「情シスの現場運用はひととおり経験しました。次はもっと経営に近いところで勝負したいのですが、そういう求人はどこにあるんでしょうか」
30代のIT人材の方から、面談でよくいただく相談です。CIO直下ポジションは情シス・社内SEの延長線上にある現実的な選択肢です。しかしCIO求人やIT役員クラスの求人は表に出にくく、探し方を間違えると出会えないまま時間が過ぎます。
この記事では、CIO直下ポジションの実態とCIO 求人 転職の進め方を解説します。あわせて、そのレンジの年収が全国でどれくらいの人数にあたるのかを、国税庁の実数で確認しました。年収相場・キャリアパス・転職タイミング・必要スキルまで、実務目線でまとめています。
✅ この記事でわかること
- CIO直下ポジションと情シス部長・IT役員の違い
- 年収1,000万円超・1,500万円超が給与所得者の何%にあたるのか(国税庁の実数)
- 企業規模別のCIO・IT役員クラスの年収相場
- CIOを目指すキャリアパスと動くべき転職タイミング
- 表に出ないCIO求人に出会うための経路
- CIO直下で評価されるスキルと資格の考え方
CIO直下ポジションとは?情シス部長・IT役員との違い

まず前提を整理します。そもそもCIO(最高情報責任者)は、企業のIT戦略を経営視点で統括する役員です。一方でCIO直下ポジションとは、そのCIOを補佐し、IT戦略を実行に落とし込む中核ポストを指します。情シスの現場運用とは役割の重心が大きく異なります。
「守り」から「攻め」へ役割が変わる
情シスの現場は、インフラ運用やヘルプデスクなど「守り」の比重が高い領域です。しかしCIO直下では、DX推進や投資判断など「攻め」の意思決定に関わります。そのため、技術力に加えて事業理解が問われます。
また、社内SEが担う個別システムの改善とは視点が違います。CIO直下では、全社のIT投資ポートフォリオをどう組むかという抽象度の高いテーマを扱います。ここが情シス部長との一番の分かれ目です。
情シス部長・IT役員との線引き
情シス部長は、情報システム部門のマネジメント責任者です。しかしIT役員(CIO・執行役員クラス)は、経営会議で議決権を持つ立場になります。CIO直下ポジションは、その中間で戦略の橋渡しをする役割だと考えると分かりやすいです。
なお、部門長として組織を預かる立場を目指すのか、戦略実行の中核を担いたいのかで、見るべき求人は変わります。管理職ポストそのものの選び方や相場は、それぞれ別記事にまとめました。
▶ あわせて読みたい:情シス管理職への転職|マネージャー求人の見極め方と年収相場/情シス部長・ITマネージャーの年収はいくら?
【公的統計】年収1,500万円は、給与所得者の何%か
CIOやIT役員の年収を語るとき、レンジの数字だけが独り歩きしがちです。そこで、そのレンジが全国でどれくらいの人数にあたるのかを先に確認します。ここを押さえておくと、後の相場の読み方が変わります。
国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」によれば、1年を通じて勤務した給与所得者は5,137万人でした。その平均給与は478万円、正社員に限ると545万円です。この母集団を給与階級で分けた実数が次の表になります。
| 年間給与額 | 給与所得者数 | 構成割合 |
|---|---|---|
| 900万円超1,000万円以下 | 約120.8万人 | 2.4% |
| 1,000万円超1,500万円以下 | 約230.6万人 | 4.5% |
| 1,500万円超2,000万円以下 | 約57.6万人 | 1.1% |
| 2,000万円超2,500万円以下 | 約14.7万人 | 0.3% |
| 2,500万円超 | 約17.4万人 | 0.3% |
1,000万円超は6.2%、1,500万円超は1.7%
合算すると、年収1,000万円を超える給与所得者は約320万人です。全体に占める割合は6.2%にとどまります。さらに1,500万円超は約90万人で1.7%、2,000万円超は約32万人で0.6%です。
この記事の後半で示す相場を並べてみます。中堅企業のCIO直下・情シス部長クラスは1,000万〜1,500万円です。そして大手のIT役員・CIOは1,500万〜2,500万円になります。つまり後者は、給与所得者の上位1.7%から0.6%にあたる領域ということになります。
ここは押さえておいてください。ポジションが少ないのではありません。この年収帯そのものが全国で数十万人規模しかないのです。だからこそ、募集が公開市場に流れる前に決まりやすい構造になります。
枠は狭い。ただし、5年で確実に広がっている
もう一つ重要な事実があります。同じ調査の5年分を並べると、上位層の構成割合は増加傾向にあります。
| 年間給与額 | 令和2年分 | 令和4年分 | 令和6年分 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円超1,500万円以下 | 3.5% | 4.0% | 4.5% |
| 1,500万円超2,000万円以下 | 0.7% | 0.8% | 1.1% |
| 2,000万円超2,500万円以下 | 0.2% | 0.3% | 0.3% |
実数でも確認します。1,500万円超2,000万円以下の層は、令和2年分で約37.3万人でした。それが令和6年分では約57.6万人です。つまり5年で約1.5倍になっています。1,000万円超1,500万円以下も約177.5万人から約230.6万人へ増えています。
したがって、CIO直下クラスを狙うことは「ほぼ不可能な椅子取りゲーム」ではありません。枠は狭いものの、確実に広がっている領域です。DX投資の継続を背景に、IT側の上位ポストが増えていることとも整合します。
この統計を読むときの注意
この調査は職種別の集計ではありません。したがって「CIOの平均年収」を直接示すものではなく、あくまでそのレンジに何人いるのかを確認するためのデータです。また、役員報酬のうち給与所得に該当しない部分やストックオプションの評価益は、この集計に含まれません。
▶ あわせて読みたい:情シス・社内SEの年収大全|職種・規模・レイヤー別の相場
CIO・IT役員クラスの年収相場【企業規模別】

ここからは、転職市場で提示されるレンジの目安を整理します。ただしCIO直下やIT役員クラスの年収は、企業規模と事業フェーズで大きく変わります。
企業規模別の目安レンジ
まずスタートアップのCIO候補・IT責任者であれば、年収800万〜1,200万円が中心帯です。ただしストックオプションが付くケースもあり、将来性で判断する余地があります。一方、中堅企業のCIO直下・情シス部長クラスは1,000万〜1,500万円が目安です。
さらに大手企業のIT役員・CIOになると、1,500万〜2,500万円以上に達することもあります。前章のとおり、この水準は給与所得者の上位1.7%以下にあたります。だからこそ、公開市場に出る前に決まる案件が多くなります。
年収を押し上げる要素
レンジの中で上振れするかは、成果の再現性で決まります。たとえば基幹システム刷新やDX予算の獲得など、経営インパクトの大きい実績が評価されます。単なる運用改善だけでは、上位レンジには届きにくいのが実情です。
また、前職での意思決定範囲も見られます。予算規模、決裁権限、直属の部下数。この3点は面接でほぼ必ず確認されるため、数字で答えられるよう準備しておいてください。
CIOを目指すキャリアパスと転職タイミング

ここからは、CIO直下ポジションに至るキャリアパスを整理します。情シス・社内SEからでも、道筋を設計すれば十分に狙えます。焦らず順番を踏むことが近道です。
典型的な3つのルート
まず1つ目は、情シスでプロジェクトマネジメント経験を積み、IT企画へ横移動するルートです。2つ目は、SIerやコンサルでDX案件を経験し、事業会社のIT責任者へ移るルートになります。3つ目は、社内SEから情シス部長を経て、CIO直下へ昇格するルートです。
動くべき転職タイミング
そのうえで転職タイミングの目安は、全社横断のプロジェクトを一度やり切った直後です。この段階なら、経営層と対話した実績を語れます。そのため、CIO直下ポジションの選考でも説得力が出ます。
逆に、運用タスクだけが続いている時期は動きにくいです。まずは社内でIT企画やDX推進に手を挙げ、経営に近い実績を作りましょう。半年から1年の準備で、市場価値は大きく変わります。
なお、経験年数そのものより「決めた場面」の質が問われる点は、どのレイヤーでも共通しています。この論点は別記事で公的統計とあわせて詳しく解説しました。
▶ あわせて読みたい:社内SEは経験何年で転職に有利?年数別・年収相場と評価軸
面談現場から:ベンダー側から見た「決める人」の条件
ここでは統計に出てこない部分を、実際の現場の視点からお伝えします。
提案を受ける側に立つ、ということ
筆者自身、以前はSIerにいました。地方銀行向けの基幹システムやインターネットバンキング、市場系システムの提案を担当しています。その立場から見ると、発注元の情シスは「作る人」ではなく「決める人」でした。
提案の場で話が早く進んだのは、役職の高い担当者とはかぎりません。むしろ要件の優先順位を自分の言葉で言い切れる担当者のほうでした。逆に、社内の合意が取れていない担当者が相手だと、提案は何度も差し戻されます。
CIO直下ポジションは、この「決める」役割が職務そのものになったポストです。だからこそ選考では、技術の深さより何を却下したかの説明が効きます。採用した提案より、見送った提案の理由のほうが判断力を示せるためです。
AI時代に増えているのは「判断する人」の枠
2026年に情報交換としてお話をうかがった、20代後半のプロジェクトリードの方のケースです。採用市場の変化について、当事者としての実感を語ってくださいました。
「最近の採用状況を見ていくと、ジュニアの枠が一気に減ったのかなと感じています」
ここから読み取れること
この変化は、上位ポストを狙う人にとって追い風です。作る工程が圧縮されるほど、出てきたアウトプットの可否を判断する役割の相対的な価値が上がります。CIO直下ポジションは、まさにその判断を全社規模で担うポストにあたります。
ただし求められる水準も同時に上がります。技術の当否だけでなく、事業として進めるべきかを判断できることが前提になるためです。したがって準備すべきは資格の追加ではありません。投資判断の経験を1件でも自分の名前で持つことです。
CIO求人・IT役員求人に出会うための経路
ここが本記事の核心です。CIO 求人 転職で最大の難所は、そもそも求人が表に出ないことにあります。だからこそ、探し方の設計が成否を分けます。
公開求人サイトだけでは届かない
一般の転職サイトに載るIT役員求人は、ごく一部です。多くのCIO求人は、経営に関わる機密性から非公開で動きます。加えて前章のとおり、この年収帯の母集団は全国で数十万人規模です。母集団が小さい市場ほど、公募より個別接触が主流になります。
実際に募集が流れる4つの経路
非公開で動くポジションには、いくつか決まった流通経路があります。自分がどの経路に接続できているかを点検してください。
1. 人材紹介会社の非公開求人
まず、経営層ポストを扱う紹介会社には、公開されない案件が集まります。総合型は市場感をつかむのに向いています。一方でIT特化型は情シス・DX領域の要件に詳しく、エグゼクティブ特化型は役員クラスの重要ポストを扱います。守備範囲がそれぞれ違うため、自分の狙うレイヤーに合う窓口を選ぶことが前提です。
2. リファラル(社内外の紹介)
そして実務では、この経路が最も多くを占めます。たとえば前職の上司や取引先のベンダー、コンサルの担当者から声がかかる形です。したがって、退職時の関係を丁寧に閉じておくことが、そのまま将来の求人経路になります。
3. 社外プロジェクトでの接点
さらに、業界団体の勉強会やユーザー会、ベンダー主催の事例登壇なども該当します。とくに事例登壇は、意思決定の内容を公開の場で語る機会です。そのため、採用側から見ると判断力の証拠として機能します。
4. ダイレクトスカウト
最後に、プロフィールを公開しておくことで企業や紹介会社から直接連絡が届く経路があります。ここで効くのは職務経歴の分量ではありません。予算規模・決裁範囲・組織規模の3点が明記されているかで、届く案件のレイヤーが変わります。
狙うべき企業規模の見極め
企業規模ごとに、ポストの中身は変わります。スタートアップは裁量が大きい反面、体制はこれから作る段階です。中堅企業は、既存の情シスを立て直すミッションが多くなります。一方で大手は、既存の役割分担の中での昇進が中心です。
したがって、自分がどの環境で価値を出せるかで選ぶとミスマッチを防げます。ゼロから作るのが得意なのか、あるものを整えるのが得意なのか。この自己認識が、規模選びの実質的な判断基準になります。
▶ あわせて読みたい:ベンチャー情シスへの転職|大手とのギャップと成功する人の特徴
CIO直下ポジションで求められるスキル・資格
最後に、CIO直下で評価されるスキルと資格を整理します。ただし技術力は前提であり、それ以上に問われる力があります。ここを理解すると、準備の方向が定まります。
技術より「事業に翻訳する力」
CIO直下で最も問われるのは、ITを事業成果へ翻訳する力です。たとえば「このSaaS導入で、営業の商談数が何%増えるか」を語れることが求められます。技術の説明だけでは、経営会議では通用しません。
加えて、ベンダーや情シスチームを束ねる調整力も欠かせません。社内の合意形成をリードできる人が、CIO直下では重宝されます。この点は、情シスの現場経験が活きる部分です。
資格は「必須」ではなく「補助線」
資格については、必須というより実力の裏づけと考えましょう。ITストラテジストやPMPは、戦略とマネジメントの素養を示せます。また、AWSなどのクラウド資格は、DX文脈で説得材料になります。ただし、資格単体で転職が決まるわけではありません。あくまで実績を補強する位置づけです。
CIO求人・転職についてよくある質問
Q. 情シス部長を経ずに、いきなりCIO直下は狙えますか?
狙えます。そもそも全社横断プロジェクトのリード経験があれば、部長職を経ていなくても選考には乗ります。ただし予算と組織を預かった経験がない場合、初年度の提示レンジは下限寄りになりやすい点は理解しておいてください。
Q. 年収1,500万円を目指すのは現実的ですか?
統計上、1,500万円超は給与所得者の1.7%です。決して広い層ではありません。ただしこの層は5年で約1.5倍に増えており、到達不可能な水準ではないというのが実態です。
Q. 事業会社の経験がなくても転職できますか?
むしろSIerやコンサルからの転身は、典型的なルートの一つです。むしろDX案件の推進経験は評価されます。ただし発注側の意思決定プロセスに関わった経験があるかどうかで、見え方が大きく変わります。
Q. CIO求人はどのくらいの期間で見つかりますか?
そもそも公募が少ないため、数か月単位で待つ前提が現実的です。そのため、活動を開始してから探すのではなく、経路に接続した状態を常に保っておくことをおすすめします。
Q. 40代から目指すのは遅いですか?
遅くありません。むしろ予算と組織を預かった経験が蓄積される年代です。一方で50代以降は、既存の人脈経由での紹介が中心になる傾向があります。
Q. 情シス部長とCIO直下、どちらを目指すべきですか?
組織を預かりたいなら情シス部長です。一方で戦略の実行を担いたいなら、CIO直下が近い選択になります。年収レンジは重なるため、役割の好みで選んで問題ありません。管理職ポストの見極め方は別記事にまとめています。
まとめ|狭い市場ほど、経路に先に接続しておく
この記事の要点を整理します。まず国税庁の実数によれば、年収1,000万円超は給与所得者の6.2%、1,500万円超は1.7%でした。CIO・IT役員クラスのレンジは、この上位層にあたります。
一方で、その層は5年で確実に広がっていました。1,500万円超2,000万円以下は約37.3万人から約57.6万人へと約1.5倍になっています。枠は狭いものの、閉じてはいません。
だからこそ、やるべきことは順番が決まっています。まず全社横断の投資判断を1件、自分の名前で持つこと。次に、予算規模・決裁範囲・組織規模を数字で書けるようにすること。そのうえで、非公開の求人が流れる経路に接続しておくことです。
公募が出てから動くのでは間に合わない市場です。まずは現在地の確認から始めてみてください。
✏️ 執筆・監修者
LXキャリア 転職支援チーム
- CA/RA 経験豊富な現役人材紹介のプロ。年間数十件のマッチングを成立
- 人材ビジネスを0→1で立ち上げ、事業としての人材支援の仕組みをゼロから構築
- 情シス・IT・コーポレートIT領域の転職支援実績多数
※ 相談・登録は完全無料です
📌 この記事の一次情報源
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」第16表(給与階級別給与所得者数・構成割合)— 民間給与実態統計調査結果
- 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2026」— 企業等におけるDX推進状況調査分析
- 当社(株式会社LX)が2026年に実施したITエンジニア・情シス職の転職相談面談(複数名)。掲載にあたり、氏名・企業名は伏せ、年齢は年代表記、年収は概数に丸めています。
