✅ この記事でわかること
- 転職で年収が「上がる人」「下がる人」の実数と、上がり方の傾向
- 社内SE年収交渉を成功させる5つの具体的なコツ
- 年収交渉を切り出すベストなタイミングと言い回し
- 基本給だけを見ると損をする理由と、諸手当の実数
「仕事量は毎年増えているのに、年収は3年間ほとんど変わっていません」
社内SEとして働くうちに、「仕事量に対して給料が見合わない」と感じる人は多いです。じつは、社内SE年収交渉は正しい準備をすれば十分に通ります。しかし多くの人は交渉のやり方を知らず、相場より低いまま働き続けています。
この記事は、20代・30代の社内SE・情シス担当者に向けて書いています。そのうえで、公的統計で見た上がり方の実態から、成功させる5つのコツ、そして切り出し方までを専門家の視点で整理しました。転職時と在籍中の両方のケースを扱います。
社内SE年収交渉が重要な理由と、上がり方の実態

まず、交渉に入る前に前提を押さえましょう。というのも、相場を知らないまま交渉すると、根拠のない要求になり通らないからです。そこで、ここでは「そもそも転職で年収は上がるのか」から確認します。
なぜ交渉しないと年収が上がりにくいのか
社内SEは売上に直結しにくい職種です。そのため、成果が数字で見えづらく、評価が保守的になりがちです。一方で、こちらから働きかけないと会社は据え置きを選びます。だからこそ、社内SE年収交渉は自分から動く必要があります。
さらに構造的な事情もあります。情シスの成果はコスト削減や障害の未然防止という形で表れます。ところが、これらは「起きなかったこと」なので、社内では見えにくいのです。したがって成果を翻訳して伝える作業が、そのまま交渉の準備になります。
▶ あわせて読みたい:社内SEの年収は本当に上がる?業界・規模別データ徹底解説
【実数】転職で年収が上がる人は4割、下がる人は3割
ここで、厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」の実数を見ておきます。というのも、この調査が、転職入職者について前職と比べた賃金の変動を集計しているからです。
| 年齢階級 | 増加 | うち1割以上の増加 | 変わらない | 減少 |
|---|---|---|---|---|
| 20〜24歳 | 50.5% | 38.5% | 31.5% | 16.8% |
| 25〜29歳 | 46.3% | 37.9% | 23.1% | 29.2% |
| 30〜34歳 | 46.1% | 36.0% | 29.1% | 24.2% |
| 35〜39歳 | 45.5% | 35.3% | 28.0% | 24.3% |
| 40〜44歳 | 45.9% | 33.2% | 23.7% | 29.0% |
| 全年齢計 | 40.5% | 29.4% | 28.4% | 29.4% |
この表から読み取るべき3つのこと
第一に、転職すれば必ず年収が上がるわけではありません。というのも、全年齢計で増加は40.5%ですが、減少も29.4%あるからです。つまり約3人に1人は前職より下がっています。オファーを受けた時点で交渉しなければ、この3割に入る可能性があります。
第二に、上がるときは大きく上がります。というのも、増加40.5%のうち1割以上の増加が29.4%を占めるからです。逆に1割未満の増加は11.2%しかありません。したがって「少しだけ上げてください」という交渉は、市場の動き方と合っていません。上げ幅の根拠を用意して、まとまった額を提示するほうが実態に沿います。
第三に、20代後半から30代前半が最も動きやすい時期です。実際、25〜29歳は1割以上の増加が37.9%、30〜34歳は36.0%で、40代前半の33.2%を上回ります。一方で、この年代は減少の割合も低くありません。だから交渉の巧拙が結果を分けます。
なお、この調査は職種別ではなく年齢階級別の集計です。日本標準職業分類に「社内SE」「情シス」という区分がないため、職種単位の賃金変動は公表されていません。そのため年代の傾向として読んでください。
社内SE年収交渉を成功させる5つのコツ

ここからが本題です。社内SE年収交渉を成功させる5つのコツを、実務の順番に沿って解説します。どれも準備が9割です。
コツ1:公的統計を客観的な根拠にする
感情ではなく、データで語りましょう。すなわち、使うべきは検証できる出所のある数値です。賃金構造基本統計調査では、システムコンサルタント・設計者の所定内給与が平均50.7万円、中位数44.6万円と公表されています。したがって「同職種の中位はこの水準」と示せます。
さらに前掲の雇用動向調査を添えると、上げ幅の妥当性まで説明できます。というのも、1割以上の増加が29.4%という数字は、まとまった上げ幅が例外ではないことの裏づけになるからです。
コツ2:実績を数値に置き換えて示す
「頑張った」では通りません。たとえば「SaaS統合でライセンス費を年200万円削減」「問い合わせ対応を30%効率化」と数値化します。情シスの成果は、コスト削減と業務効率で表すと伝わりやすいです。
ここでひとつ工夫を加えてください。すなわち、削減額そのものより、削減を継続させる仕組みを作ったかどうかのほうが評価されます。一度きりの棚卸しは単発の成果ですが、基準を定めて自動で候補が上がる仕組みは資産だからです。
コツ3:交渉のタイミングを見極める
タイミングは結果を大きく左右します。たとえば評価面談の直前や、大きなプロジェクトを完遂した直後が狙い目です。また、会社の業績が良い時期を選ぶと、原資の面でも話が進みやすくなります。
逆に避けたい時期もあります。たとえば期末の予算が確定した直後や、直前に大きな障害を出した時期です。この場合は、次の評価サイクルまで待ち、そのあいだに材料を積み上げるほうが確実です。
▶ あわせて読みたい:30代社内SEの転職|求められるスキルと年収UP戦略
コツ4:社外の物差しで市場価値を可視化する
社内の評価だけを見ていると、自分の水準がわかりません。だからこそ、そのため、求人票のレンジや公的統計といった社外の物差しを持つことが有効です。仮に他社からオファーがあれば、それ自体が強い交渉材料になります。
ただし、オファーを交渉の道具としてだけ使うのは避けてください。というのも、条件次第では本当に移る覚悟がないと、話が進んだときに動けなくなるからです。使うなら、受けてもよいと思える会社のオファーに限ります。
コツ5:切り出し方を事前に言語化する
最後に、話の入り口を準備します。というのも、いきなり金額を出すと角が立つからです。まず貢献と今後の役割を語り、その延長で希望額を伝える流れが自然です。次の章で具体的な言い回しを紹介します。
【実数】基本給だけを見ると、15.9%を見落とす
交渉に入る前に、もうひとつ確認しておきたい論点があります。じつは、年収は基本給だけで決まっていないという点です。
厚生労働省「令和7年 就労条件総合調査」によれば、常用労働者1人平均の所定内賃金は34万1,800円で、そのうち諸手当が5万4,500円を占めます。つまり所定内賃金の15.9%が諸手当にあたります。
| 企業規模 | 所定内賃金 | 基本給 | 諸手当 | 諸手当の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 1,000人以上 | 37.6万円 | 32.2万円 | 5.4万円 | 14.3% |
| 300〜999人 | 33.7万円 | 28.3万円 | 5.4万円 | 15.9% |
| 100〜299人 | 32.4万円 | 26.9万円 | 5.5万円 | 16.9% |
| 30〜99人 | 30.7万円 | 25.1万円 | 5.7万円 | 18.4% |
交渉に使える手当と、使いにくい手当がある
同じ調査は、諸手当の種類別に支給企業割合も公表しています。役付手当などは84.2%の企業が支給し、技能手当・技術(資格)手当などは53.0%です。一方で業績手当などを支給している企業は13.7%にとどまります。
ここから導ける交渉戦略は次のとおりです。まず、資格手当は約半数の企業に制度があるため、取得によって上がる余地があります。次に、役付手当は8割超の企業にあるため、役割の変更とセットで交渉できます。しかし業績手当は制度自体が7社に1社しかないため、成果連動での上積みは期待しにくいのです。
したがって交渉の順序はこうなります。「成果を出したから業績で報いてほしい」ではなく、「担う役割が変わったから等級と役付手当を見直してほしい」と組み立ててください。制度がある枠の中で話すほうが、はるかに通りやすくなります。
年収交渉のタイミング別・切り出し方の具体例

実際の言い回しは、場面によって変えます。そこで、ここでは転職時と在籍中の2パターンに分けて、社内SE年収交渉の切り出し方を示します。
転職時(オファー面談)での切り出し方
オファー段階は、交渉の最大のチャンスです。そのため、まず貢献意欲を示し、そのうえで根拠を添えて希望額を伝えます。
基本形
「御社で貢献したい気持ちは強く持っています。一方で、現職の年収と担当してきた範囲を踏まえますと、◯◯万円をご検討いただけないでしょうか」
統計を根拠にする形
「同職種の所定内給与は、公的統計では中位数が44万円台と示されています。私はここに加えて、ライセンス費の削減とヘルプデスクの一次解決率の改善を担ってきました。そのため◯◯万円でご相談させていただけますと幸いです」
金額以外で調整する形
「ご提示の金額で問題ございません。そのうえで、入社半年後に評価の機会をいただくことは可能でしょうか。担当範囲が広がった際に、改めてご相談させていただきたく存じます」
3つ目の形は、原資が固まっていて金額を動かせない場合にとくに有効です。というのも、時期を約束してもらえれば、実質的に交渉を先送りできるからです。
在籍中(評価面談)での切り出し方
在籍中は、まず実績報告から入ります。そのうえで、感謝と前向きさを添えると印象が良くなります。
基本形
「今期はコスト削減と運用改善で成果を出せました。役割も広がっていますので、処遇の見直しをご相談したいです」
役割の変化を軸にする形
「昨年度まではヘルプデスクと資産管理が中心でしたが、今年度はSaaSの選定とベンダー折衝まで担当しています。等級の見直しについて、ご意見をうかがえますでしょうか」
後者のほうが通りやすい理由は、前章のとおりです。つまり業績連動の制度は7社に1社しかない一方、役職・等級に紐づく手当は8割超の企業にあるからです。成果ではなく役割を主語にしてください。
情シス・社内SEが交渉材料にできるスキル・資格
交渉を通すには、日頃の市場価値づくりが効きます。とくに、クラウド系の実務経験は評価が高いです。AWSやAzureの構築・運用経験は、そのまま提示年収を押し上げます。
また、資格も客観的な裏付けになります。前掲のとおり技能手当・技術(資格)手当の制度がある企業は53.0%あるため、資格が直接手当につながる可能性があります。基本情報技術者やITILは基礎の証明に、AWS認定や情報処理安全確保支援士は専門性の証明に使えます。
さらにベンダー調整やIT資産管理の経験は、情シスならではの強みとして交渉で語れます。というのも、契約・コスト・権限を横断で見た経験は、社外でも通用する希少性だからです。
▶ あわせて読みたい:クラウドエンジニア転職|AWS/Azure経験者の市場価値と年収相場
面談現場から:「AIの事情があるので、交渉もしづらい」
ここからは、当社が2026年に実際にお話をうかがったエンジニアの方のケースを紹介します。いまの年収交渉が難しくなっている理由が、率直に語られていました。
20代後半・年収800万円台という水準
お話をうかがったのは、20代後半で年収800万円台にいる方です。伸びしろのあるポジションにいながら、本人の言葉は慎重でした。
「年収も上げたいものの、AIの事象があるので、なかなか交渉もしづらくて」
興味深いのは、同じ方が「リードを任せてもらえているのは、AIがあったおかげ」とも語っていたことです。つまりAIには、ポジションを前倒しする力と、賃上げを言い出しにくくする力の両方があります。生産性が上がった分をどう分けるかが、まだ社会的に定まっていないからです。
当社からお伝えした相場の見立て
この方には、市場の相場観をお伝えしました。まず、20代後半から30歳で年収1,000万円に届いている層は、メガベンチャーのリーダー級か、堅い金融機関のリーダー級が中心です。したがって20代後半で800万円台は、同年代として悪くない水準といえます。
そのうえで、30歳の時点で1,200万円台を狙える求人自体は存在するとお伝えしました。ただし、その多くは規模の大きい企業か、上流工程を担うポジションです。つまり年収の上限は、交渉の巧拙より前に、どのレイヤーで働いているかでおおむね決まります。
ここから読み取れること
AIによる生産性向上を理由に交渉をためらう必要はありません。しかし論点はずらしてください。「AIを使って効率化しました」では、成果がツールの側に帰属してしまいます。
代わりに、「AIを使うと決めた」「どの業務に適用し、どの業務には適用しないと判断した」という形で語ってください。判断は人に帰属します。前掲のとおり、役割の変化を主語にする交渉が通りやすいのは、まさにこの理由です。
そして、交渉で届く範囲には限界があることも受け入れてください。現在のレイヤーで上限に近いなら、次の手は交渉ではなく異動か転職です。判断の材料は社内SEのキャリアパスで整理しています。
社内SE年収交渉に関するよくある質問
最後に、社内SE年収交渉についてよく寄せられる質問をまとめます。
Q. 年収交渉をすると、内定が取り消されませんか。
根拠を示した交渉で取り消されることは、まずありません。というのも、企業側も想定内の手続きとして扱っているからです。実際、オファー面談は条件を擦り合わせる場として設定されています。
ただし、相場から大きく外れた金額を根拠なく提示すると、期待値のずれを疑われます。そのため希望額は、公的統計や求人票のレンジの範囲内に収めてください。
Q. どれくらいの上げ幅を希望するのが現実的ですか。
前掲の雇用動向調査では、増加した人のうち1割以上の増加が29.4%を占めます。したがって1割前後は、市場全体で見ても例外的な幅ではありません。
一方で、2割を超える上げ幅は職務内容が明確に変わる場合に限られます。だからレイヤーが変わらない転職では、1割前後を目安に組み立てるのが現実的です。
Q. 在籍中の交渉が通らなかったら、転職すべきですか。
すぐに結論を出す必要はありません。まず、通らなかった理由を確認してください。というのも、原資がないのか、評価が足りないのか、制度上できないのかで対応が変わるからです。
制度上の上限が理由なら、社内での解決は難しくなります。その場合は転職を検討する段階です。ただし前掲のとおり、転職者の約3割は年収が下がっています。したがって準備なしに動くのは避けてください。
Q. 現職の年収を正直に伝えるべきですか。
伝えて構いません。というのも、源泉徴収票の提出を求められることが多く、実態と異なる申告は後で問題になるからです。
ただし大切なのは、現年収を希望額の根拠にしないことです。というのも、現職が相場より低い場合、そこを起点にすると低い提示に引きずられるからです。だから根拠は担ってきた役割と市場の水準に置いてください。
Q. 資格を取れば、年収は上がりますか。
制度があれば上がります。前掲のとおり、技能手当・技術(資格)手当を支給する企業は53.0%あります。つまり約半数の会社には枠があります。
ただし金額は限定的なことが多く、資格だけで大きく変わるわけではありません。したがって、資格は役割変更を申し出るときの裏づけとして使うのが効果的です。
Q. 一人情シスでも交渉できますか。
できます。むしろ材料はそろっています。なぜなら、一人で担っている範囲を書き出せば、本来は複数人分の役割であることが示せるからです。
そのうえで、業務の一覧ではなく「これを止めたらどうなるか」という観点で整理してください。すると、代替の難しさが伝わり、処遇の議論に乗りやすくなります。
まとめ:社内SE年収交渉は「役割」を主語にすると通る
転職で年収が増える人は40.5%、減る人は29.4%です。しかも増加した人の多くは1割以上まとめて上がっています。だから小刻みな要求ではなく、上げ幅の根拠を用意して臨んでください。そして交渉の主語は成果ではなく役割です。業績連動の手当がある企業は13.7%にとどまる一方、役付手当は84.2%、資格手当は53.0%の企業にあります。制度がある枠の中で話を組み立てれば、社内SE年収交渉は十分に通ります。まずは今期担った役割の変化を、1枚に書き出すところから始めましょう。
✏️ 執筆・監修者
LXキャリア 転職支援チーム
- CA/RA 経験豊富な現役人材紹介のプロ。年間数十件のマッチングを成立
- 人材ビジネスを0→1で立ち上げ、事業としての人材支援の仕組みをゼロから構築
- 情シス・IT・コーポレートIT領域の転職支援実績多数
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