経理から経営企画へ移りたいと考えたとき、自分の経験がどこまで通用するかは気になるところです。そこでこの記事では、評価される経験と足りない経験、そして移り方のルートを整理します。
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
実は、経理を5年やって、最近は予算づくりも少し手伝っています。ただ、このまま経理を深めるか、経営企画に寄せるかで迷っています。
LXキャリア
その迷いは、面談でもよく伺います。予算に関わり始めた今は、むしろ考えどきなんです。まずは経理の経験がどこで活きて、どこが足りないのかを整理しましょう。
お願いします。
なお、数字はすべて当社の求人データの集計をもとにしています。
経理から経営企画へ移る前に押さえたい違い
まず、二つの仕事の違いをつかんでおきましょう。経理は、そもそも起きたことを正しく数字にする仕事です。一方で経営企画は、これからの数字をつくる仕事です。
たとえば経理は、月次や年次の決算を締めます。それに対して経営企画は、予算や中期経営計画を立てます。さらに、計画と実績のずれを読み解き、経営陣の判断材料にします。
つまり、同じ数字を扱っていても、向いている時間の方向が逆です。ただし、計画は実績の数字がなければ立てられません。だからこそ、経理の経験は経営企画の土台になります。
また、繁忙期も変わります。たとえば経理は決算の時期が山ですが、経営企画は予算や計画を作る時期が山です。したがって、一年の働き方のリズムも違ってきます。
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経営企画の求人の約6件に1件が、経理・会計の経験を応募条件にしている
では、経理から経営企画へ移る人は少数派なのでしょうか。そこで、当社の求人データで応募条件を調べました。
| 応募条件の「必須」に含まれる経験 | 件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| コンサルティング | 691件 | 24.4% |
| 事業企画・事業開発 | 512件 | 18.1% |
| 経営企画 | 494件 | 17.4% |
| 経理・会計・決算・財務 | 482件 | 17.0% |
| 管理会計・予実・予算 | 198件 | 7.0% |
| M&A | 158件 | 5.6% |
出典:当社が利用するエージェント向け求人データベースの「経営企画・経営戦略」求人のうち、中途・正社員で提示年収のある2,832件(2026年9月20日時点)。また、応募条件の必須欄に含まれる語で分類しました。ただし、キーワードによる判定のため誤りを含みます。
その結果、経理・会計の経験を必須に挙げる求人は17.0%ありました。実は、これは「経営企画の経験」を求める求人とほぼ同じ割合です。
要するに、経理出身者を最初から想定している求人は珍しくありません。さらに、コンサルや事業企画の経験を求める求人も多く、入口は一つではないとわかります。
ただし、管理会計や予算の経験まで求める求人は7.0%に限られます。つまり、経理の中でも「これからの数字」に触れた経験があると、応募できる求人の幅が広がります。
経理の経験でも評価されやすい4つの仕事
とはいえ、経理の仕事なら何でも同じように評価されるわけではありません。特に評価されやすいのは、次の4つです。
- 予算策定:たとえば部門から数字を集め、会社全体の予算にまとめた経験
- 予実差異の分析:特に計画と実績のずれの理由を調べ、説明した経験
- 管理会計:部門別や事業別の損益を作り、さらに改善の材料にした経験
- IPO準備や開示:また、事業計画や開示資料を作った経験
つまり、いずれも「これからの数字」に関わる仕事です。もっとも、全部そろっている必要はありません。たとえ一つでも実績があれば、職務経歴書の中心に置けます。
決算を正確に締められることは、経営企画でも強みになりますか?
LXキャリア
もちろん土台にはなります。ただ、経営企画で見られるのは、計画と実績がなぜずれたのかを説明できるかなんです。管理会計や予算の仕事に少しでも関わっていれば、そこが一番の武器になりますよ。
つまり、差異の分析をした経験を前に出せばいいんですね。
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経理から経営企画へ進むときに足りない経験
次に、経理の経験だけでは足りない部分を見ていきます。とはいえ、評価される経験の裏返しなので、ここを押さえれば準備の方向が見えてきます。
売上や事業の数字を「つくる」経験
そもそも経理は、集まった数字を正しく整えるのが仕事です。しかし経営企画では、数字そのものを動かす打ち手まで求められます。
たとえば、この事業の利益率を上げるにはどうするかという問いです。具体的には、どの費用を削り、どこに投資するかを考えます。そのため、事業の中身を知る必要があります。
たしかに数字を整えるのは得意です。それだけでは足りないんでしょうか。
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実は、面談でお会いした管理部門の方も、同じ壁に当たったと話していました。管理会計の仕組みは作れたのに、売上をどう伸ばすかの提案までは踏み込めなかったそうです。つまり、数字を整える力と数字をつくる力は別物なんです。
では、事業の側にも入っていかないといけないんですね。
LXキャリア
はい。とはいえ、いきなり全部でなくて大丈夫です。たとえば営業や事業部の会議に一度出るだけでも、数字の見え方が変わりますよ。
経営陣や事業部への説明と調整
また、経営企画は社内の調整役でもあります。たとえば事業部の数字を集め、経営陣に説明します。さらに、ときには計画の見直しをお願いします。
そのため、正しい資料を作るだけでは不十分です。むしろ、相手が納得して動けるように、要点を短く伝える力が求められます。
もちろん、経理でも監査法人や経営陣への説明はあります。したがって、その経験を「誰に何を説明し、どう動いてもらったか」の形で話せると強みになります。
会社全体を一枚で見る視点
さらに、経営企画では会社全体を見渡す視点が欠かせません。たとえば経理は勘定科目ごとに正しさを確かめますが、経営企画は事業ごとの稼ぐ力を比べます。
つまり、細部の正しさより全体の優先順位を決める仕事です。そこで、決算書を読むときも「どの事業に次の一手を打つべきか」を考える癖をつけておくと役立ちます。
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経理から経営企画への4つのルート
では、具体的にどう移ればよいのでしょうか。ここでは代表的なルートを4つ紹介します。
なお、どのルートが合うかは、今の会社の規模や仕組みによって変わります。そこで、それぞれの向き不向きと注意点を順に見ていきます。
①今の会社で予算や管理会計を取りにいく
まず、最もリスクが低いのは、今の会社で経営企画に近い仕事を増やす方法です。たとえば、予算の取りまとめや予実の分析を自分から引き受けます。
こうして経験を積めば、社内異動の候補にもなります。さらに転職するときも、実績として語れる材料が増えます。ただし、異動の枠があるかどうかは会社次第です。
そこで、まずは上司に「予算の取りまとめを手伝いたい」と伝えてみましょう。実際、自分から手を挙げると、任される範囲は広がりやすくなります。
②小規模の上場企業で経理と経営企画を兼ねる
次に、規模の小さい上場企業で、経理と経営企画を兼ねる方法があります。実際、面談でも大きな会社ほど経理の外へ仕事を広げにくいという話がよく出ます。
逆に、小さな会社なら一人が担う範囲は広くなります。その結果、計画づくりにも関わりやすくなります。ただし、最初の年収は今と横ばいになることもあります。
③IPO準備企業で計画をつくる側に入る
また、上場を目指す会社では、事業計画や予算の仕組みをゼロから作ります。そのため、経理の担当者が計画づくりに深く関わる場面が多くあります。
一方で、最近は上場の審査が厳しくなっています。したがって、上場の時期が読みにくい点は事前に理解しておきましょう。
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④管理会計やFP&Aを経由する
最後に、管理会計やFP&Aの仕事を経由する方法です。ちなみにFP&Aとは、予算や業績の分析で経営を支える役割のことです。
実は、会社によってはこの仕事を「経営企画」と呼びません。それでも中身は近く、データ分析を強みにした経営企画へ進む人もいます。
ちなみに、森岡さん自身は、どうやって経営企画の仕事に関わったんですか?
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前職のベンチャーでは、経理財務の責任者をしていました。ただ、経営企画というポジションがそもそもなかったんです。そこで「来年の計画はこう立てないといけないよね」と、自分で作り始めたのが最初でした。
LXキャリア
実は、ポジションがないなら小さく始めてしまうのも一つの入り方なんです。
つまり、社内で取りにいくルートもあるんですね。
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経理から経営企画へ移ると年収はどう変わる?
続いて、年収の変わり方を求人データで見てみましょう。ここでは、応募条件の違いごとに提示年収の中央値を比べました。
| 求人の応募条件 | 件数 | 提示年収の中央値 | 中央の50%の範囲 |
|---|---|---|---|
| 全体 | 2,832件 | 800万円 | 625〜1,000万円 |
| 経理・会計の経験は求めるが、経営企画の経験は求めない | 292件 | 750万円 | 573〜1,000万円 |
| 管理会計・予実・予算の経験を求める | 198件 | 818万円 | 700〜1,000万円 |
| 経営企画の経験を求める(経理・会計は求めない) | 304件 | 875万円 | 750〜1,000万円 |
| M&Aの経験を求める | 158件 | 1,000万円 | 804〜1,100万円 |
なお、提示年収は、募集時の年収の下限と上限の中間値です。募集条件であり、実際に支払われた額ではありません。また、役職の高さの違いも差に含まれます。
経理経験を入口にした求人と、経営企画経験を求める求人の差
まず、経理の経験を入口にした求人の中央値は750万円でした。つまり、全体の800万円より少し低い水準です。
一方で、経営企画の経験を求める求人は875万円でした。要するに、経営企画の経験を積んだあとのほうが、求人の水準は一段上がります。
したがって、最初の転職で年収が横ばいでも、経験を取りにいく価値はあります。さらに、M&Aの経験を求める求人は1,000万円と高く、その先の選択肢も広がります。
求人データを見るときの注意点
ただし、これは求人の条件を比べた数字です。そのため、同じ人が移ったときに必ず上がるという意味ではありません。要は、どの経験が評価されやすいかの目安として見てください。
また、年収は会社の規模や地域、役職によっても大きく変わります。そのため、自分の場合はいくらになりそうかは、個別に確かめるのが確実です。
👉 あわせて読みたい:経営企画の年収相場|1,000万円に届く人と届かない人の違い
経理のうちに準備しておきたい4つのこと
最後に、経理として働いているうちにできる準備をまとめます。しかも、いずれも今の職場で今日から始められることです。
予実のずれを「理由まで」説明する
一つ目は、予算と実績の差を理由まで調べる習慣です。たとえば、広告費が予算を超えたという報告で終わらせません。むしろ、なぜ超えたのかを担当部署に確かめます。
そして、こうした確認を続けると、数字の裏にある事業の動きが見えてきます。その結果、面接でも具体的な話ができるようになります。
事業部と話す機会を自分から取りにいく
二つ目は、事業部の人と話す機会を増やすことです。たとえば会議に同席するだけでも、数字の裏にある事情がわかるようになります。
また、経費の申請や請求の相談を受けたときも、事業の話を聞くチャンスです。そこで一言「この案件はどんな狙いですか」と聞くだけでも、視点が変わります。
職務経歴書に「数字で何を判断させたか」を書く
三つ目は、職務経歴書の書き方を変えることです。つまり「月次決算を担当」とだけ書くのではありません。そのうえで、作った数字が、経営のどんな判断に使われたかまで書きましょう。
たとえば「事業別の損益表を毎月作り、不採算事業の見直しの材料として経営会議に出した」と書きます。こう書けば、経営企画に近い経験だと読み手に伝わります。逆に、作業の名前だけを並べると、経理の担当業務としてしか読まれません。
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CFOへの道としても考えておく
四つ目は、長い目でのキャリアを意識することです。実際、面談でも話題になりますが、最近はCFOが経営企画も担う会社が増えています。
だから、経理から経営企画への経験は、将来のCFO候補としての強みにもなります。そこで、まずは今の自分の市場価値を知るところから始めましょう。
では、自分の経験だと、経営企画でどのくらいの年収になるのか知りたいです。
LXキャリア
たとえば経営企画の年収診断なら、担当業務や役職から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、どの経験を前に出すかを一緒に整理しましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
👉 あわせて読みたい:経営企画への転職 完全ガイド|仕事内容・年収・向き不向き・入り方を総まとめ
まとめ:経理から経営企画へは「これからの数字」に関わる経験から
経理から経営企画へ移る道は、決して特別なものではありません。では、要点をまとめます。
- 経営企画の求人の約6件に1件が、経理・会計の経験を応募条件にしている
- 特に評価されやすいのは、予算策定・予実分析・管理会計・IPO準備の経験
- 一方で足りなくなりやすいのは、売上をつくる視点と社内の調整力
- ルートは、社内・小規模上場企業・IPO準備企業・FP&A経由の4つ
- 最初の年収は横ばいでも、経営企画の経験を積むと求人の水準は上がる
なお、経理としてのキャリアの全体像は、次の記事で詳しく解説しています。
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📌 この記事の一次情報源
- 当社が利用するエージェント向け求人データベースの「経営企画・経営戦略」求人2,832件の集計(2026年9月20日時点、中途・正社員・提示年収ありに限定)
- 当社が2026年に行った経理・管理部門の方との面談の記録(個人が特定されないよう、年代・職種以外は伏せて再構成)
- 執筆者が前職で経理財務の責任者として経営企画の業務を担当した経験
