「今の年収、経理としては普通なんだろうか。それとも自分は損しているんじゃないか」
転職サイトの求人票や、SNSで見かける他社の年収情報を見るたびに、そんな不安がよぎる方は多いのではないでしょうか。
年収は同僚にも聞きにくく、正確な相場を知る機会は意外と少ないものです。だからこそ「自分は平均より上なのか下なのか」が分からないまま、モヤモヤを抱えている人が少なくありません。
さらに厄介なのは、経理の年収は「年代」「業種」「企業規模」「役職」という複数の要素が絡み合って決まるという点です。一つの数字だけを見て安心したり、逆に落ち込んだりするのは、実はあまり意味がありません。
この記事では、経理・財務職の年収相場を、年代別・業種別・企業規模別・役職別のデータで整理します。あわせて、転職で年収を上げる人と上げられない人の違い、そして実際にアップを狙うための具体的な動き方まで解説します。
📋 この記事でわかること
- 業界・企業規模・役職別の経理年収相場(年代別データ付き)
- 転職で年収アップする人・しない人の違い
- 【年代別】年収アップを狙える動き方(20代・30代・40代)
- 年収交渉で失敗しないための実務ポイント
経理の平均年収はいくら?年代別データでまず確認
経理・財務職の平均年収は、正社員でおよそ529万円です。給与所得者全体の平均(国税庁調査で約460万円)と比べると、経理は70万円ほど高い水準にあります。
ただし、この「平均529万円」はあくまで全体をならした数字です。実際は年代によって大きく差があります。まずは年代別の目安を確認しましょう。

※各年代の数値は、複数の経理・財務特化型転職エージェントが公開している求人統計・転職支援実績データをもとに算出しています(出典は記事末尾に記載)。
20代のうちは「まだこれから」という水準に見えるかもしれません。ですが、この時期に月次・年次決算の経験を積み、簿記2級などの資格を取得しておくことが、30代以降の伸びしろに直結します。
30代になると、決算業務や税務申告など専門性の高い業務を任される機会が増え、年収は一段階上がります。特に30代前半〜中盤は「即戦力」として評価されやすく、転職市場でも有利に交渉できる時期です。
40代では、マネジメント経験の有無が年収を大きく左右します。部下育成や部門横断のプロジェクト経験があると、部長・管理本部長クラスへのステップアップも現実的になってきます。
なお、平均年収は一部の高年収層に引き上げられやすいという性質があります。より実態に近い金額を知りたい場合は、年収を高い順に並べたときの「ちょうど真ん中」にあたる中央値も参考になります。平均と中央値の違いについては、経理の平均年収は?役職・企業規模別の中央値データで詳しく解説しています。
より詳しい業界別・企業規模別・役職別のデータは、次のセクションから見ていきます。
経理・財務転職後の年収相場|業界・企業規模・役職別データ
転職者全体の一部が転職後に年収アップを実現しています。そのため、経理転職で年収を上げることは十分に可能です。しかし、業界・企業規模・役職・スキルの組み合わせを正しく把握した上で動く必要があります。
業種別の年収レンジ|金融・IT・メーカーでどう違う
経理・財務のポジションは、同じ役職でも業種によって年収水準が大きく変わります。ここでは代表的な業種を比較します。

金融・保険業界が突出して高いのは、高度な財務知識に加え、英語力やIFRS(国際財務報告基準)への理解が求められるためです。競争率は高いものの、連結決算やグループファイナンスの経験があれば大きな武器になります。
IT・情報通信業界も高水準です。特に上場準備中の企業やM&Aを積極的に行う企業では経理人材の需要が高まっており、資金調達サポートやキャッシュフロー管理といった、スタートアップならではの経験を積める点も魅力です。
一方、メーカーやサービス業は相対的に水準が控えめですが、その分「経理部門を一人で幅広く担当できる」など、業務の密度が濃い環境も多くあります。年収だけでなく、身につく経験の幅も含めて比較することが大切です。
転職で年収を最大化したいなら、金融・外資・グローバルITの3業種が狙い目です。たとえば金融業界であれば金融商品や時価評価に関する知識、製造業であれば製品原価を計算する原価計算のスキルが求められます。志望業界の会計実務を書籍や資格学習で先取りしておくと、選考でのアピール材料になります。
また、業種だけでなく「企業のフェーズ」も年収に影響します。上場準備中の企業やIPO直前の企業では、通常より高い年収水準で経理人材を採用するケースが少なくありません。安定志向であれば大手メーカー、年収の伸びしろを重視するなら成長中のIT・金融系、というように、自分の志向と照らし合わせて選ぶとよいでしょう。
企業規模別の年収差|大企業・中小企業を比較
同じ役職でも、企業規模によって年収は変わります。一般に、規模が大きいほど水準は高くなる傾向があります。

大企業は年収水準が高く、福利厚生や昇給制度も安定しています。分業体制が整っているため、特定の業務を深く極めやすい環境とも言えます。一方、中小企業は経理部門の人数が少ない分、一人が担当する業務範囲が広く、経験の密度が高まりやすいという特徴があります。
どちらが「正解」というわけではありません。専門性を突き詰めたいなら分業体制の大企業、経理業務を一通り経験して市場価値を広げたいなら中小企業、というように、自分がどんなキャリアを描きたいかによって選ぶべき環境は変わってきます。実際、20代のうちに中小企業で決算業務からIR対応まで幅広く経験し、その経験を武器に上場企業へステップアップする、というキャリアパスも珍しくありません。
役職別の年収レンジ|担当者からCFOまで
同じ「経理」という職種でも、担当業務や役職によって年収は大きく変わります。専門性が高い業務やマネジメントポジションほど、年収は高くなる傾向があります。

経理スタッフから年収を伸ばすには、担当業務の幅を段階的に広げていくのが王道です。仕訳・伝票処理→月次決算→年次決算→管理会計、というように「上流」の業務を担当できるようになるほど、評価と年収は比例して上がっていきます。
部長・CFOクラスまで視野に入れる場合は、連結決算や資金調達、IR対応など、経営に直結する業務経験が問われます。単に決算を締められるだけでなく、「経営判断のための数字をどう作り、どう説明するか」という視点が求められる領域です。
また、役職の呼び方は企業によって幅があります。「マネージャー」という肩書きでも、企業によっては課長相当のこともあれば、部長相当のこともあります。求人票の役職名だけで年収を判断せず、実際の業務範囲やマネジメントする人数もあわせて確認するのがおすすめです。
経理転職で年収が上がる人・横ばいになる人の分岐点
年収が上がる人には、共通するパターンがあります。自分がどちらに近いかを整理しておくと、転職活動の精度が上がります。
年収が上がりやすい人の特徴
- 連結決算・管理会計・税務申告・IFRS対応など、複数の業務で通用する「業界横断スキル」を持っている
- 現職より役職・業務範囲が広がる「格上げ転職」をしている
- 公認会計士・税理士・USCPAなどの資格と、実務経験を組み合わせて持っている
横ばいになりやすいケース
- 同業種・同規模企業への横移動にとどまっている
- 経理経験3年未満での早期転職で、即戦力として評価されにくい
- 「なんとなく条件が良さそうだから」と軸が定まらないまま応募している
言い換えれば、「今の会社に留まっていても得られたはずの成長」を転職先でも繰り返しているだけでは、年収は動きません。転職を年収アップの機会にできるかどうかは、応募先を選ぶ段階の見極めで、すでに半分決まっています。
つまり、年収を上げるには「今より一段階上の役割を担えるかどうか」を、応募前に自分自身で見極めておくことが重要です。もう一つ見落とされがちなのが、「求人票の年収レンジのどの位置で内定が出るか」という視点です。同じ「年収500万円〜700万円」という求人でも、経験が浅ければレンジの下限に近い提示になりやすく、逆に即戦力として評価されれば上限に近い提示を引き出せます。書類選考の時点で実績を数字で示せるよう準備しておくことが、結果的に年収交渉を有利に進めるコツです。
【年代別】年収アップの動き方|20代・30代・40代それぞれの戦略
年収アップを狙う動き方は、年代によって変わってきます。ここでは、20代・30代・40代それぞれに合った戦略を紹介します。
20代:経験の幅を広げることを優先する
20代の年収レンジは約350万円〜450万円と、他の年代に比べると控えめです。ですが、この時期に無理に年収だけを追いかけるより、「経験を積める環境」を選ぶことが、結果的に長期的な年収アップにつながります。
具体的には、月次・年次決算のサイクルを一通り経験すること、日商簿記2級などの資格を取得しておくことが有効です。上場企業や成長中のベンチャーで幅広い業務に触れておくと、30代以降の選択肢が大きく広がります。
未経験から経理を目指す20代であれば、まずは日商簿記2級の取得から始め、経理アシスタントや中小企業の経理職などエントリーしやすいポジションで実務経験を積むのが現実的なルートです。20代のうちにどれだけ「実務で使えるスキル」を積み上げられるかが、その後10年、20年のキャリアの土台になります。
30代:専門性を武器に交渉力を高める
30代になると、決算業務・管理会計・税務など、専門性の高い業務を任される機会が増え、年収レンジは約450万円〜600万円まで伸びます。
この時期の転職市場では「即戦力」としての評価が高く、年収交渉でも有利な立場に立てます。決算業務から税務申告まで一貫して対応できるスキル、あるいは管理会計・経営企画に携わった経験があると、より強い交渉材料になります。
転職活動が最も活発になるのも、この27〜35歳あたりの層です。単体・連結決算を最低1サイクル経験してから動くと、アピール材料が整った状態で転職活動に臨めます。また、ERP導入プロジェクトや会計システムの刷新、IFRS移行対応など、通常の決算業務とは別の「プロジェクト経験」を持っていると、他の候補者との差別化になります。プロジェクトが完了し、成果を「完了形」で語れるタイミングを見計らって動くのが理想的です。
40代:マネジメント経験×専門性で高年収を狙う
40代の年収レンジは約550万円〜750万円。部長・マネージャーなどのマネジメントポジションや、CFO・財務責任者などの要職への転職も現実的になってくる時期です。
ここで評価されるのは「専門性×マネジメント経験」の掛け合わせです。自社の経理部門をゼロから構築した経験、内部統制の構築経験、部下育成の実績などは、特に高く評価されます。
マネジャー・CFO候補としてのキャリアを目指すか、あるいは特定領域のスペシャリストとして専門性を極めるか。どちらの路線を取るにしても、20代後半〜30代でのキャリア選択が、40代以降の年収に大きく影響してきます。40代からの転職は「経験の再現性」が問われる場面でもあります。面接では、単に「やったこと」ではなく「どう考えて、どう動いて、どんな数字を残したか」を具体的に語れるかどうかが評価を分けます。
年収交渉で失敗しないための実務ポイント
転職活動の最終段階、オファー面談での年収交渉は、多くの人が苦手意識を持つポイントです。いくつかの実務的なコツを押さえておきましょう。
まず、前職の年収は「現在地」ではなく「最低ライン」として扱うのが基本です。「現在の年収は◯◯万円ですが、転職にあたっては◯◯万円以上を希望します」というように、希望額を明示することが重要です。
また、基本給と賞与の割合も必ず確認しておきましょう。賞与比率が高い場合、業績次第で年収が大きく変動するため、固定給ベースでの比較が必要になります。
昇給の仕組みとペースも要チェックです。年1回の定期昇給なのか、評価連動型なのかによって、3〜5年後の年収は大きく変わってきます。固定残業代が年収に含まれているかどうかも、忘れずに確認したいポイントです。
つまり、年収の「額面」だけでなく「構造」を理解した上で交渉することが、後悔しない転職につながります。さらに、内定後の年収交渉では、複数社から内定を得ておくことも有効な手段です。他社の提示額を引き合いに出す必要はありませんが、「他の選択肢もある」という状態で臨むことで、精神的な余裕を持って交渉できます。逆に1社だけに絞って進めると、条件面で妥協せざるを得なくなりやすい点には注意が必要です。
まとめ:経理転職で年収アップを実現する3ステップ
ここまでのデータをまとめると、経理・財務職の年収は、年代・業種・企業規模・役職によって大きく異なることが分かります。大切なのは、自分がどの位置にいて、何を伸ばせば年収が上がるのかを客観的に把握することです。
Step1:スキルの棚卸し
連結決算・管理会計・税務・IFRS対応など、業界を横断して通用するスキルを整理しましょう。
Step2:ターゲットを絞る
業種(金融・外資・グローバルIT)と規模(上場・大手)の組み合わせで、年収ポテンシャルが高い求人を優先しましょう。
Step3:タイミングを選ぶ
決算サイクルが一巡し、経験を「完了形」で語れる状態になったタイミングで動くのが理想です。
自分の市場価値を正確に把握することが、年収交渉の第一歩です。経理・財務専門のキャリアアドバイザーに相談することで、より精度の高いキャリア設計が可能になります。年収は、業種・企業規模・役職・年代という複数の軸が絡み合って決まります。だからこそ、一つの数字だけを見て一喜一憂するのではなく、自分がどの軸をどう動かせば年収を伸ばせるのかを整理することが、遠回りに見えて一番の近道です。
➤ あわせて読みたい:経理転職の完全ガイド【20代・30代版】準備から内定まで全手順
この記事の一次情報源
- 国税庁「民間給与実態統計調査」(給与所得者全体の平均給与)
- MS-Japan「経理求人の年収調査」(jmsc.co.jp)
- ジャスネットキャリア「経理の年収」(jusnet)
- JACリクルートメント「経理職の年収ガイド」(jac-recruitment)
🖊 執筆・監修者
LXキャリア 転職支援チーム
- CA/RA 経験豊富な現役人材紹介のプロ。年間数十件のマッチングを成立
- 人材ビジネスを0→1で立ち上げ、事業としての人材支援の仕組みをゼロから構築
- 経理責任者としての実務経験あり






