この記事でわかること
・経理の資格は「取得の順番」ではなく、いま自分がどの段階にいるかで決まること
・段階1〜4それぞれで、次に取るべき資格と目的
・上位資格は何歳で挑むかによって合格率が大きく変わるという実数
・資格が処遇を動かした事例と、動かなかった事例
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
簿記2級までは取ったのですが、次に何を取ればいいのか分からなくて。
LXキャリア
そのご相談は、面談でもよくうかがいます。実は、迷いの原因は資格の情報量ではなく、自分がいまどの段階にいるかが定まっていないことなんです。だから、資格名を並べた比較サイトを見ても迷ってしまうんですよ。
そこで本記事では、経理の資格を「キャリアの段階」で整理します。まず段階別の早見表を示します。次に、各段階で何を取り、それをどう使うかを順に解説します。最後に、上位資格を何歳で取るかという論点を公的統計の実数で確認します。
経理の資格は「順番」ではなく「いまの段階」で決まる
結論から述べます。経理の資格に唯一の正解ルートはありません。同じ簿記2級でも、未経験の方と実務3年目の方では、まったく別の使い方をすることになります。したがって、まず自分の段階を確定させてください。
段階別ロードマップ早見表
| 段階 | 中心となる資格 | 資格に持たせる役割 |
|---|---|---|
| 段階1 未経験〜経理1年目 | 日商簿記3級 → 2級 | 応募できる求人を増やす/学習意欲を示す |
| 段階2 経理1〜3年目 | 日商簿記2級(実務との接続) | 担当業務の言語化/手当と基本給への反映 |
| 段階3 中堅4〜9年目 | 簿記1級/USCPA/税理士科目 | 深めるか広げるかの方向づけ |
| 段階4 管理職・専門職 | 応募要件として求められる資格 | 選考の土俵に上がるための条件を満たす |
資格ごとの難易度や学習時間を横並びで比べたい方は、別記事に一覧をまとめています。
👉 あわせて読みたい:経理におすすめの資格ランキング【目的別】簿記からその先まで
「順番」から入ると起きること
3級から2級へ、そして1級へ。この並びは分かりやすい反面、落とし穴があります。段階が上がるほど、資格の効き方が変わるからです。
具体的には、段階1では資格が「入場券」として働きます。ところが段階4になると、資格は「応募要件」に変わります。つまり同じ努力でも、返ってくるものの性質が違います。だからこそ、順番ではなく段階で考える必要があります。
段階1:未経験〜経理1年目 ─ 簿記3級から2級へ
経理未経験の方にとって、資格は実務経験の代わりになる数少ない材料です。そのため、この段階での費用対効果は最も高くなります。
3級を飛ばさないほうがよい理由
「どうせなら2級から」と考える方は少なくありません。しかし、私は3級から入ることをおすすめしています。理由は2つあります。
第一に、3級は仕訳という土台をつくる級だからです。この土台がないまま2級に進むと、工業簿記でつまずきます。第二に、3級は学習期間が短く、合格という成功体験を早く得られます。したがって、学習を継続しやすくなります。
なお、3級と2級では出題範囲も到達水準も日本商工会議所が明示しています。まずは公式の範囲表を確認してから、教材を選んでください。
未経験転職は「一度下がる」前提で設計する
まず、未経験の職種に移る場合は、年収が一時的に下がる可能性を前提に設計しておくと安心です。そのうえで、資格をどの場面で使うかを考えます。
ちなみに、未経験で経理に移ると年収が下がると聞きました。資格を取っても意味がないのでしょうか。
LXキャリア
意味はありますよ。たしかに未経験の職種に移ると、年収が一度下がる可能性はあります。そこで、まず経験のある職種で入社して、社内公募で経理を目指す方法もあるんです。その申請のときに、簿記2級は本気度を示す材料になります。
つまり、資格は転職の瞬間だけに使うものではないんですね。
👉 あわせて読みたい:20代未経験から経理へ転職できる?成功率を上げる4ステップ
段階2:経理1〜3年目 ─ 資格を「実務との接続」に変える
実務に就いた瞬間から、資格の意味は変わります。もはや資格は入場券ではありません。実務を説明するための言葉になります。
手当として返ってくる金額は年25万円前後
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、「技能手当、技術(資格)手当など」の1人平均支給額は月21,500円です。支給企業割合は53.0%でした。いずれも令和6年11月分の集計です。
年間に直すと25.8万円になります。決して小さくありません。ただし、この区分は経理の資格に限ったものではない点に注意してください。また同調査は、常時30人以上の常用労働者を雇用する民営企業を対象としています。
さらに重要な性格があります。同調査は諸手当を「賞与等の算定基礎とならない」性格を持つ賃金と定義しています。したがって、同じ金額でも基本給に入るのか手当で出るのかによって、生涯で受け取る額は変わります。
👉 あわせて読みたい:経理の資格手当の相場|簿記2級・1級でいくら上がるか徹底解説
この段階で簿記2級の価値を最大化する方法
経験者の選考では、資格そのものが決め手になる場面は多くありません。むしろ、資格と担当業務を結びつけて語れるかが問われます。
たとえば「簿記2級を保有」とだけ書くのと、「簿記2級の工業簿記の知識を使い、製造原価報告書の作成を担当した」と書くのでは、読み手の受け取り方が変わります。つまり資格は、実務の説明を支える補助線として使うのが効果的です。
👉 あわせて読みたい:簿記2級は経理転職で本当に武器になるのか?プロが本音で解説/簿記は意味ない?経理キャリアで簿記が持つ本当の価値
段階3:中堅4〜9年目 ─ 「深める」か「広げる」かの分岐
実務が4年を超えたあたりから、多くの方が分岐点に立ちます。会計の専門性を深めるのか、それとも掛け算で領域を広げるのかという選択です。
深めるルート:簿記1級
簿記1級は、連結会計や高度な原価計算まで扱います。そのため、上場企業の連結決算や開示のポジションで評価されやすくなります。加えて、税理士試験の受験資格にもつながります。
日本商工会議所の公表データでは、1級(統一試験)の合格率は第173回(2026年6月14日)で21.2%でした。一方、第171回(2025年11月16日)は15.2%です。つまり回ごとの振れ幅が大きく、一度の受験で判断しないほうが安全です。
👉 あわせて読みたい:簿記1級取得後の経理転職|どんな求人に応募でき、年収はどう変わる?
広げるルート:USCPA・税理士科目
もうひとつの方向が、掛け算で領域を広げるルートです。会計に英語を掛ければ外資やグローバル企業が視野に入ります。会計に税務を掛ければ、税理士法人や税務部門が近づきます。
ただし、こちらは学習負荷が一段上がります。だからこそ、取得後にどのポジションを狙うかを先に決めてください。目的が決まっていない状態で始めると、途中で止まりやすくなります。
簿記1級かUSCPAか:応募したい求人から逆算する
では、中堅になったら簿記1級とUSCPAのどちらに進むべきでしょうか。
LXキャリア
どの求人に応募したいかから逆算するのがおすすめです。たとえばUSCPAのような資格は、経験の積み方としてわかりやすいんです。一方で、決算や連結は担える人が多く、取り合いになりやすい面もあります。むしろ税務のように尖った専門のほうが、求人側のニーズがあることもあるんですよ。
深めるか広げるかは、行きたい求人で決めるんですね。
👉 あわせて読みたい:USCPA取得後の経理転職|外資・Big4・事業会社への転職戦略
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段階4:管理職・専門職 ─ 資格は「応募要件」として働く
段階4に入ると、資格の役割がまた変わります。加点材料ではなく、選考の土俵に上がるための条件になります。
採用要件が「資格の有無」まで下がった例
ある専門性の高い不動産関連の経理ポジションを扱ったときのことです。企業が本来求めていたのは、その分野の会計処理を実際に担当した経験者でした。ところが該当する方が市場にほとんどおらず、長く採用できない状態が続いていました。
企業側に要件を確認したところ、理想はその分野の実務経験者だが、見つからない場合は日本の公認会計士の資格があれば、すぐにキャッチアップできるだろうという判断でした。
つまりこの案件では、資格が実務経験の代替として機能していました。手当の話ではありません。応募できるかどうかそのものが変わっています。
希少な資格を持っていても、処遇が上がるとは限らない
一方で、逆の事例もあります。法令上の配置が求められ、しかも保有者の少ない資格を持っている方の面談です。
ところが、それだけ希少な資格でも、当時の処遇は前職より上がっていませんでした。理由は資格ではなく、配属と業務内容にありました。専門性を磨くつもりで入った職場で、実際には別の業務に時間を取られていたためです。
独占業務がある資格と、ない資格
この2つの事例は、資格の性格の違いを示しています。整理すると次のようになります。
| 性格 | 例 | 選考での効き方 |
|---|---|---|
| 独占業務がある | 公認会計士、税理士 | 応募要件そのものになりやすい |
| 法令上の設置義務がある | 衛生管理者 など | 配置が必要な事業場で必須になる |
| 知識水準を示す | 日商簿記、FASS検定 など | 歓迎要件・加点として働く |
日商簿記には独占業務がありません。だからといって価値がないわけではありません。ただし、効き方が違うことは知っておいてください。そのうえで、資格だけに依存しない設計をおすすめしています。
【実数】上位資格は「何歳で取るか」で難度が変わる
ロードマップを描くうえで、避けて通れない論点があります。年齢です。ここは感覚論になりやすいため、公的統計の実数で確認します。
税理士試験:年齢が上がるほど合格率は下がる
国税庁が公表した令和7年度(第75回)税理士試験の結果です。受験者数36,320名に対し、合格者数合計は7,847名でした。全体の合格率は21.6%です。
| 年齢区分 | 受験者数 | 合格者数合計 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 20歳以下 | 1,742名 | 617名 | 35.4% |
| 21〜25歳 | 6,752名 | 1,987名 | 29.4% |
| 26〜30歳 | 6,420名 | 1,638名 | 25.5% |
| 31〜35歳 | 5,100名 | 1,266名 | 24.8% |
| 36〜40歳 | 4,674名 | 1,000名 | 21.4% |
| 41歳以上 | 11,632名 | 1,339名 | 11.5% |
| 合計 | 36,320名 | 7,847名 | 21.6% |
出典:国税庁「令和7年度(第75回)税理士試験結果」。合格者数合計は5科目到達者と一部科目合格者の合計(実人員)。
20歳以下と41歳以上では、合格率が3倍以上ひらいています。もっとも、これは年齢そのものが原因とは限りません。学生と社会人では、確保できる学習時間が違うためです。
あわせて押さえておきたい数字があります。合格者7,847名のうち、5科目に到達した方は527名でした。受験者全体に対しては1.5%にあたります。つまり「税理士試験の合格率21.6%」という数字は、科目単位の合格を含んだものです。
公認会計士試験:合格者の87.5%が30歳未満
公認会計士・監査審査会が公表した令和7年公認会計士試験の結果も見ておきます。出願者数22,056名に対し、最終合格者数は1,636名でした。最終合格率は7.4%です。
| 年齢区分 | 出願者数 | 合格者数 | 合格者構成比 |
|---|---|---|---|
| 20歳未満 | 442名 | 26名 | 1.6% |
| 20歳以上25歳未満 | 10,105名 | 1,002名 | 61.2% |
| 25歳以上30歳未満 | 5,734名 | 431名 | 26.3% |
| 30歳以上35歳未満 | 2,474名 | 119名 | 7.3% |
| 35歳以上40歳未満 | 1,263名 | 38名 | 2.3% |
| 40歳以上45歳未満 | 824名 | 15名 | 0.9% |
出典:公認会計士・監査審査会「令和7年公認会計士試験 合格者調」。構成比は最終合格者1,636名に対する割合。
合格者の87.5%が30歳未満です。35歳以上の合格者は53名で、全体の3.2%にとどまります。したがって、社会人が働きながら短期で狙う資格としては、現実的な難度ではありません。
それでも41歳以上で1,339名が合格している
ここで数字を悲観的に読みすぎないでください。税理士試験では、41歳以上の受験者から1,339名が合格しています。これは公認会計士試験の最終合格者総数に迫る人数です。
差を生んでいるのは科目合格制です。税理士試験は科目ごとに合格を積み上げられます。そのため、働きながら数年かけて進めるという設計が成り立ちます。一方、公認会計士試験は短期集中で挑む性格が強くなります。
要するに、年齢で諦める必要はありません。ただし、年齢に合った試験制度を選ぶ必要があります。
ロードマップを描くときの5つの判断基準
段階が定まったら、次は個別の資格を選ぶ工程に入ります。そのとき私が面談でお伝えしている判断基準を5つ挙げます。
| 基準 | 確認すること |
|---|---|
| 1. 応募要件に登場するか | 狙う求人票10件を並べ、必須要件と歓迎要件に何回出てくるかを数える |
| 2. 実務と接続できるか | いま担当している業務を、その資格の言葉で説明し直せるか |
| 3. 試験制度が生活と合うか | 科目合格制か一発勝負か、受験機会は年に何回か |
| 4. 反映される場所はどこか | 手当なのか基本給なのか、賞与の算定基礎に入るのか |
| 5. 撤退ラインを決めたか | 何年続けて届かなければ方針を変えるかを、始める前に決めておく |
とくに5つ目を軽視しないでください。上位資格は学習期間が長くなります。そのため、途中で実務経験を積む時間とのバランスが崩れることがあります。
資格を持たずに会計領域へ入った、私自身の話
最後に、私自身の経験も書いておきます。私はもともと営業と企画の出身で、会計の資格を持っていませんでした。
前職でIT人材のマッチング事業に関わるなかで、事業の意思決定や新規事業の立案に携わるようになりました。そこでビジネススクールに通い、はじめてアカウンティングとファイナンスを学んでいます。その後、会計人材のマッチング事業を立ち上げました。
つまり、資格がなくても会計領域に入る道はあります。ただし私の場合、体系的に学び直す時間を意識的に取りました。だからこそ、資格を「学習の設計図」として使うことには価値があると考えています。
それなら、いまの資格で自分の年収がどのくらいか知りたいです。
LXキャリア
たとえば経理の年収診断なら、担当範囲と保有資格から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、次に取る資格をどの求人に向けて選ぶかを一緒に考えましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
経理の資格ロードマップに関するよくある質問
Q1. 資格がなくても経理に転職できますか
実務経験がある方であれば、資格がなくても転職は可能です。実際、経験者の選考では担当範囲と決算での役割が重視されます。一方、未経験の場合は簿記2級があるかどうかで応募できる求人の数が変わります。したがって、経験が浅いほど資格の効果は大きくなります。
Q2. 資格は何個も取るべきですか
数を増やすことは目的になりません。むしろ、関連性の低い資格が並ぶと焦点がぼやけます。まずは狙うポジションに直結する1本を確実に取ってください。そのうえで、必要が生じた段階で次を足すのが現実的です。
Q3. 働きながらでも上位資格は取れますか
科目合格制の試験であれば、働きながらでも設計できます。前掲のとおり、税理士試験では41歳以上の方が1,339名合格しています。ただし、繁忙期と受験時期が重なる職場では計画が崩れやすくなります。そこで、決算スケジュールと試験日程を先に並べて確認してください。
Q4. 独学と講座、どちらを選ぶべきですか
級と生活状況によって変わります。簿記3級と2級であれば、独学で合格される方も多くいらっしゃいます。一方、上位資格では講座を使ったほうが到達までの期間を読みやすくなります。
👉 あわせて読みたい:簿記2級は独学で受かる?勉強時間・難易度・スケジュール【最短ルート】
Q5. 資格を取れば年収は上がりますか
資格の取得だけで年収が上がると考えないほうが安全です。前述のとおり、手当として返る金額には上限があります。むしろ、資格によって応募できるポジションが変わったときに差が生まれます。
👉 あわせて読みたい:経理の年収相場|平均・年代別・役職別データ
まとめ|経理の資格は「段階」で選ぶ
経理の資格のロードマップは、取得の順番を暗記するものではありません。いま自分がどの段階にいるかを見定め、その段階に合った役割を資格に持たせることが出発点です。
まず段階1では、応募できる求人を増やすために取ります。次の段階2になると、実務の説明を支える言葉として使うことになります。そして中堅の段階3で深めるか広げるかを選び、管理職の段階4では応募要件を満たすために取ります。つまり、同じ資格でも段階ごとに意味が変わります。
そして年齢の実数が示すとおり、試験制度と生活の相性は無視できません。まずは自分の段階を確定させてください。そのうえで、次の1本を決めていきましょう。
👉 あわせて読みたい:転職前に身につけておくべき経理スキル5選【市場価値を高める実践ガイド】

📌 この記事の一次情報源
- 日本商工会議所「簿記 受験者データ」(級別・回別の実受験者数、合格者数、合格率。統一試験とネット試験は別集計)
- 日本商工会議所「簿記検定試験」(各級の到達水準・出題範囲)
- 国税庁「税理士試験」令和7年度(第75回)税理士試験結果(試験地別・学歴別・年齢別・科目別)
- 公認会計士・監査審査会「公認会計士試験」令和7年公認会計士試験の合格発表の概要および合格者調
- 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」第17表・第18表(諸手当の種類別支給企業割合および1人平均支給額。令和6年11月分)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種別統計表(会計事務従事者)
- 当社が2026年に実施した経理・管理部門候補者との面談記録および求人企業ヒアリング記録(発言は個人・企業が特定されない形に加工して引用)
