経理の年収が相場と比べて高いのか低いのか、気になっている方は多いのではないでしょうか。
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
今の年収が、経理として普通なのかわかりません。自分だけ損しているんじゃないかと、つい気になってしまって。
LXキャリア
そう感じる方は多いんです。ただ、ネット上の「経理の平均年収」は、出典が転職サービスの登録者データであることが多く、誰と比べた数字なのかが示されていないんですね。
そこで本記事は、公的統計だけで経理の年収相場を組み立てます。まず実数を示します。次に、その数字が何を含み、何を含んでいないかを説明します。そのうえで、転職で年収を動かすための具体的な手順まで解説します。
📋 この記事でわかること
- 会計事務従事者の年収換算は512.2万円。ただし所定内給与の中位数は月29.1万円で、平均より月3.0万円低いこと
- 年代別・企業規模別の実数(賃金構造基本統計調査 令和7年)
- 役職に就いているかどうかで年収換算が52.0万円変わること
- 転職で年収が上がる人と横ばいになる人の分岐点
【実数】経理の年収は平均512.2万円、真ん中は月29.1万円
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(令和7年)によると、「会計事務従事者」の賃金は次のとおりです。なお、いずれも企業規模10人以上・男女計の数字です。
| 項目 | 実数 |
|---|---|
| きまって支給する現金給与額(月) | 34.3万円 |
| 所定内給与額(月) | 32.1万円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 101.2万円 |
| 年収換算 | 512.2万円 |
| 平均年齢/平均勤続年数 | 44.0歳/12.8年 |
年収換算は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で計算しています。ちなみに国税庁「民間給与実態統計調査」(令和6年分)では、給与所得者全体の平均給与は478万円です。つまり会計事務従事者は、これを34万円ほど上回っています。
平均は中位数より月3.0万円高い
ただし平均だけを見ると、実感とずれます。そこで同じ調査の分布特性値を並べると、その理由が見えてきます。
| 分布特性値 | 所定内給与額(月額) |
|---|---|
| 第1・十分位数(下位10%) | 20.9万円 |
| 第1・四分位数(下位25%) | 24.2万円 |
| 中位数(真ん中) | 29.1万円 |
| 平均 | 32.1万円 |
| 第3・四分位数(上位25%) | 36.7万円 |
| 第9・十分位数(上位10%) | 47.0万円 |
まず所定内給与の平均は月32.1万円で、中位数は月29.1万円です。つまり平均は真ん中より月3.0万円高くなっています。一部の高額層が全体を引き上げているためです。
したがって「平均年収に届いていない」と感じても、それは珍しいことではありません。むしろ平均に届かない人のほうが多数派です。自分の位置は、平均ではなく四分位で確認してください。
平均に届いていないのは、やっぱり低いということですか?
LXキャリア
実は、平均に届かない人のほうが多いんです。なぜなら一部の高い層が、平均を引き上げているからですね。だから比べるなら平均ではなく、真ん中の中位数や四分位で自分の位置を見てください。
つまり、平均だけで落ち込まなくていいんですね。
この統計に含まれる人・含まれない人
ただし数字を使う前に、範囲を押さえておく必要があります。「会計事務従事者」は日本標準職業分類の中分類で、次の職種をまとめたものです。
- 経理事務員
- 現金出納事務員
- 預貯金窓口事務員(銀行の窓口業務を含む)
- その他の会計事務従事者
一方で、公認会計士や税理士は含まれません。また経営企画やFP&Aは別の分類に入ります。つまり「経理=会計事務従事者」ではありません。事業会社の経理職に限った公的統計は存在しないため、本記事ではこの区分を代理指標として使っています。
なお調査上の「賃金」は6月分の所定内給与額を指し、残業代を含みません。賞与は前年1〜12月の実績です。この定義を無視して月額を12倍すると、実態より低い数字になります。
【年代別】経理の年収は20代で伸び、35〜44歳で一度止まる
さらに同じ調査を年齢階級で分けると、伸びる時期と止まる時期がはっきり分かれます。数字はいずれも年収換算です。
| 年齢階級 | 年収換算 | 前の階級との差 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 353.2万円 | — |
| 25〜29歳 | 424.0万円 | +70.8万円 |
| 30〜34歳 | 484.4万円 | +60.4万円 |
| 35〜39歳 | 536.4万円 | +52.0万円 |
| 40〜44歳 | 540.2万円 | +3.8万円 |
| 45〜49歳 | 566.5万円 | +26.3万円 |
| 50〜54歳 | 567.3万円 | +0.8万円 |
| 55〜59歳 | 597.5万円 | +30.2万円 |
| 60〜64歳 | 480.6万円 | −116.9万円 |
伸び幅が最大なのは20代
まず20〜24歳から35〜39歳までの15年で、年収換算は183.2万円増えます。とくに20代前半から後半への5年で70.8万円と、伸び幅が最も大きくなっています。決算業務を任され始める時期と重なるためです。
したがって20代のうちは、年収の絶対額より担当できる工程を増やすことを優先してください。なお月次決算、年次決算、税務申告と範囲が広がるほど、次の5年の伸びが変わります。
35〜44歳で+3.8万円のプラトーが来る
一方で、35〜39歳から40〜44歳への差はわずか3.8万円です。さらに50〜54歳への差も0.8万円にとどまります。つまり年功だけでは、ある時点から動かなくなります。
ここを超える要因は2つあります。ひとつは役職に就くこと、もうひとつは企業規模を上げることです。いずれも次の2つのセクションで実数を示します。
なお60〜64歳で116.9万円下がるのは、再雇用による処遇変更が反映されているためです。
【企業規模別】大企業と小企業で108.8万円の差
企業規模を変えると、同じ職種でも水準が変わります。
| 企業規模 | 年収換算 | 所定内給与の中位数 | 労働者数 |
|---|---|---|---|
| 1,000人以上 | 579.7万円 | 31.4万円 | 約11.6万人 |
| 100〜999人 | 506.4万円 | 28.4万円 | 約18.8万人 |
| 10〜99人 | 470.9万円 | 28.8万円 | 約16.2万人 |
1,000人以上と10〜99人の差は108.8万円で、倍率にすると1.23倍です。賞与の差が大きく効いています。たとえば大企業の年間賞与は130.3万円で、小企業は81.1万円です。
中位数で見ると中堅企業が最も低い
ただし中位数で並べると順番が変わります。つまり100〜999人が月28.4万円で、10〜99人の月28.8万円より低くなっています。平均では中堅企業のほうが高いにもかかわらずです。
つまり中堅企業は、上下の開きが大きい層だといえます。同じ規模帯でも、企業によって水準がそろっていません。したがって規模だけで応募先を絞るのは危険です。求人票の金額を1社ずつ確認してください。
【役職】会計事務従事者の23.7%が役職者、その差は52.0万円
ここで賃金構造基本統計調査を見ると、役職者を除いて集計した表があります。全体と比べると、役職の有無による差が読み取れます。
| 区分 | きまって支給(月) | 年間賞与 | 年収換算 |
|---|---|---|---|
| 全体(役職者を含む) | 34.3万円 | 101.2万円 | 512.2万円 |
| 役職者を除く | 31.3万円 | 85.1万円 | 460.2万円 |
| 差 | 3.0万円 | 16.2万円 | 52.0万円 |
また労働者数で見ると、会計事務従事者46.6万人のうち役職者を除いた人数は35.6万人です。つまり役職に就いている人は約23.7%にあたります。
先ほどの35〜44歳のプラトーは、この4人に1人の枠に入れるかどうかで説明がつきます。したがって30代後半に差しかかったら、係長・主任クラスの打診があるかを確認してください。社内で見込みが薄いなら、役職付きの求人で外に出るほうが早くなります。
30代後半になって、年収が伸びなくなってきた気がします。
LXキャリア
実は、統計でも35歳を過ぎると伸びが鈍るんです。そこを超えるのは、役職に就くか、企業規模を上げるかのどちらかです。まずは社内で役職の見込みがあるかを確かめてみてください。
業種で年収が変わるのは事実、ただし公的な実数は存在しない
「金融は高い」「メーカーは控えめ」といった話はよく聞きます。実感としても外れてはいません。
ただし注意点があります。まず賃金構造基本統計調査の職種別表は、すべて産業計で集計されています。つまり「会計事務従事者×金融業」のような実数は公表されていません。また、ネット上の業種別年収表は転職サービスの登録者データに基づくものがほとんどです。
そのため本記事では、業種別の金額を掲載していません。代わりに、差が生まれる仕組みを押さえておいてください。
- 会計基準の複雑さ:IFRS適用や連結範囲が広いほど、担当できる人が限られます
- 賞与原資:業種によって賞与の比率が違い、年収差の多くはここで生まれます
- 職務の希少性:原価計算や時価評価など、業種特有の実務は代替が効きにくくなります
つまり業種そのものではなく、その業種で何を任されるかが年収を決めます。志望業界の会計実務を先に学んでおくと、選考でも説明しやすくなります。
経理転職で年収が上がる人・横ばいになる人の分岐点
つまりここまでの実数は、動かせる変数が3つあることを示しています。年代・企業規模・役職の3つです。転職はこのうち2つを同時に動かせる手段だといえます。
年収が上がりやすい人の特徴
- 連結決算・管理会計・税務申告・IFRS対応など、業界を横断して通用する経験を持っている
- 現職より役職または担当範囲が広がる「格上げ転職」になっている
- 企業規模を1段階上げている(10〜99人から100〜999人など)
- 資格と実務経験を組み合わせて説明できる
つまり肩書きか規模のどちらかが上がっていることが条件になります。逆に両方が同じなら、上がる理由が採用側にもありません。
横ばいになりやすいケース
- 同業種・同規模・同じ担当範囲への転職になっている
- 担当した工程ではなく、在籍年数で経験を語っている
- 希望額の根拠を現年収の不満だけに置いている
なお横ばい自体が失敗とは限りません。残業が減る、通勤が短くなるといった条件が改善していれば、実質的には前進です。したがって比較は額面ではなく、時間あたりで行ってください。
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【年代別】経理の年収を上げる動き方
先ほどの実数を踏まえると、年代ごとに打ち手が変わります。
20代:伸び幅が最大の時期に範囲を広げる
20代前半から後半で70.8万円動く時期です。したがって、この5年で決算に触れられるかどうかが分岐点になります。まず月次決算を一巡させてください。そのうえで年次決算の一部でも担当できると、次の転職で語れる材料になります。
👉 あわせて読みたい:20代の経理転職|25歳を境に規模の差が2.5倍に開く実数/経理は何年目で転職?年次と年齢の対応を実数で確認する
30代:専門性を1つ決めて交渉材料にする
30代前半までは年功でも伸びます。しかし35歳を過ぎるとプラトーが来ます。したがって連結、税務、管理会計のいずれかを深めてください。1つ決めておくと、求人の絞り込みも交渉も進めやすくなります。
40代:役職と規模のどちらかを取りにいく
40代で年収を動かす要因は、役職か企業規模のどちらかです。実数でも、役職の有無で52.0万円の差がついています。つまり担当者のまま同規模に移っても、大きくは変わりません。マネジメント経験があるなら、そこを前面に出してください。
👉 あわせて読みたい:何歳まで経理転職はできる?年齢別の転職成功率と攻略法/経理のキャリアパス|担当者と管理職の差は455万円【2026】
年収交渉で失敗しないための実務ポイント
額面ではなく「構造」を確認する
まず提示された年収は、内訳を分けて読んでください。具体的には、基本給・固定残業代・賞与見込みの3つに分かれます。とくに賞与見込みは業績で変動します。つまり同じ600万円でも、固定の割合によって手取りは変わります。
また昇給の仕組みも確認してください。年1回の定期昇給か、評価連動型かによって、3年後の水準が変わります。
それなら、提示された年収が今より高ければ十分ですよね?
LXキャリア
額面だけで判断するのは危ないんです。たとえば面談でお会いした30代の経理の方は、残業代を含めた年収と基本給にかなり差がありました。そのため転職では、年収の額より時間あたりの単価を上げたいと話していたんです。
つまり、内訳まで見て比べるんですね。
複数の選択肢を持ったまま臨む
なお内定が1社だけだと、条件面で妥協しやすくなります。他社の提示額を持ち出す必要はありません。ただし選択肢がある状態なら、落ち着いて確認できます。したがって選考は時期をそろえて進めてください。
👉 あわせて読みたい:経理転職の年収交渉|提示額を動かすための実務手順
そこで、自分が四分位のどこにいるのかを確かめてみたいです。
LXキャリア
たとえば経理の年収診断なら、今の経験から想定年収レンジの目安が90秒でわかります。そのうえで、担当範囲・規模・役職のどれを動かすかを一緒に考えましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
経理の年収に関するよくある質問
Q1. 平均年収に届いていません。転職すべきでしょうか
平均は判断材料になりません。中位数の月29.1万円と第1・四分位数の月24.2万円を基準にしてください。つまり四分位の下半分にいるなら、担当範囲か企業規模のどちらかを動かす余地があります。ただし残業時間や通勤も含めて比べる必要があります。
Q2. 資格を取れば年収は上がりますか
資格だけでは動きにくいのが実情です。まず資格手当の有無は企業ごとに違います。つまり同じ簿記2級でも、反映される会社とされない会社があります。したがって資格は、担当できる工程を増やす手段として位置づけてください。
👉 あわせて読みたい:経理の資格手当はいくら?公的統計で見る実額と交渉の考え方
Q3. 中小企業から大企業へ移れば年収は上がりますか
統計上は108.8万円の差があります。ただし個別の求人でその差が出るとは限りません。まず賞与の水準を確認してください。差の多くは賞与から生まれています。なお大企業は分業が進むため、担当範囲は狭くなる場合があります。
Q4. 経理の年収は今後下がっていきますか
統計を見るかぎり、下がる兆候は出ていません。むしろ会計事務従事者は46.6万人規模で、平均勤続12.8年と定着しています。ただし転記や照合が中心の業務は自動化が進みます。したがって決算や制度対応の比重を上げておくほうが安全です。
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まとめ|平均ではなく、四分位で自分の位置を見る
まとめると、経理の年収で押さえておきたい実数は3つです。
- 年収換算512.2万円、所定内給与の中位数は月29.1万円。平均は真ん中より月3.0万円高く、届かない人のほうが多い
- 20代で183.2万円伸び、35〜44歳で+3.8万円まで鈍る。年功だけでは途中で止まる
- 役職の有無で52.0万円、企業規模で108.8万円。プラトーを超える変数はこの2つ
つまり自分の位置は平均ではなく、四分位で確認してください。そのうえで動かせる変数を1つ選びます。20代なら担当範囲、30代なら専門性、40代なら役職か規模です。
年収は複数の軸で決まります。したがって一つの数字で一喜一憂するより、どの軸を動かすかを決めるほうが早く進みます。
➤ あわせて読みたい:経理転職の完全ガイド【20代・30代版】準備から内定まで全手順/経理の平均年収は?役職・企業規模別の中央値データ/経理課長・部長の年収はいくら?管理職の相場を役職・規模別に解説
📌 この記事の一次情報源
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」(職種)第1表 — 職種(小分類)別の給与額と年間賞与
- 役職者を除いた集計は、同調査の(職種)第3表
- 年齢階級別の集計は、同調査の(職種)第5表
- 分布特性値(中位数・四分位数)は、同調査の(職種)第17表
- 国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」(給与所得者全体の平均給与478万円)
- 総務省「日本標準職業分類」中分類26 会計事務従事者の範囲
- ※原典の金額は千円単位で公表されています。本記事では読みやすさのため万円に換算し、小数第1位で丸めています
※本記事の年収換算は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額」で算出しています。賃金構造基本統計調査の「賃金」は調査年6月分の額であり、賞与は前年1〜12月の実績です。また「会計事務従事者」には預貯金窓口事務員などを含み、公認会計士・税理士は含みません。事業会社の経理職に限定した公的統計は存在しないため、代理指標として用いています。
