経理・財務

給与計算と経理の違い|年収は525万円と512万円、高いのはどちらか

給与計算経験と経理転職のアイキャッチ

給与計算の経験を活かして経理へ移りたいと考えたとき、まず気になるのは年収と評価のされ方です。

※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。

相談者

実は、給与計算しかやってこなかったのですが、経理に移りたいと考えています。

森岡
LXキャリア

そのご相談は、面談でもうかがいます。ただ、その前に確認しておきたい点があるんです。というのも、公的統計を見ると、給与計算が含まれる職種のほうが、経理が含まれる職種より年収換算でわずかに高いからなんですよ。つまり、経理へ移れば上がるとは限らないんです。

そこでこの記事では、まず実数で両者を比べます。そのうえで、給与計算経験が経理転職でどう評価されるのか、そして広げ方の選択肢を整理します。

給与計算と経理は、何がどう違うのか

まず業務の位置づけを整理します。給与計算は、勤怠の集計から支給額の確定、社会保険料と所得税の控除、そして振込データの作成までを指します。一方で経理は、会社の取引を記録し、決算書としてまとめる仕事です。

したがって、両者は接点を持ちながらも管轄が違います。実際、給与計算は人事労務の領域に置かれることが一般的です。ただし給与の仕訳計上は経理が担うため、月次のなかで必ず交差します。

中小企業では、そもそも分かれていない

もっとも、この区分は企業規模によって変わります。管理部門の人数が限られる会社では、同じ担当者が給与計算と経理を兼務します。むしろ中小企業では、そちらのほうが一般的です。

だから「給与計算の経験しかない」と本人が思っていても、実際には仕訳計上や社会保険料の未払計上まで触っているケースがあります。まずは自分の担当範囲を、工程単位で洗い出してください。

👉 あわせて読みたい:経理の仕事内容 完全ガイド|1日の流れと年間業務

【実数】給与計算と経理、年収はどちらが高いか

次に、数字で比べます。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査は、職種別に賃金と労働者数を公表しています。したがって、両者の水準はここで確認できます。

ただし、注意すべき点があります。この調査に「給与計算担当」という職種区分はありません。給与計算は日本標準職業分類の「庶務・人事事務員」に含まれ、経理は「会計事務従事者」に含まれます。つまり、どちらの区分にも周辺業務の担当者が混ざっています。

そのうえで、令和7年(民営事業所・企業規模計)の実数は次のとおりです。

職種 きまって支給する現金給与額 年間賞与その他特別給与額 年収換算 平均年齢 労働者数
庶務・人事事務員
(給与計算を含む)
34.9万円106.2万円約525万円44.9歳787,910人
会計事務従事者
(経理を含む)
34.3万円101.2万円約512万円44.0歳466,030人
総合事務員35.7万円113.6万円約541万円44.6歳1,277,030人
営業・販売事務従事者35.3万円101.8万円約525万円43.3歳931,000人

※ 年収換算=きまって支給する現金給与額×12+年間賞与その他特別給与額。当社が同調査の実数から計算したものです。

「経理へ移れば年収が上がる」とは限らない

この表で目を引くのは、庶務・人事事務員の年収換算が会計事務従事者を上回っている点です。差は約13万円あります。しかも平均年齢は庶務・人事事務員のほうが0.9歳高いため、年齢の影響も一定程度あります。

とはいえ、差そのものは大きくありません。要するに、平均で見るかぎり両者はほぼ同水準です。だから経理への転職を「年収アップの手段」として位置づけると、期待とずれる可能性があります。

むしろ経理を選ぶ理由は、別のところにあります。すなわち、決算・連結・管理会計と積み上げたときの伸びしろです。詳しくは経理のキャリアパス|担当者と管理職の差は455万円で扱っています。

母集団は給与計算側のほうが大きい

もうひとつ押さえておきたいのが労働者数です。庶務・人事事務員は787,910人で、会計事務従事者の466,030人のおよそ1.7倍あります。

つまり、いま自分がいる職種のほうが働き口の母集団としては大きいということです。ですから「経理でなければキャリアが詰む」という前提は、統計上は支持されません。

なお、これは経理を目指すべきでないという意味ではありません。あくまで、選択肢を年収と母集団の両面から見たうえで決めるべきだという話です。

👉 あわせて読みたい:経理の年収相場|平均・年代別・役職別データ

給与計算と経理が交差する4つの処理

ここで、自分の経験を棚卸しするための材料を出します。給与計算と経理は、毎月の処理のなかで必ず接点を持つからです。そして、その接点こそが職務経歴書に書ける部分になります。

処理 給与計算側でやること 経理側でやること
給与仕訳の計上支給額と控除額を確定し、部門別の集計表を出す給料手当・預り金・未払費用に振り分けて計上する
社会保険料標準報酬月額をもとに本人負担分を控除する会社負担分を法定福利費として計上し、納付と突合する
源泉所得税・住民税税額表や通知にもとづき控除額を確定する預り金として計上し、納付期限までに残高を消す
賞与支給額を計算し、社会保険料の料率差を反映する賞与引当金の見積りと取崩しを行う
相談者

でも、自分は給与計算しかやっていないので、経理の経験として書けることがない気がします。

森岡
LXキャリア

実は、そうとも限らないんです。たとえば社会保険料の未払計上や給与仕訳に少しでも関わっていれば、経理の経験として書けます。だから決めつける前に、自分の担当範囲を工程単位で洗い出してみてください。

相談者

それなら、工程に分けてみると書けることが見つかりそうです。

とくに預り金の残高照合は、経理の基本動作と同じです。ですから納付額と帳簿残高を突合していた経験があるなら、そのまま書いて構いません。

給与計算経験が経理転職で評価される場面・されない場面

では、給与計算の経験は経理転職でどう扱われるのか。結論からいえば、評価は場面によって大きく分かれます。

評価される場面 理由
管理部門が少人数の会社給与計算と経理を兼務する前提のため、そのまま戦力になる
人件費の分析を求める求人部門別の人件費配賦や引当の根拠を、支給データから理解できる
社会保険・所得税の実務が絡む場面預り金や法定福利費の処理で、制度の裏側まで説明できる
期限管理が厳格な職場支給日という動かせない締切を守り続けた実績がある

一方で、評価に結びつきにくい場面もあります。たとえば決算実務の経験が必須要件になっている求人です。この場合、給与計算の経験があっても要件充足には届きません。

また、上場企業の経理で開示や連結を担う採用でも同様です。むしろ、そうした求人は初めから対象外と考えて母数を配分するほうが効率的です。

👉 あわせて読みたい:経理の書類選考が通らない原因|有効求人倍率0.56倍の実数で読む

給与計算から経理へ広げる3つのルート

ここからは進み方の話です。選択肢は大きく3つあります。そして、難易度と速度が異なります。

ルート1:いまの会社で経理を兼務する

もっとも確実なのがこれです。なぜなら、実務経験を社内で積めるうえに、転職市場の要件を満たしてから動けるからです。

相談者

ちなみに、いまの会社で経理の仕事に少しずつ関わることはできますか。

森岡
LXキャリア

もちろんできますよ。たとえば給与仕訳の計上や法定福利費の未払計上など、自分の業務とつながる部分から手を挙げてみてください。そのうえで月次決算の一部工程まで広げていけば、転職しなくても経理の経験を積めるんです。

相談者

いまの業務の延長から、経理に手を伸ばせるんですね。

ルート2:管理部門が少人数の事業会社へ移る

次に現実的なのが、兼務前提の求人を狙う方法です。従業員100名前後の会社では、管理部門が数名という体制が珍しくありません。したがって、給与計算と経理の両方を担える人材が求められます。

ただし、この規模では引き継ぎ役がいない場合もあります。ですから入社後にどこまで教えてもらえるかを、面接で必ず確認してください。

ルート3:アウトソーサーから事業会社へ移る

給与計算代行や社会保険労務士事務所にいる場合、複数社の実務を短期間で経験できます。つまり処理量とパターンの幅が武器になります。

とはいえ、事業会社では求められるものが変わります。むしろ社内調整や制度運用の設計が中心になるため、そこへの適応を書類と面接で示す必要があります。

👉 あわせて読みたい:異業種から経理転職を成功させる方法|未経験スキルの活かし方

市場価値を高めるために押さえたい4つ

どのルートを選ぶにせよ、準備しておくと選択肢が広がるものがあります。ここでは4つに絞ります。

日商簿記2級

経理未経験を含む求人では、応募要件として設定されることが多い資格です。加えて、簿記の学習によって給与仕訳の意味が理解できるようになります。したがって、実務への接続という点でも効果があります。

👉 あわせて読みたい:簿記2級は経理転職で本当に武器になるのか?

会計ソフトの操作経験

給与ソフトだけでなく、会計ソフトを触った経験があるかが問われます。もし社内に環境があるなら、仕訳の入力や試算表の出力まで触らせてもらってください。むしろ触った事実そのものが、書類上の材料になります。

Excelの実務スキル

給与計算では、勤怠データの加工で日常的にExcelを使います。ですから、そこで身につけた関数やピボットテーブルは、そのまま経理でも通用します。とくに大量データの突合は、経理でも頻出の作業です。

法改正への対応経験

給与計算は制度改正の影響を直接受ける業務です。したがって、改正のたびに設定変更や再計算を行ってきた経験は、そのまま制度対応力として説明できます。経理でも制度改正への対応は継続的に発生するため、共通する力になります。

👉 あわせて読みたい:転職前に身につけておくべき経理スキル5選

給与計算の経験を、職務経歴書にどう書くか

書き方でも損をしないようにしたいところです。とくに給与計算は、業務名だけ書くと処理量が伝わりません。だから規模を示す実数を入れてください。

  • 対象人数(正社員○名・パート○名など雇用形態別に分ける)
  • 拠点数や適用される就業規則のパターン数
  • 使用している給与システムと、自分の操作レベル
  • 年末調整の担当範囲(回収・入力・確認のどこまでか)
  • 会計側との接点(給与仕訳の作成、法定福利費の計上など)

なかでも最後の項目は必ず書いてください。なぜなら、経理職として応募する以上、会計に接続する経験があるかどうかが読み手の関心事だからです。

👉 あわせて読みたい:経理の職務経歴書 書き方|レビュー現場の指摘5つと年代別例文

給与計算の年間スケジュールと、転職活動の重ね方

在職中に動く場合、繁忙期の把握が欠かせません。給与計算には毎月の締切に加えて、年に数回の山があります。

時期 主な業務 転職活動のしやすさ
6〜7月算定基礎届、労働保険の年度更新、賞与計算動きにくい
8〜10月月次の給与計算、社会保険料の改定反映比較的動きやすい
11〜1月年末調整、源泉徴収票の作成、法定調書と給与支払報告書動きにくい
2〜5月住民税の特別徴収額の切替準備、入退社対応中程度

したがって、面接日程を確保しやすいのは8〜10月です。一方で年末調整の時期は、平日の日中に時間を作りにくくなります。

もっとも、経理側の求人は決算期との兼ね合いで動きます。ですから自分の繁忙期と、応募先の採用時期の両方を見て組み立ててください。

相談者

それなら、いまの経験で年収がどのくらいになるのか知りたいです。

森岡
LXキャリア

たとえば経理の年収診断なら、担当範囲と保有資格から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、経理へ広げるのか人事労務を深めるのかを、比べる材料を持って一緒に考えましょう。

相談者

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よくある質問

Q. 給与計算しか経験がなくても経理に転職できますか

求人を選べば可能です。ただし決算経験が必須の求人は対象外になります。ですから管理部門が少人数の会社や、兼務前提の求人へ母数を寄せてください。

Q. 給与計算と経理では、どちらが年収は高いですか

令和7年賃金構造基本統計調査では、庶務・人事事務員が約525万円、会計事務従事者が約512万円でした。つまり平均では給与計算を含む区分のほうが高くなっています。とはいえ、どちらの区分にも周辺業務の担当者が含まれるため、個人の年収を示すものではありません。

Q. 経理へ移らず、人事労務を深めるのはどうですか

十分に成り立つ選択肢です。実際、庶務・人事事務員の労働者数は787,910人と、会計事務従事者の1.7倍あります。したがって、母集団の大きさという点では不利になりません。

Q. 簿記2級は取ってから動くべきですか

取得後のほうが応募できる求人は増えます。ただし学習に時間がかかるため、並行して進めるほうが現実的です。なお、学習中であることは職務経歴書に書いて構いません。

Q. 転職活動はいつ始めるべきですか

給与計算は月次の繁閑がはっきりしています。ですから支給日と年末調整の時期を避けて、面接日程を組める期間から動くほうが無理がありません。詳しくは経理の転職活動スケジュール完全版で扱っています。

Q. アウトソーサーでの給与計算経験は、事業会社で評価されますか

評価されます。ただし見られる観点が変わります。アウトソーサーでは、複数社の制度を短期間で読み解く力が身につきます。つまり就業規則や賃金規程を初見で扱った経験そのものが強みになります。一方で事業会社は、自社の制度を運用し続ける側です。したがって「何社を担当したか」より「どこまで自分で判断したか」を書いてください。

まとめ|給与計算から動く前に、比べる材料を持つ

給与計算の経験は、経理転職で使えます。ただし「経理へ移れば年収が上がる」という前提は、公的統計では支持されません。実際、庶務・人事事務員の年収換算は約525万円で、会計事務従事者の約512万円を上回っています。

そのうえで経理を選ぶなら、理由は伸びしろに置いてください。すなわち、決算から連結・管理会計へ積み上げたときの到達点です。

だからまずは、自分の担当範囲を工程単位で洗い出すところから始めましょう。そして会計に接続している部分を見つけたら、それを書類の中心に据えてください。

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📌 この記事の一次情報源

  1. 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」職種(小分類)第1表。庶務・人事事務員/会計事務従事者/総合事務員/営業・販売事務従事者の きまって支給する現金給与額・年間賞与その他特別給与額・平均年齢・労働者数(民営事業所・企業規模計)
  2. 年収換算値(約525万円・約512万円など)は、上記の実数から当社が計算したものです。同調査が年収として公表している数値ではありません
  3. 総務省「日本標準職業分類」小分類 庶務・人事事務員/中分類 会計事務従事者(各区分に含まれる職業の範囲)。給与計算のみを抽出した職種区分は同調査に存在しないため、周辺業務の担当者を含む数値である点にご留意ください
  4. ルートの整理や評価される場面は、当社が2026年に扱った管理部門の求人および候補者面談の記録にもとづく当社の見解であり、公的統計にもとづくものではありません
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