよ。むしろ、働き方を理由に職場を移るのは自然な判断です。たとえば、決算期に月80〜90時間だった先ほどの方も、転職後は月平均20時間ほどに落ち着いたそうです。ただし面接では「残業が嫌だった」ではなく、「決算の山を仕組みで小さくできる環境で力を出したい」と伝えると前向きに届きます。
転職すると、年収が下がらないかも心配です。
LXキャリア
まずは、今の経験で想定年収がどのくらいかを知っておくと安心です。たとえば経理の年収診断なら、90秒で目安がわかります。残業と年収のバランスは、その結果を見てから一緒に考えましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
経理の残業に関するよくある質問
Q1. 経理は定時で帰れますか
時期によります。公的統計上の平均は月8時間ですが、これは6月分の値です。月次決算の立ち上がりや年次決算の時期は、同じ職場でも状況が変わります。
Q2. 未経験から経理に入ると残業は増えますか
慣れるまでは処理に時間がかかるため、一時的に増える場合があります。ただし手順が身につけば落ち着きます。むしろ長期的には、職場の体制のほうが影響します。
👉 あわせて読みたい:20代未経験から経理へ転職できる?成功率を上げる4ステップ
Q3. 残業代はきちんと支払われますか
法定時間外労働には割増賃金の支払いが必要です。なお、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は、2023年4月1日から中小企業にも引き上げが適用されています。実態に不安がある場合は、給与明細と勤怠記録を突き合わせて確認してください。
Q4. 大手と中小、どちらが残業は少ないですか
統計上は10〜99人の企業が月5時間と最も短く、1,000人以上は月10時間でした。ただし小規模な会社は一人あたりの守備範囲が広くなります。数字だけで判断せず、体制まで確認してください。
👉 あわせて読みたい:中小企業の経理に転職するメリット・デメリット完全解説
Q5. 固定残業代(みなし残業)はどう見ればよいですか
まず、何時間分が含まれているかを必ず確認してください。そのうえで、超過分が別途支払われるかを見ます。たとえば「月30時間分を含む」と書かれていれば、その職場は30時間程度の残業を想定していると読めます。つまり固定残業代の時間数は、会社が見込んでいる残業量の目安になります。
Q6. 決算期だけ残業が多い会社は避けるべきですか
一概には言えません。むしろ経理という仕事の性格上、山がまったくない職場のほうが例外的です。判断の分かれ目は、山の後に休みが取れるかどうかにあります。したがって、繁忙期明けの有給取得の実態まで聞いておきましょう。
まとめ|経理の残業は「平均」ではなく「山の高さ」で見る
公的統計における経理の残業の実数は月8時間です。事務系のなかでは短い部類にあたります。しかし、この数字は6月分であり、年間で最も忙しい時期を含んでいません。
そして「経理の年間平均残業時間」を示す公的統計は、現時点で存在しません。だからこそ、平均値を探すより山の高さと回数を確認するほうが確実です。
具体的には、特別条項の有無、月45時間を超えた月の回数、繁忙期の平均残業時間の3つを聞いてください。この3つが分かれば、その職場の実態はかなり見えてきます。
👉 あわせて読みたい:経理はきつい・やめとけは本当か|実態と続けるか辞めるかの判断軸/経理の仕事大全|業務内容・年収・残業・資格を実数で総覧
📌 この記事の一次情報源
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第1表(所定内実労働時間数・超過実労働時間数。企業規模計および規模別、男女別。令和7年6月分)
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」第2表 月間実労働時間及び出勤日数(事業所規模5人以上・一般労働者・産業別)
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第4表(年間休日総数)、第5表(年次有給休暇の取得状況)
- 厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律について」内「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(原則および特別条項の上限、36協定)
