「SIerでもSESでもない、自社のシステムと長く向き合う仕事がしたい」
客先常駐という働き方の中で、そんな思いを抱くエンジニアは少なくありません。実際に、転職を成功させた人の多くがSIer・SES出身者です。特別なキャリアではありません。
📋 この記事でわかること
- SIer・SESから社内SEへ転職しやすい理由
- 転職市場で評価されるスキルと経験
- 転職成功者に共通する3つのアクション
- よくある失敗パターンと回避策
- 転職活動の具体的なステップ
- 経験年数別に見る年収データ
- 転職前によくある質問

SIer・SESから社内SE転職が増える3つの理由
近年、SIer・SES出身者が社内SEへ転職するケースが急増しています。また、その背景には3つの理由があります。

客先常駐の働き方に限界を感じる声が増えている
プロジェクトが変わるたびに職場も変わります。そのため、長期的な信頼関係を築けないと感じるエンジニアが多いです。
「同じ会社のシステムを継続的に育てたい」という声は30代以降に多いです。また、「腰を据えて働きたい」という希望も強くあります。つまり、社内SEはこうした希望を叶えやすい働き方です。
社内SE・情シスの求人数が急増している
SaaSとクラウド活用、そしてDX推進が加速しています。その結果、事業会社の情シス部門が担う役割は広がっています。
インフラ設計やベンダー管理のできる人材の需要が高まっています。さらに、求人数の増加とともに採用競争も激化しています。そのため、早めに動くことが好条件の転職につながります。
SIer・SES経験者のスキルが高く評価される
社内SEが行う業務の多くは、SIer・SES時代に経験済みのスキルと重なります。たとえば、インフラ設計やベンダー折衝がその代表例です。
複数の現場で技術力を磨いた経験は即戦力として映ります。また、汎用性の高い技術力は環境変化への適応力としても評価されます。
▶ あわせて読みたい:情シスへの転職完全マップ【SIer・SES出身者向け】
転職市場で評価される5つのスキル・経験
社内SEへの転職でSIer・SES出身者の経験は、想像以上に評価されます。具体的に5つ紹介します。
経験年数別に見る、社内SE転職後の年収レンジ
SIer・SES経験者が社内SEへ転職した場合、年収は経験年数によって変わります。次の表は当社が扱う求人票ベースの目安であり、公的統計の平均値とは基準が異なります。
| SIer・SES経験年数 | 転職後の年収レンジ |
|---|---|
| 3年未満 | 約350万円〜450万円 |
| 3年〜5年 | 約420万円〜550万円 |
| 5年〜10年 | 約500万円〜650万円 |
| 10年以上 | 約600万円〜800万円 |
公的統計と突き合わせると、この目安の位置づけが見えてきます。厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の年齢階級別データです。年収換算は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」です。
| 年齢階級 | ソフトウェア作成者 | システムコンサルタント・設計者 |
|---|---|---|
| 25〜29歳 | 約485万円 | 約642万円 |
| 30〜34歳 | 約560万円 | 約866万円 |
| 35〜39歳 | 約636万円 | 約968万円 |
ここで押さえたいのは、職種による差のほうが大きいという点です。25〜29歳では約157万円の差ですが、35〜39歳では約332万円まで開きます。
つまり社内SEへ移ること自体より、移った先で上流を担えるかどうかが年収を決めます。だから求人票では、担当工程がどこまで含まれるかを確認してください。
なお、日本標準職業分類に「SIer」「SES」「社内SE」という職種区分はありません。そのため、この数字は担当工程の目安として読んでください。

インフラ・ネットワーク設計の実務経験
サーバー設計やネットワーク構築の経験は、社内SEの基本業務と直結します。また、クラウド移行の実務経験があれば、さらに評価が高まります。
たとえば、複数の現場で汎用的な技術力を培ったSIer出身者は、環境変化への適応力も高く評価されます。
実際に、オンプレミスとクラウドの両方を扱った経験があるSIer出身者は、社内SEの選考でも即戦力として高く評価される傾向にあります。
IT資格(AWS/Azure・基本情報・応用情報)
クラウド系資格(AWS認定やAZ-104など)は特に評価が高いです。SaaS・クラウド移行が進む企業での採用に直結します。
また、IPA(情報処理推進機構)の基本情報・応用情報技術者試験は、IT知識の体系的な証明として広く認知されています。
資格だけで採用が決まるわけではありません。ただし、書類選考の通過率を上げる材料としては十分に機能します。
ベンダーマネジメント経験
SIer経験者は発注側・受注側の両方の視点を持っています。社内SEはIT外注先との調整を頻繁に行います。そのため、この経験はそのまま活かせます。
発注側の視点を持つ人材は、社内SEの中でも特にコストや納期の管理を任せやすいと評価されます。
プロジェクト管理(PM/PMO)経験
WBS作成や進捗管理、ステークホルダー調整の経験は、社内SEのIT企画推進業務と直結します。さらに、PMO経験があるとハイクラス求人でも有利に動けます。
とくに、複数ベンダーが関わる大規模プロジェクトの管理経験は、事業会社のIT企画部門でも重宝されます。
ヘルプデスク・社内システム対応経験
SES時代にヘルプデスクや運用保守を担当した経験があれば、社内SE候補として評価されます。たとえば、エンドユーザーとのコミュニケーション力は情シス部門で特に重宝されます。
▶ あわせて読みたい:社内SEの年収は本当に上がる?業界・規模別データ徹底解説
地道な対応業務に見えますが、社内のIT課題を最前線で把握してきた経験は、社内SEの現場理解に直結します。
転職成功者に共通する3つの行動
社内SEへの転職を成功させた方々に共通するアクションが3つあります。また、これらは実際の転職支援事例から抽出したものです。

企業規模・業種で「社内SEの実態」を見極めた
社内SEの業務内容は企業規模と業種によって大きく異なります。たとえば、100名以下のスタートアップでは一人情シスとして幅広く担当します。
一方で、大手メーカーではインフラ・セキュリティ・アプリと領域が分かれることが多いです。そのため、OpenWorkなどで入社後の実態を事前に調べることが重要です。
事前に社員インタビューや口コミサイトで実際の業務範囲を確認しておくと、入社後のギャップを減らせます。
複数の転職エージェントを使い分けた
社内SE・情シス求人は、エージェントによって保有案件が大きく異なります。そのため、IT・エンジニア特化型と総合型の両方に登録するのが効果的です。
特化型は技術的な経歴を正確に企業へ伝えてくれます。一方で総合型は、業界をまたいだ選択肢を出してくれます。つまり役割が違います。
また、エージェントごとに得意な業界・企業規模も異なります。したがって2〜3社を併用すると、求人の幅が広がります。
転職理由を「前向きな動機」に変換した
「客先常駐が嫌だから」という理由だけでは評価されにくいです。そのため、前向きな動機に変換することが必要です。
たとえば「自社サービスのIT基盤を育てたい」という表現が効果的です。また、「DX推進に主体的に関わりたい」という動機も高く評価されます。
ネガティブな理由であっても、伝え方を工夫すれば前向きな志望動機として成立します。
SIer・SESと社内SEの働き方の違い
転職後の変化を具体的にイメージできるよう、代表的な項目を比較しました。
| 項目 | SIer・SES | 社内SE |
|---|---|---|
| 勤務先 | 客先常駐が中心 | 自社オフィス中心 |
| プロジェクトの期間 | 数ヶ月〜1年で変わる | 中長期で同じシステムに関わる |
| 評価者 | 客先の評価が間に入る | 自社の上長が直接評価する |
| 評価基準 | 稼働率・客先の満足度 | 自社内の成果・改善提案 |
残業時間の差は、公的統計では確認できない
働き方の比較で必ず話題になるのが残業です。ただしここは、正直に前提を共有しておきます。
日本標準職業分類に「SIer」「社内SE」という区分はありません。そのため「SIerは月◯時間、社内SEは月◯時間」という差を、公的統計で示すことはできません。
参考として、厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」の超過実労働時間数を挙げます。IT系の職種はいずれも月10〜16時間の範囲でした。
| 職種(男女計・企業規模計) | 超過実労働時間数(月) |
|---|---|
| 電気・電子・電気通信技術者 | 16時間 |
| ソフトウェア作成者 | 12時間 |
| その他の情報処理・通信技術者 | 12時間 |
| システムコンサルタント・設計者 | 11時間 |
しかも、この調査が集計しているのは毎年6月分です。したがって年度末や本番リリースの山は反映されていません。
だから残業時間は、公開情報で判断しないでください。面接で「直近1年で最も忙しかった月は何時間だったか」を聞くほうが確実です。
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あなたの情シスとしての「適正年収」は?
SIer・SES経験が社内SEでどう活きるか。まず現在地の水準を確認しておくと、条件交渉の基準がはっきりします。
面談現場から:SIer・SESを実際に離れた人の理由
ここからは、当社が2026年に実際にお話をうかがったエンジニアの方のケースを紹介します。転職理由は一般論で語られがちですが、面談で出てきた言葉はもっと具体的でした。
離れた理由は業務内容ではなく、単価の決定権だった
20代のうちに大手SIer系や物流系の現場へ客先常駐で入っていた方がいらっしゃいました。技術的な不満があったわけではありません。それでも常駐を続ける道は選びませんでした。
「仲介する会社が間に入るので、自分の思いどおりの単価交渉ができませんでした」
つまり争点は、処遇を誰が決めているかでした。この方はその後フリーランスへ転身しています。
社内SEを選ぶ場合も、見るべき論点は同じです。自社の中で評価が完結する分、評価者と等級制度がそのまま処遇を決めます。だから求人票では、業務内容と同じくらい評価制度を確認してください。
この観点をさらに掘り下げた内容は、情シスへの転職完全マップで扱っています。本記事はスキルの移し替えと選考実務に絞ります。
ベンダー側から見ると、社内SEは「決める人」に見える
当社代表はSIer出身です。当時は地方銀行向けに、基幹システムやインターネットバンキングを提案していました。外国為替などの市場系システムも担当領域でした。
ベンダー側から見ると、情シス・社内SEは決める人です。技術がわかる担当者がいる会社では、要件が早く固まります。結果としてプロジェクトも速く進みます。
一方、ベンダーへの丸投げになると要件が決まりません。そのため見積もりが膨らみ、稼働後の運用も属人化します。
だから採用側が社内SEに求めるのは、「作れること」より「決められること」です。SIer・SES出身者は、この点でそのまま評価されます。見積もり査定や仕様調整の経験が、そっくり転用できるからです。
転職回数より問われるのは「なぜそう決めたか」
もう一人、3年周期で転職してきた20代後半の方のお話です。この方は回数の多さを気にしていました。
当社からは、エンジニアに限れば見られ方は緩和されつつあるとお伝えしました。ただし代わりに問われる論点があります。
「なぜこのアーキテクチャ・技術選定にしたのか」に答えられるかどうかです。走っているプロジェクトに入るだけだと、ここで詰まる方が多くいます。
SIer・SES出身者にとって、これは追い風にもなります。複数の現場を見てきた分、比較の材料を持っているからです。だから職務経歴書では、担当工程の羅列ではなく「何を、なぜ、そう決めたか」を1件だけでも書き切ってください。
よくある失敗パターンと回避策
SIer・SES出身者が社内SE転職で失敗するケースには、共通したパターンがあります。ただし、事前に把握しておくことで回避できます。
SIer時代のスキルを過小評価する
「自分には大した経験がない」と思い込むエンジニアは多いです。しかし、複数の現場で培った技術力やコミュニケーション力は貴重な強みです。
そのため、転職エージェントの棚卸しサービスを活用することをおすすめします。また、第三者の視点で強みを整理することが効果的です。
「社内SEは楽な仕事」という思い込みで後悔する
社内SEは安定した環境で働けます。ただし、IT全般の問い合わせ対応や地道な保守業務も多く含まれます。
「楽だから」という理由だけで選ぶと入社後にミスマッチを感じます。そのため、業務内容を事前に詳しく確認しましょう。
大手企業・有名企業のみに応募を絞る
大手企業の社内SE求人は競争率が高いです。また、書類選考の段階でも通過が難しい場合があります。
一方で、中堅・成長企業の情シス求人はSIer出身者を積極採用しているケースが多いです。そのため、視野を広げて多角的に応募先を探しましょう。
エージェント任せで自己分析を怠る
エージェントに任せきりで、自分の強みを言語化しないまま面接に臨む人もいます。しかし、面接官が知りたいのは本人の言葉での説明です。
そのため、エージェントのサポートは受けつつも、自分の経験を自分の言葉で話せるよう準備しておくことが欠かせません。
▶ あわせて読みたい:社内SE転職完全ガイド|20代・30代の準備から内定までの全手順
転職活動の具体的なステップ
転職活動をスムーズに進めるための手順を整理します。SIer・SES出身者が社内SEを目指す際の標準的な流れです。
STEP1:スキルと経験を棚卸しする
SIer・SES時代の担当案件・使用技術・保有資格を一覧化します。また、担当した役割も整理することが重要です。さらに、「社内SEに活かせる経験」の視点で整理すると応募書類に説得力が生まれます。
STEP2:複数のエージェントに登録する
IT専門エージェントと総合エージェントの両方に登録します。また、情報収集は並行して進めることが効果的です。さらに、エージェントとの面談では「転職で実現したいこと」を具体的に伝えましょう。
STEP3:面接対策を徹底する
面接では「なぜ社内SEへ転職するのか」という質問が必ず出ます。また、「SIer・SESの経験をどう活かすか」も頻出です。そのため、具体的なエピソードを事前に準備しましょう。
STEP4:内定後の退職・入社準備を計画的に進める
内定が出たら、退職交渉と入社日の調整を並行して進めます。また、引き継ぎ資料の作成は早めに着手すると円満退職につながります。
社内SE転職で活用したい支援サービス3タイプ
転職活動を効率化するには、目的に応じてサービスを使い分けることが重要です。代表的な3タイプを紹介します。
IT・エンジニア特化型エージェント
IT業界の専門知識を持つキャリアアドバイザーが多く、技術的な経歴を正確に企業へ伝えてもらいやすいのが特長です。
また、非公開の社内SE求人を保有していることも多く、選択肢を広げる手段として有効です。
総合型エージェント
求人数が豊富で、業界・職種を問わず幅広い選択肢から探せます。初めて転職活動をする場合の情報収集にも向いています。
ただし、IT専門エージェントに比べると業務内容のマッチング精度がやや粗い場合もあるため、併用が基本です。
LINEで気軽に相談できる窓口
本格的な転職活動の前に、まずは市場価値や選択肢を知りたいという方には、LINEで完結する相談窓口も選択肢になります。
面談の日程調整の手間がなく、気になったタイミングで気軽に質問できる点がメリットです。
よくある質問
SIer・SESから社内SEへの転職を検討する中で、よく寄せられる質問をまとめました。
Q. 年齢が上がっても社内SEへ転職できますか?
30代・40代でも転職は可能です。むしろ、SIer・SESで培った実務経験は年齢を重ねるほど評価されやすくなります。ただし、若手より柔軟な働き方への理解を示すことが重要です。
Q. 未経験の業務領域があっても大丈夫ですか?
完全に一致する経験は求められないケースが多いです。むしろ、汎用的な技術力と学習意欲を示せれば、業務領域の違いは大きな障害になりません。
Q. 転職活動にはどのくらいの期間がかかりますか?
一般的には2〜3ヶ月程度が目安です。ただし、企業とのマッチング状況によって前後するため、早めに動き出すことをおすすめします。
Q. 社内SEはSIer・SESより給与が下がりますか?
一概には下がりません。むしろ、経験年数や保有資格によっては年収が上がるケースも多く見られます。前職の年収を基準に、複数社の求人を比較することをおすすめします。
Q. 面接ではどんな経験をアピールすべきですか?
インフラ構築やベンダー対応など、事業会社のIT部門でも再現可能な経験を具体的なエピソードとともに伝えることが効果的です。数字を交えて説明すると説得力が増します。
まとめ:一歩を踏み出すタイミングは「今」かもしれない
SIer・SESでの経験は、社内SEへの転職において決してマイナスではありません。むしろ、複数の現場で培った技術力や調整力は、事業会社のIT部門が求める人材像そのものです。
一人で判断に迷う場合は、まず市場価値を客観的に把握することから始めてみてください。
✏️ 執筆・監修者
LXキャリア 転職支援チーム
- CA/RA 経験豊富な現役人材紹介のプロ。年間数十件のマッチングを成立
- 人材ビジネスを0→1で立ち上げ、事業としての人材支援の仕組みをゼロから構築
- 情シス・社内SE・コーポレートIT領域の転職支援実績多数
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