「社内SEって、経験何年あれば転職で有利になるんでしょうか」
情シス・社内SEとして働く20〜30代の方から、面談でいちばん多く受ける質問です。裏を返せば、多くの方が「まだ足りないのではないか」という不安を抱えたまま働いているということでもあります。
先に結論を置きます。公的統計を見るかぎり、給与が最も大きく動くのは「経験1〜4年」から「経験5〜9年」に移る局面です。つまり世間で言われる「3年」は、区切りとしてはやや早い位置にあります。しかも10年を超えると、伸び方は職種によってはっきり分かれます。
この記事ではまず、厚生労働省の実数で経験年数と賃金の関係を確認します。そのうえで、企業が年数の裏で何を見ているのかを整理します。あわせて、年数が浅い段階でも評価を取りにいく具体策までまとめました。
✅ この記事でわかること
- 公的統計で見た、経験年数階級ごとの給与と賞与の実数
- 賃金の段差が「3年」ではなく「5年」の手前にある理由
- 経験10年以降に伸びが止まる職種と、加速する職種の違い
- 企業が「経験年数」の裏で本当に見ている評価軸
- 経験が浅くても内定を得るための、年数別のアピール戦略
社内SEは経験何年から転職に有利になるのか

まず押さえたいのは、企業が求めるのは「年数」ではなく「再現できる実務」だという点です。ただし、実務の厚みは年数とゆるやかに相関します。そのため、目安としての年数感は知っておいて損はありません。
採用現場の感覚では、社内SEの転職は経験3年前後から選択肢が広がります。1〜2年でも第二新卒枠やポテンシャル採用は狙えます。一方で5年を超えると、「任せられる範囲」で評価される即戦力枠に移ります。
さらに、情シスは業務範囲が広い職種です。ヘルプデスク中心の1年と、社内システムの企画・ベンダー折衝まで担った3年では、同じ年数でも市場価値が変わります。したがって、年数は入口の目安と捉えるのが実態に近いといえます。
ではその「目安」は、実際の賃金データではどこに現れるのでしょうか。次の章で実数を確認します。
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【公的統計】経験年数階級別に見た、IT職種の給与と賞与
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」には、職種を経験年数階級で分けた集計があります。ここでは職種(小分類)第14表から、情シス・社内SEに関係の深い4区分を取り出しました。
数値は男女計・企業規模計(10人以上)です。年収換算は「所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。この表の給与は所定内、つまり残業代を含みません。手取りの実感より低めに見えるのはそのためです。
| 経験年数 | システムコンサルタント・設計者 | 電気・電子・電気通信技術者 | その他の情報処理・通信技術者 | ソフトウェア作成者 |
|---|---|---|---|---|
| 0年 | 約515万円 | 約378万円 | 約422万円 | 約372万円 |
| 1〜4年 | 約691万円 | 約506万円 | 約485万円 | 約451万円 |
| 5〜9年 | 約782万円 | 約591万円 | 約554万円 | 約534万円 |
| 10〜14年 | 約884万円 | 約670万円 | 約606万円 | 約608万円 |
| 15年以上 | 約1,123万円 | 約770万円 | 約648万円 | 約650万円 |
| 経験年数計 | 約847万円 | 約643万円 | 約566万円 | 約538万円 |
賃金の段差は「3年」ではなく、5年の手前にある
まず伸び幅を見ます。ソフトウェア作成者は0年から1〜4年で約80万円、1〜4年から5〜9年でさらに約83万円上がります。つまり入職から10年目までの区間で、賃金は最も素直に年数へ反応します。
ところが公的統計の区切りは「1〜4年」と「5〜9年」です。この2つの階級のあいだに段差があるため、実務上の目安は3年ではなく5年に近いところにあると読めます。「3年でひととおり見られる」と「5年で任せられる範囲が変わる」は、別の話だということです。
なお、この表は職種の分類であって在籍年数ではありません。転職しても同じ職種を続けていれば、経験年数は積み上がります。したがって「一社で何年」ではなく「この仕事を何年」で読んでください。
10年を超えると、伸びる職種と止まる職種に分かれる
ここからが本題です。経験10〜14年から15年以上への伸び幅を比べると、職種によって差がはっきり出ます。
| 職種 | 1〜4年→5〜9年 | 5〜9年→10〜14年 | 10〜14年→15年以上 |
|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者 | +約90万円 | +約103万円 | +約238万円 |
| 電気・電子・電気通信技術者 | +約85万円 | +約79万円 | +約100万円 |
| ソフトウェア作成者 | +約83万円 | +約74万円 | +約42万円 |
| その他の情報処理・通信技術者 | +約69万円 | +約52万円 | +約43万円 |
ソフトウェア作成者とその他の情報処理・通信技術者は、10年を超えると伸び幅が40万円台まで落ちます。5年前後の伸び(80万円前後)と比べて、およそ半分です。一方でシステムコンサルタント・設計者だけは、15年以上で238万円と加速します。
この差が意味するところは明快です。実装や運用を続けているかぎり、年数を足しても賃金は頭打ちに近づきます。逆に、要件定義や企画といった上流に立ち位置を移した人は、後半でさらに伸びています。
もっとも象徴的な比較を挙げます。ソフトウェア作成者の15年以上は約650万円です。ところがシステムコンサルタント・設計者は、5〜9年の時点ですでに約782万円あります。つまり「10年多く積む」ことと「工程をひとつ上に移す」ことでは、後者のほうが賃金への効き方が大きいということです。
経験0年の時点で、すでに約143万円の差がついている
もう一点、見落とされやすい事実があります。経験0年の年収換算は、システムコンサルタント・設計者が約515万円、ソフトウェア作成者が約372万円です。スタート地点ですでに約143万円離れています。
そして15年以上の時点では、約1,123万円と約650万円で、差は約473万円まで広がります。つまり差は縮まるどころか、3倍以上に開いていきます。
ただし人数の分布も見ておく必要があります。経験0年の労働者数はソフトウェア作成者が約9.2万人、システムコンサルタント・設計者は約1.6万人です。最初から上流に入れる人は多くありません。だからこそ、途中で立ち位置を移す設計が現実的な打ち手になります。
この統計を読むときの注意
日本標準職業分類に「情シス」「社内SE」という職種区分は存在しません。そのため、実務は上記4区分に分散して集計されています。近い区分は次のとおりです。企画・ベンダー折衝が中心ならシステムコンサルタント・設計者。内製開発が中心ならソフトウェア作成者。運用・ヘルプデスク中心なら、その他の情報処理・通信技術者にあたります。
また、この調査の賃金は毎年6月分の実績です。年度末のシステム刷新や大規模移行の繁忙は反映されていません。
▶ あわせて読みたい:情シス・社内SEの年収大全|職種・規模・レイヤー別の相場
【年数別】社内SEの経験年数と評価・年収相場

ここでは経験年数を4段階に分け、評価のされ方を整理します。金額は前章の公的統計を、社内SEの職務内容に近い区分に寄せて読んだ目安です。企業規模や地域で上下する点はご留意ください。
経験1〜2年:ポテンシャル・第二新卒枠
この段階は「伸びしろ」で見られます。統計上、経験0年から1〜4年の区間は実装・運用系でも約80万円動くため、伸び率としてはむしろ大きい時期です。担当がヘルプデスクやキッティング、アカウント管理などの運用実務でも問題はありません。むしろ基本情報技術者やITILの基礎知識があると好印象につながります。
経験3〜5年:即戦力の入口
3年を超えると、任せられる実務の幅で評価されます。統計の区切りでいえば、ちょうど「1〜4年」から「5〜9年」へ移る時期にあたります。社内システムの改善提案、ベンダー選定への関与、SaaS導入・管理などの経験があると、応募できる求人が明確に増えます。
経験6〜10年:専門・リード人材
この層はプロジェクトを主導した実績が問われます。基幹システム刷新やインフラ移行、情報セキュリティ強化など、上流から関わった経験が武器になります。前章のとおり、この時期に上流へ寄せられたかどうかが、10年以降の伸びを決めます。チームの取りまとめ経験も評価軸に加わります。
経験10年以上:管理職・CIO候補
10年を超えると、組織づくりやIT戦略まで含めた視点が求められます。統計でも、上流区分だけが15年以上で大きく伸びていました。DX推進の旗振りや予算管理、経営層への提案経験があると、情シスマネージャーやCIO直下ポジションが見えてきます。
▶ あわせて読みたい:CIO直下ポジションの求人の探し方|狙うべき企業と必要スキル
企業が社内SEの経験年数で本当に見ているもの

採用側は「何年やったか」ではなく、「何を、どこまで自走できるか」を確認しています。つまり年数は、その人の担当範囲を推測するための代理指標にすぎません。ここを理解すると、面接での見せ方が変わります。
とくに情シスで重視されるのは、次の3つの軸です。1つ目はベンダーや社内部門との調整力です。2つ目はコスト意識とIT資産の管理経験です。3つ目は、運用を止めない安定性と、改善を仕掛ける企画性の両立です。
たとえば経験3年でも、ベンダー折衝を主担当として回した実績があれば、5年相当の評価を受けることがあります。逆に年数が長くても、指示された運用だけを続けてきた場合は評価が伸び悩みます。前章の統計で実装・運用系の伸びが10年以降に鈍るのも、これと同じ構造だと考えられます。
「年数」より「決めた回数」が代理指標になる
採用側が知りたいのは、判断を任せられるかどうかです。そのため面接では、担当年数ではなく「自分が決めた場面」の数と質が実質的な判断材料になります。
具体的には、ツールの選定、運用フローの変更、外注範囲の線引きなどが該当します。いずれも小さな決定で構いません。むしろ自分の名前で決めた案件のほうが、大規模プロジェクトの一担当より説明しやすいのです。
▶ あわせて読みたい:30代社内SEの転職|求められるスキルと年収UP戦略
面談現場から:年数以外で評価が決まった分かれ目
ここからは、統計では見えない部分を実際の面談からお伝えします。以下は当社が2026年に実施した面談の内容で、匿名化のうえ掲載しています。
「3年ごとに辞めてきた」ことを不安に感じていた方のケース
20代後半・自社プロダクト企業でプロジェクトリードを務める方です。転職活動中ではなく、情報交換としてお話をうかがいました。ご本人は、これまで3年周期で職場を変えてきたことを気にされています。
「三年で辞めると、ゼロイチは経験しているけれど、グロース期間に携わっていないという不信感が生まれてしまうのかなと」
ここから読み取れること
この方が心配していたのは年数そのものではありません。年数から推測される「担当フェーズの偏り」のほうでした。実際、採用側が短い在籍を懸念するのも、一貫して見届けた経験があるかを測れないためです。
面談では、エンジニア職に限れば転職回数の見られ方は緩和されつつある、とお伝えしました。そのうえで分かれ目になるのは、次の問いに答えられるかどうかです。
「なぜこのアーキテクチャ・技術選定にしたのですか、と聞かれたときに答えられない方が、やはり多いのです」
走っているシステムに途中から乗るだけでは、この問いに答えられません。逆にいえば、在籍が短くても「選んだ理由」を語れる人は、年数のハンデを打ち消せます。経験年数が足りないと感じている方は、まずここを棚卸ししてください。
ベンダー側から見ると、年数は何の代わりに使われているか
筆者自身、以前はSIerにいました。地方銀行向けの基幹システムやインターネットバンキング、市場系システムの提案を担当しています。その立場から見ると、発注元の情シスは「作る人」ではなく「決める人」でした。
提案の場で頼りになったのは、在籍年数の長い担当者とはかぎりません。むしろ要件の優先順位を自分の言葉で言い切れる担当者のほうでした。年数は、その判断力を推し量る代用品にすぎないということです。
したがって職務経歴書には、担当システム名の羅列を書かないでください。そこで何を選び、何をやらないと決めたのかを書きます。年数の不足は、この一点でかなり補えます。
経験年数が浅くても転職を成功させる方法
年数が足りないと感じる場合でも、打てる手はあります。ポイントは、限られた経験を「再現可能なスキル」として翻訳することです。ここでは3つの具体策を挙げます。
まず、担当業務を数値と役割で言語化します。「問い合わせ対応」ではなく「月200件の一次対応を巻き取り、FAQ整備で30%削減」と書けば伝わります。次に、資格で土台を補強します。基本情報技術者やAWS認定は、経験の浅さを補う客観指標です。
さらに、応募先の選び方も工夫します。一人情シスや少人数チームを募集する企業は幅広く任せたい意図があるため、伸びしろを歓迎する傾向があります。一方で大手の専門特化ポジションは即戦力志向が強く、年数のハードルが上がりがちです。
浅い年数のうちにこそ、上流の入口を取りにいく
統計が示していたのは、後半で伸びる職種と止まる職種の差でした。だとすれば、年数が浅い時期にやるべきことは明確です。いま担当している運用の中から、選定・企画に触れる仕事を1つ取りにいくことです。
たとえばSaaSの契約更新で条件を詰める、資産管理の棚卸しルールを作り直す。この程度の範囲で構いません。いずれも経歴上「企画・選定を経験した」と書ける実務です。しかも運用担当のままで着手できます。
▶ あわせて読みたい:社内SEの自己PR完全攻略|採用担当に響く実績の書き方
経験年数別・転職時のアピール戦略
ここでは年数帯ごとに刺さりやすい見せ方をまとめます。自分のフェーズに合わせて、職務経歴書と面接の軸を調整してください。
1〜2年の方は「学習スピードと運用の正確さ」を前面に出します。3〜5年の方は「自走した改善・導入の実績」で即戦力性を示します。6年以上の方は「プロジェクト主導と後進育成」を核に、マネジメント適性まで語ると強くなります。
いずれの段階でも、共通して効くのは「事業への貢献」で締めることです。情シスの仕事をコスト削減や業務効率、セキュリティ向上に結びつけて語ってください。そうすると、経験年数の多寡を超えて評価されやすくなります。
年数を「棚卸しの単位」に使う
最後に実務的なコツを1つ挙げます。年数はアピール材料としては弱いものの、棚卸しの単位としては優秀です。1年ごとに「その年に自分が決めたこと」を3つずつ書き出してみてください。
5年分書き出せば15件になります。そのうえで、金額が動いたもの、運用が変わったもの、外部と交渉したものを選んでください。それがそのまま職務経歴書の骨子になります。年数を「長さ」ではなく「件数」に変換する作業だと考えてください。
社内SEの経験年数についてよくある質問
Q. 経験2年で転職活動を始めるのは早すぎますか?
早すぎることはありません。統計上も0年から1〜4年の区間は伸びが大きく、市場からの評価が動き出す時期にあたります。ただし即戦力枠は厳しくなるため、ポテンシャル採用や一人情シス求人を中心に見るのが現実的です。
Q. 同じ会社で5年より、2社で5年のほうが不利ですか?
職種を継続していれば、経験年数としては同じく5年です。統計の経験年数も在籍年数ではなく職務の経験を指しています。ただし在籍が短い場合は、各社で何を決めたのかを説明できるよう準備してください。
Q. ヘルプデスク中心の3年は、経験年数として評価されますか?
評価はされますが、区分としては運用側に寄って読まれます。前章の統計でいえば「その他の情報処理・通信技術者」に近い位置づけです。そのため、選定や改善に関わった実績を1件でも足しておくと見え方が変わります。
Q. 経験10年を超えたら、もう年収は上がりませんか?
職種によって異なります。実装・運用中心の区分では、10年以降の伸びが約40万円台まで鈍ります。しかし上流区分では、15年以上で約238万円伸びています。したがって、上がるかどうかは年数ではなく担当工程で決まると考えてください。
Q. 資格は経験年数の不足を補えますか?
完全には補えませんが、書類選考の通過率には効きます。とくに基本情報技術者は、運用担当者でも合格率が全体平均と大きく変わらない試験です。実務の言語化と併用するのが効果的です。
Q. 未経験から情シスに入った場合、経験年数はいつから数えますか?
情シス・社内SEとしての実務に就いた時点から数えます。前職の業務知識は経験年数には加算されませんが、業務理解として評価される場面は多くあります。異職種からの転職ルートは別記事で詳しく解説しています。
まとめ|年数を数えるより、決めた場面を数える
この記事の要点を整理します。公的統計では、賃金が最も動くのは経験1〜4年から5〜9年に移る局面でした。世間で言われる「3年」より、やや後ろに段差があります。
そして経験10年を超えると、実装・運用系の伸びは約40万円台まで鈍ります。一方で上流系だけが約238万円伸びていました。つまり年数を積むこと自体は、途中から効きが弱まるということです。
だからこそ、いま取るべき行動は2つです。1つは、担当業務の中から選定・企画に触れる仕事を1件確保すること。もう1つは、これまでに自分が決めた場面を年ごとに書き出すことです。
経験年数は変えられませんが、その年数の中身は今日から変えられます。まずは自分の市場価値がどのレンジにあるのかを確認するところから始めてみてください。
✏️ 執筆・監修者
LXキャリア 転職支援チーム
- CA/RA 経験豊富な現役人材紹介のプロ。年間数十件のマッチングを成立
- 人材ビジネスを0→1で立ち上げ、事業としての人材支援の仕組みをゼロから構築
- 情シス・IT・コーポレートIT領域の転職支援実績多数
※ 相談・登録は完全無料です
📌 この記事の一次情報源
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第14表(経験年数階級別)— e-Stat 賃金構造基本統計調査(職種)
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第1表(職種別の給与・賞与)
- 当社(株式会社LX)が2026年に実施したITエンジニア・情シス職の転職相談面談(複数名)。掲載にあたり、氏名・企業名は伏せ、年齢は年代表記、年収は概数に丸めています。
