情シス

情シスの将来性は?AI・SaaS時代に生き残るキャリア戦略

「情シスは不要になる」と言われる時代に、本当に将来性はあるのか。AI・SaaS時代でも情シス・社内SEが評価される3つの根拠と、20代・30代が今取るべきキャリア戦略を解説します。

✅ この記事でわかること

  • 「情シス不要論」が広がる理由と、実態とのギャップ
  • AI・SaaS時代でも情シスの将来性が明るい3つの根拠
  • 20代・30代の情シスが生き残るために身につけるべきスキル
  • 担当領域別の年収相場と、30代までに狙いたいキャリアパス

SaaS化と生成AIの普及で「情シスはいらなくなる」という声を耳にする機会が増えました。実際、Microsoft 365やGoogle Workspaceは広く普及しました。そのためサーバー運用やヘルプデスクの負荷は下がっています。一方で、現場で働く情シス担当者の多くは、むしろ業務量が増え続ける現実に向き合っているはずです。

本記事では、情シスの将来性をテーマにします。そのうえでAI・SaaS時代に評価される人材像を整理します。20代・30代で「このまま今の会社に残るべきか」と悩む方に向けて、判断材料を提供します。

結論|情シスの将来性はAI・SaaS時代でも明るい

端的に言うと、情シスの将来性は明るい方向に動いています。ただし「情シスという職種が安泰」という意味ではありません。役割の重心が、運用から統制・企画へ移っているという意味です。そのため、同じ部署にいても評価のされ方が変わりつつあります。

なぜ「情シス不要論」が出てくるのか

不要論の背景は2つあります。SaaS導入による定型業務の自動化と、生成AIによる問い合わせ対応の効率化です。たしかに、メールサーバーの構築やアカウント発行は定型作業です。だからクラウドサービスがほぼ巻き取りました。そのため、運用オペレーターとしての情シス像は縮小傾向にあります。

ただし、これは「情シスの仕事が消える」のではなく、「役割が変化している」という話です。むしろ、SaaS統制やセキュリティ、DX推進といった上位レイヤーの仕事は急増しています。

実際、SaaS導入直後は業務量が減って見えます。ただし、複数サービスの連携やセキュリティ管理で新たな業務が生まれるケースが大半です。

実際には、人が薄いのは「決める側」だ

需要の話を、公的統計の実数で確認します。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の職種別集計には、職種ごとの労働者数が載っています。

職種(小分類) 労働者数 年収換算
ソフトウェア作成者 約81.8万人 約578万円
電気・電子・電気通信技術者 約33.5万人 約704万円
その他の情報処理・通信技術者 約21.5万人 約610万円
システムコンサルタント・設計者 約17.4万人 約889万円

この4区分を合計すると、およそ154万人です。そのうち上流にあたるシステムコンサルタント・設計者は約11%しかいません。一方でソフトウェア作成者は、全体の半分以上を占めています。

ここが将来性を考えるうえでの出発点になります。というのも、生成AIが最初に置き換えているのは「仕様どおりに作る」工程だからです。つまり人数の多い層ほど、代替の圧力を受けやすい構造になっています。

逆に、何を作るかを決める層は人数が薄いままです。しかも年収換算では約310万円の差がついています。したがって情シスの将来性は、業界の伸びではなく自分がどちらの層にいるかで決まります。

なお、日本標準職業分類に「情シス」「社内SE」という職種区分はありません。そのため、これらの数字は担当する工程の目安として読んでください。

「情シス不要論」の3つの誤解

情シスのSaaS統制 抽象イメージ

不要論を冷静に分解すると、いくつかの誤解が見えてきます。ここでは代表的な3つを取り上げ、現場の実態と照らし合わせて整理します。

SaaS化で運用負荷は下がるが、ガバナンスは複雑化

SaaSは導入が簡単な反面、部門ごとに勝手に契約される「シャドーIT」を生みやすい構造があります。気づけば社内で20以上のSaaSが乱立します。そのためID管理やデータ連携が破綻するケースも少なくありません。

そのため、SaaS統制とアカウント管理を主導する役割は、むしろ重要性を増しています。たとえばSSOやSCIM連携の設計です。またライセンス最適化も同様に、専門知識を持つ情シスの出番になります。

また契約管理を怠れば、不要なライセンス費用が積み上がります。この「SaaS浪費」も企業課題になっています。

AIは情シス業務を代替するのか?

生成AIは確かに、問い合わせ対応のチャットボット化や、ナレッジ検索の自動化に貢献しています。しかし、AIに任せるためにはルール設計と運用ガバナンスが必要です。AIを「導入する側」「教育する側」に立つのは、結局のところ情シス担当者です。

また、AIの誤回答や情報漏洩のリスク管理には、セキュリティ・コンプライアンスの観点が欠かせません。ここは人間の判断が必要な領域であり、当面はAIに代替されにくいと考えられます。

▶ あわせて読みたい:情シスへの転職完全マップ|SIer・SESから抜け出す現実解

つまり、AIを導入する側・管理する側としての情シスの役割は、むしろ増えていく方向にあります。

内製化トレンドが情シスの価値を上げている

近年は、ベンダー丸投げから内製化に舵を切る企業が増えています。Webアプリやワークフローを自社の情シスが構築するケースも一般的になりました。ローコード・ノーコードツールも普及しました。だから業務改善を自走できる情シスの市場価値は上がっています。

結果として、コーポレートITやDX推進の求人が増えています。そこでは内製スキルを持つ人材の獲得競争が起きています。

ベンダー任せだった時代と比べ、社内に技術的な意思決定権を持つ人材への需要は明確に高まっています。

生き残る情シスに共通する3つのスキル

情シスのゼロトラストセキュリティ

将来性のある情シスとして評価されるには、運用オペレーターからの脱却が必要です。次の3領域でスキルを伸ばすことが現実的な戦略になります。いずれも転職市場で高く評価される領域です。

クラウド・SaaS統制スキル

AWS・Azure・Google Cloudのいずれかで実務経験を積んでください。もはや必須に近い条件です。とくにIAM設計、ネットワーク設計、コスト最適化の観点は、面接でも頻繁に問われます。

また、SaaS管理ツールの運用経験は、コーポレートIT職で強い武器になります。Okta・JumpCloud・Mosyle・Jamfなどが代表例です。担当領域が広がれば年収レンジも上がりやすくなります。

資格取得だけでなく、実際の移行プロジェクトに携わった経験があると評価が大きく変わります。

情報セキュリティ・ゼロトラスト

リモートワーク常態化で、境界型からゼロトラストへの移行が進んでいます。EDR、SASE、SIEM、ログ監視といった領域は、専門人材の不足が深刻です。情報処理安全確保支援士やCISSPなどの資格保有者は、転職市場で高い評価を受けています。

セキュリティインシデントへの対応経験は、転職市場でも即戦力として強くアピールできる材料です。

DX推進・業務改革のファシリテーション

純粋な技術スキルだけでは足りません。さらに業務部門の課題を引き出し、投資の優先順位を決める力も要ります。プロジェクトマネジメントやベンダーコントロールの経験は、30代以降のキャリアアップに直結します。

▶ あわせて読みたい:社内SEの年収は本当に上がる?業界・規模別データ徹底解説

この役割は、単独のIT部門経験だけでなく、他部門との折衝経験が評価の鍵を握ります。

年収相場とキャリアパスの実態

情シスの年収は担当領域とポジションで大きく変わります。ここでは、転職市場のデータをもとに相場感を整理します。

担当領域別の年収レンジ

前掲のとおり、公的統計では上流ほど年収が高くなっていました。そのうえで、当社が実際に扱っている求人の水準を担当領域別に整理すると、次のような傾向になります。なお、以下は求人票ベースの目安であり、公的統計の平均値とは基準が異なります。

担当領域 年収レンジ
ヘルプデスク・運用 350万円〜500万円
インフラ・ネットワーク 450万円〜700万円
セキュリティ・ガバナンス 550万円〜900万円
DX推進・コーポレートIT 500万円〜850万円
CIO・情シス部長クラス 900万円〜1,500万円

このように、専門性を持つほど年収レンジは広がります。特にセキュリティとDX推進は、希少性が高いため上限が伸びやすい傾向です。

30代までに目指したいポジション

20代のうちは、運用業務に加えて1つの専門領域を作ることが重要です。「クラウド設計が任せられる」といった軸を持つと、30代での転職市場価値が大きく変わります。

30代では、複数領域をまとめるマネジメント経験や、業務部門との折衝経験が評価されます。コーポレートITマネージャーや情シス部長候補が代表例です。しかも30代後半からの転職でも十分に狙えます。

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面談現場から:AIで消えた枠と、増えた枠

ここからは、当社が2026年に実際にお話をうかがったエンジニアの方のケースを紹介します。情シスの将来性は一般論で語られがちですが、現場の当事者はもっと切実な言葉で話していました。

減ったのはジュニア枠、増えたのは「判断する人」

20代後半でチームのリードを務めている方です。この方が最初に挙げた課題感は、採用市場の変化でした。

ジュニア層の枠が一気に減った、という実感です。代わりに企業が採りにいっているのは、AIに代替されにくい上流レイヤーだといいます。

「AIよりちょっと優秀でいよう、という考え方だと時代に飲まれてしまうと思っています」

つまりこの方の戦略は、スキルを上げることではありません。AIとバッティングしない領域へ舵を切ることです。

当社からも、同じ方向の見立てをお伝えしました。仕様どおりに作る工程は、すでに代替が進んでいます。そのため需要が伸びているのは、出てきたアウトプットの良し悪しを判断できる役割です。品質保証を担うQAエンジニア的な立ち位置が、その典型といえます。

ただし、この動きが現場に落ちてきたのは直近の半年から1年です。だから業種や企業規模によっては、まだキャッチアップの途中です。情シスにとっては、ここが準備期間になります。

情シスの武器は「AIが学習していない社内データ」

社内にしかない情報を集めて整える取り組みを進めているところでした。狙いは明確です。

「AIはオープンな情報からしか答えを出せません。だから、いかにネットにない情報で答えを出すかが強みになると考えています」

これは情シスの立場と、そのまま重なります。というのも、社内の運用ルールや過去のインシデントは公開情報ではないからです。ベンダーとの交渉履歴も同様です。つまり情シスは、AIが持っていないデータの上に座っています。

ただし、この方は自分の戦略の弱点も率直に語っていました。

「個人情報や機微情報をAIに渡せない、という前提があるから成り立つ話です。渡せば安全に守ってくれる世界が来たら、破綻してしまいます」

実際、社内ナレッジを扱う仕組みは進化しています。たとえばローカルLLMやRAG検索を使い、社内のノウハウからチェックリストを生成する構成です。技術的には、すでに射程に入りつつあります。

したがって「社内データを持っている」だけでは、長期の防波堤になりません。そのデータをどう運用ルールに落とすかまで担って、初めて代替されにくくなります。

働き方の条件は、業界ではなく案件単位で決まる

もう一つ、この方は働き方についても悩んでいました。勤務先が週3出社から週4出社へ変わる予定だったためです。

当社の見立てもお伝えしました。フルリモートの求人は、実際に減っています。というのも、雑談から生まれる気づきを長期的な資産と捉える経営者が多いからです。現場の希望と経営の判断は、ここで食い違います。

ただし、例外もあります。たとえば大阪の大手インフラ系企業のケースです。自社独自のセキュリティ環境でクラウド開発を進める案件が動いています。しかもフルリモート・フルフレックスです。

つまり働き方の条件は、業界ではなく案件やチーム単位で決まりつつあります。そのため求人票の「リモート可」だけでは判断できません。制度があっても、周囲が誰も使っていなければ実質的に使えないからです。

面接では、制度の有無ではなく利用実態を聞いてください。この一問で、入社後のギャップはかなり減らせます。

20代・30代が今取るべきアクション

情シス DX推進チームの会議風景

将来性を意識するなら、待ちの姿勢では機会を逃します。ここでは、今日から始められる現実的なアクションを提示します。

取得すべきIT資格

体系的なスキル証明として、以下の資格は転職市場で評価されやすいです。

なお、複数の資格を並行して取得するより、1つを深く極めるほうが専門性のアピールとしては効果的です。

  • 基本情報技術者・応用情報技術者:IT基礎の証明として有効
  • AWS Certified Solutions Architect:クラウド設計の登竜門
  • 情報処理安全確保支援士:セキュリティ専門職の資格
  • CISSP:グローバルで通用するセキュリティ資格
  • PMP:プロジェクトマネジメントの実務証明

資格はあくまで補強であり、実務経験と組み合わせて初めて価値を発揮します。資格取得を目的化せず、実務に直結する領域から優先的に取得していきましょう。

転職市場でアピールすべき実績

面接で評価されるのは、具体的な数字を伴う実績です。定量的なアウトプットを言語化しましょう。たとえば「SaaSコストを月◯万円削減」「セキュリティインシデント対応で◯件解決」といった実績です。

また、社内で完結する仕事だけでは足りません。むしろ業務部門との横断プロジェクト経験が強く効きます。情シスの将来性は、こうした実績を蓄積した個人にこそ開かれています。

▶ あわせて読みたい:社内SE転職の完全ガイド【20代・30代版】準備から内定まで全手順

エピソードを語る際は、課題→行動→結果の順で整理すると、面接官にも伝わりやすくなります。

まとめ|情シスの将来性は「役割の変化」を捉えた人に開かれる

情シス不要論は、運用オペレーター時代の情シス像を前提にした議論です。SaaSとAIの普及で定型業務は減ります。一方、ガバナンス・セキュリティ・DX推進といった上位レイヤーの需要は拡大しています。

将来性のある情シスとして評価されるかどうか。それは運用から戦略・統制レイヤーへ移れるかで決まります。20代・30代のうちに、クラウド・セキュリティ・内製化のいずれかで強みを作っておきましょう。市場価値は確実に伸びていきます。

「今の会社で経験できる領域に限界がある」と感じているとします。その場合は、転職市場の現在地を一度確認してみてください。


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よくある質問

情シスの将来性やキャリア戦略について、よく寄せられる質問をまとめました。

Q. 情シスはAIに完全に代替されますか?

完全代替は考えにくいです。定型業務は自動化が進みますが、ガバナンスやリスク管理、業務部門との調整は引き続き人が担います。

Q. 未経験からでも情シスの将来性を活かせますか?

可能です。まずは運用業務で基礎を固めてください。そのうえでクラウドやセキュリティなど、1つの専門領域を作ります。

Q. 中小企業の情シスでもキャリアアップできますか?

むしろ中小企業は幅広い業務を任されやすく、専門性と汎用スキルの両方を早く積める環境ともいえます。

📌 この記事の一次情報源

  1. 当社(株式会社LX)が2026年に実施したITエンジニア・情シス職の転職相談面談(複数名)。掲載にあたり、氏名・企業名は伏せ、年齢は年代表記、年収は概数に丸めています。
  2. 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別集計(職種第1表・第17表)— 厚生労働省サイト
  3. 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験 — IPAサイト
  4. 経済産業省「DXレポート」ほかデジタル人材関連資料 — 経済産業省サイト
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