この記事でわかること
・経理におすすめの資格を「人気」ではなく、受験者規模と実合格率という2つの実数で比較する方法
・主要8資格の受験者数・合格者数・合格率の一覧(すべて公表値)
・転職/年収/未経験/実務という4つの目的別に、当社が推す順序
・ランキング上位でも効かないことがある理由
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
結局、経理はどの資格を取るのがいちばんおすすめなんでしょうか。
LXキャリア
面談で必ずといっていいほど出るご質問です。ただ、ランキング記事を並べて読んでも、順位はばらばらなんです。というのも、多くのランキングが「人気」や「印象」で並んでいるからですよ。
そこで本記事では、順位の根拠を2つの実数に置きます。ひとつは受験者規模です。もうひとつは実際の合格率です。まず主要資格を一覧で比較し、そのうえで目的別のおすすめを示します。
なお、いつ何を取るかという時系列の設計は別記事にまとめています。
👉 あわせて読みたい:経理の資格ロードマップ|段階別に何をいつ取るか
ランキングを見る前に押さえたい2つの軸
資格選びで失敗する原因は、難易度だけを見てしまうことです。難しい資格ほど価値が高いとは限りません。そこで、次の2軸で並べ替えてください。
軸1:受験者規模 ─ 採用側がその資格を知っているか
資格が選考で効くには、読み手が意味を理解している必要があります。つまり、採用担当者がその資格名を知らなければ加点になりません。そして認知の広さは、受験者数にある程度あらわれます。
たとえば日商簿記2級は、ネット試験だけで年間141,072名が受験しています。一方、経理向けの他の検定は年間数千人規模です。この差は、履歴書を読む側の反応に直結します。
軸2:実際の合格率 ─ そこに到達できるか
もうひとつは到達可能性です。ここは印象で語らず、主催団体の公表値を使います。とくに注意したいのは、同じ資格でも試験方式や集計単位で数字が変わる点です。
そのため以下の一覧では、いつの回か、そして何を分母にした数字かを明記しました。
【実数比較】経理に関わる主要資格の受験者数と合格率
まず全体像を確認しましょう。すべて各主催団体が公表している数字です。
| 資格 | 集計対象 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 日商簿記3級(ネット) | 2025年4月〜2026年3月 | 276,477名 | 112,797名 | 40.8% |
| 日商簿記3級(統一) | 第173回・2026年6月14日 | 14,359名 | 4,854名 | 33.8% |
| 日商簿記2級(ネット) | 2025年4月〜2026年3月 | 141,072名 | 46,351名 | 32.9% |
| 日商簿記2級(統一) | 第173回・2026年6月14日 | 4,821名 | 728名 | 15.1% |
| 日商簿記1級(統一) | 第173回・2026年6月14日 | 9,806名 | 2,076名 | 21.2% |
| 税理士試験 | 令和7年度・第75回 | 36,320名 | 7,847名 うち5科目到達527名 | 21.6% 5科目到達は1.5% |
| 公認会計士試験 | 令和7年 | 22,056名 出願者(名寄せ) | 1,636名 | 7.4% |
| ビジネス会計検定2級 | 第38回・2026年3月8日 | 2,075名 | 905名 | 43.6% |
| ビジネス会計検定1級 | 第38回・2026年3月8日 | 250名 | 64名 | 25.6% |
| FASS検定 | 通年(二期制) | ─ | ─ | 合否なし A〜Eの5段階評価 |
出典:日本商工会議所「簿記 受験者データ」/国税庁「令和7年度(第75回)税理士試験結果」/公認会計士・監査審査会「令和7年公認会計士試験 合格発表の概要」/大阪商工会議所「ビジネス会計検定試験 試験結果・受験者データ」/日本CFO協会「FASS検定」。日商簿記の受験者数は実受験者数、税理士試験は受験者数(実人員)、公認会計士試験は出願者数(名寄せ)を分母としています。
この表から読み取れること
第一に、受験者規模の差が桁違いです。日商簿記2級はネット試験だけで年14万人を超えます。一方、ビジネス会計検定2級は1回あたり2,000名前後です。したがって、採用担当者の認知度には差が出ます。
第二に、同じ簿記2級でも試験方式で合格率が2倍以上ひらいています。ネット試験は32.9%、統一試験は15.1%でした。ただし、この差をどう使うかは学習法の話になります。
👉 あわせて読みたい:簿記2級は独学で受かる?勉強時間・難易度・スケジュール【最短ルート】
第三に、合格率の高さと難しさは一致しません。税理士試験の合格率21.6%は科目合格を含んだ数字です。5科目に到達した方は527名で、受験者の1.5%にとどまります。つまり、表面の合格率だけで難度を判断しないでください。
第四に、FASS検定には合否がありません。総合点からA〜Eの5段階でスキルを評価する方式です。そのため「落ちる」という概念がなく、現在地の測定に向いています。
同じ「合格率」でも、そのまま比べてはいけない
比較表を読むうえで、ひとつだけ注意点があります。合格率は分母の取り方で大きく動くという点です。ここを揃えずに並べると、難度を見誤ります。
令和7年度の税理士試験を例にします。受験申込者数は45,517名でしたが、実際に受験したのは36,320名です。受験率は79.8%でした。つまり、申込者を分母にすると合格率は下がります。
公認会計士試験はさらに構造が複雑です。段階ごとに人数が絞られていきます。
| 段階 | 令和7年 | 令和6年 |
|---|---|---|
| 出願者数(名寄せ) | 22,056名 | 21,573名 |
| 短答式試験 受験者数 | 19,800名 | 19,564名 |
| 短答式試験 合格者数 | 2,409名 | 2,345名 |
| 論文式試験 受験者数 | 4,665名 | 4,354名 |
| 最終合格者数 | 1,636名 | 1,603名 |
出典:公認会計士・監査審査会「令和7年公認会計士試験の合格発表の概要について」。最終合格率7.4%は最終合格者数を出願者数(名寄せ)で除した値。
最終合格率7.4%は、出願者を分母にした数字です。ところが論文式試験の受験者4,665名を分母にすれば、35.1%になります。どちらも誤りではありません。しかし、意味はまったく違います。
だからこそ、比較記事の数字は分母まで確認してください。本記事の一覧表では、どの人数を分母にしたかを表の下に明記しています。
合格率が高い順に取ればよいわけではない
合格率が高い資格から順に取っていけばいいのでしょうか。
LXキャリア
そこは分母を確かめてほしいところです。たとえば公認会計士試験の最終合格率は、出願者を分母にすると7.4%ですが、論文式の受験者を分母にすると35.1%になります。つまり、同じ「合格率」でも意味がまったく違うんです。
数字の取り方まで見ないと、比べられないんですね。
【目的別】経理におすすめの資格ランキング
ここからが本題です。以下の順位は、当社が経理・管理部門の求人と面談を通じて得た見解にもとづくものです。公的機関が定めた序列ではありません。
目的1:転職・市場価値アップ
| 順位 | 資格 | 推す理由 |
|---|---|---|
| 1位 | 日商簿記2級 | 求人票の応募要件に最も多く登場する。受験者規模も大きく、説明が不要 |
| 2位 | USCPA | 英語と会計の掛け算になり、外資・グローバル部門で応募先が増える |
| 3位 | 税理士試験の科目合格 | 科目単位で示せるため、在職中でも積み上げの証明になる |
簿記2級を1位に置く理由は、認知度の高さです。選考で説明の手間がかかりません。そのうえ、実務との接続も語りやすくなります。
👉 あわせて読みたい:簿記2級は経理転職で本当に武器になるのか?プロが本音で解説
目的2:年収アップ
| 順位 | 資格 | 推す理由 |
|---|---|---|
| 1位 | 日商簿記1級 | 連結決算・開示のポジションに届き、担当できる範囲そのものが広がる |
| 2位 | USCPA | 海外子会社管理やIFRS対応など、単価の高い領域に接続しやすい |
| 3位 | 公認会計士 | 影響は大きい一方で、合格率7.4%かつ合格者の87.5%が30歳未満 |
ここで誤解しやすい点を補足します。資格そのものが年収を押し上げるわけではありません。厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、技能手当や技術(資格)手当などの1人平均支給額は月21,500円です。年間では25.8万円になります。
むしろ差が出るのは、担当できる業務が変わったときです。だからこそ、年収目的なら「どの業務に届くか」で選んでください。
👉 あわせて読みたい:経理の資格手当の相場|簿記2級・1級でいくら上がるか徹底解説/経理転職で年収を100万円アップさせる具体的な方法
目的3:未経験から経理を目指す
| 順位 | 資格 | 推す理由 |
|---|---|---|
| 1位 | 日商簿記3級 | ネット試験なら通年で受験でき、合格率も40.8%。学習の入口として設計しやすい |
| 2位 | 日商簿記2級 | 多くの経理求人で歓迎要件になり、応募できる母数が増える |
| 3位 | ビジネス会計検定3級 | 財務諸表を読む力に寄せた内容。簿記と並行すると理解が早まる |
未経験の方ほど、資格の効果は大きくなります。なぜなら、実務経験の代わりになる材料が他に少ないためです。
👉 あわせて読みたい:20代未経験から経理へ転職できる?成功率を上げる4ステップ
目的4:実務スキルの底上げ
| 順位 | 資格 | 推す理由 |
|---|---|---|
| 1位 | FASS検定 | 合否ではなくA〜Eの5段階評価。資産・決算・税務・資金の分野別に弱点が出る |
| 2位 | ビジネス会計検定2級 | 作る側ではなく読む側の視点が身につき、管理会計や経営企画に接続する |
| 3位 | 日商簿記1級 | 原価計算と連結会計を体系で学べる。ただし学習負荷は一段上がる |
FASS検定を1位に置いたのは、落ちない試験だからです。経済産業省が開発した「経理・財務サービス・スキルスタンダード」がベースになっており、日本CFO協会が運営しています。受験料は一般11,000円で、上期と下期の二期制です。
ただし受験者規模は簿記に遠く及びません。そのため、転職市場での認知を期待する資格ではありません。あくまで自己診断の道具として使ってください。
学習時間の目安には公的な数字がありません
資格比較でよく見る「勉強時間◯◯時間」という数字について、はっきりさせておきます。主催団体はいずれも標準学習時間を公表していません。したがって、ネット上の数値は各社の推計です。
以下は、当社が候補者からうかがった範囲での目安です。公的統計にもとづく数値ではなく、個人差も大きい点をご了承ください。
| 資格 | 当社が聞く範囲の学習期間 |
|---|---|
| 日商簿記3級 | 1〜3か月 |
| 日商簿記2級 | 3〜8か月(3級保有かどうかで大きく変わる) |
| 日商簿記1級 | 1年以上、複数回受験する方が多い |
| USCPA・税理士科目 | 数年単位。働きながらなら期間を長く見込む |
| FASS検定 | 実務経験があれば短期。経験が長いほど高スコアが出る傾向 |
数字の性格が違うものを、同じ表に並べないでください。合格率は公表値であり、学習時間は推計です。この区別をつけるだけで、資格選びの精度は上がります。
面談から:順位が高くても、目的が合わなければ効かない
ランキングの限界についても書いておきます。当社の面談で、次のような事例がありました。
法令上その配置が求められる場面があり、しかも保有者の少ない資格を持っている方です。
ところが、当時の処遇は前職より上がっていませんでした。専門性を磨く目的で入った職場で、実際には別の業務に時間を取られていたためです。つまり、資格の希少性だけでは処遇は決まりません。
資格が効いたのは、むしろ別の場面でした。ある専門性の高い決算ポジションでは、実務経験者が見つからず、採用要件が「日本の会計士資格があればキャッチアップできる」という水準まで下がっていました。この場合、資格は応募できるかどうかそのものを決めています。
なお、これらは個別の事例であり、相場や平均を示すものではありません。また当社が結果を保証するものでもありません。
上位の資格を持っていれば、どの職場でも評価されますか。
LXキャリア
そうとも限らないんです。というのも、資格を持つ専門家は報酬が高いぶん、レビューやチェックの役割になりやすいからです。一方で、手を動かして数字を作れる人は、それとは別に必要とされています。だから資格は、目指す役割に合わせて選ぶのが大事なんですよ。
順位より、自分の目的に合うかで選ぶんですね。
1本に絞るための3つの質問
最後に、順位表を自分用に読み替える方法をお伝えします。次の3つに答えてみてください。
| 質問 | 確認の仕方 |
|---|---|
| 1. その資格は求人票に出てくるか | 狙う求人を10件並べ、必須要件と歓迎要件に何回登場するかを数える |
| 2. 受験機会はいつあるか | 通年か年数回か。決算の繁忙期と重ならないかを先に確認する |
| 3. 落ちたときに何が残るか | 科目合格が残るか、スコアが残るか、それとも何も残らないか |
とくに3つ目が効きます。税理士試験は科目合格が残ります。FASS検定はスコアが残ります。一方、多くの検定は不合格だと形として残りません。したがって、続けやすさに差が出ます。
それなら、資格を選ぶ前に自分の年収の目安を知りたいです。
LXキャリア
たとえば経理の年収診断なら、担当範囲と保有資格から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、目的に合う資格を1本に絞りましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
経理の資格おすすめに関するよくある質問
Q1. 資格なしでも経理に転職できますか
実務経験があれば、資格なしでも転職は可能です。経験者の選考では担当範囲と決算での役割が重視されます。一方、未経験の場合は簿記2級の有無で応募できる求人数が変わります。
👉 あわせて読みたい:簿記は意味ない?経理キャリアで簿記が持つ本当の価値
Q2. 資格は何個も取るべきですか
数は評価に直結しません。むしろ関連性の低い資格が並ぶと、志向が読み取りにくくなります。まずは目的に直結する1本を確実に取ってください。そのうえで、必要になった段階で次を足しましょう。
Q3. マイナーな資格でも書く意味はありますか
書いて構いません。ただし、資格名だけでは伝わらない前提で書いてください。具体的には、何を測る試験で、自分がどの水準にあるかを一行添えます。そうすれば、読み手が判断できる材料になります。
Q4. 簿記1級とUSCPAはどちらがおすすめですか
狙う会社によって答えが変わります。日系上場企業の連結・開示を目指すなら簿記1級が合います。外資やグローバル部門を目指すならUSCPAが有利です。
👉 あわせて読みたい:簿記1級取得後の経理転職/USCPA取得後の経理転職
まとめ|おすすめは「規模」と「到達可能性」で決まる
経理におすすめの資格の順位は、印象ではなく実数から組み立てられます。まず受験者規模を見て、採用側に伝わる資格かどうかを判断してください。次に公表された合格率を見て、到達できるかを確かめましょう。
そのうえで、転職・年収・未経験・実務という4つの目的のどれに立っているかを決めます。ほとんどの方にとって、出発点は日商簿記2級です。しかし、そこから先は目的によって分かれます。
最後にもう一度だけ。資格は応募できる範囲を変える道具であり、それ自体が年収を決めるものではありません。だからこそ、狙うポジションを先に決めてから資格を選んでください。
👉 あわせて読みたい:転職前に身につけておくべき経理スキル5選【市場価値を高める実践ガイド】
📌 この記事の一次情報源
- 日本商工会議所「簿記 受験者データ」(級別・回別の実受験者数、合格者数、合格率。統一試験とネット試験は別集計)
- 国税庁「税理士試験」令和7年度(第75回)税理士試験結果
- 公認会計士・監査審査会「公認会計士試験」令和7年公認会計士試験の合格発表の概要および合格者調
- 大阪商工会議所「ビジネス会計検定試験 試験結果・受験者データ」(第38回・2026年3月8日実施)
- 日本CFO協会「FASS検定(経理・財務スキル検定)」(評価方式・出題範囲・受験料・実施期間)
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第18表(諸手当の種類別1人平均支給額。令和6年11月分)
- 当社が2026年に実施した経理・管理部門候補者との面談記録および求人企業ヒアリング記録(発言は個人・企業が特定されない形に加工して引用)
