「同期はどんどん昇給しているのに、情シスの自分だけ何年も年収が変わらない」
「資格も取ったし経験も積んだはずなのに、なぜか評価に反映されない」
そう感じて、キャリアに不安を抱く社内SEやコーポレートIT担当者は少なくありません。この記事ではまず、情シスの年収が上がりにくい構造的な理由を実数から解き明かします。そのうえで社内・転職・スキルの3つの軸から、年収を上げる具体策までを整理しました。IT部門で運用・管理・企画を担う方が、次の一手を決めるための材料になるはずです。
この記事でわかること
- 情シスの年収が「低い」と言われる本当の実態
- 情シスの年収が上がらない5つの構造的な理由
- 社内・転職・スキルの3軸で年収を上げる具体策
- 年収が上がりやすい転職先の見分け方
情シスの年収は本当に低いのか?データで見る実態

まず押さえたいのは、情シスの年収は「低い」と一括りにはできない点です。担当する役割や企業規模によって、相場は大きく変わります。そのため、平均値だけを見て判断すると実態を見誤ります。
むしろ重要なのは、いまの年収が自分の役割や経験に対して適正かどうかという視点です。以下、公的統計で切り分けていきます。
全職種と比べた情シスの年収水準
まず国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円でした。正社員に限れば545万円です。情シスやヘルプデスク中心の担当者は、この水準前後にとどまるケースが目立ちます。
ところが、同じ調査を業種別に見ると景色が変わります。情報通信業の平均給与は611万円で、全体平均を133万円上回っています。製造業は521万円、卸売業・小売業は341万円ですから、IT領域は業種としてはむしろ高い部類に入ります。
もちろん情報通信業はベンダー側の産業であり、事業会社に所属する情シスがそのまま含まれるわけではありません。ただし少なくとも、「IT関連の仕事だから年収が低い」という説明は成り立たないということです。
実際、インフラ設計やセキュリティ、IT企画を担う層は600万円を超えることも珍しくありません。つまり情シスの年収が一律に低いのではなく、運用・保守中心の役割にとどまっている層の年収が上がっていない、というのが実態に近いといえます。
「社内SE 年収 低い」と感じる人の共通点
「社内SE 年収 低い」と感じる人には、いくつかの共通点があります。まず運用・保守やヘルプデスクなど、日常業務の維持が中心になっている場合が多いのです。さらに、成果が数字で見えづらい環境も影響します。
加えて、同じ会社に長く在籍し給与テーブルの上限に近づいている人も少なくありません。こうした共通点に複数当てはまるなら、原因は個人の能力ではなく環境にある可能性が高いといえます。
下の表は、年代別に3つのパターンで年収の伸び方を比較したものです。パターンは「同じ会社で据え置き」「社内で昇格・役割拡大」「転職で環境を変えた」の3つになります。

表からも分かるとおり、20代後半の時点ではパターン間の差はそれほど大きくありません。しかし30代・40代と年数を重ねるほど、差は広がっていきます。「情シス 年収 上がらない」という悩みの多くは、この据え置きパターンから抜け出せていない状態です。
【公的統計】運用・保守でも、スキルレベル5以上なら中央値850万円
ここで、「情シスは年収が低い」という前提そのものを実数で検証します。使うのは厚生労働省「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業 調査報告書」(令和6年3月)です。IT・デジタル職種の従事者に限定し、ITスキルレベル別の賃金水準を集計しています。
| ITスキルレベル | 企画立案・プロジェクト管理 | 設計・構築 | 運用・保守 |
|---|---|---|---|
| レベル1〜2 | — | 500万円 | 500万円 |
| レベル3 | 750万円 | 550万円 | 550万円 |
| レベル4 | 800万円 | 635万円 | 650万円 |
| レベル5以上 | 900万円 | 700万円 | 850万円 |
伸びが最も大きいのは、実は運用・保守だった
この表で注目してほしいのは、いちばん右の列です。運用・保守はレベル4で650万円、レベル5以上では850万円に届いています。設計・構築のレベル5以上(700万円)を上回る水準です。
さらに伸び幅を計算すると、運用・保守はレベル4からレベル5以上で200万円動いていました。これは3職種すべての中でもっとも大きな段差です。参考までに、設計・構築の同区間は65万円、企画立案・プロジェクト管理は100万円でした。
つまり運用・保守の年収が低いのではなく、レベル5に届いていない人が多いということになります。第3四分位で見ると、運用・保守のレベル5以上は1,086万円に達しています。
「資格が反映されない」と「スキルが反映されない」は別の話
この結果は、次章で扱う「資格が給与に反映されない」という悩みと、きれいに切り分けられます。反映されにくいのは資格そのものであって、スキルレベルではありません。
ITスキルレベルは、資格の有無ではなく担える業務の範囲で決まります。したがって年収を動かしたいなら、資格を1つ増やすより、設計や意思決定を含む業務を1つ引き受けるほうが直接的です。具体的には、要件定義、ベンダー選定、アーキテクチャの決定といった工程が該当します。
この統計を読むときの注意
この調査はIT・デジタル職種の従事者を対象にしたアンケートで、全数調査ではありません。とくに運用・保守のレベル5以上はサンプル数36件と少なめです。したがって数値そのものより、レベルが上がるほど段差が大きくなるという傾向を読み取ってください。
また、ここでいうレベルは情報処理技術者試験の区分ではなく、調査が用いた7段階のITスキルレベルです。数値は見込み年収で、賞与を含みます。
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情シスの年収が上がらない5つの理由

次に、情シスの年収が上がらない理由を構造から整理します。というのも個人の努力不足ではなく、仕組み上の要因が大きいためです。ここでは代表的な5つの理由を、影響度の大きい順に解説します。
▶ あわせて読みたい:情シス・社内SEの年収大全|職種・規模・レイヤー別の相場
1. コストセンター扱いで評価されにくい
多くの企業で、情シスは売上を生む部門ではなく「コストセンター」と見なされます。そのため、投資対象になりにくく、昇給の原資も限られがちです。ただし、DX推進やセキュリティ強化を担うと、評価軸が変わる余地はあります。その結果、同じ成果を出しても営業部門に比べて昇給の幅が小さくなりがちです。たとえばシステム障害をゼロに抑えても「維持できて当然」と評価されます。数字化しにくい成果は、そのまま見過ごされてしまうのです。
2. 社内で完結し市場価値が見えにくい
情シスの業務は社内で完結することが多く、成果が外から見えにくい特性があります。その結果、自分の市場価値を把握できないまま働き続ける人もいます。市場価値がわからなければ、適正な年収を交渉する材料も持てません。市場価値が分からないままだと、いまの年収が妥当かを判断する軸を持てません。そのため交渉のタイミングも逃しがちです。定期的に外部の相場を確認しておくだけでも、客観視するきっかけになります。
3. スキルや資格が給与へ反映されにくい
基本情報技術者やAWS認定などの資格を取得しても、給与へ直結しない企業は多くあります。とくに給与テーブルが硬直的な組織では、資格手当も限定的です。一方で、資格は転職市場では評価されやすく、社外では武器になります。下の表は、資格・スキルの有無による年収インパクトの目安です。

この表が示すとおり、資格取得による上乗せ効果は、役割を変えないままだと数十万円規模にとどまりやすいのが実情です。前章の公的統計とあわせて読むと、理由がはっきりします。賃金に効いているのは資格の枚数ではなく、担える業務の範囲で決まるスキルレベルのほうだからです。年収アップへ直結させたいなら、資格取得と合わせて担当領域を広げてください。あるいは転職によって、評価制度そのものが異なる環境に移る方法もあります。社内交渉の材料にするなら、「資格を取った」では足りません。「資格を活かしてどの業務範囲を担えるようになったか」まで説明しましょう。そこまで準備すると説得力が増します。
4. 少人数体制で役割が広がらない
一人情シスや少人数体制では、日々の運用に追われて企画に手が回りません。そのため、上位レイヤーの経験を積みにくく、昇格の機会も限られます。役割が広がらない環境は、年収の頭打ちにつながりやすいのです。さらに後任育成が難しい環境では、異動や転職も切り出しにくくなります。その結果、同じポジションに長くとどまりがちです。「自分が抜けたら業務が回らない」という責任感が決断を先延ばしにさせる点にも、注意が必要になります。
5. 「情シス 年収 上がらない」を放置してしまう
「情シス 年収 上がらない」と感じながらも、行動を先延ばしにする人は多いものです。しかし、待っているだけで給与テーブルが変わることはほとんどありません。だからこそ、早い段階で選択肢を洗い出すことが大切です。まずは自分の市場価値を客観的に把握することが、行動の第一歩になります。
今日からできる年収アップの第一歩
「何から手をつければよいか分からない」という場合は、まず次のチェックリストから着手してみましょう。
- 直近1年の業務実績を「数字」で書き出す(対応件数・コスト削減額・稼働時間の削減など)
- 自分の年代・役割に近い年収相場を、診断や転職サイトで確認する
- 企画・DX関連の小さな案件に手を挙げ、実績として記録する
- 資格取得と合わせて、担当領域を広げる交渉を上司に持ちかける
- 社内で変化が起きなければ、情シス出身者に強いエージェントに相談し、社外の選択肢も確認する
情シスが年収を上げる3つの具体策

ここからは、情シスの年収を上げる方法を3つの軸で解説します。ただし、すべてを同時に進める必要はありません。自分がいまどの段階にいるかを踏まえ、着手できる打ち手から始めてください。
社内で上げる:昇格と役割拡大を狙う
まず現職で狙えるのが、昇格と役割の拡大です。運用中心から、IT企画やDX推進へと担当領域を広げていきます。そのうえでコスト削減や業務改善の成果を数字で示すと、評価につながりやすくなります。年収交渉の場面では、実績を根拠に提示することが効果的です。加えて、企画会議やプロジェクトへの参加を自ら志願する姿勢も効きます。さらに半期に一度は、自分から実績を上司へ共有する機会をつくってください。そうすると昇格の検討材料として残りやすくなります。
▶ あわせて読みたい:社内SEの年収交渉を成功させる5つのコツ|相場と切り出し方
転職で上げる:企業規模とレイヤーを変える
年収を大きく動かしたいなら、転職も有力な選択肢になります。IT投資に積極的な企業へ移る方法です。加えて運用担当から企画・マネジメント層へレイヤーを引き上げると、年収の伸びしろが広がります。実際、転職を機に100万円以上上がる情シスも珍しくありません。ただし年収だけを基準に選ぶと、入社後に「思っていた役割と違う」というミスマッチが起きやすくなります。そのため求人票の役割定義まで確認してください。
スキル・資格で市場価値を高める
中長期では、市場で評価されるスキルの獲得が効きます。クラウド(AWS・Azure)、情報セキュリティ、IT企画・PMなどが代表例です。これらは需要が高く、情シスの市場価値を押し上げます。なお前述のとおり、資格単体の効果は限定的です。したがって資格取得と役割変更はセットで進めてください。
年収を上げやすい情シスの転職先の選び方
最後に、年収が上がりやすい転職先の見極め方を整理します。同じ「情シス」という職種名でも、企業によって役割も評価制度も異なるためです。求人選びを誤ると、環境を変えても年収は上がりません。
狙い目は事業会社のIT企画・DX推進
年収を上げやすいのは、事業会社のIT企画やDX推進ポジションです。ITを投資と捉える企業ほど、情シスの待遇も高くなる傾向があります。また経営に近いレイヤーほど、裁量と年収の両方を得やすくなります。
そこで求人票では、「IT戦略」「DX推進」「企画」といったキーワードの有無を見てください。あわせて経営層への報告ラインがあるかも確認するとよいでしょう。
求人票を見るときは、次のポイントをあわせてチェックすると判断の精度が上がります。
- ◎ IT予算やDX投資に積極的で、情シスを「攻めの部門」と位置づけている
- ◎ 経営会議やプロジェクトオーナーへの報告ラインが明記されている
- △ 「幅広い業務をお任せします」のみで、役割や評価軸の記載が薄い
- △ 情シスの人数・体制が長期間変わっていない
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避けたい「年収が上がらない」求人の特徴
一方で、避けたい求人にも特徴があります。ヘルプデスクや運用のみで、企画に関われない求人です。さらにIT部門を単なるコスト部門として扱う企業も要注意になります。
こうした環境では、情シスの年収が低いままになりがちです。そのため求人票の役割定義と評価制度は、事前に必ず確認しましょう。面接では直近3年の情シス人員の推移と、昇格実績の有無を質問することをおすすめします。
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面談現場から:社内で完結する仕事は、本当に価値が見えないのか
ここでは統計に出てこない部分を、実際の面談からお伝えします。以下は当社が2026年に実施した面談の内容で、匿名化のうえ掲載しています。
「AIが学習していないデータ」を集めている人の話
20代後半でチームのリードを務める方です。転職活動中ではなく、情報交換としてお話をうかがいました。社内にしかない情報を集めて整える取り組みを進めているところでした。
「狙いは、AIが学習していない社内データをどう集めるかなんです」
ここから読み取れること
この記事の「2. 社内で完結し市場価値が見えにくい」という理由は、裏返すと強みにもなります。社内にしかない情報を運用として持っていること自体が、外から代替されにくい根拠になるためです。
情シスは、どの部署がどのシステムをどう使い、どこで例外運用が起きているかを知っている唯一の職種です。その知識は公開情報のどこにもありません。だからこそ、職務経歴書には作業の一覧ではなく、その情報をどう構造化し、意思決定に使ったかを書いてください。
ただし、この方自身が前提の脆さも自覚していた
「個人情報や機微情報をAIに渡せない、という前提があるから成り立つんです。渡しても安全に守ってくれる世界が来たら破綻します」
ここから読み取れること
この自己認識は誠実です。そして情シスの市場価値を考えるうえでも重要な視点になります。「社内にしかない情報を持っている」という優位は、技術の前提が変われば消えます。
したがって長期的に効くのは、情報を持っていること自体ではありません。その情報をもとに何を決めたか、という判断の実績のほうです。前章のITスキルレベルの話とも重なります。年収を動かすのは、担える業務の範囲でした。
情シスの年収についてよくある質問
Q. 情シスの年収は何年目くらいから上がらなくなりますか?
目安として、入社から5〜7年ほど経過し、運用・保守の役割から動いていない場合に伸びが鈍化するケースが多く見られます。役職が変わらないまま年数だけを重ねると、給与テーブルの上限に近づき、昇給幅が小さくなるためです。役割や環境を変えるタイミングは、この時期を意識して検討するとよいでしょう。
Q. 情シスの年収が上がらないのは、努力不足や甘えが原因なのでしょうか?
結論として、個人の努力不足だけが原因であるケースはむしろ少数です。コストセンター扱いや評価制度の硬直性など、企業側の構造的な要因が大きく影響しています。そのため「自分の努力が足りない」と抱え込みすぎず、役割や環境そのものを見直す視点を持つことが大切です。
Q. 年収交渉と転職、どちらから始めるべきですか?
まずは社内での年収交渉から検討するのが基本です。現職で役割拡大や昇格の余地があるなら、実績を根拠に交渉するほうが、環境変化を伴わずに年収を上げられます。ただし給与テーブルに上限があり交渉の余地が乏しい場合は、早めに転職市場での自分の市場価値を確認しておくと、選択肢を狭めずに済みます。
Q. 運用・保守の担当でも高年収は狙えますか?
狙えます。厚生労働省の調査では、運用・保守でもITスキルレベル5以上の中央値は850万円、第3四分位は1,086万円でした。設計・構築のレベル5以上(700万円)を上回っています。担える業務の範囲を広げられるかどうかが分かれ目です。
Q. 資格を取れば年収は上がりますか?
資格単体の効果は限定的です。前述のとおり、賃金に効いているのは資格の枚数ではなく、担える業務の範囲で決まるスキルレベルでした。ただし資格は書類選考の通過率を上げるため、役割の拡大とセットで進めるのが効果的です。
Q. 情報通信業の平均給与が611万円なら、情シスも同じ水準ですか?
同じとは限りません。情報通信業はベンダー側の産業で、事業会社に所属する情シスは製造業や卸売業などに集計されます。ただし「IT関連の仕事だから低い」という説明が成り立たない根拠にはなります。
まとめ:情シスの年収は「役割」と「環境」で変えられる
この記事の要点を整理します。情シスの年収が低い背景には、コストセンター扱いや市場価値の見えにくさといった構造的な要因があります。しかし、それは「情シスだから低い」という意味ではありませんでした。
厚生労働省の調査では、運用・保守でもITスキルレベル5以上の中央値は850万円で、設計・構築のレベル5以上を上回っていました。しかもレベル4からレベル5以上への段差は200万円と、3職種で最大です。低いのは職種ではなく、届いていないレベルのほうでした。
だから取るべき行動は明確です。資格を1つ増やすより、要件定義・ベンダー選定・アーキテクチャ決定のいずれかを1つ引き受けてください。それがスキルレベルを動かす最短経路になります。
そのうえで、社内で役割が広がらないなら環境を選び直す判断もあります。まずは自分の適正年収と市場価値を客観的に把握することから始めましょう。
※ 相談・登録は完全無料です
📌 この記事の一次情報源
- 厚生労働省「IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業 調査報告書」(令和6年3月)ITスキルレベル別の賃金水準 — 調査報告書(PDF)
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」業種別及び給与階級別の給与所得者数・給与額 — 調査結果
- 当社(株式会社LX)が2026年に実施したITエンジニア・情シス職の転職相談面談(複数名)。掲載にあたり、氏名・企業名は伏せ、年齢は年代表記、年収は概数に丸めています。
- 記事中の年代別・資格別の年収レンジ図は、当社担当者が求人票を日次で確認して蓄積した提示レンジの観測データにもとづく目安です(2026年8月時点)
