情シス

SaaS管理ツール比較の選び方|情シスのIT資産・アカウント管理を効率化する5つの軸

「SaaS管理ツールの比較を任されたが、資料を読んでも製品ごとの違いがよく分からない」
情シス・社内SEの方から、そんな相談をよく受けます。

この記事でわかること

  • SaaS管理ツールとIT資産管理ツールの違いと、それぞれが担う範囲
  • 自社に合うSaaS管理ツールを絞り込むための比較軸5つ
  • 導入前に済ませておきたい棚卸し5ステップ
  • SaaS管理ツールの導入経験が転職市場でどう評価されるか

SaaS管理ツールの選定を任されたものの、比較サイトを開いても製品ごとの違いが読み取れない。情シス・社内SEの方から、そんな相談をよく受けます。この記事では機能を羅列せず、「自社に必要な要件をどう絞り込むか」という順序で整理します。

さらに、SaaS管理ツールの導入経験がキャリアにどう効くのかも扱います。IT資産・アカウント管理の刷新は、運用担当からIT企画へ動く際の分かりやすい実績になるためです。

SaaS管理ツールとは?IT資産管理ツールとの違い

SaaS管理ツールで契約とアカウントを一元管理する情シス

そもそもSaaS管理ツールとは、社内で使うクラウドサービスを一元的に把握する仕組みです。つまり、契約・アカウント・利用状況をまとめて扱います。従来のIT資産管理は「社内にある機器とソフト」を数えていました。一方、こちらは「社外にある契約とアカウント」を数えます。

SaaS管理ツールが担う4つの領域

製品によって濃淡はありますが、機能はおおむね4領域に分かれます。第一に、SaaSの契約情報とライセンス数の管理です。次に、従業員アカウントの棚卸しがあります。さらに、利用状況にもとづくコスト最適化も含まれます。そして第四が、未承認利用(シャドーIT)の検知です。

そのため、比較の前に「自社が今いちばん困っている領域はどれか」を決める作業が先に来ます。4領域すべてに強い製品はほとんど存在しないためです。

IT資産管理ツール・IdPとの違い

IT資産管理ツールは、PCやスマートフォンの台帳管理が主役です。加えて、そこに入るソフトウェアも対象になります。一方でSaaS管理ツールは、端末を持たないSaaS契約そのものを対象にします。

また、IdP(IDaaS)との違いもよく混同されます。IdPは認証とシングルサインオンを担う仕組みで、「誰がログインできるか」を制御します。対してSaaS管理ツールは「誰がどれだけ使っているか」「いくら払っているか」を可視化する役割です。近年は両者を兼ねる製品も増えましたが、出発点が違う点は押さえておきたいところです。

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情シスがSaaS管理ツールを必要とする3つの背景

ところで、ツール導入の必要性は会社の規模では決まりません。むしろ「SaaSの増え方」で決まります。ここでは現場で挙がりやすい3つの背景を整理します。

クラウド利用率8割が生んだ「見えない契約」

総務省の調査では、クラウドサービスを利用する企業の割合は2024年に80.6%へ達しました(令和7年版 情報通信白書)。利用が当たり前になった結果、各部署が個別に契約するケースが増えています。

その結果、情シスが把握していないSaaSが社内に点在します。請求書を見て初めて存在を知る、という状況も珍しくありません。

シャドーITと退職者アカウントの放置リスク

把握できていない契約は、セキュリティ面でも穴になります。とくに退職者のアカウントが残ったままだと、社外から社内データへアクセスできる状態が続きます。

また、部署が独自に導入したツールに顧客情報が入っているケースもあります。監査やISMS更新の場面で、この点を指摘されて慌てる情シスは少なくありません。

棚卸し工数がひとり情シスを圧迫する

実際、SaaSが30を超えるとExcel台帳での手動棚卸しは回らなくなります。管理画面を1つずつ開いてアカウント一覧をダウンロードする作業だけで、数日が消えるためです。

さらに、入退社のたびに同じ作業が発生します。だからこそ、ひとり情シスや少人数体制ほどツール化の投資対効果が高くなります。

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SaaS管理ツールの比較軸5つ【選び方の順序】

SaaS管理ツールの比較軸を検討する情シス担当者

そのため、製品名から入ると比較は必ず迷走します。次の5軸に自社の要件を当てはめてから、候補を3つ程度に絞る進め方をおすすめします。

比較軸1:SaaS連携数とノーコード連携の有無

まず、標準で何本のSaaSとAPI連携できるかを見ます。これが、そのまま自動化できる範囲を決めます。ただし連携数の総数より、自社が使う主要SaaSが対応済みかどうかを見るほうが実用的です。

なお、近年は画面操作だけで連携を作れるノーコード機能を持つ製品も登場しました。国産SaaSや業界特化型を多く使う企業では、この機能の有無が効いてきます。

比較軸2:アカウント棚卸しと入退社ワークフロー

次に、入社時のアカウント発行と退職時の削除をどこまで自動化できるかを確認します。人事システムやIdPと連携し、入退社情報を起点に処理できる製品なら工数削減の効果が大きくなります。

比較軸3:コスト可視化と未利用ライセンス検知

さらに、「90日間ログインがないアカウント」を洗い出せるかどうかも重要です。ここが費用削減の成果に直結します。導入の稟議を通すうえでも、この機能は説得材料になります。

比較軸4:シャドーIT検知の方式

検知方式は主に3つあります。まず、ブラウザ拡張機能で利用を捉える方式があります。次に、SSOやIdPのログを解析する方式です。そして、経費精算・請求データから契約を推定する方式もあります。

たとえば、従業員のブラウザに拡張機能を配布できない環境なら、1つ目の方式は選べません。運用ルールとの相性を先に確認してください。

検知方式 仕組み 向いている環境
ブラウザ拡張方式 拡張機能でアクセス先SaaSを検知 会社支給端末に拡張機能を配布できる企業
SSO/IdPログ解析方式 認証ログから利用SaaSを推定 SSOを広く導入済みの企業
経費・請求データ推定方式 支払いデータから契約先を推定 SSO未整備・拡張機能を配布できない企業

比較軸5:デバイス・IT資産管理まで含むか

そして、SaaSとPC・スマートフォンを一元管理したい場合もあります。その場合は、IT資産管理機能を内包する製品を選びます。一方で既存のIT資産管理ツールを使い続けるなら、その連携可否を確認する形になります。

比較軸5つの早見表

5つの軸を一覧にすると、自社が優先すべき観点を絞り込みやすくなります。

比較軸 確認するポイント 特に効いてくる企業像
①連携数・ノーコード連携 主要SaaSがAPI標準対応済みか 国産SaaS・業界特化ツールを多用する企業
②棚卸し・入退社ワークフロー 人事システムやIdP起点で自動化できるか 入退社が多い成長期の企業
③コスト可視化・未利用検知 90日ログインなしのアカウントを洗い出せるか SaaS費用の増加が経理で問題視されている企業
④シャドーIT検知の方式 拡張機能/ログ解析/請求データ推定のどれか 端末管理の自由度が低い企業ほど方式の制約が大きい
⑤デバイス・IT資産管理の統合 PC・スマホ管理まで一元化するか 既存のIT資産管理ツールを持たない企業

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SaaS管理ツール導入前にやるべき棚卸し5ステップ

ただし、ツールを入れれば自動で片づくという期待は禁物です。導入前の整理が甘いと、可視化された情報を誰も判断できない状態に陥ります。

ステップ1〜3:契約・アカウント・費用の現状把握

まず、経理から直近12か月の請求データを取り寄せ、SaaSらしき支払いをすべて書き出します。次に、判明した各SaaSの管理者と契約更新月を特定します。そして3つ目に、アカウント数と実際の利用者数の差分を確認します。

この3ステップだけでも、多くの企業で未利用ライセンスが見つかります。ツール選定の前に削減効果の目安が立つため、稟議も通しやすくなります。

ステップ4〜5:ルール設計とスモールスタート

4つ目は、新規SaaS導入時の申請ルールを決める作業です。誰が承認し、どこに記録するかを明文化します。5つ目に、対象を主要10サービスへ絞ってツールを試験導入します。

なお、いきなり全社・全SaaSへ広げると初期設定だけで数か月かかります。小さく始めて成果を示すほうが、社内の協力を得やすくなります。

SaaS管理ツールの経験は転職市場でどう評価されるか

SaaS管理ツール導入経験を武器に転職面接に臨む情シス

ここからはキャリアの話です。当社が支援する情シス・社内SEの転職では、SaaS管理の刷新経験を持つ方の評価が近年高まっています。

「運用担当」から「IT企画」への転換点になる

というのも、SaaS管理ツールの導入は要件定義から全社展開までを一人で経験できる案件だからです。つまり、ヘルプデスク中心の職務経歴に「企画・推進」の実績を足せます。

そして採用側から見ると、この経験は「社内調整ができる情シス」の証明になります。ベンダー選定と部門調整をやり切った事実が、そのまま評価対象になるためです。

職務経歴書では数字で書く

ただし、職務経歴書に「SaaS管理ツールを導入」とだけ書くのはもったいない書き方です。管理対象SaaS数、削減できた年間ライセンス費用、棚卸し工数の削減時間を必ず添えてください。

たとえば「対象42サービス・年間約280万円のコスト削減」と書くとします。すると、成果の大きさが一目で伝わります。数字が残っていない場合でも、概算で構いません。

想定される年収レンジ

SaaS管理の実務に加えて企画・推進の経験がある方もいます。その場合、事業会社の情シスで年収500万〜700万円台の求人が中心になります。さらに、IT統制や監査対応まで担える場合もあります。その場合はコーポレートIT責任者候補として、700万円以上のポジションも現実的です。

担当領域 想定年収レンジ 求められる経験
SaaS管理・IT資産管理の実務+企画推進 500万〜700万円台 要件定義・製品選定・全社展開の一連を主導した経験
IT統制・監査対応を含むコーポレートIT責任者候補 700万円以上 セキュリティガバナンス・予算管理までの担当実績

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面談現場から:台帳は「AIが学習していないデータ」である

ここでは統計に表れない部分を、実際の面談からお伝えします。以下は当社が2026年に実施した面談の内容で、匿名化のうえ掲載しています。

20代後半でチームのリードを務めている方です。社内にしかない情報を集めて整える取り組みを進めているところでした。転職活動中ではなく、情報交換としてお話をうかがいました。

「AIが学習していない社内のデータをどう集めるか、そこに舵を切っています」

ここから読み取れること

つまり、この視点はSaaS管理ツールの価値をよく言い当てています。契約情報、アカウントの利用実態、部門ごとの費用配分は、その会社にしか存在しないデータだからです。外部の学習済みモデルが持っていない情報だといえます。

だからこそ、棚卸しは単なる事務作業ではありません。整理された台帳は、コスト最適化の判断材料になります。さらに、退職者アカウントの検知やシャドーITの把握にも使えます。つまり、意思決定の土台をつくる仕事です。

ただし、この方は同時に「前提が崩れれば戦略は破綻する」とも話していました。社内データの優位性は、外部サービスが同じ領域を取り込めば失われるためです。したがって、台帳を持つこと自体を目的にせず、そこから何を判断したかまで残しておくことが、キャリアの資産になります。

SaaS管理ツールに関するよくある質問

従業員50名規模でも導入する価値はありますか

SaaSの本数次第です。20本を超えていれば、規模が小さくても棚卸し工数の削減効果が出ます。逆に10本未満なら、スプレッドシート運用と申請ルールの整備で足りる場合もあります。

IdPを入れていれば不要でしょうか

そのため目的が異なり、代替にはなりません。IdPは認証を集約しますが、SSO非対応のSaaSやコスト情報は範囲外です。ただしIdPのログを取り込める製品を選べば、両者を組み合わせて運用できます。

導入までの期間はどれくらいですか

一方、主要10サービスに絞ったスモールスタートなら1〜2か月が目安です。一方で全社展開と入退社ワークフローの自動化まで含めると、半年程度を見込む企業が多くなります。

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比較検討中に製品のデモを見る際、何を確認すればよいですか

まず自社で契約数の多いSaaS上位5つとの連携を実際に動かしてもらい、設定にかかる手間を確認します。カタログ上の連携数より、自社の主要SaaSでの実動作のほうが判断材料になります。

また、検知から削除完了までの操作回数も見ておきましょう。そうすれば、運用が始まってからの負荷を事前に把握できます。

SaaS管理ツール選定でよくある失敗と回避策

ただし、比較軸を押さえていても進め方を誤ると導入自体が頓挫します。ここでは相談の中でよく耳にする3つの失敗パターンを紹介します。

失敗①:現場の合意を得ずに全社導入を決めてしまう

情シス主導で製品を決め、いきなり全部署へ展開すると、現場から「勝手に決められた」という反発が出ます。とくにアカウント削除ルールは、現場の業務フローを止めかねないため反発が大きくなりがちです。

そのため、まず利用部署の多い3〜5部門にヒアリングしてください。そのうえで削除ルールの例外条件を決めておくと、展開がスムーズになります。

失敗②:比較軸を決めずに資料請求から始めてしまう

たとえば製品資料を先に集めるとします。すると、機能の多さに引っ張られて不要な機能まで評価対象に入りがちです。結果として比較検討そのものが長期化します。

そこで、5つの比較軸を先に自社なりの優先順位で並べてください。その順に資料を絞り込むほうが、意思決定までの期間を短くできます。

失敗③:導入後の運用担当を明確にしないまま契約する

ツールを入れただけで満足してしまう例も少なくありません。その結果、担当を決めないまま運用が止まります。可視化された情報は、見る人がいなければ意味を持ちません。

そこで契約前の時点で、月次レビューの頻度と担当者を決めておきましょう。エスカレーション先まで決めておけば、導入後の形骸化を防げます。

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まとめ:SaaS管理ツールは「選ぶ前の整理」で決まる

まとめると、SaaS管理ツールの比較は製品一覧を眺めるところから始めると迷います。契約・アカウント・費用の現状を把握し、5つの比較軸で要件を絞ってから候補を並べてください。

そして、その取り組みは社内の効率化にとどまりません。導入と全社展開をやり切った経験は、IT企画・コーポレートIT領域へ進むうえで通用する実績になります。

📌 この記事の一次情報源

  1. 総務省「令和7年版 情報通信白書」クラウドサービス(企業のクラウドサービス利用率80.6%/令和6年通信利用動向調査より)— https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111210.html
  2. 当社が支援した情シス・社内SE・コーポレートIT職の転職者へのヒアリング(2025年〜2026年実施)
  3. 当社CA/RAが情シス・コーポレートIT領域の転職支援で蓄積した求人要件および提示年収の実務知見

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