この記事でわかること
・公的統計でみた経理の平均年収と、その計算の内訳
・平均年収と中央値がどれだけ違うのか(実数)
・企業規模別・男女別の実数と、額面から手取りへの目安
・統計を自分に当てはめるときに間違えやすい3つの点
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
経理の平均年収って、いくらなんでしょうか。記事によって450万円だったり550万円だったりして、自分が高いのか低いのか分からなくて。
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そのご質問は、面談でもよくうかがいます。数字がばらつくのは、どの統計を、どの集計単位で使っているかが記事ごとに違うからなんです。そこでこの記事では、経理の平均年収を公的統計だけで組み立て直しますね。
本記事では、平均だけでなく中央値も示し、自分の位置を確かめる手順まで整理しました。
なお、役職別の年収は経理課長・部長の年収はいくら?管理職の相場を役職・規模別に解説で、年代別・業種別を含めた全体像は経理の年収相場|平均・年代別・役職別データと転職で上げる方法で扱っています。
経理の平均年収は年収換算で約512万円【令和7年 賃金構造基本統計調査】
まず結論から示します。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」において、経理が含まれる職種区分の賃金は次のとおりです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| きまって支給する現金給与額(月額) | 342,500円 |
| うち所定内給与額(残業代を除く月額) | 321,300円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 1,012,400円 |
| 年収換算(342,500円×12+1,012,400円) | 約512万円 |
| 平均年齢/平均勤続年数 | 44.0歳/12.8年 |
| 集計対象者数 | 466,030人 |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第1表「会計事務従事者」産業計・企業規模計(10人以上)・男女計。賃金は令和7年6月分、賞与は令和6年1月〜12月の実績。
統計上の「経理」は会計事務従事者として集計される
公的統計には「経理」という職種区分がありません。そのため、日本標準職業分類の中分類「会計事務従事者」を使います。この区分には、現金出納事務員・預貯金窓口事務員・経理事務員・その他の会計事務従事者が含まれます。
ただし、この区分は経理職とぴったり一致するわけではありません。この点は後半の注意点であらためて整理します。
なぜ記事によって平均年収の数字が違うのか
数字がばらつく原因は、おもに3つあります。
- 母集団が違う:公的統計は全国の事業所が対象です。一方、転職サービスの調査は、そのサービスに登録した人だけが対象になります
- 集計単位が違う:月額なのか年収なのか、賞与を含むのか、残業代を含むのか。ここが揃っていないと比較できません
- 平均か中央値か:同じ集団でも、この2つでは30万円以上の差が出ます
したがって、数字を見るときは金額より先に「何を集計した値か」を確認してください。本記事では、すべて出典と集計単位を明示しています。
【実数】平均年収と中央値はここまで違う
ここが本記事の中心です。同じ調査から、平均と中央値の両方を取り出せます。
中央値は月29.1万円、平均との差は月3.0万円
会計事務従事者の所定内給与額について、平均は321,300円です。これに対し、中位数(中央値)は291,100円でした。つまり平均のほうが月あたり30,200円高く出ています。年間に直すと、約36万円の差です。
この差が生まれる理由は、平均が一部の高額層に引き上げられるためです。年収1,000万円を超える層が少数でも存在すると、平均は実感より上振れします。一方、中央値は人数の真ん中に立つ人の金額なので、多くの人の肌感覚に近くなります。
分布特性値でみる経理の給与レンジ
同じ調査には、分布の形そのものを示す数値も収録されています。以下は所定内給与額(残業代を除く月額)の分布です。
| 位置 | 所定内給与額(月額) | 意味 |
|---|---|---|
| 第1・十分位数 | 209,300円 | 下から10%の位置 |
| 第1・四分位数 | 241,600円 | 下から25%の位置 |
| 中位数(中央値) | 291,100円 | ちょうど真ん中 |
| (参考)平均 | 321,300円 | 中央値より30,200円高い |
| 第3・四分位数 | 367,100円 | 上から25%の位置 |
| 第9・十分位数 | 469,700円 | 上から10%の位置 |
出典:同調査 職種(小分類)第17表「会計事務従事者」男女計・企業規模計(10人以上)。所定内給与額(月額)の分布特性値であり、年収の分布ではありません。
この表から読み取れることは明確です。会計事務従事者の上位10%でも、所定内給与額は月47万円弱にとどまります。つまり、この職種区分のなかで大きく上を目指すのは容易ではありません。逆にいえば、区分の外側にある管理職や専門職へ移ることが、年収を伸ばす現実的な道になります。
自分の位置を4ステップで確かめる
- 直近の給与明細から、残業代を除いた月々の支給額を出す
- 上の表と照らし、自分がどの位置にあるかを確認する
- 年収を出す場合は「その月額×12+昨年の賞与実績」で計算する
- 平均ではなく中央値と比べ、下回っていれば伸びしろとして捉える
なお、賞与の水準そのものを確かめたい場合は経理のボーナスは平均いくら?何ヶ月分・企業規模別データで解説を参照してください。
【実数】企業規模別の平均年収
次に、企業規模で年収がどう変わるかを見ます。同じ調査では、常用労働者1,000人以上を大企業、100〜999人を中企業、10〜99人を小企業として区分しています。
| 企業規模 | 月額(きまって支給) | 年間賞与 | 年収換算 | 中央値(月・所定内) | 平均年齢 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,000人以上 | 374,500円 | 1,302,700円 | 約580万円 | 314,100円 | 42.5歳 |
| 100〜999人 | 338,100円 | 1,006,800円 | 約506万円 | 283,700円 | 42.1歳 |
| 10〜99人 | 324,800円 | 810,900円 | 約471万円 | 288,200円 | 47.3歳 |
出典:同調査 職種(小分類)第1表・第17表「会計事務従事者」男女計。年収換算は「月額×12+年間賞与」で算出。
差は年収で約109万円、その大半は賞与から生まれる
1,000人以上と10〜99人を比べると、年収換算で約109万円の差があります。ただし内訳を見ると、月額の差は約5万円にすぎません。残りは年間賞与の差で、その幅は約49万円です。
したがって、規模の大きい会社へ移ることで得られる差は、月々の給与よりも賞与に表れます。求人票の想定年収を見るときは、賞与の実績が何か月分なのかを必ず確認してください。
規模が大きいほど有利とは限らない
一方で、金額だけで判断すべきではありません。小規模な会社では、一人が担当する範囲が広くなります。その結果、月次決算から監査法人対応、資金繰りまでを一通り経験できることがあります。
たとえば上場企業でも、経理を少人数で回し、一部を会計事務所に任せている会社があります。経験の幅という観点では、こうした環境のほうが濃くなります。担当範囲の違いは経理の仕事内容 完全ガイド|1日の流れと年間業務で詳しく整理しました。
【実数】男女別の平均年収
| 区分 | 月額(きまって支給) | 年間賞与 | 年収換算 | 平均年齢/勤続 | 人数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 男 | 412,400円 | 1,321,200円 | 約627万円 | 44.2歳/13.7年 | 165,110人 |
| 女 | 304,100円 | 842,900円 | 約449万円 | 43.9歳/12.3年 | 300,930人 |
出典:同調査 職種(小分類)第1表「会計事務従事者」産業計・企業規模計(10人以上)。
年収換算では約178万円の差があります。ただし平均年齢と勤続年数はほぼ同じです。つまり年齢や在籍期間では説明がつきません。
差の背景として考えられるのは、役職に就いている割合と、担当している業務の範囲です。実際、同じ調査の役職別データでは、部長級・課長級のいずれでも男女で賃金差が確認できます。この点は役職別の年収データで扱っています。
額面512万円の手取りはいくらか
年収の数字はあくまで額面です。実際に受け取る金額は、そこから所得税・住民税・社会保険料が差し引かれます。控除の合計は、おおむね額面の20〜25%が目安になります。
この目安を当てはめると、額面512万円の手取りは384万〜410万円程度です。月あたりでは、賞与を除いておよそ27万〜29万円になります。ただし扶養家族の人数や住んでいる自治体によって前後します。そのため、正確な金額は給与明細の控除欄で確認してください。
統計を自分に当てはめるときの3つの注意点
注意1:会計事務従事者は経理職と同じではない
日本標準職業分類の「会計事務従事者」には、銀行などの預貯金窓口事務員も含まれます。反対に、公認会計士・税理士といった会計の専門的職業は別の区分です。したがって、この数値は経理職そのものの平均ではありません。あくまで最も近い公的区分として使っています。
注意2:月額の統計に賞与は含まれていない
調査でいう「賃金」は、令和7年6月分の所定内給与額です。ここには残業代も賞与も入っていません。そのため、月額を単純に12倍しても年収にはなりません。年収を出すときは、必ず年間賞与その他特別給与額を足してください。
あわせて、賞与の集計期間にも注意が必要です。令和7年の調査で使われている賞与は、令和6年1月から12月までの実績にあたります。
注意3:実際の提示年収は担当範囲で大きく動く
統計の平均と比べても、結局自分の年収が低いのか高いのか、よく分からなくなってきました。
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統計は職種の平均なので、個々の求人の提示額とは別物なんです。面談でも、同じ「経理」なのに金額の幅はきわめて広いと感じます。決め手になるのは年齢より、担当している範囲と役職なんですよ。
平均と比べるより、担当範囲と役職を見直すほうが大事なんですね。
求人票の「想定年収」と統計の平均はどこが違うか
統計の平均を把握したら、次は求人票の数字と突き合わせることになります。ところが、この2つは同じ「年収」という言葉でも中身が違います。そのため、額面だけを並べても比較になりません。
想定年収の下限は「入社時に最も多い額」ではない
求人票の「400万円〜800万円」という表記は、その職種で採用しうる幅を示しています。つまり下限は未経験に近い場合、上限は管理職相当の場合を指すことが一般的です。したがって、自分がどのあたりに位置づけられるかは、面接の中で確認するしかありません。
なお、募集条件と実際の採否ラインがずれている例もあります。当社が扱った案件では、企業側が求める理想像に該当する人がおらず、長期間採用できていませんでした。その結果、実際の判断基準は当初の要件より下がっていました。求人票の読み方は経理求人の見方|失敗しないチェックポイント10選で詳しく扱っています。
固定残業代が含まれていないか
想定年収に固定残業代(みなし残業)が含まれている場合、実質的な基本給は表示額より低くなります。しかも統計の所定内給与額には残業代が入っていません。したがって、両者を比べるときは固定残業代を差し引いてから並べる必要があります。
賞与を含む表記かどうか
想定年収に賞与を含めている会社と、含めずに基本給ベースだけを示す会社があります。前掲のとおり、企業規模による年収差の大半は賞与から生まれていました。つまり賞与の扱いを確認しないまま比較すると、100万円近い誤差が生じかねません。
金額の表し方も、月給・年収・時給とさまざまです。そのため、比較するときは単位をそろえることが出発点になります。
平均を下回っていたときに確認する3点
中央値や平均を下回っていた場合、原因はおおむね次の3つに絞られます。
- 企業規模:前掲のとおり、規模の差は年収換算で約109万円になります。とくに賞与の差が大きく効きます
- 担当範囲:入力と支払処理が中心なのか、決算まで締めているのか。ここで評価は大きく変わります
- 役職:会計事務従事者の区分内では上位10%でも月47万円弱です。管理職への移行が年収の分岐点になります
これらを踏まえたうえで、具体的にどう動くかは経理転職で年収を100万円アップさせる具体的な方法にまとめています。交渉の進め方は経理転職の年収交渉を成功させる5ステップを参照してください。
ちなみに、平均を下回っていたら、すぐに転職したほうがいいのでしょうか。
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まずは原因を切り分けてみてください。企業規模なのか、担当範囲なのか、役職なのかで、打ち手が変わります。たとえば規模の差は年収換算で約109万円あり、その大半は賞与から生まれているんです。
原因によって、動き方が変わるんですね。
賃金は3年連続で上昇している
最後に、水準そのものが動いている点も押さえておきましょう。同じ調査で一般労働者全体の賃金(所定内給与額・月額)の推移を見ると、次のように上昇が続いています。
| 年 | 賃金(男女計・月額) | 対前年増減率 |
|---|---|---|
| 令和5年(2023) | 318,300円 | +2.1% |
| 令和6年(2024) | 330,400円 | +3.8% |
| 令和7年(2025) | 340,600円 | +3.1% |
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」第1表。一般労働者全体の数値であり、会計事務従事者に限定したものではありません。
つまり、数年前に調べた相場観のままでいると、実勢より低く見積もることになります。とりわけ在籍が長い方ほど、社内の昇給ペースと市場の上昇ペースが乖離しがちです。そのため、定期的に相場を取り直しておくことをおすすめします。
それなら、統計の平均ではなく、自分の年収の目安を知りたいです。
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たとえば経理の年収診断なら、担当範囲と保有資格から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、企業規模・担当範囲・役職のどこを変えるかを一緒に考えましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
経理の平均年収に関するよくある質問
Q1. 給与所得者全体と比べると経理は高いのですか?
国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円です。この数字と比べると、会計事務従事者の年収換算512万円は約34万円上回ります。ただし同調査の正社員平均は545万円であり、こちらは下回ります。したがって「全体より高いが、正社員平均には届かない」という位置づけになります。
Q2. 平均と中央値、どちらを基準にすべきですか?
自分の位置を測るなら中央値です。平均は高額層に引き上げられるため、多くの人にとっては届きにくい水準になります。一方で、求人票の想定年収と見比べるときは平均も役に立ちます。両方を持っておくのが実用的です。
Q3. 簿記などの資格を取れば平均年収は上がりますか?
資格手当が支給される会社であれば、月額に直接反映されます。ただし手当の水準は限定的です。むしろ資格によって応募できる求人の幅が広がることのほうが、年収への影響は大きくなります。金額の実態は経理の資格手当の相場|簿記2級・1級でいくら上がるか徹底解説で整理しました。
Q4. 転職すれば必ず平均年収を超えられますか?
そうとは限りません。同じ経理でも、職種や領域を変えると年収が下がることがあります。たとえば年収を優先して、経理から内部監査・内部統制の方向へ切り替える方もいます。
まとめ:平均だけでなく中央値と分布で自分の位置を測る
公的統計でみた経理の平均年収は、年収換算で約512万円でした。一方、所定内給与額の中央値は月291,100円であり、平均を月30,200円下回ります。この差を知らないまま平均だけを見ると、自分の位置を誤って判断しかねません。
まずは残業代を除いた月額を出し、分布のどこに立っているかを確認してください。そのうえで企業規模・担当範囲・役職の3点を点検すれば、次に何を変えるべきかが見えてきます。
📌 この記事の一次情報源
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」結果の概況(賃金の定義・企業規模区分・調査時期)
- 同調査 職種別統計表(e-Stat):職種第1表(きまって支給する現金給与額・所定内給与額・年間賞与その他特別給与額)、職種第17表(所定内給与額階級別労働者数及び分布特性値)
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」(給与所得者全体および正社員の平均給与)
- 総務省「日本標準職業分類」(会計事務従事者の分類項目・内容例示)
- 当社が2026年に実施した経理・管理部門候補者との面談記録(個人が特定されないよう内容を一般化して掲載)
