この記事でわかること
・経理 繁忙期の山は「忙しい季節」ではなく、法律で決まった期限が作っていること
・3月決算企業を前提にした12か月の業務カレンダー
・山を作る5つの法定期限を、条文と国税庁の案内で確認
・2027年1月から1月の作業が1つ減る(源泉徴収票のみなし提出の特例)
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
経理の繁忙期って、いつがいちばんきついんでしょうか。転職先を選ぶ前に知っておきたくて。
LXキャリア
そのご質問は、転職を考える方から必ずといっていいほどうかがいます。ただ、答えは会社によって違うんです。というのも、経理の繁忙期の山は、決算月と法定期限の組み合わせで決まるからなんですよ。
そこで本記事では、まず山を作っている法定期限を条文で確認します。次に、3月決算企業を前提にした年間カレンダーを示します。そのうえで、2027年から変わる点にも触れます。
経理の繁忙期は「決算月+2か月」で決まる
まず結論です。経理の最大の山は、決算月そのものではありません。決算月の翌日から2か月間にできます。
根拠は法人税法にあります。第74条は「各事業年度終了の日の翌日から二月以内に」確定申告書を提出しなければならないと定めています。消費税法第45条も同様に、課税期間の末日の翌日から2か月以内としています。
したがって3月決算の会社であれば、4月と5月が最大の山です。そして12月決算の会社なら、1月と2月が山になります。つまり自分の会社の繁忙期は、決算月さえ分かれば計算できます。
申告期限は延長できる場合がある
ただし例外もあります。定款で株主総会の開催時期を定めているなどの理由があれば、申告期限の延長の特例を申請できます。上場企業の多くはこの特例を使っています。
申告期限を延長しているかどうかを面接で聞いても、失礼になりませんか。
LXキャリア
失礼にはなりませんよ。むしろ実務がわかっている人だと伝わる質問です。延長していれば5月の山はやや緩みますし、していなければ5月末が絶対的な締め切りになります。つまり、その一つの答えで入社後の4〜5月の過ごし方が見えてくるんです。
決算月と延長の有無を聞けば、山の時期が読めるんですね。
【年間カレンダー】月別の経理業務と法定期限
ここからは3月決算の企業を前提に、1年間の流れを一覧にします。自社の決算月に合わせて読み替えてください。
| 月 | 主な業務 | 負荷 |
|---|---|---|
| 4月 | 年次決算の実査・棚卸集計、監査法人対応、決算整理仕訳 | ★★★ |
| 5月 | 計算書類の確定、法人税・消費税の申告(期限=5月末)、決算短信 | ★★★ |
| 6月 | 定時株主総会の対応、労働保険の年度更新(6月1日から40日以内) | ★★ |
| 7月 | 社会保険の定時決定(7月1日現在の被保険者が対象)、第1四半期の締め | ★★ |
| 8月 | 第1四半期の開示、月次決算 | ★ |
| 9月 | 上期の締め、標準報酬月額の改定反映(9月分から) | ★★ |
| 10月 | 上期決算、半期の開示準備 | ★★ |
| 11月 | 年末調整の書類回収開始、次年度予算の編成 | ★★ |
| 12月 | 年末調整の計算、賞与計算、支払の集中 | ★★★ |
| 1月 | 源泉徴収票の交付・法定調書の提出(期限=1月31日)、給与支払報告書、償却資産申告 | ★★★ |
| 2月 | 第3四半期の開示、決算の準備開始 | ★★ |
| 3月 | 実地棚卸、債権債務の残高確認、期末処理 | ★★★ |
3月決算・上場企業を想定した一般的な例です。実際の業務範囲は企業規模や体制によって変わります。負荷は当社が面談で聞く範囲の目安であり、公的統計にもとづくものではありません。
山は年に3回やってくる
この表を見ると、山が3つあることが分かります。まず3〜5月の決算、次に12〜1月の年末調整と法定調書、そして6〜7月の社会保険関係です。つまり繁忙期は年に一度ではありません。
さらに毎月、月初には月次決算の山が来ます。
👉 あわせて読みたい:月次決算のスケジュールと進め方【早期化7つのコツ】
山を作る5つの法定期限
ここからは、カレンダーの太字部分を根拠つきで確認します。いずれも社内の都合では動かせない期限です。
| 手続き | 期限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 法人税の確定申告 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 | 法人税法74条 |
| 消費税の確定申告 | 課税期間の末日の翌日から2か月以内 | 消費税法45条 |
| 源泉所得税の納付 | 給与などを支払った月の翌月10日まで | 国税庁 No.2502 |
| 源泉徴収票の交付と法定調書の提出 | 翌年1月31日まで(中途退職者への交付は退職の日以後1か月以内) | 国税庁 No.7411 |
| 労働保険の概算保険料の申告・納付 | 保険年度の6月1日から40日以内 | 労働保険徴収法15条 |
1月が重いのは法定調書が63種類あるから
1月の負荷を作っているのは、年末調整だけではありません。国税庁によると、法定調書は現在63種類あります。給与所得の源泉徴収票のほか、報酬・料金の支払調書や不動産の使用料等の支払調書などが含まれます。
しかも、これらは1月31日という同じ期限に集中します。加えて市区町村への給与支払報告書、自治体への償却資産申告も同じ時期です。したがって1月は、決算期に匹敵する山になります。
社会保険の定時決定は「4〜6月の報酬」で決まる
7月の山についても補足します。厚生年金保険法第21条は、毎年7月1日現在で使用される被保険者について、同日前3か月間に受けた報酬をもとに標準報酬月額を決定すると定めています。つまり4月・5月・6月の報酬が基準になります。
そして決定された標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの各月に適用されます。だからこそ、この時期の作業には正確さが求められます。なお具体的な届出期限は日本年金機構が毎年案内していますので、実務ではそちらを確認してください。
毎月やってくる「小さな山」も忘れない
年3回の大きな山に目が向きがちですが、実際には毎月も山があります。月次決算です。
多くの会社では、月初から5営業日前後に作業が集中します。前月の売上と経費を締め、試算表を作るためです。しかも取引量が多い会社ほど、この数日に負荷が固まります。
さらに、源泉所得税の納付期限も毎月10日にやってきます。国税庁の案内では、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納めることとされています。つまり月初の1週間は、決算作業と納付が重なります。
したがって年間カレンダーを作るときは、月次の山も書き込んでおいてください。年3回の山だけを見ていると、日々の負荷を見誤ります。
【2027年1月から】1月の作業が1つ減る
ここで、繁忙期の負荷が実際に変わる制度改正をお伝えします。源泉徴収票のみなし提出の特例です。
国税庁の案内によると、令和9年(2027年)1月1日以後、市区町村に「給与支払報告書」を提出した場合には、税務署に「給与所得の源泉徴収票」を提出したものとみなされます。そのため、税務署提出用の源泉徴収票を作成し提出する必要がなくなります。
| 対象 | 2026年1月まで | 2027年1月以後 |
|---|---|---|
| 市区町村への給与支払報告書 | 提出が必要 | 提出が必要(変更なし) |
| 税務署への源泉徴収票 | 提出が必要 | 提出したものとみなされる |
| 受給者への源泉徴収票の交付 | 全員に必要 | 全員に必要(変更なし) |
出典:国税庁「源泉徴収票のみなし提出の特例 特設ページ」。
ここで誤解しやすい点があります。受給者へ交付する源泉徴収票は、従来どおり全員分を作成し交付する必要があります。つまり減るのは税務署への提出だけです。
もうひとつ注意点があります。国税庁は、eLTAXでの電子的提出の一元化機能が令和8年9月末をもって終了すると案内しています。したがって提出方法の見直しは、2026年中に済ませておく必要があります。
四半期報告書は廃止され、半期報告書に一本化された
上場企業の経理にとって、もうひとつ大きな変更がありました。金融商品取引法の四半期報告書制度が廃止された点です。
現在の金融商品取引法では、四半期報告書を定めていた第24条の4の7が削除されています。代わりに第24条の5が「半期報告書及び臨時報告書の提出」を定め、事業年度が開始した日から6か月が経過したときに半期報告書を提出する形になりました。
ただし、四半期の締めがなくなったわけではありません。取引所の適時開示制度にもとづく四半期決算短信は、金融商品取引法とは別の枠組みだからです。したがって、実務としての四半期決算は続きます。
つまり変わったのは、法定開示書類を作る作業の負荷です。上場企業への転職を検討している方は、この点を面接で確認しておくとよいでしょう。開示体制の見直しが進んでいる会社ほど、繁忙期の設計も変わっているためです。
繁忙期の重さを左右する3つの条件
同じ3月決算でも、繁忙期の重さは会社によって違います。差を生むのは次の3つです。
1. 上場しているかどうか
上場企業には定期的な開示義務があります。そのため年次決算のほかにも締めが発生し、山の回数が増えます。実際、令和7年賃金構造基本統計調査でも、1,000人以上の企業の会計事務従事者は超過実労働時間が月10時間で、10〜99人の5時間の2倍でした。
2. 人事・労務を経理が兼務しているか
年末調整、法定調書、労働保険、社会保険。これらは本来、人事・労務の領域です。しかし中小企業では経理が兼務することが少なくありません。その場合、12月から1月の負荷が一気に上がります。
3. 申告期限の延長をしているか
前述のとおり、延長の特例を使っていれば5月の締め切りが緩みます。反対に延長していない会社では、監査対応と申告作業が同じ期間に重なります。したがって、この一点だけでも4〜5月の体感は変わります。
ちなみに、いまの会社では年末調整まで経理が担当しています。これは普通なのでしょうか。
LXキャリア
中小企業では、経理が兼務することは少なくありません。ただ、その場合は12月から1月の負荷が一気に上がります。だから転職先を選ぶときは、決算月だけでなく、人事・労務をどこまで兼ねるかも確認しておくと安心ですよ。
同じ決算月でも、兼務の範囲で忙しさが変わるんですね。
繁忙期を軽くする4つの打ち手
繁忙期そのものはなくせません。法定期限が動かないためです。しかし、山の高さは下げられます。
| 打ち手 | やること |
|---|---|
| 1. 前倒しできる作業を洗い出す | 決算整理のうち、期中に確定できるものを先に処理しておく |
| 2. 社外の締め切りを先に決める | 監査法人・税理士との資料授受の日程を、決算月に入る前に確定させる |
| 3. 年末調整の書類回収を早める | 11月のうちに回収を終え、12月は計算に専念できる状態にする |
| 4. 繁忙期明けの休みを先に確保する | 6月と2月に有給を先に申請しておく |
とくに4つ目は軽視されがちです。令和7年就労条件総合調査によると、年次有給休暇の取得率は66.9%でした。ただし経理の場合は、取得率よりも「いつ取れるか」が重要になります。
なお、システム導入や脱エクセルといった構造的な効率化は別記事で扱っています。
👉 あわせて読みたい:経理の効率化の進め方|脱エクセル・DXで残業を減らす実践手順/経理の残業は多い?公的統計の月8時間とその限界
繁忙期がつらくて転職を考えるとき
打ち手を尽くしても改善しない場合があります。上場しているかどうか、兼務しているかどうかは、個人の努力では変えられないためです。
その場合は、決算月そのものを変えるという選択肢もあります。たとえば12月決算の会社に移れば、山は1〜2月に移動します。つまり年末調整と決算が近づくため、逆に負荷が集中する点には注意が必要です。
👉 あわせて読みたい:残業が少ない経理の職場はどこ?ホワイト求人の探し方と見極め方/経理はきつい・やめとけは本当か|実態と続けるか辞めるかの判断軸
それなら、いまの経験で年収がどのくらいになるのか知りたいです。
LXキャリア
たとえば経理の年収診断なら、担当範囲と保有資格から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、決算月や兼務の範囲も含めて、無理なく働ける職場を一緒に考えましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
経理の繁忙期に関するよくある質問
Q1. 繁忙期に有給は取れますか
決算期の取得は現実的に難しい会社が多くあります。そのため、繁忙期明けにまとめて取る運用が一般的です。面接では、繁忙期明けの取得実態まで確認しておきましょう。
Q2. 12月決算の会社は楽ですか
楽とは限りません。決算の山が1〜2月に来るため、年末調整と法定調書の時期に近づきます。したがって12月から2月まで、山が続く形になりやすくなります。
Q3. 繁忙期はどのくらい残業が増えますか
職種別に月ごとの推移を示す公的統計は存在しません。そのため一律の数字はお伝えできません。判断材料としては、36協定の特別条項の有無と、月45時間を超えた月の回数を確認するのが確実です。
👉 あわせて読みたい:経理の残業は多い?公的統計の月8時間とその限界
Q4. 未経験で入るなら、いつ入社するのがよいですか
3月決算の会社であれば、6月から8月が落ち着いています。この時期に入れば、決算を迎える前に基本を覚えられます。反対に3月や12月の入社は、いきなり山に入ることになります。
👉 あわせて読みたい:20代未経験から経理へ転職できる?成功率を上げる4ステップ
Q5. 経理の繁忙期はいつまで続きますか
3月決算の会社であれば、4月から5月末が中心です。申告期限の延長をしていない会社では、5月末で一区切りがつきます。一方、上場企業では6月の株主総会まで気が抜けません。したがって「決算が終わる日」は会社によって1か月ほどずれます。
Q6. 繁忙期に転職活動はできますか
面接の日程調整が難しくなるため、繁忙期は動きにくくなります。そこで、6月から8月または9月から11月を活動の中心に据える方が多くいらっしゃいます。なお在職中の活動には別の注意点もあります。
👉 あわせて読みたい:経理転職の在職中活動、バレずに成功する3つのルール/経理の転職活動スケジュール完全版
まとめ|繁忙期は法定期限から逆算できる
経理 繁忙期の山は、感覚ではなく法律で決まっています。法人税と消費税の申告は事業年度終了の翌日から2か月以内、源泉徴収票と法定調書は1月31日、労働保険は6月1日から40日以内です。
したがって、決算月さえ分かれば自社の山は計算できます。そのうえで、上場の有無・兼務の有無・申告期限の延長という3条件を確認してください。この3つで、同じ決算月でも重さは大きく変わります。
そして2027年1月からは、税務署への源泉徴収票の提出が不要になります。制度は動いています。まずは自社のカレンダーを1枚作るところから始めてみてください。
👉 あわせて読みたい:経理の仕事大全|業務内容・年収・残業・資格を実数で総覧/経理の仕事内容 完全ガイド|1日の流れと年間業務
📌 この記事の一次情報源
- 法人税法第74条(確定申告)、消費税法第45条(課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについての確定申告)、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第15条(概算保険料の納付)、厚生年金保険法第21条(定時決定)。いずれもe-Gov法令検索で条文を確認
- 国税庁「No.2502 源泉徴収義務者とは」(源泉所得税の納付期限)
- 国税庁「No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等」(提出期限・交付期限)
- 国税庁「No.7401 法定調書の種類」(法定調書は63種類)
- 国税庁「源泉徴収票のみなし提出の特例 特設ページ」(令和9年1月1日以後の取扱い、eLTAX一元化機能の終了)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第1表、「令和7年就労条件総合調査」第5表
