
この記事でわかること
- 情シス転職の全体像とSIer・SES出身者に向いている理由
- 情シスの年収相場と担当領域別の収入差
- 転職で評価されるITスキルと資格
- 内定を勝ち取るための具体的な転職戦略
「客先常駐に疲れた」「自社のシステムを自分で育てたい」。そんな思いを抱えるSIer・SES出身者は少なくありません。だからこそ情シス(情報システム部)への転職は、有力な選択肢になります。
しかし、情シスの求人は市場に出回る数が限られています。そのため、どのスキルが評価されるのか分からないと感じる方も多いはずです。本記事では、実際の面談で聞いた話と公的統計をもとに、転職の全手順を解説します。

情シスとは?社内SEとの違いを整理する
情シス・社内SE・コーポレートITの違いは求人票でも混在しやすいポイントです。まず基本的な定義を押さえましょう。
情シスの主な業務範囲
情シス(情報システム部)は、自社のITインフラ・情報システムの企画・導入・運用・保守を一手に担う部門です。主な業務は社内ネットワーク・サーバーの運用保守、SaaS管理などです。社内ヘルプデスク対応やDX推進のPMまで多岐にわたります。
社内SEとコーポレートITの違い
「社内SE」と「コーポレートIT」は呼称が異なるだけで実態はほぼ同じです。外資系やメガベンチャーでは「コーポレートIT」が一般的です。DX推進やCISO直下のポジションに近いケースも多くあります。一方「社内SE」は日系企業で一般的な呼称です。
SIerのSEと情シスの違い
SIerのSEは顧客のシステム構築を担当します。一方、情シスは自社のシステムを内側から管理・改善する役割です。そのため情シスでは技術力に加えて社内調整力・ベンダーマネジメント力・業務要件の理解力が重視されます。顧客折衝の経験があるSIer出身者は、この点で高く評価されます。
あわせて読みたい:社内SE転職完全ガイド|20代・30代の準備から内定までの全手順
SIer・SES出身者が情シスへ転職する3つの理由
なお、当社が支援した情シス転職者へのヒアリングをもとに、主な転職動機を整理しました。
客先常駐・多重下請けから解放されたい
SESで客先常駐が続くと、プロジェクトごとに職場が変わり帰属感を持ちにくいと感じる方が多くいます。自社の一員として腰を据えて働きたいというニーズに、そのまま応えられる環境といえます。
自社システムの企画から運用まで一気通貫で関わりたい
SIerでは担当フェーズが限られ、全体設計や導入後の改善に関わりにくいことがあります。その点、企画・選定・導入・運用まで一気通貫で携わることができ、業務への影響を直接実感できます。
ワークライフバランスの改善を求めている
なお、業種・企業規模によって残業時間にばらつきがあります。ただし自社内業務なので、客先都合の急な深夜作業は発生しにくいです。長距離出張も少なく、生活リズムを整えやすいと感じる転職者が多くいます。
面談現場から:SIer・SESを抜けた人が語った本当の理由
ここからは、当社が2026年に実際にお話をうかがったエンジニアの方のケースを紹介します。情シス 転職の動機は一般論になりがちですが、現場で語られる理由はもっと具体的でした。
抜けたい理由は、仕事内容ではなく「単価の決定権」だった
20代のうちに大手SIer系や物流系の現場へ客先常駐で入っていた方がいらっしゃいました。技術的な不満があったわけではありません。それでもこの方は、常駐を続ける道を選びませんでした。
「仲介する会社が間に入るので、自分の思いどおりの単価交渉ができませんでした」
そのため、この方はフリーランスへ転身しています。つまり離職の理由は業務内容ではなく、自分の処遇を誰が決めているのかという構造でした。
ここから読み取れることは一つです。SIer・SESから離れたい人は、求人票の業務内容だけを見比べても納得できません。むしろ「誰が評価し、誰が処遇を決めるのか」を確認したほうが、転職後の満足度は上がります。
実際、情シスは自社の中で評価が完結します。だから評価者と自分の距離が近くなります。この点は、多重下請けの構造とは決定的に違います。
ヘルプデスクから始めて、4年でAI導入の推進役になった方もいる
もう一人、IT歴およそ4年の方のケースです。この方の出発点は、SES契約の一次対応ヘルプデスクでした。
その後の経路は、次のように進んでいます。
- SES契約で一次対応のヘルプデスク(L1)を担当
- 派遣として大手ECサイトのAPI関連業務(L2)へ
- 個人事業主として社内SE・資格管理システム・AI関連の資料作成を受注
- 上場企業のAI導入プロジェクトで、ベンダー選定から価格交渉までを担当
4年で一次対応から企画側まで到達しています。ただし、この方は資格をほとんど取っていません。理由は明快でした。
「引き出しを複数作らないと、今後は食べていけないと思っています」
資格取得には2〜3年の投資が必要です。しかし、その投資に見合うリターンが読めない。だからこの方は「今できることを打ち出す」ほうを選びました。
つまり情シスの入口は、設計や開発だけではありません。運用の一次対応から始めても、担当範囲を段階的に広げれば企画側に届きます。
SIer側から見ると、情シスへの転職者はどう映るか
最後に、当社代表がSIerにいた頃の視点も共有します。当時は地方銀行向けに、基幹システムやインターネットバンキングを提案していました。外国為替などの市場系システムも担当領域でした。
ベンダー側から見ると、情シスは「決める人」です。技術がわかる情シスがいる会社は、要件が早く固まります。結果としてプロジェクトも速く進みます。
一方、ベンダーへの丸投げになると要件が決まりません。そのため見積もりが膨らみ、稼働後の運用も属人化します。
だから採用側が情シスに求めているのは、「作れること」よりも「決められること」です。SIer・SES出身者は、この点でそのまま評価されます。顧客折衝や見積もり査定の経験は、そっくり転用できるからです。

情シスの年収相場|平均・担当領域別・企業規模別データ【2026年最新】
転職する際に最も気になるポイントのひとつが年収です。公開データをもとに実態を解説します。
情シス・社内SEの平均年収
まず前提として、日本標準職業分類に「情シス」「社内SE」という職種区分はありません。そのため公的統計では、担当領域に応じて複数の職種に分散して集計されています。情シス転職で参考になるのは、次の4区分です。
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の職種別集計(男女計・企業規模10人以上)から、実数を並べます。年収換算は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出しました。
| 職種(小分類) | 平均年齢 | 年収換算 | 中位数(所定内・月額) |
|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者 | 38.3歳 | 約889万円 | 44.6万円 |
| 電気・電子・電気通信技術者 | 42.1歳 | 約704万円 | 36.5万円 |
| その他の情報処理・通信技術者 | 42.2歳 | 約610万円 | 34.0万円 |
| ソフトウェア作成者 | 37.1歳 | 約578万円 | 33.0万円 |
ここで注目したいのが、平均と中位数の差です。システムコンサルタント・設計者の所定内給与は、平均50.7万円に対して中位数が44.6万円でした。つまり一部の高年収層が平均を押し上げています。
分布はさらに極端です。同じ職種の第1・十分位数は28.1万円、第9・十分位数は83.1万円でした。上下でおよそ3倍の開きがあります。だから「情シスの平均年収」という一つの数字で自分の相場を判断すると、大きく外します。
担当領域別の年収差
情シス内でも担当する技術領域によって年収差があります。ヘルプデスク・IT運用サポートは、未経験から3年目で300〜420万円が目安です。インフラ・ネットワーク担当なら450〜580万円まで上がります。また、セキュリティ担当は550〜700万円以上が見込めます。SaaS管理・コーポレートITは500〜650万円で、特にスタートアップに多い水準です。さらにDX推進・CIO直下では、マネジメント込みで600〜900万円超も想定されます。
| 担当領域 | 年収レンジ |
|---|---|
| ヘルプデスク・IT運用サポート(未経験〜3年目) | 300万円〜420万円 |
| インフラ・ネットワーク担当 | 450万円〜580万円 |
| セキュリティ担当(CISSP保有等) | 550万円〜700万円以上 |
| SaaS管理・コーポレートITエンジニア | 500万円〜650万円 |
| DX推進・CIO直下ポジション | 600万円〜900万円超 |
企業規模・業種による年収差
大企業の情シスは年収500万円台が中心です。一方でメガベンチャーや外資系では、コーポレートエンジニアとして700〜900万円超の求人も増えています。成長期のスタートアップや外資系への転職では、SIer時代より大幅な年収アップも期待できます。
| 企業タイプ | 年収レンジ |
|---|---|
| 大企業 | 500万円台が中心 |
| メガベンチャー・外資系 | 700万円〜900万円超 |
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情シスで年収を上げる3つの方法
同じ情シスでも、担当する領域・業界・ポジションの選び方で年収は大きく変わります。SIer・SES出身者が年収を上げる代表的な方法は次の3つです。
- 高単価の技術領域へシフトする:セキュリティやDX推進は、ヘルプデスク層より年収レンジが大きく上がります。そのため運用保守から企画・セキュリティ領域へ経験を広げるのが有効です。
- 業界・企業規模を選ぶ:大企業の情シスは500万円台が中心です。一方で外資系やメガベンチャーには、700〜900万円超の求人も増えています。つまり成長企業への転職なら、大幅な年収アップも狙えます。
- マネジメント経験を積む:情シスリーダー・マネージャーへの昇格は年収レンジの上限を押し上げます。SIer時代のプロジェクト管理経験は評価されやすいポイントです。
さらに詳しい担当領域別・業種別の年収は、社内SEの年収を解説した記事をご覧ください。
情シス転職で評価されるスキルと資格
さらに、SIer・SES出身者が情シスへ転職する際、どのスキルや資格がアピールになるのかを確認しましょう。
即戦力として評価される技術スキル
多くの情シス採用担当が重視するスキルは次のとおりです。ネットワーク設計・運用(TCP/IP・VLAN等)とWindowsサーバー管理は基本スキルです。加えて、クラウドインフラの構築・運用経験も評価されます(AWS/Azure/GCP等)。SaaS管理(Microsoft 365・Google Workspace等)も重要です。さらに、情報セキュリティ対策(脆弱性管理・インシデント対応)も重視されます。IT資産管理やベンダーマネジメントの経験もアピールになります。
取得しておきたいIT資格
なお、情シスへの転職前後で取得を目指したい資格を紹介します。基本情報技術者・応用情報技術者(IPA)はIT全般の基礎力と上流設計力の証明として有効です。AWS認定資格(SAA/SAP等)はクラウド化が進む企業への転職に強力なアピールになります。Microsoft Azure認定資格は大企業・官公庁系の情シスで重宝されます。CCNAはネットワーク担当として転職する際の基本資格です。CISSP・CISA・情報処理安全確保支援士はセキュリティ分野で高収入を狙う際に有効です。SIer在職中に1〜2つ取得しておくと、転職活動で大きなアドバンテージになります。
SIer・SES出身者だからこそ評価されるポイント
また、SIerで培った経験は情シスでも高く評価されます。システム構築やベンダーコントロールが代表例です。とりわけ複数ベンダーをまとめた移行案件の経験は効きます。Azure AD / AWS IAM によるアクセス管理の設計・構築経験も評価されます。さらに、セキュリティ要件定義や対策導入の経験も強みになります。加えて予算管理・コスト削減の実績があれば、即戦力として採用されやすくなります。

情シス転職のタイミングと求人市場の動向
つまり、転職のタイミングは市場の動向と自身の経験年数を踏まえることが重要です。
転職しやすい経験年数とタイミング
SIer・SES出身者の場合、実務経験3〜5年を超えたころが最も転職しやすいタイミングです。インフラ構築・サーバー運用・セキュリティ対策などの具体的な成果を説明できるようになるためです。また情シスの採用は4〜5月・9〜10月の転職シーズンに集中する傾向があります。期初に向けた増員求人は、1〜2ヶ月前から動き出します。したがって2〜3月または7〜8月の着手が効果的です。
情シス求人の特徴と探し方
なお、情シスの求人は非公開案件の割合が高く、転職サイトの一般公開求人だけでは見逃すリスクがあります。そのため、社内SE・情シス領域に強いエージェントを複数使ってください。非公開求人へのアクセスを確保できるかどうかが、成否を分けます。
ヘルプデスクからのキャリアアップ動線
例えば、ヘルプデスクで1〜2年の経験を積むとします。そこからインフラ担当やセキュリティ担当へ進む事例は多くあります。「ヘルプデスク→ネットワーク担当→インフラ→セキュリティ」は、情シス内で一般的な成長動線です。そのうえで資格取得を並行させれば、5〜7年後には年収600万円以上も見えてきます。
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情シス転職でよくある質問
最後に、SIer・SES出身の方から実際によく寄せられる質問をまとめます。
Q. 転職回数が多いと情シス転職では不利になりますか?
エンジニアに限れば、見られ方は緩和されつつあります。実際、2年ほどの周期で現場を変えながら、現在はAI系ベンダーで相応のポジションに就いている方もいます。
ただし、回数そのものより重要な論点があります。「なぜこのアーキテクチャ・技術選定にしたのか」に答えられるかどうかです。すでに走っているサービスに乗るだけだと、ここで詰まる方が多くいます。逆に、ゼロから立ち上げた経験があれば強く評価されます。
Q. フルリモートの情シス求人は減っていますか?
減っています。現場レベルではリモートを望む声が多いものの、経営側の見方は異なるためです。雑談から生まれる気づきを長期的な資産と捉える経営者が多く、出社回帰の流れは続いています。
ただし、例外もあります。たとえば大阪の大手インフラ系企業のケースです。自社独自のセキュリティ環境でクラウド開発を行う案件が、フルリモート・フルフレックスで動いています。つまり「全部が出社に戻った」わけではありません。
Q. 客先常駐の経験は情シスで評価されますか?
評価されます。というのも、常駐先で求められるのは調整力と説明責任だからです。この2つは、情シスがベンダーや事業部門と向き合うときにそのまま必要になります。
職務経歴書では、担当した工程よりも「誰と、何を、どう決めたか」を書いてください。そのほうが情シスの採用担当には伝わります。
Q. 情シスへ移ると年収は下がりますか?
一律には下がりません。ただし、企業規模と担当領域の影響が非常に大きい点は押さえてください。賃金構造基本統計調査でも、同じ職種で上下3倍の開きがありました。
そのため、内定後の比較では提示額だけを見ないことをおすすめします。等級制度と昇給の実績まで確認すると、3年後の差が見えてきます。
Q. 資格は転職前に取っておくべきですか?
取れるなら有利です。しかし、資格の取得を理由に転職時期を先送りする必要はありません。前掲の方のように、実務の幅を広げるほうを優先する判断も成立します。
目安として、在職中に基本情報技術者やCCNAなどを1〜2つ取れていれば十分です。あとは実績の言語化に時間を使ったほうが、通過率は上がります。
Q. 未経験から情シスへ転職できますか?
可能です。ただし、いきなり企画ポジションに入るのは現実的ではありません。ヘルプデスクや運用保守から入り、SaaS管理やIT資産管理へ範囲を広げる経路が一般的です。
詳しくはヘルプデスクからのキャリアアップを解説した記事もあわせてご覧ください。
執筆・監修者
LXキャリア 転職支援チーム
- CA/RA 経験豊富な現役人材紹介のプロ。年間数十件のマッチングを成立
- 人材ビジネスを0→1で立ち上げ、事業としての人材支援の仕組みをゼロから構築
- 情シス・社内SE・コーポレートIT領域の転職支援実績多数
※ 相談・登録は完全無料です
この記事の一次情報源
- 当社(株式会社LX)が2026年に実施したITエンジニア・情シス職の転職相談面談(複数名)。掲載にあたり、氏名・企業名は伏せ、年齢は年代表記、年収は概数に丸めています。
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別集計(職種第1表・第17表)— https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
- 厚生労働省「毎月勤労統計調査」— https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)情報処理技術者試験 — https://www.ipa.go.jp/shiken/