人事の仕事を続けるうえで、どの資格を取ればよいのか迷う方は多いはずです。そこでこの記事では、人事の資格が求人でどれほど求められているかをデータで確かめ、役立つ資格と分野別の選び方を解説します。
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
人事の仕事を続けるなら、何か資格を取っておくべきか迷っています。社労士を目指したほうがいいのでしょうか?
LXキャリア
その相談は、面談でもよく伺います。実は、人事の求人で資格が条件になることは多くありません。そこで、まず求人のデータを見てから、役立つ資格と選び方を整理しましょう。
では、データからお願いします。
なお、数字は当社の求人データの集計をもとにしています。
人事に資格は必要?求人データで見る実態
まず、人事の求人の応募条件に、資格がどれくらい書かれているかを見てみましょう。また、人事の中でも分野によって差があるので、分野ごとに分けました。
| 人事の分野 | 求人数 | 資格名がある | うち社労士 |
|---|---|---|---|
| 採用 | 1,993件 | 1.5% | 0.4% |
| 人材開発 | 250件 | 4.8% | 0.8% |
| 制度企画・組織開発 | 369件 | 6.8% | 3.3% |
| 労務・給与 | 604件 | 14.1% | 10.9% |
| その他の人事 | 357件 | 11.2% | 2.5% |
| 人事の合計 | 3,573件 | 5.3% | 2.7% |
出典:当社が利用するエージェント向け求人データベースのうち、主な職種が人事で、中途・正社員かつ提示年収のある求人(2026年9月20日時点)。また、応募条件の文章(必須・歓迎を含む)に資格名が書かれている求人の割合です。ただし、「社労士事務所での経験」のような事務所の名前は資格として数えていません。なお、キーワードによる判定のため誤りを含みます。
資格名を挙げる求人は5.3%にとどまる
その結果、人事の求人で応募条件に資格名があるものは5.3%でした。一方で、同じ方法で数えた経理・財務の求人では34.3%です。つまり、人事は管理部門の中でも、資格が条件になりにくい職種だといえます。
特に、求人の半数以上を占める採用の分野では1.5%でした。そのため、採用の仕事を目指すなら、資格の有無で選考が決まることはほとんどありません。
労務・給与の分野では14.1%に上がる
ただし、労務・給与の分野に限ると、資格名を挙げる求人は14.1%に上がります。しかも、その多くは社労士で、労務・給与の求人の10.9%に書かれていました。
このように、同じ人事でも、法律の知識を使う労務では資格が評価されやすく、採用や人材開発では評価されにくいという違いがあります。
代わりに求められるのは経験
一方で、応募条件に「経験」という言葉がある求人は95.7%でした。たとえば、採用の経験を挙げる求人は42.9%、労務は19.1%、給与計算は8.8%です。
だからこそ、人事の選考では、資格よりも実務の経験が先に見られています。そのため、資格は経験を補い、専門性を示すための材料と考えるのが現実的です。
ちなみに、応募条件に「社労士事務所での経験」を挙げる求人は113件ありました。これは、社労士の資格そのものを挙げる96件より多い数です。つまり、労務では資格と同じくらい、手続きを実際にこなしてきた経験が求められています。
でも、労務の求人なら、社労士の資格があると有利になりますよね?
LXキャリア
たしかに、労務の求人では社労士を歓迎する会社が目立ちます。ただ、必須にしている求人は一部です。むしろ、手続きや給与計算を一人で回してきた経験のほうが、条件に書かれやすいんです。
LXキャリア
そのため、資格は経験を補い、専門性を示す材料と考えるのがおすすめですよ。
資格だけで決まるわけではないんですね。
それでも人事で資格が役立つ3つの場面
とはいえ、資格がまったく意味を持たないわけではありません。むしろ、次の3つの場面では、資格が確かな後押しになります。
①労務の専門性を示したいとき
まず一つ目は、労務の専門性を示したいときです。というのも、労務では、労働基準法や社会保険の制度を正しく理解していることが前提になるからです。
実際、労務・給与の求人では社労士を挙げるものが10.9%ありました。そのため、労務で専門性を高めたい方にとっては、資格が評価の材料になります。
②未経験や異動で知識を示したいとき
次に二つ目は、人事の経験がない状態で応募するときや、社内で人事に異動したいときです。なぜなら、経験で示せない分を、体系的に学んだ証明で補えるからです。
とはいえ、資格は書類選考の通過を保証するものではありません。そのため、資格と合わせて、なぜ人事を目指すのかを自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。
③会社に置く必要がある資格を持つとき
そして三つ目は、会社に置くことが法律で決まっている資格を持つときです。たとえば、常時50人以上の労働者がいる事業場では、衛生管理者を選ぶ必要があります。
つまり、衛生管理者は、会社の側にも持っている人を確保したい理由がある資格です。実際、衛生管理者を挙げる求人は31件あり、いずれも歓迎条件として書かれていました。
出典:労働安全衛生法 第12条。求人の件数は表1と同じ求人データ。
人事・労務に役立つ資格|労務の3つ
では、具体的にどの資格が人事に役立つのでしょうか。ここでは、求人データと業務とのつながりから7つの資格を選び、まず労務の3つを紹介します。
①社会保険労務士:労務の専門性を示す国家資格
まず、労務で最も評価されやすいのが社会保険労務士(社労士)です。実際、人事の求人で最も多く挙がる資格でした。
ただし、社労士を挙げる求人96件のうち、必須欄に書いていると確認できたものは12件でした。つまり、多くは歓迎条件です。また、社労士を挙げる求人の提示年収の中央値は573万円で、人事の求人全体の575万円とほぼ同じでした。
そのため、資格を取れば提示年収が上がる、というものではありません。むしろ、労務の仕事を深めたい方が、専門性の裏づけとして目指す資格といえます。
出典:表1と同じ求人データのうち、応募条件に社労士の記載がある96件。なお、提示年収は下限と上限の中間値で、募集条件であり支給実績ではありません。
社労士の事務所で経験を積んでから、企業の人事に移るのはありですか?
LXキャリア
面談でお会いした社労士事務所の方は、労務の専門性を深めたくて事務所に入ったものの、営業に近い仕事が増えて、企業側に戻りたいと話していました。つまり、資格があっても、どこで何を担当するかで積める経験は変わるんです。
LXキャリア
実際、求人には「社労士事務所での経験」を挙げるものもあります。そのため、事務所か企業かより、手続きや相談対応をどこまで任されたかを語れるようにしておくと強みになりますよ。
資格と経験をセットで考えるんですね。
②衛生管理者:職場の安全と健康を守る
次に、衛生管理者は、職場の衛生や健康管理を担う国家資格です。先ほどのとおり、一定の規模の事業場では選ぶ必要があるため、人事や総務の担当者が取ることが多くあります。
しかも、社労士に比べて学ぶ範囲が限られているため、労務の入口として取りやすい資格です。そのため、まず労務の基礎を固めたい方に向いています。
③給与計算実務能力検定:給与計算の実務を確かめる
さらに、給与計算実務能力検定は、給与計算の知識を確かめる民間の検定です。たとえば、社会保険料や所得税、年末調整の計算を体系的に学べます。
なお、求人の応募条件で見られたのは4件で、いずれも歓迎条件でした。とはいえ、給与計算は経理と接点が多い業務です。そのため、経理から労務に移りたい方が、知識の確認に使うのも一つの方法です。
👉 あわせて読みたい:給与計算と経理の違い|年収は525万円と512万円、高いのはどちらか
人事に役立つ資格|採用・育成と全般の4つ
続いて、採用や人材開発、人事全般に役立つ資格です。こちらは、担いたい分野に合わせて選ぶとよいでしょう。
④キャリアコンサルタント:人材開発で活きる国家資格
まず、キャリアコンサルタントは、働く人のキャリアの相談に応じる国家資格です。そのため、社員のキャリア面談や研修を担う人材開発の仕事と相性がよい資格です。
実際、人材開発の求人では2.8%がキャリアコンサルタントを挙げており、ほかの分野より高い割合でした。したがって、人材開発に進みたい方は優先して検討しましょう。
⑤メンタルヘルス・マネジメント検定:心の健康を支える
次に、メンタルヘルス・マネジメント検定は、職場の心の健康づくりを学ぶ検定です。たとえば、ストレスチェックの運用や休職者の対応など、人事が関わる場面で役立ちます。
ただし、求人の応募条件では見られませんでした。そのため、転職の条件というより、今の業務の質を上げるための学びとして考えましょう。
⑥ビジネス・キャリア検定:人事の知識を体系的に学ぶ
さらに、ビジネス・キャリア検定には、人事・人材開発や労務管理の分野があります。人事の仕事を一通り学べるので、異動したばかりの方が全体像をつかむのに向いています。
なお、こちらも求人の応募条件では見られませんでした。とはいえ、学習の入口として使えば、実務の理解が早く進みます。
⑦TOEIC:外資系やグローバル企業の人事を目指すなら
最後に、TOEICです。実は、人事の求人でTOEICを挙げるものは25件で、その提示年収の中央値は700万円でした。つまり、人事の求人全体の575万円より高い水準です。
また、面談でも、英語ができて労務にも詳しい人は多くないとお伝えしています。そのため、外資系や海外に拠点のある会社を目指すなら、英語力は人事の中で差をつけやすい要素です。
分野別に見る人事の資格の選び方
このように、ここまで7つの資格を紹介しました。とはいえ、すべてを取る必要はありません。そこで、担いたい分野ごとに、優先したい資格を整理します。
労務・給与なら社労士か衛生管理者
まず、労務・給与の分野では、資格が最も評価されやすい傾向があります。そのため、時間をかけられるなら社労士、まず基礎を固めるなら衛生管理者から始めましょう。
採用なら資格より実績を優先する
次に、採用の分野で資格を挙げる求人は1.5%でした。したがって、採用で評価を上げたいなら、資格の勉強より、採用人数や採用の仕組みづくりの実績を積むほうが近道です。
制度企画なら資格より制度づくりの経験
また、人事制度の企画や組織開発の求人で資格名があるものは6.8%でした。そのうち社労士は3.3%で、労務・給与ほどは求められていません。
そのため、制度企画を目指すなら、評価や等級の見直しに関わった経験を積むほうが先です。ただし、制度は労働法の範囲で作るものなので、社労士の勉強で得た知識は設計の場面で役立ちます。
人材開発ならキャリアコンサルタント
さらに、研修や社員のキャリア支援を担いたい方は、キャリアコンサルタントが第一候補です。というのも、人材開発の求人で最も多く挙がった資格だからです。
経理から人事に移るなら給与計算の知識を足す
一方で、経理から人事・労務に移りたい方は、すでに数字や税の知識があります。そこで、給与計算や社会保険の知識を足すと、経理の経験を労務の仕事につなげやすくなります。なお、簿記など経理の資格は、経理の資格記事で詳しく比べています。
👉 あわせて読みたい:経理におすすめの資格ランキング|合格率の実数で比較【2026】
資格より先に積みたい人事の経験
最後に、資格と並行して積んでおきたい経験を紹介します。なぜなら、先ほどのとおり、人事の求人の95.7%は応募条件に経験を挙げているからです。
担当範囲を一人で回した経験をつくる
まず、今の会社で、担当する業務を一人で回した経験をつくりましょう。たとえば、入退社の手続きや給与計算を締めまで任されると、労務の経験として語れるようになります。
学んだ知識を実務で使った例をつくる
次に、資格で学んだ知識を、実際の仕事で使った例をつくることが大切です。というのも、面接では「資格を取った」より「その知識で何をしたか」が問われるからです。
たとえば、社労士の勉強で得た知識を使って、就業規則の見直しを提案した経験があれば、資格と経験の両方を語れます。
職務経歴書では資格と経験をつなげて書く
さらに、職務経歴書では、資格を最後の欄に並べるだけで終わらせないことが大切です。たとえば「衛生管理者を取得し、その知識で安全衛生委員会の運営を担当した」のように、資格と経験をつなげて書きましょう。
そうすれば、資格が実務で生きていることが伝わります。また、勉強中の資格も、学んでいる内容と目的を添えれば、意欲を示す材料になります。
自分の市場価値を確かめる
そして、資格と経験のどちらを先に伸ばすべきかは、今の経歴によって変わります。そのため、まずは自分の経験が人事の求人でどう評価されるかを確かめておきましょう。
資格より経験が大事なのは分かりました。そこで、今の経験だと人事としてどのくらいの年収になるのかを知りたいです。
LXキャリア
たとえば人事の年収診断なら、担当業務や役職から想定年収の目安が90秒でわかります。そのうえで、資格と経験のどちらを先に伸ばすかを一緒に整理しましょう。
まずは自分の現在地を確かめてみます。
まとめ:人事の資格は分野に合わせて経験を補う材料として選ぶ
このように、この記事では人事の資格について、求人データをもとに必要性と選び方を整理しました。では、要点を振り返ります。
- まず、人事の求人で応募条件に資格名があるものは5.3%で、経理・財務の34.3%より少ない
- また、労務・給与の分野では14.1%に上がり、その多くは社労士である
- さらに、応募条件の95.7%は経験を挙げており、資格より実務が重視される
- そして、労務なら社労士や衛生管理者、人材開発ならキャリアコンサルタントを選ぶ
👉 あわせて読みたい:経営企画に資格は必要?求人データで見る役立つ資格7つと選び方
📌 この記事の一次情報源
- 当社が利用するエージェント向け求人データベースの人事求人3,573件と「経理・財務」求人3,116件の応募条件の集計(2026年9月20日時点、中途・正社員・提示年収ありに限定)
- 当社が2026年に行った求職者の方との面談の記録(個人が特定されないよう、職種以外は伏せて再構成)
- 労働安全衛生法 第12条(衛生管理者の選任):e-Gov法令検索
