
📋 この記事でわかること
- 女性経理がライフイベントで直面するキャリアの課題と対処法
- 産休・育休前後の転職タイミングの見極め方
- ライフイベントを織り込んだ年収設計とキャリアパスの考え方
- 女性が長く活躍できる職場環境の見分け方
「出産や育児で今のキャリアが止まってしまうんじゃないか」
そんな不安を感じながら、この先のキャリアを考えている女性経理の方は少なくありません。
経理は女性が多く活躍する職種です。しかし課題もあります。「出産後に昇進の話が止まった」という声は少なくありません。「育休明けにポジションに戻れなかった」という例もあります。そのため、ライフイベントを見越した戦略が必要です。この記事では、20〜30代の女性経理担当者に向けて解説します。具体的な対処策と転職の進め方を紹介します。
ライフイベントは避けられないものだからこそ、事前に知識を持っておくことで、後悔のない選択がしやすくなります。
女性経理が直面するキャリアの現実
まず、現状のデータを押さえておきましょう。経理を含む管理部門では、女性管理職の割合はまだ低水準にとどまっています。
数字だけを見ると厳しい現実に感じるかもしれませんが、これは裏を返せば「正しく動けば差別化しやすい」ということでもあります。まずは実態を客観的に把握することから始めましょう。

管理職比率と非正規比率の現実
厚生労働省近年の傾向として、女性管理職比率は限定的です。また、女性の約51.多くが非正規雇用で働いています。一方、男性の非正規比率は21.7%です(マイナビキャリアリサーチLab)。経理部門でも同様の傾向があります。出産・育児を機に非正規やパートへ転換するケースが生じています。
「マミートラック」という落とし穴
育休復帰後に昇給・昇進が停止するケースがあります。責任の軽い業務に回されることを「マミートラック」と呼びます。これが、女性経理の年収格差の主な要因です。女性経理の平均年収は男性比で約165万円低いとされています(MS-Japan)。そのため、意図的なキャリア戦略が必要です。
経理が女性にとって再就職しやすい理由
一方で、経理は「手に職をつけやすい」職種でもあります。あらゆる企業に経理部門が存在するため、スキルの汎用性が高いです。そのため、ブランク後の復帰がしやすいというメリットがあります。簿記2級や税務知識など、客観的に証明できるスキルが役立ちます。さらに、30代・40代でも正社員復帰の選択肢が広がります。
この「どこでも通用するスキル」という特性こそが、女性経理がライフイベントを経ても長くキャリアを継続できる最大の理由です。焦らず、自分のペースでスキルを積み上げていきましょう。
➤ あわせて読みたい:経理のキャリアパス完全解説|CFOを目指す道まで
ライフイベント別:転職タイミングの考え方
「いつ転職すべきか」は最も重要な問いの一つです。ライフイベントのフェーズごとに最適なタイミングが異なります。
同じ「転職」でも、フェーズによって優先すべき条件は大きく変わります。ここでは4つのフェーズに分けて、それぞれの考え方を整理します。

結婚前〜妊娠前:最もフレキシブルに動ける黄金期
ライフイベントを見据えるなら、この時期が最も動きやすいです。新しい職場でスキルと実績を積む時間を確保できます。「将来的に育休を使いたい」という目的があれば積極的に動くべき時期です。また、「在宅ワーク可の環境に移りたい」場合も同様です。目安として、転職後1〜2年で社内の信頼を築くことが重要です。妊娠前に「手放せない人材」と評価される実績を残しましょう。そうすることで、育休後のポジション維持につながります。
この時期に転職先を選ぶ際は、育休取得実績や女性管理職の有無まで含めて確認しておくと、将来的なライフイベントに備えた選択がしやすくなります。
妊娠判明後:在籍したまま産休取得が基本
妊娠判明後に転職を考える方もいます。しかし、原則として現職で産休・育休を取得するのが得策です。多くの企業では、入社直後は産休・育休が取りにくい場合があります。また、育児休業給付金の受給には一定条件があります。「育休開始前2年間に11日以上働いた月が12ヶ月以上」が必要です。そのため、転職直後は受給要件を満たせないリスクがあります。
どうしても現職を離れたい事情がある場合は、退職前に受給要件を満たせるかどうかを、ハローワークや社会保険労務士に確認しておくことをおすすめします。
育休中:情報収集に最適、転職活動開始は慎重に
育休中は転職市場の調査や求人リサーチに最適な時期です。ただし、転職活動を進める場合は注意が必要です。育児休業給付金の受給ルールを事前に確認しておきましょう。転職エージェントへの相談は育休中でも可能です。しかし、実際の選考は育休終了の見通しが立ってから進めましょう。
育休中にエージェントと関係を築いておくことで、復職のタイミングが見えてきた段階でスムーズに選考へ進めるというメリットもあります。
育休明け・復職後:不満があれば1〜2年以内に行動を
復職後にマミートラックを感じた場合は行動が必要です。職場環境が改善されないと判断したら、1〜2年以内の転職を検討しましょう。「また妊娠するかも」という遠慮は禁物です。転職を先延ばしにすると、年齢的なリスクが高まります。また、育休を1回取得した実績は次の職場でも交渉しやすくなります。
次の職場を選ぶ際は、面接の段階で「育休取得後のキャリアパス」について具体的に質問し、マミートラックに陥りにくい環境かどうかを見極めておくことが重要です。
➤ あわせて読みたい:経理は何年目で転職するのが正解?タイミング別メリット・デメリット
女性経理の年収とキャリアパス設計
ライフイベントを織り込みながら年収を維持・向上させるには、キャリアパスの方向性を早めに決めることが重要です。
方向性が定まっていないまま転職活動を進めると、応募先の軸がぶれてしまいます。まずは自分がどちらのタイプを目指すのかを整理しましょう。
スペシャリスト型:専門スキルで市場価値を守る
特定領域に深く特化するのがスペシャリスト型です。財務分析・連結決算・IFRS対応・税務などが代表例です。スペシャリスト型は、育休後のポジション交渉に強みを発揮します。「この人でないと対応できない業務がある」と認識されることが重要です。そうすれば、ブランクがあっても企業側から呼び戻されるケースがあります。
特定領域の専門性は、時短勤務やリモートワークとの相性も良く、ライフイベント後の柔軟な働き方を実現しやすいという副次的なメリットもあります。
市場価値を高める資格として日商簿記1級・税理士科目があります。また、米国公認会計士(USCPA)も高く評価されます。取得難易度は高いですが、年収への影響は大きいです。さらに、転職市場での希少性も高まります。
ゼネラリスト型:管理職を目指してレンジを上げる
経理・財務・経営企画にまたがる知識を持つのがゼネラリスト型です。管理職ポジションへの昇進を狙いやすい点が強みです。課長・マネージャークラスになると年収高水準も視野に入ります。また、ライフイベント後の復帰ポジションの選択肢も広がります。30代前半までに「予算管理・連結開示」を経験しておくことが重要です。さらに「経営数値のレポーティング」も押さえておきましょう。
ゼネラリスト型を目指す場合は、管理職に就いた後も育休・時短勤務を取得しやすい企業文化かどうかを、事前にリサーチしておくことが成功の鍵になります。
年収レンジの目安(女性経理)
女性経理の平均年収は約454万円とされています(MS-Japan)。ただし、企業規模・スキルセット・役職によって大きく異なります。
- 20代経理担当:中堅〜シニアレンジ
- 30代経理担当(スペシャリスト):中堅〜シニアレンジ
- 30代経理マネージャー:中堅〜シニアレンジ
- IFRS・SAP経験者:高水準も
転職で年収を引き上げるには、現職の実績を数値化することが重要です。たとえば「年〇億円規模の月次決算を主担当として処理」などが有効です。「連結〇〇社の開示資料を単独で作成」のように具体化しましょう。そうすることで職務経歴書で証明できる形に整理できます。
育休によるブランクがある場合も、休職前の実績をしっかり数値化しておけば、ブランク自体がマイナス評価につながることはほとんどありません。
➤ あわせて読みたい:30代経理の転職で求められるスキルと成功のポイント
女性が長く活躍できる職場の見分け方
ライフイベント後もキャリアを継続するには、転職先選びが重要です。以下の4つのポイントで職場を見極めましょう。
①女性管理職・ロールモデルの存在を確認する
面接や企業調査の段階で確認しましょう。経理部門に女性管理職や育休復帰後の昇進事例があるかが重要です。ロールモデルが存在する職場は信頼性が高いです。そのような職場は制度だけでなく「文化」として女性活躍を支援しています。
公式サイトの採用ページや、女性活躍推進法に基づく行動計画の公表内容からも、こうした実績を確認できる場合があります。
こうした情報は「えるぼし認定」の取得状況などからも間接的に読み取ることができます。
②リモートワーク・フレックスの実態を聞く
「制度はある」と「実際に使えている」は別物です。面接では具体的に質問することが大切です。「リモートワークを週何日使っていますか?」と聞きましょう。育児中の社員が時短・リモートで活躍している実績があるかも重要です。
制度の有無だけでなく、実際に利用している社員の割合や職種まで踏み込んで質問することで、より実態に近い情報を得られます。
特に管理部門でのリモートワーク実績を尋ねると、自分の職種に近い形での実態を把握しやすくなります。
③産休・育休の取得実績を数字で確認する
「取得実績あり」という表現は定性的すぎます。踏み込んだ質問をすることで企業の本気度が測れます。「直近3年で何名が産休取得し、全員が復帰しましたか?」と聞きましょう。また、中途採用者の育休取得実績も合わせて確認しましょう。
復帰率だけでなく、復帰後に希望通りのポジションに戻れているかまで確認できると、より正確に職場の実態を判断できます。
可能であれば、実際に育休から復帰した社員の声を面接以外の場でも聞けると、より説得力のある判断材料になります。
④業務のペーパーレス化・クラウド化の進捗
在宅勤務や時短勤務には、業務のクラウド化が前提です。紙ベースの書類処理が多い職場では、柔軟な働き方が難しくなります。freee・マネーフォワードクラウド・SAPなどの導入状況を確認しましょう。
女性経理の転職に関するよくある質問
ブランク期間が長い場合、書類選考で不利になりますか?
ブランクの長さそのものよりも、ブランク前の実績と、復帰への意欲をどう伝えるかが重視されます。休職中に簿記や関連資格の学習を続けていた場合は、それも合わせてアピールしましょう。
面接では、ブランク期間中に情報収集や自己研鑽をどう続けていたかを具体的に語れると、意欲の高さがより伝わりやすくなります。
時短勤務のまま転職活動をしても大丈夫ですか?
問題ありません。むしろ、時短勤務の中でどう成果を出してきたかを具体的に伝えられれば、効率的に業務を進める力として評価されやすくなります。
限られた時間の中で優先順位をつけて業務を進めてきた経験は、時間管理能力の高さとしてポジティブに評価されることが多くあります。
女性経理に強い転職エージェントはありますか?
経理・財務専門のエージェントの中には、女性のキャリア相談やライフイベントを踏まえた求人紹介に力を入れているところもあります。相談の際に希望を具体的に伝えることで、より的確な提案を受けられます。
初回面談の段階で、将来のライフプランについても率直に伝えておくと、その後の求人紹介の精度が大きく向上します。
LINEで気軽に無料相談できます。
➤ あわせて読みたい:経理転職の年収交渉を成功させる5ステップ|タイミング・言い回し・相場の出し方
まとめ:ライフイベントをキャリアの中断ではなく転換点に
女性経理にとってライフイベントはリスクにもなり得ます。しかし、職場環境を見直す転換点にもなります。重要なのは「来てから考える」ではなく逆算して準備することです。
完璧なタイミングを待つ必要はありません。今の自分にできる準備を少しずつ進めていくことが、後悔のないキャリア形成につながります。
この記事の一次情報源
本記事の内容は、厚生労働省の雇用均等基本調査、マイナビキャリアリサーチLab、MS-Japanの公開データ、および経理・財務専門の転職支援における相談実績を参考に構成しています。
- 妊娠前に職場環境の良い転職先を選んでおく
- 育休中にスキルアップと市場調査を並行する
- 復帰後にマミートラックを感じたら早期に行動する
経理スキルは業種・企業規模を超えて通用する強みです。スペシャリストとして深めるか、ゼネラリストとして管理職を目指すか。どちらの方向性でも、明確な行動が市場価値を高めます。ライフイベントの前後を問わず、価値を高め続けることができます。
🖊 執筆・監修者
LXキャリア 転職支援チーム
- CA/RA 経験豊富な現役人材紹介のプロ。年間数十件のマッチングを成立
- 人材ビジネスを0→1で立ち上げ、事業としての人材支援の仕組みをゼロから構築
- 経理責任者としての実務経験あり






