この記事でわかること
・部長級・課長級・係長級の賃金の実数(令和7年 公的統計)
・管理職の年収が企業規模でどれだけ変わるか
・上位10%・中央値・下位10%でみた管理職の給与分布
・面談で実際に語られた「昇格すると年収がいくら上がるのか」
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
経理で課長になったら、年収はどのくらい上がるんでしょうか。さらに部長まで行けば、もっと変わりますか?
LXキャリア
もちろん上がります。ただ、その幅は役職より企業規模で大きく変わるんです。そこでこの記事では、公的統計の実数で役職と規模ごとの差を確かめたうえで、面談で実際に語られた金額も紹介しますね。
経理課長や経理部長の年収を調べると、幅の広いレンジが並びます。しかし、その数字がどの統計のどの集計単位から来ているのかは、意外なほど書かれていません。そこで本記事では、公的統計の実数を出典と集計単位つきで示します。あわせて、昇格によって年収が実際にいくら動いたのかという面談の記録もまとめました。
なお、役職に就く前の水準は経理の平均年収は?中央値・企業規模別の実数データで、年代別・業種別を含む全体像は経理の年収相場|平均・年代別・役職別データで扱っています。
【実数】役職別の賃金|部長級63.6万円・課長級52.9万円
まず、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の役職別データを示します。対象は一般労働者のうち雇用期間の定めのない者、つまり正社員に相当する層です。
| 役職 | 男女計 | 男 | 女 | 平均年齢 | 勤続年数 | 対前年 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 部長級 | 635,800円 | 642,400円 | 578,300円 | 53.1歳 | 22.6年 | +1.4% |
| 課長級 | 529,200円 | 541,400円 | 470,300円 | 49.5歳 | 20.9年 | +3.4% |
| 係長級 | 399,200円 | 410,900円 | 365,700円 | 45.4歳 | 17.5年 | +3.4% |
| 非役職者 | 310,500円 | 332,100円 | 280,100円 | 41.8歳 | 10.8年 | +2.5% |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」第8表。金額は令和7年6月分の所定内給与額(月額)で、残業代・賞与は含みません。全産業・全職種の集計です。
この数字は「月額」であり、年収ではない
ここで最も間違えやすいのが集計単位です。上の金額は6月分の所定内給与額であり、残業代も賞与も入っていません。したがって、単純に12倍しても年収にはなりません。
年収を知りたい場合は、次章の管理的職業従事者のデータを使います。そちらには年間賞与その他特別給与額が含まれているため、年収換算ができます。
非役職者との差は、部長級で月32.5万円
非役職者を100としたとき、部長級は204.8、課長級は170.4、係長級は128.6になります。金額でみると、非役職者との差は部長級で325,300円、課長級で218,700円です。
段階ごとの上がり幅も確認しておきましょう。係長級から課長級では月130,000円、課長級から部長級では月106,600円の増加です。つまり、最も大きく動くのは課長級への昇格時になります。
つまり、課長になるときがいちばん上がるんですね。
LXキャリア
月額で見るとそうなんです。ただし、この数字は6月分の月給で、賞与は入っていません。だから年収で比べると、役職よりも企業規模の差のほうがずっと大きく出るんですよ。
それなら、月給だけでなく賞与まで見ないといけませんね。
【実数】管理職の年収は企業規模で458万円変わる
次に、年収換算ができるデータを見ます。同じ調査の職種別統計から「管理的職業従事者」を取り出すと、企業規模ごとの差がはっきり表れます。
| 企業規模 | 月額(きまって支給) | 年間賞与 | 年収換算 | 平均年齢 |
|---|---|---|---|---|
| 1,000人以上 | 698,700円 | 3,432,000円 | 約1,182万円 | 50.7歳 |
| 100〜999人 | 562,900円 | 2,104,500円 | 約886万円 | 51.5歳 |
| 10〜99人 | 486,900円 | 1,394,000円 | 約724万円 | 53.1歳 |
| 企業規模計(10人以上) | 599,700円 | 2,471,200円 | 約967万円 | 51.5歳 |
出典:同調査 職種(小分類)第1表「管理的職業従事者」産業計・男女計。年収換算は「月額×12+年間賞与」で算出。賞与は令和6年1月〜12月の実績。
担当者層の規模差109万円に対し、管理職は458万円
1,000人以上と10〜99人の差は、年収換算で約458万円です。これは同じ調査の会計事務従事者でみた規模差、約109万円の4倍を超えます。
つまり、担当者のうちは企業規模の影響が限定的でも、管理職になると差が一気に開きます。したがって、管理職として年収を伸ばしたいなら、規模の選択が最も効く変数になります。
差の大半は賞与から生まれている
内訳を見ると、月額の差は211,800円です。これを12か月分にすると約254万円になります。残りの約204万円は年間賞与の差です。
実際、1,000人以上の年間賞与は3,432,000円である一方、10〜99人では1,394,000円にとどまります。そのため、オファーを比べるときは月給ではなく賞与の実績を確認してください。賞与の水準そのものは経理のボーナスは平均いくら?何ヶ月分・企業規模別データで解説で扱っています。
【実数】管理職の給与分布|上位10%は月84.8万円
平均だけでは、自分がどのあたりに位置するのか分かりません。そこで分布そのものを示します。以下は管理的職業従事者の所定内給与額(残業代を除く月額)の分布特性値です。
| 位置 | 企業規模計 | 1,000人以上 | 100〜999人 | 10〜99人 |
|---|---|---|---|---|
| 第1・十分位数(下位10%) | 367,700円 | 443,500円 | 373,100円 | 307,300円 |
| 第1・四分位数 | 446,900円 | 533,600円 | 442,100円 | 373,800円 |
| 中位数(中央値) | 551,300円 | 653,800円 | 525,900円 | 452,500円 |
| 第3・四分位数 | 687,300円 | 796,800円 | 625,800円 | 547,200円 |
| 第9・十分位数(上位10%) | 847,700円 | 941,600円 | 762,800円 | 661,700円 |
出典:同調査 職種(小分類)第17表「管理的職業従事者」男女計。所定内給与額(月額)の分布であり、年収の分布ではありません。
注目したいのは、規模による分布の重なり方です。10〜99人の上位10%(661,700円)は、1,000人以上の中位数(653,800円)とほぼ同じ水準にあります。つまり中小企業で上位に入っても、大企業では平均的な位置にとどまります。
面談現場でみた、昇格と年収の実際
ここからは、当社が2026年に行った面談の記録から、実際に語られた金額を紹介します。いずれも個人が特定されない形に加工しています。
昇格が決まっているのに転職を考えるのは、やはりもったいないでしょうか。
LXキャリア
一概にはそう言えないんです。実際、面談でも昇格が決まっていながら転職を検討していた方がいました。なぜなら役職と年収は連動しますが、その先の伸びしろまでは保証してくれないからです。
「部長になると年収が100万円近く上がる」
面談でお会いした40代の方は、部長昇格によって年収が700万円台から800万円前後へ上がる見込みでした。増加幅は100万円弱です。そのうえで、昇格後の金額を転職時の希望ラインに設定していました。
ただし、この方は10万〜20万円程度の下振れは許容範囲だと話しています。つまり昇格後の金額をそのまま死守するのではなく、業務内容とのバランスで判断していました。
昇格が決まっていても転職を考える理由
ここが重要な点です。この方は評価されて昇格が決まっていました。それにもかかわらず転職を検討していた理由は、次の2つでした。
- キャリアの天井が見えていた:上位ポストに外部からの出向者が就くため、その先の昇進が見込みにくい
- 所掌外の業務が手当なしで持ち込まれた:本来の担当ではない業務がコスト上の理由で回され、断ると別の案件をせき止められる状況になっていた
したがって、昇格による100万円弱の増加だけでは判断材料として不足していました。役職と年収は連動しますが、その先の伸びしろまでは保証しないということです。こうした環境面の見極め方は経理のブラック企業の見分け方|求人票・面接でのチェックポイントで整理しています。
経理部長・管理部長クラスで語られた金額
また別の面談では、経理部長と内部監査を経験してきた方が、転職にあたっての希望年収を具体的に挙げていました。そして、その水準は1,000万円を超えるものでした。
この方は、経理職で探すと希望年収のところでどうしても下がってしまう、という感覚も持っていました。そのうえで、年収を維持するなら内部統制の方向がよいと整理し、最終的に優先順位を年収、次に勤務地と定めていました。
肩書と実務範囲は一致しない
もうひとつ、統計だけでは見えない事実があります。役職名と、実際に担当している範囲は必ずしも対応していません。
あるスタートアップの経理マネージャーの方は、上に部長がいながら、月次決算・監査法人対応・内部統制・資金繰り・原価計算をほぼ一人で担っていました。肩書のある上長がいても、実務を担える人はほとんどいなかったそうです。そのうえで、数字を作れなければ1,000万円を超えるレイヤーまでは届かない、と話していました。
したがって、面接で伝えるべきは肩書ではなく担当範囲です。何をどこまで見ているのかを具体的に示せるかどうかで、提示されるレンジは変わります。書き方は経理の職務経歴書 書き方|通過率を上げる5つのコア要素と例文を参照してください。
経理管理職として年収を上げる3つのルート
ルート1:企業規模を一段上げる
前掲のとおり、管理職の規模差は年収換算で約458万円です。10〜99人から100〜999人へ移るだけでも、約162万円の開きがあります。そのため、同じ役職のまま規模を上げるのは最も効率のよいルートになります。
ただし、規模が大きくなるほど担当範囲は狭くなりがちです。したがって、年収と経験の幅のどちらを優先するかを先に決めておく必要があります。具体的な動き方は経理転職で年収を100万円アップさせる具体的な方法にまとめました。
ルート2:役職を一段上げる
係長級から課長級へは月130,000円、課長級から部長級へは月106,600円の差があります。社内で昇格を待つ選択もあれば、転職で役職ごと引き上げる選択もあります。
なお、課長級・部長級の平均年齢はそれぞれ49.5歳・53.1歳です。つまり全産業でみると、昇格の実態はかなり後ろ倒しになっています。逆にいえば、それより若い年齢で役職に就いていれば、それ自体が市場での差別化要素になります。
ルート3:担当領域を広げて希少性を作る
役職を上げずに単価を上げる方法もあります。連結決算・IFRS対応・管理会計・内部統制といった領域は、担当できる人が限られるためです。前述のとおり、年収を維持したまま経理から内部統制へ寄せるという判断をした方もいました。
この方向を検討する場合は、連結決算経験者の転職、狙い目の企業と年収レンジおよび管理会計ができる経理は転職市場でどれほど評価される?が参考になります。
それなら、自分の担当範囲だとどのくらいの年収が狙えるんでしょう?
LXキャリア
たとえば経理の年収診断なら、役職名ではなく実際に見ている業務から、想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、規模を上げるか、役職を上げるか、領域を広げるかを一緒に考えましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
この統計を読むときの3つの注意点
- 役職の定義は会社ごとに違う:調査では各事業所の役職区分にもとづいて集計されます。したがって、同じ「課長」でも権限や部下の人数は揃っていません
- 経理に限定した集計ではない:役職別データは全産業・全職種が対象です。管理的職業従事者も同様で、経理部門の管理職だけを抜き出したものではありません
- 月額に賞与は含まれない:役職別の金額は6月分の所定内給与額です。年収を出すには年間賞与を足す必要があります
これらを踏まえたうえで、公的統計はあくまで基準線として使ってください。実際の提示額は、担当範囲と企業のフェーズによって動きます。
経理課長・部長の年収に関するよくある質問
Q1. 経理課長の年収はいくらが目安ですか?
公的統計では、課長級の所定内給与額が月529,200円です。これに賞与を加えると年収になります。管理的職業従事者全体でみた年収換算は約967万円ですが、企業規模によって約724万円から約1,182万円まで幅があります。したがって、まず自社の規模帯で当たりをつけてください。
Q2. 中小企業の経理部長でも1,000万円は可能ですか?
分布から見ると容易ではありません。10〜99人規模の管理的職業従事者では、上位10%でも所定内給与額は月661,700円です。一方で、当社の面談では経理部長・管理部長クラスとして、1,000万円を超える水準も実際に語られています。つまり、規模だけでなく業界と担当範囲によって例外は存在します。
Q3. 昇格を待つのと転職するのは、どちらが有利ですか?
金額だけなら、規模の大きい会社へ移るほうが差は大きく出ます。ただし面談の事例のように、昇格が決まっていても環境面で転職を選ぶ方もいます。そのため、年収の増加幅とあわせて、その先の伸びしろを確認してください。交渉の進め方は経理転職の年収交渉を成功させる5ステップで解説しています。
Q4. 管理職の賃金は上がっていますか?
令和7年調査では、課長級が対前年3.4%増、係長級が3.4%増でした。一方、部長級は1.4%増にとどまっています。つまり直近の伸びは、上位役職よりも中間層のほうが大きく出ています。
まとめ:役職より先に、規模と担当範囲を見る
役職別の実数は、部長級が月635,800円、課長級が月529,200円でした。ただし年収でみると、影響が大きいのは役職よりも企業規模です。管理職の規模差は年収換算で約458万円あり、担当者層の約109万円を大きく上回ります。
そして面談の記録が示していたのは、肩書と実務範囲が一致しないという現実でした。したがって、次の一手を考えるときは、役職名ではなく「どこまで見ているか」を起点にしてください。そのうえで規模の選択を重ねると、年収は動きます。
📌 この記事の一次情報源
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況(第8表 役職、性別賃金、対前年増減率及び役職・非役職間賃金格差)
- 同調査 職種別統計表(e-Stat):職種第1表(管理的職業従事者の企業規模別賃金・年間賞与)、職種第17表(所定内給与額の分布特性値)
- 総務省「日本標準職業分類」(管理的職業従事者・会計事務従事者の分類項目)
- 当社が2026年に実施した経理・管理部門候補者との面談記録(発言は個人が特定されない形に加工して引用)
