経理から人事に移りたいと考えたとき、経理の経験がどこまで生きるのか気になる方は多いはずです。そこでこの記事では、経理から人事へ移るときに評価される経験と、現実的なルートを求人データで解説します。
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
経理を5年ほど続けてきましたが、人と関わる人事の仕事にも興味が出てきました。経理の経験は役に立つのでしょうか?
LXキャリア
その相談は、面談でもよく伺います。実は、人事の中でも分野によって、経理の経験が生きる度合いがかなり違うんです。そこで、まず求人のデータで違いを整理してから、移り方を考えましょう。
では、違いの整理からお願いします。
なお、数字は当社の求人データの集計をもとにしています。
経理から人事へ移る前に押さえたい違い
まず、経理と人事の求人の数と、提示年収の中央値を比べてみましょう。また、人事は分野によって差が大きいので、主な分野に分けました。
| 職種・分野 | 求人数 | 提示年収の中央値 |
|---|---|---|
| 経理・財務 | 3,116件 | 600万円 |
| 人事(全体) | 3,573件 | 575万円 |
| 人事のうち制度企画・組織開発 | 369件 | 725万円 |
| 人事のうち採用 | 1,993件 | 550万円 |
| 人事のうち労務・給与 | 604件 | 510万円 |
出典:当社が利用するエージェント向け求人データベースのうち、中途・正社員かつ提示年収のある求人(2026年9月20日時点)。また、人事は主な職種が人事の求人です。提示年収は下限と上限の中間値の中央値で、募集条件であり支給実績ではありません。
人事の求人で経理の経験を条件にするものは2.8%
その結果、人事の求人で応募条件に経理や会計の経験を挙げるものは、全体の2.8%でした。しかも、採用の分野では0.8%にとどまります。
つまり、人事の多くの仕事では、経理の経験そのものが条件として見られることは少ないといえます。そのため、経理から人事に移るときは、どの分野を入口にするかが大切です。
ちなみに、人事の求人の55.8%は採用の分野でした。とはいえ、採用は営業に近い仕事で、経理の経験とは離れています。だからこそ、求人の数が多い分野と、経理の経験が生きる分野は別だと考えておきましょう。
労務・給与の分野では経理の経験が生きる
一方で、労務・給与の分野では、応募条件に経理や会計の語がある求人が5.6%でした。さらに、仕事内容に経理の業務も書いた求人は13.6%あります。
たとえば、給与の支払いや社会保険料の計算は、経理の仕訳や決算と直接つながっています。だからこそ、経理の経験を持つ人は、労務・給与の分野で強みを出しやすいのです。
人事の求人で、経理の経験が条件になることは少ないんですね。
LXキャリア
はい、人事全体では2.8%でした。ただ、労務・給与の分野では、仕事内容に経理の業務も書いた求人が13.6%あります。つまり、給与や社会保険の周りでは、経理と人事の仕事がつながっているんです。
LXキャリア
そのため、経理から人事を目指すなら、まず労務・給与を入口に考えるのが現実的ですよ。
入口を絞ると、道筋が見えてきますね。
経理の経験が人事・労務で評価されやすい4つの仕事
では、経理の経験は人事・労務のどんな仕事で生きるのでしょうか。ここでは、評価されやすい4つの仕事を紹介します。
①給与計算と給与の仕訳
まず一つ目は、給与計算です。というのも、経理は給与の仕訳や預り金の処理を通じて、給与の仕組みをすでに理解しているからです。
そのため、総支給額から社会保険料や税金を差し引く流れを、数字の面から説明できます。つまり、給与計算の正確さを確かめる力が、経理の経験で身についているのです。
加えて、給与の振込データの作成や、支払日に合わせた資金の準備も、経理と労務が重なる仕事です。そのため、経理で支払いの業務を担当した経験も、そのまま生かせます。
👉 あわせて読みたい:給与計算と経理の違い|年収は525万円と512万円、高いのはどちらか
②社会保険料と税金の処理
次に二つ目は、社会保険料や住民税、源泉所得税の処理です。なぜなら、経理はこれらを納付や支払いの面から扱っているからです。
しかも、年末調整では、給与と税金の両方の知識が求められます。そこで、経理で税金の処理に慣れている人は、労務の繁忙期にも力を発揮しやすいといえます。
③勤怠と人件費の管理
さらに三つ目は、勤怠の締めと人件費の管理です。たとえば、残業代の集計や部門ごとの人件費の分析は、経理の数字の感覚がそのまま生きる仕事です。
また、人件費は多くの会社で最も大きい費用の一つです。そのため、人件費の推移を説明できる人は、人事の中でも重宝されます。特に、採用の計画や昇給の予算を決める場面では、経理の目線で数字を整理できる人が求められます。
④人事制度の数字の検討
そして四つ目は、人事制度の企画で使う数字の検討です。具体的には、評価や給与の制度を変えたときに、人件費がどう動くかを試算する場面があります。
ちなみに、制度企画・組織開発の求人の提示年収の中央値は725万円で、人事の中で最も高い水準でした。つまり、数字に強い経理出身者にとって、将来の目標になりうる分野です。
今の会社は小さいので、経理のほかに給与計算も少し手伝っています。これも経験になりますか?
LXキャリア
なりますよ。たとえば、面談でお会いした経理の方は、ベンチャーに経理として入ったものの、規模が小さくて労務や総務、法務まで担当していたと話していました。
LXキャリア
このように、経理と労務を兼ねた経験は、少人数の管理部門ではむしろ強みになります。ただし、その方は後で経理に絞る道を選んでいました。つまり、兼務の経験をどちらに生かすかを決めておくことが大切なんです。
自分がどちらに進みたいかを先に考えてみます。
90秒で診断します

経理から人事へ進むときに足りない経験
一方で、経理の経験だけでは足りない部分もあります。ここでは、移る前に意識しておきたい3つの経験を紹介します。というのも、足りない部分を先に知っておけば、準備の順番を決めやすくなるからです。
労働や社会保険の法律の知識
まず、労務では、労働基準法や社会保険の制度を正しく理解していることが前提になります。そのため、経理の会計や税の知識とは別に、法律の知識を学ぶ必要があります。
なお、労務の資格では、社会保険労務士や衛生管理者が代表的です。どの資格を優先するかは、人事の資格の記事で詳しく整理しています。
👉 あわせて読みたい:人事に資格は必要?求人データで見る役立つ資格7つと選び方
社員の相談に向き合う経験
次に、人事では社員の相談に向き合う場面が多くあります。たとえば、休職や働き方の相談など、数字だけでは答えが出ない話も少なくありません。
そのため、経理で社内の問い合わせに対応してきた経験を、相談対応の経験として整理しておくとよいでしょう。たとえば、経費の精算や支払いの問い合わせに、相手の事情を聞きながら答えてきた経験は、労務の相談対応にも通じます。
人と関わる仕事への向き不向き
さらに、採用や人材開発は、人と関わる時間が長い仕事です。したがって、自分が数字を扱う仕事と人と関わる仕事のどちらを望むのかを、先に確かめておくことが大切です。
👉 あわせて読みたい:労務に向いている人の6つの特徴|10問のセルフチェックと向いていない場合の選び方
経理から人事への4つのルート
では、経理から人事へは、どのように移るのが現実的でしょうか。ここでは、4つのルートを紹介します。
①今の会社で給与計算や年末調整を担う
まず一つ目は、今の会社で労務の仕事を引き受けることです。実は、経理の求人の16.5%は、仕事内容に給与計算や勤怠など労務に関わる業務を書いていました。
つまり、経理の仕事の中にも、労務に触れる機会は少なくありません。そこで、給与の締めや年末調整の取りまとめを手伝うことから始めましょう。
経理の仕事でも、勤怠や工数の入力を現場に頼むことがよくあります。
LXキャリア
ありますよね。面談でお会いした別の経理の方も、現場が勤怠や工数を入力しないので、自分で確認して回っていると話していました。
LXキャリア
実は、こうした勤怠の確認は労務の入口に近い仕事です。そのため、勤怠の締めや人件費の集計を引き受けると、経理にいながら労務の経験を積めますよ。
今の仕事の延長で、経験を広げられそうです。
②少人数の管理部門で経理と労務を兼ねる
次に二つ目は、管理部門が少人数の会社で、経理と労務を兼ねるポジションに移ることです。というのも、少人数の会社ほど、一人で複数の仕事を担う求人が多いからです。
ただし、兼務の求人は、経理だけの求人より提示年収が低い傾向がありました。たとえば、仕事内容に労務の業務も書いた経理の求人の中央値は525万円で、書いていない求人は607万円です。
とはいえ、兼務で幅広い経験を積むと、④で紹介する管理部長への道が開けます。そのため、目先の年収だけでなく、数年後にどんな役割を担いたいかで判断しましょう。
③労務・給与のポジションに移る
さらに三つ目は、労務・給与のポジションに直接移ることです。ただし、労務・給与の求人で未経験を歓迎するものは5.1%でした。
そのため、①や②で給与計算や社会保険の経験を積んでから応募するほうが、選考で評価されやすくなります。また、給与計算の代行会社で経験を積み、事業会社の労務に移る人もいます。
④管理部長を目指して経理と人事の両方を担う
そして四つ目は、経理と人事の両方を担える管理部長を目指すことです。実際、職種名に管理部長などを含む求人は91件あり、提示年収の中央値は1,000万円でした。
しかも、その42.9%は仕事内容に労務の業務を書いていました。つまり、経理に労務の経験を足すことは、管理部門の責任者への近道にもなります。
ただし、管理部長の求人は、複数の分野をまとめた経験を前提にするものがほとんどです。そこで、まずは①〜③で労務の経験を足し、その後に責任者を目指すという順番で考えるとよいでしょう。
経理から人事へ移ると年収はどう変わる?
次に、年収の変化を見てみましょう。まず、経理・財務の求人の中央値は600万円で、人事全体の575万円をやや上回っていました。
労務・給与に移ると下がることがある
特に、労務・給与の求人の中央値は510万円でした。そのため、経理から労務・給与に移ると、提示年収が下がる場合があります。
一方で、制度企画・組織開発は725万円、管理部長などの求人は1,000万円でした。つまり、移った直後の年収より、その先にどの分野を目指すかで、長い目で見た年収は変わります。
経理の経験を評価する求人を選ぶ
また、人事の中でも、その他の人事に分類される求人では、応募条件に経理や会計の語がある割合が12.3%と高めでした。たとえば、人事と総務、経理をまとめて担う管理部門の求人などです。
しかも、その他の人事の求人全体の中央値は600万円で、経理・財務と同じ水準でした。つまり、経理の経験を評価してくれる求人を選べば、年収を下げずに人事の経験を積める可能性があります。
求人データを見るときの注意点
なお、ここでの数字は、エージェント向けの求人の提示年収です。そのため、実際に支払われた年収や、公的な統計とは一致しません。また、求人には経験者を求めるものが多いため、未経験で移る場合は、表の数字より低い条件から始まることもあります。
たとえば、公的な統計では、給与計算を含む人事事務員のほうが、会計事務の従事者より年収が高いという結果もあります。このように、どの数字を見るかで結論が変わる点には注意しましょう。
経理のうちに準備しておきたい4つのこと
最後に、経理にいるうちに準備しておきたいことを紹介します。なぜなら、移る前の準備で、選考での評価が大きく変わるからです。
給与と社会保険の流れを説明できるようにする
まず、給与の仕訳から社会保険料の納付まで、一連の流れを説明できるようにしておきましょう。そうすれば、面接で労務の基礎を理解していることを伝えられます。
労務の基礎を学んでおく
さらに、労働基準法や社会保険の基礎を、移る前から学んでおくと安心です。たとえば、給与計算の検定や社会保険労務士の勉強は、知識を体系的に身につける手段になります。
ただし、資格は経験を補う材料です。そのため、勉強で得た知識を、今の会社の給与や勤怠の仕事で試してみることが大切です。
職務経歴書に人件費の分析を書く
次に、職務経歴書には、人件費の分析や勤怠の集計に関わった経験を具体的に書きましょう。たとえば「部門別の残業代を毎月集計し、増えた理由を報告した」のように書くと、人事の仕事との接点が伝わります。
自分の市場価値を確かめる
そして、経理の経験が人事の求人でどう評価されるかを確かめておくと、移るかどうかを決めやすくなります。というのも、同じ経理でも、担ってきた業務によって評価が変わるからです。
移るかどうかを決める前に、今の経験だと人事としてどのくらいの年収になるのかを知りたいです。
LXキャリア
たとえば人事の年収診断なら、担当業務や役職から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、経理の経験のどこを前に出すかを一緒に整理しましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
👉 あわせて読みたい:人事の仕事内容|採用・労務・制度など人事部で実際にやること
まとめ:経理から人事へは労務・給与を入口に考える
このように、この記事では経理から人事へ移るときに評価される経験と、現実的なルートを整理しました。では、要点を振り返ります。
- まず、人事の求人で経理の経験を条件にするものは2.8%と少ない
- また、労務・給与の分野では、給与や社会保険を通じて経理の経験が生きる
- さらに、経理の求人の16.5%は、労務に関わる業務も仕事内容に書いている
- そして、経理と労務の両方を担える人は、管理部長への道も開ける
👉 あわせて読みたい:採用担当はきつい?辞めたくなる5つの理由と続けやすい職場の見分け方
📌 この記事の一次情報源
- 当社が利用するエージェント向け求人データベースの人事求人3,573件と経理・財務求人3,116件の応募条件と仕事内容の集計(2026年9月20日時点、中途・正社員・提示年収ありに限定)
- 当社が2026年に行った求職者の方との面談の記録(個人が特定されないよう、職種以外は伏せて再構成)
