「経理の残業は多いのだろうか」。月次決算のたびに終電を気にする方も、逆に定時で帰れて拍子抜けした方もいるはずです。この記事は、経理・財務で働く20〜30代と、これから経理を目指す方に向けて書きました。読み終えるころには、経理の残業時間の客観的な水準、残業が集中する時期、そして今日から手を打てる削減策がわかります。
経理の残業は本当に多いのか|データで確認する
まず、感覚ではなく調査データで水準を確認しましょう。結論から言えば、経理の残業は全職種の平均より少なめです。
経理事務・財務事務の平均残業時間は月13.0時間
dodaが2024年に実施した職種別調査では、「経理事務/財務事務」の月間平均残業時間は13.0時間でした。これは全88職種のうち残業が少ない職種の第5位にあたります。1日あたりに直すと、およそ40分ほどの計算です。
全職種平均は20.6時間|差は月7時間以上
一方、doda「平均残業時間の実態調査【2025年版】」によると、全体の平均残業時間は月20.6時間でした。つまり経理の残業は、全体平均より月7時間ほど短い水準にあります。さらに同調査では、20代から50代までのすべての年代で「事務/アシスタント」分類が最少でした。経理はこの分類に含まれます。
それでも「経理の残業は多い」と感じる理由
では、なぜ現場の実感とズレるのでしょうか。理由は、経理の残業が年間を通じて平らではないからです。平均が月13時間でも、決算月だけ月45時間に達する職場は珍しくありません。人は平均ではなく、最も苦しかった月を記憶します。そのため「経理は残業が多い」という印象が残りやすいのです。
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経理の残業が集中する3つの時期
経理の残業は、業務カレンダーに沿って山ができます。どこに山があるかを知れば、対策の打ち方も変わります。
月次決算|月初から5営業日前後
最も頻度が高い山が月次決算です。前月の売上や経費を締め、試算表を作成する期間にあたります。多くの企業では月初から5営業日前後に集中します。取引量が多い会社ほど、この数日に残業が固まります。
年次決算と税務申告|決算月の翌月から2カ月
次に重いのが年次決算です。監査法人や顧問税理士とのやり取りが加わり、資料作成の量が跳ね上がります。上場企業なら開示資料の作成も重なります。3月決算の会社なら、4月から5月が最大の山場です。
年末調整と法定調書|11月から翌1月
最後の山が年末調整です。従業員から書類を回収し、内容を確認して源泉徴収票を作成します。人事部門が担当する会社もありますが、中小企業では経理が兼務するケースが目立ちます。したがって、この時期の残業は会社の体制次第で大きく変わります。
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残業が多い経理と少ない経理を分ける4つの要因
同じ経理職でも、残業時間は職場によって大きく違います。その差を生む要因は、主に次の4つです。
上場・非上場と開示業務の有無
上場企業は四半期ごとに開示義務があります。そのため、年4回の締めが確実に発生します。非上場企業は年次決算だけの山になるため、繁忙期の回数そのものが少なくなります。
会計システムと業務の標準化度合い
クラウド会計や経費精算システムが入っている職場は、転記や集計の手作業が減ります。逆に、Excelと紙の申請書が中心の職場では、同じ仕事量でも工数が数倍に膨らみます。
人員体制と属人化の程度
「この処理は前任者しか知らない」という状態は、残業の温床です。担当が固定されていると、繁忙期に助け合えません。結果として、特定の人だけが遅くまで残ります。
締め切りルールが社内に浸透しているか
実は、これが最も見落とされがちな要因です。営業部門からの請求書提出が締め日を過ぎて届けば、経理は差し戻しと再処理に追われます。つまり、経理の残業は経理以外の部署の運用に強く左右されます。
経理の残業を減らす5つの実践方法
ここからは、担当者レベルでも着手できる具体策を紹介します。効果が出やすい順に並べました。
1. 月次決算を前倒しする
月初に仕事を集中させないことが基本です。たとえば、月中に確定している経費は都度計上しておきます。売上も、確定した取引から先に処理します。こうすれば、月初の作業量は目に見えて軽くなります。
2. 定型作業を自動化する
次に、毎月まったく同じ手順で繰り返している作業を洗い出します。銀行明細の取り込み、仕訳の自動仕訳ルール、経費精算の承認フローが代表例です。これらは会計ソフトの標準機能で置き換えられる場合が多くあります。
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3. 締め切りルールを明文化して社内共有する
差し戻しを減らすには、ルールを見える化するのが近道です。提出期限と必要書類を1枚にまとめ、全部署に配布します。さらに、期限を過ぎた申請は翌月処理と決めておきます。最初は摩擦が起きますが、2〜3カ月で定着します。
4. 引き継ぎ資料を整備して属人化を解く
業務手順書は、自分を守る資産です。処理の目的、手順、判断基準の3点を書き残しておきます。そうすれば、繁忙期に他のメンバーへ業務を渡せます。ひいては、自分が休みを取りやすくなります。
5. 労働時間の上限ルールを正しく知る
最後に、法律の基準を押さえておきましょう。厚生労働省によれば、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。特別条項付きの36協定を結んでいても、年720時間、複数月平均80時間以内、単月100時間未満という枠は超えられません。月45時間を超えられるのは年6回までです。自分の残業がこの水準を継続的に超えているなら、それは個人の工夫では解決しない問題です。
環境を変えないと経理の残業が減らないケース
努力しても改善しない職場は確かに存在します。その見極め方を整理します。
転職で残業が減りやすい人の特徴
月次決算と年次決算をひと通り回した経験があれば、選択肢は広がります。加えて、システム導入や業務改善に関わった経験は高く評価されます。なぜなら、採用側は「入社後すぐに回せる人」を求めているからです。実務3年以上が一つの目安になります。
求人票から残業の実態を見抜くチェックポイント
求人票では、次の4点を確認してください。第一に、月平均残業時間の記載があるか。第二に、繁忙期のピーク時間が具体的に書かれているか。第三に、経理部門の人数と担当範囲が明記されているか。第四に、使用している会計システム名が書かれているか。これらが曖昧な求人は、面接で必ず質問しましょう。
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経理の残業に関するよくある質問
最後に、経理の残業について相談を受けることの多い質問へ回答します。
経理は定時で帰れますか
繁忙期を除けば、定時退社は十分に現実的です。実際、doda調査で経理事務・財務事務の平均が月13.0時間だった点からも、通常月はほぼ定時に近いと読み取れます。ただし決算期は例外です。
未経験から経理に入ると残業は増えますか
最初の半年は、慣れない分だけ時間がかかります。しかし手順を覚えれば作業時間は短くなります。むしろ問題になるのは、教育体制がなく質問できない職場です。そのため、未経験で入るなら教育担当の有無を必ず確認してください。
経理の残業代はきちんと支払われますか
法律上、時間外労働には割増賃金の支払い義務があります。とはいえ、固定残業代の設定で実質的に支払われていない事例もあります。求人票の「みなし残業◯時間分を含む」という記載は、必ず内訳まで確認しましょう。
まとめ|経理の残業は「平均」ではなく「山の高さ」で見る
経理の平均残業時間は月13.0時間で、全職種平均の20.6時間より短い水準です。しかし実感が伴わないのは、決算期に山ができるからです。
今日から着手する優先順位
まずは月次決算の前倒しと、定型作業の自動化から始めてください。次に、締め切りルールの明文化に取り組みます。それでも改善しない場合は、職場の構造そのものが原因である可能性が高いといえます。自分の市場価値と適正な働き方を知ることが、次の一歩になります。
この記事の一次情報源
- パーソルキャリア株式会社「平均残業時間の実態調査【2025年版】」(2025年12月1日公表・全体平均20.6時間/月)
- パーソルキャリア株式会社「職種別「平均残業時間」を調査」(2025年1月31日公表・経理事務/財務事務13.0時間)
- 厚生労働省 働き方改革特設サイト「時間外労働の上限規制」(原則 月45時間・年360時間)
✏️ 執筆・監修者
LXキャリア 転職支援チーム
- CA/RA 経験豊富な現役人材紹介のプロ。年間数十件のマッチングを成立
- 人材ビジネスを0→1で立ち上げ、事業としての人材支援の仕組みをゼロから構築
- 経理責任者としての実務経験あり






