この記事でわかること
・資格手当の相場を公的統計の実数で確認する(月21,500円・支給企業53.0%)
・「簿記2級はいくら」という公的データが存在しない理由
・手当より効くのは基本給への反映と、応募できる求人の幅であること
・面談で実際に語られた、資格が年収を動かした事例
「簿記2級を取ったら、毎月いくら増えるんだろう」
勉強を始める前に、まず知りたくなる点だと思います。ところが検索してみると、金額の根拠がはっきりしない記事が並びます。そこで本記事では、まず公的統計で確認できる実数を示します。そのうえで、統計に載っていない部分を当社の面談記録で補います。
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
資格手当って、どのくらい期待していいものなんでしょうか。
LXキャリア
実は、経理の資格手当だけで動く金額は、年間にすると25万円前後なんです。むしろ大きいのは、資格によって応募できる求人が変わることのほうですよ。そこでこの記事では、公的統計の実数と面談の話から、その違いを整理しますね。
【実数】資格手当の相場は月21,500円・支給企業は53.0%
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」には、諸手当の種類別に支給企業割合と平均支給額が収録されています。資格手当に該当するのは「技能手当、技術(資格)手当など」の区分です。
| 企業規模 | 支給企業割合 | 1人平均支給額(月) | 年間換算 |
|---|---|---|---|
| 調査計 | 53.0% | 21,500円 | 258,000円 |
| 1,000人以上 | 53.1% | 20,900円 | 250,800円 |
| 300〜999人 | 57.5% | 19,100円 | 229,200円 |
| 100〜299人 | 56.9% | 20,500円 | 246,000円 |
| 30〜99人 | 51.3% | 25,000円 | 300,000円 |
出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第17表・第18表。金額は令和6年11月分。支給企業割合は「諸手当を支給した企業」を100とした割合で、全企業に対する割合は48.5%です。調査対象は常用労働者30人以上の民営企業。
この区分に含まれるもの、含まれないもの
調査における「技能手当、技術(資格)手当」の定義は、特定の技能や検査資格などを有する者に対して支給する賃金です。したがって、簿記だけを取り出した数値ではありません。危険物取扱者や電気工事士など、あらゆる職種の資格が同じ区分に入っています。
そのため、この21,500円という金額は経理職の簿記手当の平均ではありません。あくまで全産業の平均として、金額の桁を把握するための基準線として使ってください。
5年前より2,700円増えている
前回の令和2年調査(令和元年11月分)では、平均支給額が18,800円、支給企業割合が50.8%でした。つまり金額は2,700円、割合は2.2ポイント増えています。したがって、資格手当を設ける会社はわずかながら増加傾向にあります。
ただし他の手当と比べると、水準は決して高くありません。同じ調査では、役付手当などが43,500円、業績手当などが64,100円でした。つまり資格手当は、役職に就くことで得られる金額のおよそ半分にとどまります。役職による差は経理課長・部長の年収はいくら?管理職の相場を役職・規模別に解説で扱っています。
なぜ「簿記2級はいくら」という公的データが存在しないのか
ここは正直にお伝えします。資格手当は、法律で金額が定められている賃金ではありません。各社が就業規則や賃金規程のなかで、対象資格と金額を個別に決めています。
したがって、公的統計が資格ごとの金額を集計することはありません。資格別の相場としてよく見かける数字は、いずれも求人票や口コミを集計した推計値です。この点を踏まえたうえで、以下の目安を参照してください。
| 資格 | 当社が求人票で見る水準(月額) | 支給の形 |
|---|---|---|
| 日商簿記3級 | 支給対象外とする会社が多い | 合格祝い金のみの例あり |
| 日商簿記2級 | 2,000〜10,000円 | 月額手当が中心 |
| 日商簿記1級 | 5,000〜20,000円 | 月額手当または一時金 |
| 税理士試験の科目合格 | 科目ごとに加算する例が多い | 科目数に応じた月額 |
| USCPA・税理士・公認会計士 | 手当ではなく処遇そのものが変わる例が多い | 基本給・等級に反映 |
※ 当社が扱う求人票および候補者からのヒアリングにもとづく目安です。公的統計にもとづく数値ではなく、支給を保証するものでもありません。
この表から読み取れるのは、簿記2級の水準が公的統計の平均21,500円を下回りがちだということです。つまり資格手当だけを目当てに簿記2級を取ると、期待とのずれが生じかねません。資格そのものの選び方は経理の資格ロードマップ|簿記の次におすすめの資格と取得順で整理しています。
手当は「賞与の算定基礎にならない」性格を持つ
金額そのもの以上に重要なのが、手当という賃金の性格です。同じ調査は「諸手当」を次のように定義しています。基本給を補充するものとして支給され、支給条件に該当している場合のみ支給し、賞与等の算定基礎とならない等の性格を持つ賃金である、と。
したがって、資格手当が月20,000円ついたとしても、賞与や退職金の計算には反映されない可能性があります。一方、同じ20,000円が基本給に組み込まれた場合は、賞与の算定基礎にも入ります。年間の差は、賞与の月数分だけ広がる計算です。
とはいえ、手当でも基本給でも、同じ金額なら変わらないですよね。
LXキャリア
そこが落とし穴なんです。というのも、手当は賞与の計算に入らないことが多いからです。だから求人を比べるときは、手当として出るのか、基本給に入るのかまで確かめておきましょう。
つまり、金額だけでなく支給の形も見るんですね。
所定内賃金に占める諸手当は15.9%
参考までに、令和6年11月分の常用労働者1人平均の所定内賃金は341,800円でした。うち基本給が287,300円、諸手当が54,500円です。つまり所定内賃金の15.9%が諸手当にあたります。
企業規模別に見ると、30〜99人では諸手当の割合が18.4%と最も高くなります。反対に1,000人以上では14.3%です。したがって小規模な会社ほど、賃金に占める手当の比重が大きくなる傾向があります。この点は、賞与や退職金への反映を考えると見落とせません。
面談現場でみた、資格が年収を動かした実例
ここからは、当社が2026年に行った面談の記録を紹介します。いずれも個人が特定されない形に加工しています。手当の話ではなく、資格が処遇そのものを変えた事例です。
「英語×資格」でUSCPAを取った方
では、資格手当より、資格で年収そのものが変わることはありますか。
LXキャリア
ありますよ。たとえば面談でうかがった方は、英語と掛け合わせてUSCPAを取り、監査法人での実務を経て、事業会社で海外拠点の決算に関わる仕事へ移っていました。年収は、公的統計でみた経理職の平均を大きく上回る水準です。つまり手当ではなく、応募できるポジションそのものが変わったんです。
なるほど、資格が入口を変えたということですね。
ここで比較しておきます。公的統計でみた会計事務従事者の年収換算は約512万円でした。つまり資格手当で得られる年間25万円前後とは、比べものにならない差が生まれています。USCPAという選択についてはUSCPA取得後の経理転職|外資・Big4・事業会社への転職戦略で詳しく扱いました。
資格が応募のラインそのものになる
もうひとつ、資格の効き方がはっきり出た案件があります。ある専門性の高い決算ポジションで、企業側が理想としていたのはその分野の実務経験者でした。ところが該当する人がほとんどおらず、長期間にわたって採用できていませんでした。
その結果、実際の採否ラインは「日本の会計士資格があれば、業務にはすぐキャッチアップできるだろう」というところまで下がっていました。つまりこの案件では、資格が手当ではなく応募資格そのものとして機能していたことになります。
一方で、資格だけでは動かない
ただし、資格があれば自動的に年収が上がるわけではありません。前述のUSCPAの方も、取得後に監査法人で数年の実務を積んでいます。同じく、専門性の高い決算ポジションの案件でも、求められていたのは資格を土台にしたキャッチアップ力でした。
したがって、資格は入口を広げる道具として捉えるのが実態に近くなります。入口を通った後に評価されるのは、担当してきた業務の範囲です。
資格手当を確認するときの5つの質問
実際に転職先や現職で確認するときは、金額だけを聞いても足りません。次の5点を押さえてください。
| 確認すること | なぜ確認するのか |
|---|---|
| 対象資格の一覧はどこに定められているか | 賃金規程に列挙されていない資格は、原則として支給されない |
| 月額の手当か、合格時の一時金か | 一時金の場合、翌年以降の年収は変わらない |
| 賞与・退職金の算定基礎に入るか | 諸手当は算定基礎から外れる性格を持つため、年収への効き方が変わる |
| 基本給や等級への反映があるか | 基本給に組み込まれれば、賞与にも昇給にも波及する |
| 受験費用・教材費の補助があるか | 手当がなくても、取得までの費用を会社が負担する制度は珍しくない |
とりわけ3番目と4番目が重要です。同じ金額でも、手当として支給されるのか基本給に組み込まれるのかで、生涯で受け取る総額は変わります。オファー時にどう確認するかは経理転職の年収交渉を成功させる5ステップで解説しました。
資格手当がある会社・ない会社の傾向
前掲の統計から、いくつかの傾向が読み取れます。
- 支給企業割合が最も高いのは300〜999人(57.5%):中堅規模の会社で制度化が進んでいます
- 平均支給額が最も高いのは30〜99人(25,000円):小規模でも、支給する会社は相応の金額を出しています
- 1,000人以上は割合53.1%・金額20,900円:大企業だから手厚いとは限りません
つまり、資格手当の有無と会社の規模は連動していません。したがって、求人票に記載がない場合は面接で直接確認してください。求人票の読み取り方全般は経理求人の見方|失敗しないチェックポイント10選にまとめています。
なお、この調査の対象は常用労働者30人以上の民営企業です。そのため、それより小規模な会社の実態は含まれていません。
資格手当以外に、年収を構成する手当の実数
求人票の想定年収を読むときは、資格手当だけを見ても足りません。同じ調査には、他の手当の支給企業割合と平均支給額もそろっています。自分の年収がどう組み立てられているかを確認する材料として使ってください。
| 手当の種類 | 支給企業割合 | 1人平均支給額(月) |
|---|---|---|
| 通勤手当など(1か月換算) | 90.2% | 12,700円 |
| 役付手当など | 84.2% | 43,500円 |
| 家族手当、扶養手当、育児支援手当など | 62.3% | 17,600円 |
| 技能手当、技術(資格)手当など | 53.0% | 21,500円 |
| 住宅手当など | 45.7% | 18,700円 |
| 調整手当など | 32.6% | 27,100円 |
| 単身赴任手当、別居手当など | 13.2% | 49,300円 |
| 業績手当など | 13.7% | 64,100円 |
出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第17表・第18表(令和6年11月分)。支給企業割合は諸手当を支給した企業を100とした複数回答の値です。
金額が大きい手当と、多くの人に関わる手当
この一覧を見ると、金額が大きいのは業績手当(64,100円)と単身赴任手当(49,300円)です。ただし支給企業割合はいずれも低く、多くの人には関係しません。一方、ほとんどの人に関わるのは通勤手当と役付手当になります。
したがって、資格手当を含む複数の手当を積み上げても、役職に就くことで得られる金額に届かない場合があります。年収を大きく動かしたいのであれば、手当より先に役職と担当範囲を検討するほうが近道です。現在地の確認には経理の平均年収は?中央値・企業規模別の実数データが使えます。
それなら、資格を含めて自分の年収の目安を知りたいです。
LXキャリア
たとえば経理の年収診断なら、担当範囲と保有資格から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、次に取る資格をどの求人に向けて選ぶかを一緒に考えましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
経理の資格手当に関するよくある質問
Q1. 簿記2級の資格手当だけで生活は変わりますか?
大きくは変わりません。当社が見る水準では月2,000〜10,000円が中心で、年間にすると2万4,000円から12万円程度です。公的統計の平均21,500円と比べても低い水準にあります。ただし簿記2級は、応募できる求人の幅を広げる効果のほうが大きい資格です。
Q2. 資格手当は転職しても引き継げますか?
引き継げません。手当は各社の賃金規程にもとづくため、転職先に同じ制度がなければ支給されないからです。そのため、現職で手当がついている場合は、転職時の年収比較にあたって手当込みの金額で提示することをおすすめします。
Q3. 資格手当がない会社は避けるべきですか?
その必要はありません。統計では、諸手当を支給した企業のうち約47%が資格手当を設けていません。むしろ手当を設けず、基本給や等級で評価する会社もあります。簿記2級そのものの市場での評価は簿記2級は転職でどう評価されるかで整理しました。前述のとおり、基本給に反映されるほうが賞与にも波及するため、有利になる場合があります。
Q4. どの資格を取れば年収への効果が大きいですか?
手当としての金額よりも、応募できるポジションが変わる資格を選ぶほうが効果的です。面談の事例でも、USCPAや公認会計士は手当ではなく処遇そのものを動かしていました。目的別の選び方は経理におすすめの資格ランキング【目的別】簿記からその先までを参照してください。
まとめ:手当の金額より、どこに反映されるかを見る
公的統計でみた資格手当の相場は月21,500円、年間で258,000円でした。支給している企業は、諸手当を支給した企業のうち53.0%です。5年前より金額も割合もわずかに増えています。
ただし手当は、賞与等の算定基礎とならない性格を持つ賃金です。したがって、同じ金額でも基本給に組み込まれるかどうかで意味が変わります。そして面談の記録が示していたのは、資格の本当の効き目が手当ではなく、応募できるポジションの側に表れるということでした。
まずは自社の賃金規程で対象資格と支給の形を確認してください。そのうえで、次に取る資格を「手当がいくらか」ではなく「どの求人に応募できるようになるか」で選ぶことをおすすめします。
📌 この記事の一次情報源
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第16表(賃金の種類別1人平均所定内賃金及び構成比)、第17表(諸手当の種類別支給企業割合)、第18表(諸手当の種類別1人平均支給額)。いずれも令和6年11月分
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別統計表(会計事務従事者の賃金・年間賞与)
- 日本商工会議所「簿記検定試験」(各級の到達水準・出題範囲)
- 当社が扱う求人票および候補者ヒアリングにもとづく資格別の支給水準(公的統計にもとづく数値ではありません)
- 当社が2026年に実施した経理・管理部門候補者との面談記録(個人が特定されないよう内容を一般化)
