この記事でわかること
・経理 キャリアパスは3つの路線に分かれ、分岐の時期はおおむね決まっていること
・担当者層と管理職層の年収差は実数で約455万円あること
・管理職では企業規模による差が担当者層の4倍以上に開くこと
・路線を選ぶ前に確認しておく3つの条件
経理 キャリアパスに迷い、このまま続けた先が見えにくくなっている方に向けた記事です。
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
このまま経理を続けて、どこに行き着くんでしょうか。
LXキャリア
そのご相談は、面談でもよくうかがいます。実務を一通り回せるようになると、次が見えにくくなる時期があるんです。経理の道は大きく3つに分かれるので、まずは全体像から整理しましょう。
そこで本記事では、まず3つの路線を整理します。次に、公的統計の実数で到達点の違いを示します。そのうえで、選ぶ前に確認しておくことを挙げます。
経理のキャリアパスは3つの路線に分かれる
| 路線 | 中身 | 求められるもの |
|---|---|---|
| 1. マネジメント | 主任・係長・課長・部長へ。チームと数字の両方を持つ | 分担の設計、経営層への説明 |
| 2. 専門特化 | 連結、開示、税務、管理会計、FP&Aなど特定領域を深める | 領域を一人で完結できる深さ |
| 3. 経営幹部 | 管理部門全体の統括からCFOへ | 資金調達、投資判断、対外説明 |
ただし3つは完全に分かれているわけではありません。むしろ専門特化を経てマネジメントに移る道もあります。ただし、選択を迫られる時期はおおむね決まっています。
分岐は30代後半から40代前半に来る
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の職種別統計表を見ると、分岐の時期が数字に表れています。
| 年齢階級 | 年収換算 | 前の階級からの伸び |
|---|---|---|
| 25〜29歳 | 424万円 | +71万円 |
| 30〜34歳 | 484万円 | +60万円 |
| 35〜39歳 | 536万円 | +52万円 |
| 40〜44歳 | 540万円 | +3.8万円 |
| 45〜49歳 | 567万円 | +26万円 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第5表「会計事務従事者」。企業規模計・男女計。年収換算は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で当社が算出。
35〜39歳から40〜44歳の伸びは3.8万円で、ほぼ止まります。つまり担当者として同じ範囲を続けている限り、年収は横ばいになります。
したがって、この手前が路線を選ぶ時期です。30代のうちに、マネジメントに進むのか専門を深めるのかを意識しておいてください。
40代前半で年収の伸びが止まるというのは、少し不安になります。
LXキャリア
統計では、35〜39歳から40〜44歳にかけての伸びは3.8万円でした。ただ、これは担当者として同じ範囲を続けた場合も含めた平均です。だから、その手前でマネジメントに進むのか、専門を深めるのかを意識しておくことが大切なんですよ。
伸びが止まる前に、方向を決めておくんですね。
【実数】担当者層と管理職層では455万円違う
次に到達点を見ます。実は同じ調査には「管理的職業従事者」という区分もあり、比較が可能です。
| 企業規模 | 会計事務従事者 | 管理的職業従事者 | 差 |
|---|---|---|---|
| 計(10人以上) | 約512万円 | 約967万円 | 455万円 |
| 1,000人以上 | 約580万円 | 約1,182万円 | 602万円 |
| 100〜999人 | 約506万円 | 約886万円 | 380万円 |
| 10〜99人 | 約471万円 | 約724万円 | 253万円 |
出典:同調査 職種(小分類)第1表。年収換算は当社が算出。「管理的職業従事者」は経理部門の管理職に限定した区分ではなく、全職種の管理職を含みます。
ここで注目したいのは、規模による差の広がり方です。担当者層では1,000人以上と10〜99人の差が109万円なのに対し、管理職層では458万円に開きます。つまり4倍以上です。
したがってマネジメント路線を選ぶ場合、どの規模の会社で管理職になるかが到達点を大きく左右します。
👉 あわせて読みたい:経理課長・部長の年収はいくら?管理職の相場を役職・規模別に解説/経理の平均年収は?中央値・企業規模別の実数データ
路線1:マネジメント
まず、経理部門を率いる道です。担当者として決算を回せることが前提になり、さらにチーム運営が加わります。
実務としては、決算スケジュールの設計、担当の割り振り、監査法人や税理士との折衝、経営層への報告が中心になります。つまり自分で処理する時間より、進行を管理する時間が増えます。
ここで見落とされやすい点があります。管理職になると、自分の手を動かす時間が減るということです。だから「処理が得意」という理由だけで進むと、合わないと感じる場面が出てきます。
路線2:専門特化
次に、特定領域を深める道です。経理のなかでも、次のような領域が独立した専門性として扱われます。
| 領域 | 身につく場所 |
|---|---|
| 連結決算・開示 | 上場企業、上場準備企業 |
| 税務 | 申告を内製している事業会社、税理士法人 |
| 管理会計・FP&A | 予算管理を経理が担う会社、経営企画部門 |
| 国際会計 | 海外子会社を持つ企業、外資系企業 |
| 内部統制 | 上場企業、内部監査部門 |
重要なのは、これらが「学べば身につく」ものではない点です。むしろ、その業務がある会社にいるかどうかで決まります。だから専門特化を狙うなら、転職先の選び方が路線そのものになります。
👉 あわせて読みたい:連結決算経験者の転職、狙い目の企業と年収レンジ/管理会計ができる経理は転職市場でどれほど評価される?/FP&A 転職|経理経験者の市場価値とキャリアパス
路線3:経営幹部・CFO
そして最も遠い到達点です。つまり経理の枠を超え、資金と投資の意思決定に関わります。
3つの段階を踏む
| 段階 | 経験すること |
|---|---|
| 1 | 決算と税務を一通り。数字を作れる状態にする |
| 2 | 連結・管理会計・予算。経営の近くで数字を使う |
| 3 | 資金調達、IR、投資判断。社外と対峙する |
面談でうかがう限り、段階3に進むには規模の小さい会社のほうが機会は多くなります。大手では役割が細かく分かれているためです。一方で、扱う金額や難度は規模の大きい会社が上になります。
つまりCFOを目指す場合、どこかで規模を下げる判断が必要になる場面があります。ここは年収の一時的な低下と引き換えになることも少なくありません。
👉 あわせて読みたい:IPO準備企業の経理転職|どんなスキルが求められ、年収はどう変わる?/ベンチャーvs大手、経理転職どちらが正解?徹底比較
年収を動かす2つのレバーを比べる
路線の話を、年収という一点で整理し直します。担当者として動かせるレバーは2つしかありません。役職と企業規模です。
| レバー | 動かした場合の差 | 難しさ |
|---|---|---|
| 役職(担当者→管理職) | 約455万円 | 席が空くかどうかに左右される |
| 規模(10〜99人→1,000人以上) | 約109万円(担当者層) | 転職で動かせるが競争は激しい |
| 両方(小規模の担当者→大企業の管理職) | 約711万円 | 段階を踏む必要がある |
前掲の職種第1表の年収換算から当社が算出。10〜99人の会計事務従事者約471万円と、1,000人以上の管理的職業従事者約1,182万円の差。
つまり役職のほうが、規模より4倍以上の効きがあります。したがって年収を最優先するなら、まず役職に就ける環境を探すのが合理的です。
ただし注意点があります。管理職の席は限られており、自分の努力だけでは空きません。だから条件2で述べるとおり、上のポジションが空くかどうかを先に見てください。
一方、専門特化は年収の差として統計に表れにくい路線です。連結や税務といった区分が、公的統計では独立して集計されていないためです。しかし求人の応募要件としては明確に効きます。つまり選べる求人の数が変わります。
路線を選ぶ前に確認する3つの条件
ここまでは路線の話でした。ところが実際には、いまいる会社の条件が選択肢を決めてしまう場合があります。
条件1:その業務が自社にあるか
たとえば非上場企業に連結決算はありません。申告を税理士に任せている会社では、税務の実務は積めません。したがって、目指す領域の業務が自社に存在するかを先に確認してください。
条件2:上のポジションが空くか
また、マネジメント路線では席の有無が決定的です。経理部長が同年代であれば、当面は空きません。とくに親会社からの出向者が上位を占める子会社では、天井が最初から決まっている場合があります。
条件3:評価の基準が明示されているか
そもそも経理は成果が数字で表れにくい職種です。だから昇格の基準が曖昧な会社では、努力が反映されにくくなります。決算日数の短縮や制度対応の完了といった指標を持つ会社かどうかを見てください。
👉 あわせて読みたい:経理転職で後悔しない5つのチェック|労基法15条から逆算する
いまの会社では上が詰まっていて、管理職の席が空きそうにありません。
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そういう場合は、社内で待つか、外に機会を探すかを先に決めておきましょう。たとえば「あと何年待つか」を決めておくと、判断がぶれにくくなります。転職であれば、募集が出ていること自体が席の空きを示していますよ。
待つ期限を決めてから、選択肢を比べればいいんですね。
専門特化の価値は統計に出ない
ここで、統計の限界にも触れておきます。連結や税務といった専門領域は、公的統計では独立して集計されていません。会計事務従事者という1つの区分にまとめられているためです。
したがって「連結ができると年収がいくら上がるか」を公的な数字で示すことはできません。そのかわり、求人側で測る方法があります。
| 測り方 | やること |
|---|---|
| 応募できる求人の数 | その領域を必須要件に含む求人が、いくつあるかを数える |
| 提示年収の下限 | 要件に含む求人と含まない求人で、下限がどう違うかを見る |
| 競合の少なさ | その要件を満たす人が少ないほど、選考は通りやすくなる |
つまり専門特化の効き方は、年収の平均値ではなく応募可能な範囲として表れます。だから路線を選ぶときは、統計ではなく実際の求人票で確かめてください。
👉 あわせて読みたい:経理求人の見方|失敗しないチェックポイント10選
陥りやすい3つの落とし穴
| 落とし穴 | 避け方 |
|---|---|
| 同じ範囲を長く続ける | 前掲のとおり40代で年収が止まる。3〜5年ごとに担当範囲を点検する |
| 資格取得を目的にする | 狙うポジションを先に決め、そこから逆算して選ぶ |
| 路線を早く固定しすぎる | 30代までは両方に進める状態を保っておく |
3つ目について補足します。専門特化とマネジメントは排他的ではありません。むしろ連結や税務を深めた方が、その領域の責任者として管理職に就く道もあります。したがって、20代から30代は選択肢を残す動き方が有利です。
👉 あわせて読みたい:経理の資格ロードマップ|段階別に何をいつ取るか/20代経理の転職戦略|ポテンシャルを最大限に活かす方法
30代のうちにやっておく3つ
分岐が40代前後に来るのであれば、その手前で準備できることがあります。実務として取り組みやすい順に挙げます。
1. 担当範囲を工程で棚卸しする
月次決算、年次決算、税務、連結、開示、管理会計。この6領域について、自分がどこまで一人で完結できるかを書き出してください。空欄が多い領域が、次に取りにいく候補になります。
2. 上流に一度でも関わる
予算の編成、監査法人への説明、制度対応の設計。いずれも作業ではなく判断を伴う仕事です。だから一度でも関われば、書類に書ける経験が増えます。
手を挙げにくい場合は、繁忙期に補助として入るところから始めてください。完全に任される必要はありません。
3. 改善の実績を数字で残す
経理は成果が見えにくい職種です。そこで、削減した時間や短縮した営業日数を記録しておいてください。マネジメント路線でも専門特化でも、この記録は必ず使えます。
👉 あわせて読みたい:経理の効率化の進め方|棚卸し3ステップと脱エクセルの判断軸/30代経理の転職で求められるスキルと成功のポイント
それなら、いまの経験がどの路線に向いているのか、年収の目安も知りたいです。
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たとえば経理の年収診断なら、担当範囲と保有資格から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、どの路線に進むかを一緒に整理しましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
経理のキャリアパスに関するよくある質問
Q1. 管理職に興味がない場合、年収は上がりませんか
専門特化でも上がります。ただし条件があります。その専門性を必要とする会社に移る必要があるという点です。同じ会社で専門を深めるだけでは、担当者層の賃金カーブから外れにくくなります。
Q2. 何年目で路線を決めるべきですか
決め切る必要はありません。ただし35〜39歳から40〜44歳で年収の伸びが止まるため、その手前で方向を意識しておくと選びやすくなります。
👉 あわせて読みたい:経理は何年目で転職するのが正解?タイミング別メリット・デメリット
Q3. 経理から他部門へ移る道はありますか
あります。経営企画、財務、内部統制、内部監査は接続しやすい領域です。ただし経理の実務から離れる期間が長くなると、戻りにくくなる点には注意してください。👉 あわせて読みたい:経理から経営企画へ|評価される経験と、移るまでの現実的なルート
Q4. AIの普及でキャリアパスは変わりますか
自動化されるのは転記や照合であり、判断は残ります。むしろ制度対応や仕組みづくりの比重が増えています。
👉 あわせて読みたい:経理はAIに仕事を奪われる?将来性の現実と生き残り方
Q5. 管理職になると残業代はどうなりますか
役職名ではなく、実態で判断されます。まず労働基準法では、管理監督者にあたる人は割増賃金の対象外とされています。ただし該当するかは、権限や待遇の実態で決まります。つまり課長という名称だけでは判断できません。したがって面接では、役職手当の額と残業代の扱いを合わせて確認してください。なお管理職への昇進で、手取りが一時的に下がる例もあります。
Q6. 昇進を待つのと転職するのは、どちらが早いですか
空きポストの有無で決まります。まず社内で上が詰まっていれば、実力があっても時期は読めません。一方で転職なら、募集そのものが空きの存在を示します。つまり転職のほうが時期を選びやすい面はあります。ただし新しい環境では、信頼を得るまでに時間がかかります。したがって「あと何年待つか」を先に決めておくと、判断がぶれません。
まとめ|分岐の手前で方向を決めておく
経理 キャリアパスは、マネジメント・専門特化・経営幹部の3路線に分かれます。ただし排他的ではなく、専門を深めてから管理職に就く道もあります。
数字で押さえるなら2つです。担当者層の年収は35〜39歳から40〜44歳でほぼ止まります。そして担当者層と管理職層の差は約455万円、規模による差は管理職層で4倍以上に開きます。
だからこそ、30代のうちに方向を意識してください。まずは自社にどの業務があるか、上のポジションは空くかを確認するところから始めましょう。
👉 あわせて読みたい:経理の仕事大全|年収・残業・資格を実数で総覧/経理転職で年収を100万円アップさせる具体的な方法
📌 この記事の一次情報源
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第1表(会計事務従事者・管理的職業従事者の企業規模別賃金)、職種第5表(年齢階級別)
- 総務省「日本標準職業分類」中分類26 会計事務従事者(区分に含まれる職業の範囲)
- 当社が2026年に扱った経理・管理部門の求人および候補者面談の記録(路線の整理と落とし穴は当社の見解であり、公的統計にもとづくものではありません)
