「経理はきつい」「経理はやめとけ」
検索するとこの言葉が並びます。いま経理として働いていて限界を感じている方も、これから目指そうとして不安になっている方も、同じ言葉にぶつかります。
結論から言うと、経理がきついかどうかは仕事の性質だけでなく、あなたの適性と職場環境で大きく変わります。この記事では、きついと言われる理由を整理したうえで、当社の面談で実際に語られた「きつさ」の実例を3つ紹介します。そのうえで、続けるか辞めるかを判断する具体的な軸まで解説します。
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
経理の仕事がしんどくて調べてみたら、「経理はやめとけ」という言葉ばかり出てきました。経理って、やっぱりきつい仕事なんでしょうか。
LXキャリア
たしかに、きついと感じる場面はあります。ただ、面談でお話をうかがうと、仕事そのものより、職場の体制や役割の決まり方が原因になっていることが多いんです。この記事では、そのきつさの正体を一つずつ分けて整理していきますね。
「経理はきつい」「やめとけ」と言われる5つの理由
まず、なぜ経理はきついと言われるのか。よく挙がる理由は、大きく次の5つに整理できます。順番に見ていきましょう。
経理がきついって、決算期の残業のことですか?
LXキャリア
もちろん、それも大きいです。ただ、決算期の残業は時期が決まっていて、終わりが見える負担なんです。一方で、ミスできない緊張や評価されにくさのように、じわじわ効いてくるきつさもあります。まずは5つに分けて見てみましょう。
忙しさだけの話ではないんですね。
| 理由 | きつさが出る場面 | 原因の性質 |
|---|---|---|
| 1. 繁忙期に残業が集中する | 月次決算の月初・月末、3月決算なら4〜6月の年次決算 | 時期(一時的) |
| 2. ミスが許されない | 決算・納税・取引先への支払い | 仕事の性質 |
| 3. 勉強が続く | インボイス制度や電子帳簿保存法などの制度対応 | 仕事の性質 |
| 4. 業務が属人化しやすい | 休みを取りにくい、引き継ぎが進まない | 職場の体制 |
| 5. 給与が急には上がりにくい | インセンティブが期待しにくい | 職種の特性(専門性で伸ばせる) |
このうち「時期」と「職場の体制」が原因のものは、働く環境によって大きさが変わります。
1. 繁忙期に残業が集中する
経理の忙しさは、時期によって大きく偏ります。とくに月次決算を締める月初と月末、そして3月決算企業なら4〜6月の年次決算期は、業務が一気に押し寄せます。そのため「経理はきつい」という印象は、この繁忙期の負担から生まれることが多いのです。
2. ミスが許されないプレッシャー
経理はお金を扱う仕事です。金額を1桁間違えれば、決算や納税、取引先との信頼に影響します。したがって、常に正確さが求められる緊張感がつきまといます。そして、このミスできないというプレッシャーも、つらいと感じる大きな要因です。
3. 覚えることが多く勉強が続く
会計基準や税制は、毎年のように改正されます。近年ではインボイス制度や電子帳簿保存法への対応も加わりました。しかし、その勉強時間は業務として評価されにくいのが実情です。そのため、学び続ける負担を大変だと感じる人は少なくありません。
4. 業務が属人化しやすい
お金まわりの情報は機密性が高く、担当を安易に増やせません。その結果、この処理はあなたしかわからないという状態になりがちです。すると休みを取りにくく、引き継ぎも進みません。さらに、この属人化が経理を辞めにくくさせる一因になります。
5. 給与が急には上がりにくい
経理は利益を直接生む部門ではありません。そのため、営業職のようなインセンティブは期待しにくい面があります。ただし、後述するように専門性を高めれば年収を伸ばす道はあります。目先の給与だけで判断するのは早計です。
面談現場から:実際に語られた「きつさ」の3つの型
うちは残業がそこまで多くないんです。それなのに、なぜかずっとしんどくて。
LXキャリア
そういう方は少なくありません。実は、面談でうかがった「きつさ」を並べると、業務量より「数字が意思決定に届かない」「仕事の範囲に上限がない」「欠員のしわ寄せが一人に集まる」の3つに分かれるんです。そこで、氏名と企業名は伏せて順に紹介しますね。
型1:正しい数字を出しても、意思決定に届かない
スタートアップで経理マネージャーを務める方のケースです。この方は予算管理と人員計画の整備を自ら進めていました。しかし、その必要性が経営層に十分に伝わりません。
人員計画を作った際も、経営層からはその必要性を問われたそうです。この方は、売上の見込みと採用の計画をつなげておかなければ資金が回らない、と説明していました。
その後どうなったか。予算は未達のままリカバリー策も上がらず、やがて処遇や人員にも影響が出ました。
経理の側から見れば、事前に指摘していたことが現実になった形です。この方の部下も、仕事への意欲を失いかけていたといいます。
これが1つ目の型です。作業量が多いことよりも、正しい数字を出しても意思決定に反映されないことのほうが、経理を消耗させます。
そしてこの型のつらさは、残業を減らしても解決しません。数字が経営に届く構造があるかどうかの問題だからです。面接で確認すべきは、残業時間よりも「経理の報告が意思決定にどう使われているか」になります。
型2:所掌外の業務が、手当なしで流れ込んでくる
内部統制とJ-SOX対応を担当している方のケースです。上司の役職が変わったのをきっかけに、部署の役割が広がっていきました。
持ち込まれたのは、社外からの問い合わせへの対応や、夜間を含む緊急時の一次受付といった業務です。本来は別の部門が受けるべき業務でした。
しかも、追加の手当はありませんでした。
これが2つ目の型です。管理部門は「他に受け皿がない業務」の行き先にされやすく、本業の専門性とは関係のない負荷が積み上がっていきます。
経理でも同じことが起こります。たとえば、総務も労務も庶務も経理が兼ねている状態は珍しくありません。求人票の「管理部門全般」という表記には注意してください。
型3:想定していなかった役割まで一人で背負う
3つ目は、経験豊富なベテランでも起きる型です。経理財務一筋でキャリアを積んできた方が、ある企業に内部監査の担当として入社したケースです。
ところが入社後、CFOと経理マネージャーが相次いで退職します。結果として、この方が経理の責任者も兼務することになりました。
本人も無理のある依頼だったと振り返りながら、両方を引き受けて回していました。
しかし、内部統制と経理は、隣接して見えても別物です。内部統制の整備には時間がかかりますし、経理には経理の実務があります。それを同時に担うのは、本来なら無理があります。
これが3つ目の型です。欠員によって、想定していなかった役割まで一人に集中する。経理は代わりがきかない仕事だからこそ、この集中が起きやすくなります。
3つの型に共通すること
3件とも、業務量そのものが本質ではありませんでした。共通していたのは次の点です。
- 数字を出す側と、それを使う側が分断されている
- 担当する業務の範囲に上限がない
- 欠員や体制不備のしわ寄せが個人に集中する
つまり「経理という仕事がきつい」のではなく、「その組織の構造がきつい」のです。そして、この切り分けが次の一手を決めます。
「経理はきつい」の裏返し|それでも続けるメリット
ここまで読むと不安になるかもしれません。しかし、きついと言われる特徴は、裏を返せば経理の強みでもあります。両面から見ておきましょう。
専門性が景気に左右されにくい
どんな会社にも経理は必要です。会社が存続する限り、決算も納税もなくなりません。つまり経理の専門性は、景気に左右されにくい安定した価値を持ちます。つまり、この普遍的な需要こそ、経理を続ける最大のメリットです。
定型化が進みホワイトな職場も多い
近年は会計ソフトやクラウド化で、経理業務の効率化が進んでいます。そのため繁忙期でも残業が少ない職場は着実に増えました。したがって、経理は激務というイメージは、必ずしも現在の実態と一致しません。残業が少ない経理の職場の探し方も、あわせて確認してみてください。
「きつい環境」の経験そのものが資産になる
意外に思われるかもしれませんが、これも事実です。前述の型3の方は、内部監査と経理責任者を同時に担った経験を持っています。この組み合わせを語れる人は多くありません。
型1の方も、予算と人員計画をゼロから整備した経験を持ちます。整った環境では得られない経験です。
ただし条件があります。その経験を職務経歴書で言語化できていることです。というのも、つらいまま辞めると、経験まで一緒に捨ててしまうからです。辞める前に、何を整備し何を回したかを書き出しておいてください。
経理が「つらい・大変」になりやすい人・環境の特徴
同じ経理でも、つらさの感じ方には個人差があります。では、どんな人や環境で経理がきついと感じやすいのでしょうか。
適性の面で無理が生じるサイン
細かい数字の確認が苦痛でしかない場合、経理の日常はストレスになりがちです。また、締め切りに追われる働き方が極端に苦手な人も、繁忙期を重く感じます。ただし、これらは慣れや工夫で改善する部分も大きい点は押さえておきましょう。
環境そのものが原因のケース
一方で、つらさの原因があなたではなく職場にあることも多くあります。慢性的な人手不足、非効率な手作業、過度な残業などです。こうした環境要因は、個人の努力では変えにくいのが現実です。経理のブラック企業の見分け方を知っておくと、環境の問題を切り分けやすくなります。
体制の「人数」だけで判断しない
たしかに、求人票の経理人数は負荷を測る目安になります。しかし人数だけでは実態が分かりません。
前述の型1の方の職場には、部長とパート社員がいました。それでも実務はほぼ一人で回している状態です。月次決算、監査法人対応、内部統制、原価計算、資金繰りまで担当していました。
本人の実感では、肩書きのある上長がいても、実務を担える人はほとんどいなかったそうです。つまり人数がいても、実務を担える人が何人いるかは別問題です。面接では人数ではなく、誰がどの工程を担当しているかまで聞いてください。
「きつい会社」を避けるために面接で聞くこと
環境が原因なら、次の職場で同じことを繰り返さない工夫が必要です。本記事の3つの型に対応する質問を用意しておきましょう。
| 確認したいこと | 面接での聞き方 |
|---|---|
| 数字が意思決定に届くか | 月次の報告は誰が見て、どんな判断に使われていますか |
| 業務範囲に上限があるか | 経理以外に、部署として抱えている業務はありますか |
| 実務を担う人数 | 月次のどの工程を、それぞれ誰が担当していますか |
| 欠員時の体制 | 直近で退職された方の業務は、どう引き継がれましたか |
とくに最後の質問は有効です。答えが「残ったメンバーで分担した」だけなら、型3が起きやすい組織だと分かります。
「経理をやめとけ」は本当か|続けるか辞めるかの判断軸
それでは本題です。経理がきついという悩みは、原因の切り分けで解決に近づきます。次の判断軸で整理してみてください。
正直、もう経理を辞めたいと思う日があります。「経理はやめとけ」って、本当なんでしょうか。
LXキャリア
実は、その「辞めたい」が、経理という仕事に向いているのか、今の職場に向いているのかで、答えが変わるんです。たとえば先ほど紹介した3人も、経理の仕事そのものを辞めようとはしていませんでした。だから、そこを切り分けてから決めても遅くないですよ。
つまり、仕事と職場を分けて考えればいいんですね。
続けたほうがよい人の特徴
仕事内容そのものには不満がなく、つらさの原因が職場環境にある。この場合、辞めるべきは経理ではなく今の職場です。専門性はすでに資産になっています。したがって、環境を変えれば経理を続ける価値は十分にあります。
前述の3つの型は、いずれもこちらに該当します。つまり、3人とも経理という仕事自体を辞めようとはしていません。
そこで、自分がどちらに近いかを次の表で切り分けてみましょう。
| 確認すること | 職場が原因のサイン | 仕事が合わないサイン |
|---|---|---|
| 決算が明けた後 | 負荷が軽くなり、仕事自体は嫌いではない | 時期に関係なく、数字を扱うこと自体がつらい |
| つらさの中身 | 人手不足・手作業・所掌外の業務・欠員のしわ寄せ | 細かい数字の確認そのものが苦痛 |
| 環境を変えたら | 同じ経理でも続けられそうだと思える | どの会社でも同じだと感じる |
| 次の一手 | 経理のまま、職場を変える | 経理の経験を活かせる別職種も検討する |
方向転換を検討すべきサイン
反対に、数字を扱う仕事自体が根本的に合わない場合は話が別です。長期的に見て、興味の持てない分野で専門性を積むのは苦しくなります。その場合は、経理で得た管理部門の知識を活かせる別職種も選択肢になります。まずは経理の仕事の全体像を把握し、自分の適性と照らし合わせてみましょう。
判断を急がないほうがよいタイミング
ひとつ補足します。繁忙期の真っただ中で判断しないでください。決算期の負荷は一時的なものです。なぜなら、その時期の感情で決めると、環境要因と適性の問題を取り違えやすいからです。
判断は、決算が明けて数週間経ってからにしましょう。それでも同じ結論なら、それが本音です。
きつい経理から抜け出す現実的な選択肢
最後に、経理がきついと感じたときの具体的な打ち手を挙げます。辞める・続けるの二択で悩む前に、次の選択肢を検討してください。
ひとつは、社内での部署異動や業務分担の見直しです。属人化が原因なら、体制の改善で負担は軽くなります。もうひとつは、より働きやすい職場への転職です。同じ経理職でも、企業規模や業種によって忙しさは大きく異なります。
さらに、簿記2級やより上位の資格を取得し、市場価値を高めてから動く方法もあります。いずれにせよ、まず経理のどこがきついのか、その正体を言語化することが最初の一歩です。
なお、行動を起こす前に自分の市場価値を把握しておくと、判断の精度が上がります。今の年収が実力に見合っているのか、他社ならどの程度の条件が狙えるのか。そして、この現在地を知るだけで、続ける・辞めるの迷いはぐっと減ります。
環境を変えるとしたら、まず何から始めればいいですか?
LXキャリア
もちろん、いきなり応募しなくて大丈夫です。まずは、今の経験が市場でどう評価されるかを知るところからです。たとえば経理の年収診断なら、想定年収の目安がすぐにわかります。そのうえで、続けるか動くかを一緒に整理することもできますよ。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
資格を取ってから動くべきか、先に動くべきか
状況によります。いま心身の負荷が高いなら、先に環境を変えるほうが優先です。なぜなら、資格の勉強は落ち着いた環境のほうが続くからです。
一方で、年収を上げることが主目的なら、簿記1級や税理士科目などを進めながら1年かけて準備する選択もあります。判断の分かれ目は、負荷が「一時的か、恒常的か」です。
「経理はきつい」に関するよくある質問
繁忙期以外は落ち着いているなら、続けたほうがよいですか?
その可能性は高いといえます。負荷が時期的なものなら、体制の改善や業務の平準化で軽くなります。ただし、年間を通して恒常的に苦しい場合とは、切り分けて考えてください。
上司や経営層に数字が届かないのは、どこでも同じですか?
同じではありません。経理の報告が予算や投資の判断に直結している会社は実在します。面接で「月次の報告は誰が見て、どう使われますか」と聞けば、その会社の姿勢が見えます。
一人経理はやめたほうがよいですか?
一概には言えません。幅広い工程を経験できるため、市場価値は上がりやすい環境です。ただしチェック体制がなく、休みも取りにくくなります。そこで、何年その状態を続けるかを先に決めておくことをおすすめします。
つらい時期の経験は、転職で不利になりませんか?
不利にはなりません。むしろ、整っていない環境で何を整備したかは評価されます。伝え方を「大変だった」ではなく「何を作ったか」に変えてください。
まとめ:きついのは仕事か、それとも環境か
経理がきついと感じる原因の多くは、仕事の性質ではなく組織の構造にあります。本記事で紹介した3つの型も、業務量ではなく分断・範囲・集中の問題でした。
だからこそ、辞める前に切り分けてください。仕事内容に不満がないなら、変えるべきは職場です。そして、その環境で積んだ経験は、言語化さえできれば次の武器になります。
この記事の一次情報源
- 当社(株式会社LX)が2026年に実施した、経理・管理部門職の転職相談面談。掲載にあたり氏名・企業名は伏せ、内容を一般化しています。
- 厚生労働省「職業情報提供サイト(job tag)」「経理事務」の仕事内容・就業実態:https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/430
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」職種別賃金データ:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
