「基本情報技術者の難易度はどれくらいなのか」
「働きながら独学で合格できるのだろうか」
情シスやヘルプデスクから社内SE・コーポレートITへキャリアを広げたい方は少なくありません。そのため、この資格は最初の関門になりがちです。この記事では、これから受験を検討する20代〜30代のIT実務者に向けて、難易度の実態と転職での価値を人材紹介の視点から整理します。
📗 この記事でわかること
- 基本情報技術者の難易度を、年度別の合格率という実データで把握できる
- 科目A・科目Bのどちらでつまずきやすいかがわかる
- 前提知識レベル別に必要な学習時間の目安がわかる
- 独学での具体的な進め方がわかる
- 情シス・社内SE転職で基本情報技術者がどう武器になるかがわかる
基本情報技術者試験とは?まず全体像を押さえる
基本情報技術者試験(FE)は、情報処理推進機構(IPA)が実施する国家試験です。また、ITエンジニアの登竜門として位置づけられています。そのため、技術力だけでなくマネジメントや経営戦略まで幅広い知識が問われます。まずは試験の構造から理解しておきましょう。

科目A・科目Bの2部構成
試験は科目Aと科目Bの2部構成です。科目Aは90分・60問の四肢択一式です。出題範囲はテクノロジ・マネジメント・ストラテジの3分野です。一方の科目Bは100分・20問で、アルゴリズムとプログラミング、情報セキュリティが中心です。科目Bのプログラミング問題は特定の言語知識を前提としない「疑似言語」で出題されます。そのため、実務での使用言語を問わず対策できます。
なお、受験資格に年齢・学歴・実務経験などの制限は一切なく、誰でも申し込めます。そのため、社会人はもちろん学生でも挑戦しやすい試験です。これから情シス・社内SEを目指す学生や、他部署からの異動でIT部門に配属された方も、同じスタートラインで挑戦できます。

CBTで通年受験できるようになった
さらに、2023年4月から、試験はCBT(コンピュータ・ベースド・テスティング)方式による通年実施へと変わりました。そのため、年2回の一斉試験を待つ必要がなくなりました。自分の準備が整ったタイミングで受験日を選べます。また、全国のテストセンターで随時受験できる点も、働きながら学ぶ社会人には大きな追い風です。ただし、同一試験区分は一定期間内の再受験に回数の制限があります。申込前に最新の実施要領を確認しておきましょう。
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基本情報技術者の難易度は実際どれくらい?
基本情報技術者の難易度は、合格率の推移と科目ごとの性質という両面から見ると判断しやすくなります。数字だけでなく、どこでつまずきやすいのかもあわせて押さえておきましょう。

合格率で見る難易度
IPAが公表する統計によると、基本情報技術者試験の合格率は制度改定のたびに変動してきました。実数で見ると、次のように推移しています。
| 実施期間 | 実施方式 | 合格率 |
|---|---|---|
| 平成21年度〜令和元年度秋期 | 年2回の一斉試験(紙) | 平均25.4% |
| 令和2年10月〜令和4年度下期 | CBT方式(旧制度) | 平均40.9% |
| 令和5年度(2023年4月〜) | CBT方式・新制度 | 47.1% |
| 令和6年度(2024年4月〜2025年3月) | CBT方式・新制度 | 40.8% |
たとえば、新制度移行直後の2023年4月は単月合格率56.4%と非常に高い水準でした。その後は難易度が調整され、直近は40%前後で安定しています。そのため「以前より易化した」と単純に捉えるのではなく、実施月によっては30%台に落ち込むこともある点を踏まえておく必要があります。一方で、上位資格である応用情報技術者試験の合格率は例年20%前後(直近は22〜28%台)で推移しています。そのため、基本情報はそれに比べると挑戦しやすい水準にあります。
【公的統計】実務経験が長い人ほど、合格率は下がっている
ところで、合格率には年度推移とは別の切り口があります。IPAは受験者を実務経験年数別にも集計しており、そこには直感に反する傾向が表れています。
| 実務経験年数 | 応募者数 | 受験者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 経験なし | 450 | 396 | 43.9% |
| 1年未満 | 3,807 | 3,342 | 51.8% |
| 2年以上4年未満 | 2,289 | 1,787 | 38.4% |
| 4年以上6年未満 | 1,738 | 1,342 | 37.8% |
| 6年以上8年未満 | 1,195 | 920 | 34.2% |
| 10年以上12年未満 | 796 | 632 | 31.5% |
| 14年以上16年未満 | 414 | 332 | 26.8% |
| 24年以上 | 1,175 | 961 | 21.5% |
| 全体 | 39,314 | 32,547 | 38.0% |
出典:IPA「基本情報技術者試験 統計資料(経験年数別)」令和8年度4〜7月累計より抜粋
合格率がもっとも高いのは「1年未満」の51.8%でした。そこから経験年数が上がるにつれて下がり続け、24年以上では21.5%まで落ちます。ピークと比べると、半分以下の水準です。
つまり、「実務経験があるから有利」という前提は、少なくとも数字の上では成り立っていません。むしろ逆の相関が出ています。
なぜ経験者ほど落ちるのか
理由は知識量ではなく、試験の性質にあります。まず、科目Bの疑似言語は実務で使う言語とは別物です。そのため、開発の実務歴がそのまま得点に変わるわけではありません。
次に、学習時間の問題があります。経験年数が長い方ほど役職や家庭の事情で可処分時間が減りがちです。一方、1年未満の層は研修や新人教育の延長で対策時間を確保できます。この差が数字に表れていると考えられます。
したがって、情シス・社内SEとして基本情報を取るなら、できるだけ早い段階が有利です。「もう少し実務を積んでから」と先送りするほど、条件は厳しくなります。
この統計を読むときの注意
まず、経験年数は受験者の自己申告です。加えて、全体39,314人のうち22,966人が経験年数を無記入で、記入者は母集団の一部にとどまります。そのため、細かな数値差を過度に読み込むのは避けてください。
また、経験年数が長い層は受験者数そのものが少数です。会社の要請で受けた方など、動機の違いも混ざっている可能性があります。したがって、これは相関であって因果を示すものではありません。
それでも、経験なしから24年以上まで一貫して下がり続けている点は無視できません。少なくとも「経験を積めば自然に受かる試験」ではない、とは言えます。
科目A・科目Bで難しさが違う
科目Aは出題範囲こそ広いものの、過去問のパターン学習で対応しやすい科目です。一方の科目Bは、アルゴリズムやプログラミングの論理的思考が直接問われます。そのため、文系出身者や非開発職の方は、擬似言語のトレース(処理の流れを1行ずつ追う作業)で苦戦しやすい傾向があります。したがって、学習の重心は科目Bに置くと、効率よく合格ラインへ近づけます。
他のIT資格と比較した位置づけ
さらに、基本情報の難易度は、他のIT資格と横並びで見るとより実感しやすくなります。情シス・社内SEのキャリアでよく比較対象になる資格を、合格率と学習時間の目安でまとめました。

このように並べると、基本情報はITパスポートより一段難しく、応用情報より一段易しい「中間の関門」であることがわかります。なお、CCNAやAWS認定はベンダー試験のため合格率が公表されません。一方で、出題範囲がネットワークやクラウドに絞られる分、学習時間はやや短めに収まる傾向があります。
試験の申込みから受験・結果通知までの流れ
学習計画を立てる前に、申込みから結果通知までの実務的な流れも押さえておくと、スケジュールが立てやすくなります。
申込方法と受験日の決め方
まず、受験はIPAが運営する試験専用サイトからアカウント登録を行います。希望のテストセンター・日時を選んで申し込みましょう。そのため、空き状況が良ければ申込みから1〜2週間程度先の日程でも受験可能です。学習の進捗を見ながら、逆算で受験日を仮決めしましょう。余裕があれば早めに確定させておくと、学習のペースメーカーになります。
受験当日とスコアレポート
試験は科目A・科目Bを同日に連続して受験する形式です。また、合否は試験終了後にその場では通知されず、後日マイページ上で発表されます。さらに、分野別の正答率が確認できるスコアレポートも公開されます。そのため、不合格だった場合でも弱点分野を具体的に把握し、次回の学習計画に反映できます。
合格に必要な勉強時間の目安
基本情報の勉強時間は、前提知識によって大きく変わります。自分がどのタイプに近いかを見極め、逆算で学習計画を立てましょう。

前提知識レベル別の学習時間目安
まず、目安となる学習時間を前提知識レベル別に整理すると、次のようになります。

たとえば運用やヘルプデスクでネットワークやセキュリティに触れてきた方は、科目Aの下地がすでにあります。そのため、学習時間を短縮できます。まずは科目Bの演習量を確保することが、合格への近道です。
基本情報を独学で進めるロードマップ
基本情報は独学でも十分に合格を狙えます。手順は次の4ステップです。
- 市販テキストで科目Aの範囲を一通り読み、全体像をつかむ
- 科目Aの過去問演習を繰り返し、頻出パターンを体に覚えさせる
- 科目Bはサンプル問題でアルゴリズムのトレース方法に慣れる
- 本番同様のCBT形式で模擬演習を行い、時間配分を確認する
このように進めると、学習の後半になるほど本番に近い感覚で仕上げられます。たとえば、仕事が忙しい時期は科目Aの暗記に充てましょう。比較的まとまった時間が取れる週末は科目Bの演習に充てるなど、平日と休日で学習内容を使い分けるとムダがありません。
挫折しやすいポイントと対策
たとえば、独学でよくある挫折パターンは、科目Aの暗記だけで満足してしまうことです。その結果、科目Bの演習時間を確保できないまま受験日を迎えてしまうケースが少なくありません。科目Aは点数が伸びやすいため達成感を得やすい一方、科目Bは演習量に比例してしか伸びません。そのため、学習計画を立てる段階で、科目Bの演習に全体の6割以上の時間を配分しておきましょう。そうすれば、直前期に慌てずに済みます。また、モチベーションが続かない場合は、受験日を先に確定させてしまうことで学習に締め切り効果を持たせるのも有効です。
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基本情報技術者は情シス・社内SE転職で武器になるか
基本情報技術者は「土台の証明」として転職で有効に働きます。ただし、効き方は経歴によって変わるため、自分の立ち位置に合わせて期待値を調整しましょう。
未経験・第二新卒には有効
たとえば、IT未経験や第二新卒で情シスを目指す場合を考えてみましょう。この場合、基本情報は学習意欲と基礎知識を客観的に示せる材料になります。特に、書類選考で実務スキルを証明しづらい層ほど、資格の効果は大きくなります。そのため、実務経験が浅いうちに取得しておく価値は高いといえます。また、実際の選考現場でも、業務未経験者の応募書類に基本情報の記載があるとします。この場合、学習の継続力を評価するきっかけとして扱われる場面が多く見られます。
経験者は上位資格も視野に
すでに情シス・社内SEとして数年の実務がある方は、基本情報だけでは差別化しづらくなります。そこで、応用情報技術者やクラウド系資格(AWS認定など)へ進むことをおすすめします。そうすれば、年収レンジの引き上げにつながりやすくなります。なお、社内SEの年収相場は年代や担当レイヤーによって段階的に変わります。実数の分布については、公的統計をもとにまとめた年収記事で詳しく扱っています。
ただし、資格そのものが年収を直接引き上げるわけではありません。そのうえで、応用情報やAWS認定などの上位資格は、上流工程や企画系のポジションへ挑戦する際の評価材料として機能します。資格はゴールではなく、キャリア設計の一部として位置づけましょう。
また、面接の場面でも同じことが言えます。基本情報だけを提示するより「基本情報を土台に、応用情報やクラウド資格の学習を進めている」と伝えられる方が、成長意欲の証明として響きやすくなります。資格の取得スピードそのものも、学習習慣やキャッチアップ力を示す材料として見られている点は覚えておきましょう。
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面談現場から:取らないまま4年が過ぎたケース
ここでは統計に表れない部分を、実際の面談からお伝えします。以下は当社が2026年に実施した面談の内容で、匿名化のうえ掲載しています。
20代の方で、ヘルプデスクの一次対応から始めて、現在は複数の案件を並行して担当しています。IT経験は4年ほどです。転職活動中ではなく、情報交換としてお話をうかがいました。基本情報を含め、資格は取得していません。
「必要性は分かっているんですが、後回しになってしまって」
ここから読み取れること
この方のように、実務が回り始めると資格が後回しになるのはよくある流れです。ただし、前掲の統計と重ねると事情が見えてきます。経験1年未満の合格率は51.8%でしたが、4年以上6年未満では37.8%まで下がります。後回しにするほど、条件は静かに悪くなっていました。
理由も本人の話と符合します。この方は現在4件の案件を並行して抱えており、まとまった学習時間が取りにくい状況でした。つまり、実務で評価されるほど可処分時間は減っていきます。
とはいえ、悲観する必要はありません。科目Aは運用やヘルプデスクの経験がそのまま効く範囲です。したがって、限られた時間を科目Bの演習に集中させれば、経験者でも十分に射程に入ります。要は配分の問題です。
基本情報技術者に関するよくある質問
文系出身でも合格できますか?
十分に合格を狙えます。科目Aは暗記中心の分野が多く、文系出身でも過去問演習で対応可能です。科目Bのアルゴリズム分野に苦手意識がある場合は、学習時間の配分を科目Bに厚めに振ることで対応できます。
何歳まで転職市場で評価されますか?
年齢の上限が明確に決まっているわけではありません。ただし、基本情報は「基礎資格」という位置づけのため、30代後半以降は実務経験に加えて応用情報や実務実績とセットで評価される場面が増えます。20代〜30代前半での取得が最も効果を発揮しやすいタイミングです。
ITパスポートとの違いは何ですか?
ITパスポートはITを利用する全ての社会人向けの入門資格です。一方、基本情報技術者はITエンジニアとしての技術力を問う資格です。情シス・社内SEとしてのキャリアを目指すなら、基本情報から着手する方が実務での説得力が高まります。
次に取得すべき資格は何ですか?
情シス・社内SEとしての方向性によって異なります。マネジメント志向なら応用情報技術者が代表的な選択肢です。インフラ・クラウド志向ならAWS認定などのクラウド資格、ネットワーク領域を強化したいならCCNAが挙げられます。
科目Aか科目Bのどちらかが基準点未満だと不合格になりますか?
その通りです。総合得点にかかわらず、科目A・科目Bのどちらか一方でも600点(1000点満点中)を下回ると不合格になります。つまり、片方の科目だけ得意でも合格できません。したがって、苦手科目を作らない学習配分が重要です。
一度不合格になった場合、すぐに再受験できますか?
同一試験区分には一定期間内の受験回数制限が設けられています。再受験の間隔はIPAの実施要領で定められています。そのため、不合格だった場合はスコアレポートで弱点を洗い出し、次回受験可能日までに集中して補強するのが効率的です。
資格取得の費用は自己負担ですか?
受験料は自己負担が基本です。ただし、企業によっては合格時に受験料や書籍代を補助する資格取得支援制度を設けている場合があります。すでに情シス部門に在籍している方は、まず社内制度の有無を確認しておくと負担を抑えられます。
まとめ|難しいのは知識量ではなく、時間の確保
この記事の要点を整理します。まずIPAの経験年数別データでは、合格率のピークは「1年未満」の51.8%でした。そこから経験を重ねるほど下がり、24年以上では21.5%です。
したがって、「実務を積んでから受ける」という順番は不利に働きます。難所は知識量ではなく、科目Bの演習時間をどう確保するかにあります。
そのうえで、学習配分の目安は明確です。科目Bに全体の6割以上を充ててください。加えて、受験日を先に確定させると締め切り効果が働きます。
なお、基本情報を取ったあとにどの資格へ進むかは、目指す方向によって変わります。次の一手については、目的別の比較記事もあわせてご覧ください。
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📌 この記事の一次情報源
本記事の数値データは、以下の公的統計・ヒアリング・実務知見をもとに作成しています。
- 情報処理推進機構(IPA)「基本情報技術者試験 統計情報」経験年数別 一覧表(令和8年度4〜7月)— https://www.ipa.go.jp/shiken/reports/toukei_fe.html
- 情報処理推進機構(IPA)「情報処理技術者試験」制度・統計資料 — https://www.ipa.go.jp/shiken/index.html
- 当社が支援した情シス・社内SE転職者へのヒアリング(学習期間・資格の評価に関する聞き取り)
- 当社(株式会社LX)が2026年に実施したITエンジニア・情シス職の転職相談面談(複数名)。掲載にあたり、氏名・企業名は伏せ、年齢は年代表記、年収は概数に丸めています。
