法務・英語・転職市場において、「英語力があると有利」とよく言われる。しかし実際の求人票を見ると、英語を必須要件にする企業は一部にすぎない。一方、外資系や大手グローバル企業では話が別だ。英語力が選考の分水嶺になるケースも多い。
この記事では、法務・英語・転職の実態を求人データから整理する。どのレベルで英語が求められるのかを、専門領域別に解説する。英語の有無にかかわらず転職戦略を立てたい方に、具体的な判断軸を提供する。
※会話は、面談でよくいただくご相談をもとに再構成しています。
TOEICは800点あります。法務の転職で、英語はどれくらい有利になりますか?
LXキャリア
有利になる場面はあります。ただ、英語だけで差がつく求人は、思ったより少ないんです。この記事では求人データをもとに、英語が効く場面と効かない場面を分けて見ていきますね。
📋 この記事でわかること
- 法務 英語 転職で英語が「必須」になる求人の割合と傾向
- TOEICスコア別に見た採用市場での評価
- 英文契約・国際法務を扱う企業への転職戦略
- 英語なしでも高年収を狙える法務求人の見つけ方
▶ あわせて読みたい:法務転職の完全ガイド【2026年版】未経験・経験者別の転職成功ロードマップ
法務・英語転職の実態:求人データが示すリアルな需要

法務求人は、英語要件の観点で3タイプに大別できる。「英語必須」「英語歓迎(あると望ましい)」「英語不問」の3つだ。求人データを分析すると、それぞれの比率には明確な傾向がある。
英語に言及する求人は全体の約15%にとどまる
まず、実際の求人票を数えてみた。英語・TOEIC・英文契約のいずれかに言及していた法務求人は、1,398件中216件だった。割合にすると約15%である。つまり、法務求人の8割以上は、求人票の段階で英語にまったく触れていない。次章でこの内訳を詳しく見ていく。
なお、外資系企業や国際法律事務所に絞れば、英語が前提になる比率は当然上がる。しかし母数全体で見れば、英語は「一部の求人の条件」であって「法務職の標準要件」ではない。
英語必須求人の具体的な条件
英語必須と記載のある求人では、以下のような具体的な要件が設定されることが多い。
- TOEIC 700〜800点以上(最も多いライン)
- 英文契約書の読解・起案が単独で対応できること
- 英語でのメール・電話対応が問題なくできること
- 外国法律事務所との折衝・ネゴシエーション経験(上位求人)
また「ビジネスレベル」「ネイティブレベル」といった表記も見られる。ただし実態は企業によって大きく異なる。そのため、応募前にエージェントで業務内容を確認するのが有効だ。
▶ あわせて読みたい:法務転職で評価されるスキル10選|英文契約・会社法・M&Aの優先度を解説
求人データで見る法務の英語要件【2媒体1,398件を集計】
ここからは実際の求人票を、件数と年収の両面から確認していく。使うのは、エージェント向け求人データベース2媒体に掲載された法務求人1,398件の集計だ(2026年9月時点・当社実施)。対象は、求人タイトルに「法務」を含み、年収レンジが登録されている求人に限っている。
英語に言及する求人は216件・約15%
まず件数から見ていく。英語・TOEIC・英文契約への言及があったのは、媒体Aで832件中137件だった。媒体Bでは566件中79件である。合計すると1,398件中216件、約15%になる。
ただし、ここで数えているのは「言及の有無」であって「必須要件かどうか」ではない。歓迎要件として書かれたものも含む。したがって、英語が本当に必須の求人はこれよりさらに少ない。つまり「英語がないと不利になる」という前提は、求人の母数で見るかぎり成り立たない。
ただし英語要件のある求人は提示上限が高い
一方で、年収に目を移すと話が変わる。英語への言及がある求人とない求人に分けて、提示年収の中央値を並べたのが次の表だ。
| 区分 | 件数 | 提示下限の中央値 | 提示上限の中央値 |
|---|---|---|---|
| 英語への言及あり(媒体A) | 137件 | 550万円 | 900万円 |
| 英語への言及なし(媒体A) | 695件 | 500万円 | 800万円 |
| 英語への言及あり(媒体B) | 79件 | 600万円 | 1,000万円 |
| 英語への言及なし(媒体B) | 487件 | 約550万円 | 800万円 |
つまり、件数こそ少ないものの、英語に言及する求人は提示年収の上限が100〜200万円高い。さらに媒体Bでは、英語要件のある79件のうち52%が上限1,000万円以上だった。同じ媒体の全体では36%である。つまり英語要件は、高年収帯に偏って現れている。
なお、ここでいう年収は求人票に書かれた提示レンジである。実際に支払われた金額(支給実績)ではない。したがって、統計調査の平均年収とは性質が異なる。年収の全体像は法務の年収相場【2026年最新版】で整理している。
英語に触れている求人って、全体の15%しかないんですか?
LXキャリア
そうなんです。そのかわり、その15%は年収の上限が高い側に寄っています。英語は「あれば何でも有利」ではありません。「効く求人が限られているぶん、効くときは大きい」と考えるとわかりやすいですよ。
英語が活きる求人を選んで狙う、ということですね。
1,000万円以上の求人では英語要件の比率が23%に上がる
さらに、逆方向からも同じ傾向が確認できる。媒体Aで提示上限が1,000万円以上だったのは248件である。そのうち英語に言及していたのは23%だった。一方、1,000万円未満の584件では14%にとどまる。したがって、年収帯が上がるほど英語要件の出現率が上がる関係が見て取れる。
ただし、これは「英語ができれば年収が上がる」ことを直接示すものではない。英語が必要になるのは、クロスボーダー取引や海外子会社の管理を抱える企業だ。そうした企業は、もともと高い報酬テーブルを持っている。この順序で理解するほうが実態に近い。企業側の事情については外資系企業の法務に転職する際に知っておくべきこともあわせて確認してほしい。
英語より件数が多いのは「コンプライアンス」だった
また、比較として挙げておきたい数字がある。同じ母集団で、コンプライアンス・内部統制への言及は媒体Aで522件あった。全体の62.7%である。英語の137件とは桁がひとつ違う。
つまり、求人票がもっとも多く求めているのは英語ではなく、体制構築や規程整備の側である。英語に時間を投じるか決める前に、この62.7%の側を点検しておきたい。求人が集中している領域で語れる材料を持つほうが、応募できる母数は素直に増える。
英語要件のある求人はどこにあるか
なお、勤務地の偏りも押さえておきたい。今回の集計では、法務求人の86.4%(媒体B では87.0%)が東京の求人だった。英語要件のある求人は外資系や海外展開企業に集中する。そのため、この偏りはさらに強く出る。
したがって地方在住の場合は、リモート可の東京求人を軸に探すのが現実的だ。業界ごとの年収差は法務年収が高い業界ランキング【2026年最新版】で扱っている。
TOEICスコア別:法務転職市場での評価

ここでは、求人票でよく見られる要件をもとに、TOEICスコア別の採用市場での位置づけを整理する。英語の実務力はスコアだけでは測れない。ただ、スクリーニング基準として使われるため、目安として把握しておくべきだ。
〜600点:英語不問の求人が主な選択肢
そのため、600点未満の段階では英語必須の求人に応募するのは難しい。主な転職先は、国内取引中心の中小企業や専門特化型の法律事務所である。あるいは、英語要件のない事業会社の法務部だ。したがって英語力よりも、契約法務・コンプライアンス・商業登記などの専門経験で差別化したい。
600〜730点:英語歓迎の一部求人に対応可能
さらに、この帯域になると英語「歓迎」の求人にリーチしやすくなる。英語メールが週数回のポジションなら、実務経験と組み合わせて評価される。海外子会社との定型的なやりとりが中心の求人も同様だ。ただし、英語を武器としてアピールするには力不足なスコア帯でもある。したがって、法務実務の深さで勝負するほうが得策だ。
730〜800点:外資・グローバル企業の選考土台に乗る
また、TOEIC 730点以上になると外資系の法務求人を通過しやすい。日系グローバル企業でも評価が高まる。英文契約書の読解・レビューに自信があるなら、このスコア帯でも十分に選考対象となる。加えて、メールや電話での英語コミュニケーションが取れれば申し分ない。法務 英語 転職で英語を武器にしたいなら、まずこのラインを目標にするのが現実的だ。
800点以上:高年収・エグゼクティブ求人への道が開く
一方で800点を超え、かつ英語の実務経験もあれば話は変わる。年収800万〜1,000万円超のポジションが現実的になる。たとえば外資系企業のシニアカウンセルだ。IPO準備中のスタートアップのジェネラルカウンセル(GC)や、国際仲裁を扱う法律事務所もこれにあたる。さらに、英語でのプレゼンや契約交渉の実績があれば、スコア以上の評価を受けることも多い。
▶ あわせて読みたい:法務の年収相場【2026年最新版】業界・経験年数・役職別データ徹底解説
スコア別・想定年収レンジ(支援現場での目安)
なお、この表は一般的な目安をまとめたものだ。前章の求人データを集計した数値ではない。したがって、あくまで方向感として見てほしい。
| TOEICスコア | 想定年収レンジ |
|---|---|
| 〜600点 | 450万〜650万円(英語不問求人が中心) |
| 600〜730点 | 500万〜750万円 |
| 730〜800点 | 600万〜900万円 |
| 800点以上 | 750万〜1,300万円以上 |
スコアが上がるほど年収レンジの上限も広がる。そのため、実務での英語運用力を伴うスコアアップは投資対効果が高い。
英語力が特に重視される法務専門領域

なお、法務の中でも、専門領域によって英語力の重要度は大きく異なる。自分のキャリアの方向性と照らし合わせて確認してほしい。
英文契約・国際取引法務
まず、英語力が最も強く求められる領域だ。英文のNDA・売買契約書・ライセンス契約を独力でレビューできる実力が問われる。起案力もある人材は特に評価が高い。グローバル展開する事業会社の法務部や、国際法律事務所のアソシエイトポジションがこれにあたる。TOEICスコアよりも英文契約の実務経験そのものが評価される傾向が強い。
M&Aクロスボーダーディール
次に、M&A案件ではデューデリから契約締結まで英語で進む。外国法律事務所・投資銀行・海外子会社とのやりとりが日常業務になる。そのため、流暢な英語でのコミュニケーション能力が欠かせない。また、英語に加えて現地法の素養(米国法・英国法等)があると大きなアドバンテージになる。
知的財産・特許国際出願
さらに、特許明細書・ライセンス契約を英語で処理する場面が多い。特許事務所の弁理士補や知財部員では、英語力だけでは足りない。加えて、技術的な背景知識も求められることがある。外国特許事務所とのやりとりに英語を使う頻度が高い。
コンプライアンス・規制対応(グローバル企業)
なお、外資系企業のコンプライアンス部門では、グローバルポリシーを英語で読み解く。国内実務に落とし込む作業が中心になる。本社(海外HQ)とのやりとりも英語で行われることが多い。したがって、読み書きと会話の両面で英語力が求められる。
英語以外の語学は評価されるか
中国語やベトナム語など、事業展開先の言語スキルが評価されるケースもある。特に製造業やアジア展開が進む企業では、英語以外の語学力が差別化要素になることがある。
そのため、自社や志望企業の事業展開エリアに合わせて、語学の優先順位を考えるのも一つの戦略だ。
英語は「何と掛け合わせるか」で効き方が変わる
英語はそれなりにできるのに、法務で評価されている実感がないんです。
LXキャリア
面談でも、同じような悩みをうかがったことがあります。その方は、英語だけで勝負するのではなく、英語と資格を掛け合わせる軸を自分で決めて動いていました。英語を何と組み合わせるかが決まると、狙う求人もはっきりしてきますよ。
英語を単体で見ていたのが、よくなかったのかもしれません。
英語の効き方は、英語そのものより「何と組み合わせるか」で決まります。求人データでも、英語要件が多いのはクロスボーダー取引や海外子会社の管理を抱える企業でした。つまり評価されているのは、英語と、その企業が必要とする専門性の組み合わせです。
法務部で「専門性の軸」を探した人のケース
面談でお会いした方の中に、新卒で法務部に配属された方がいました。その職場では、有資格者が現場を動かしていました。そのため、新卒のプロパー社員は中心から外れた業務を担うことが多かったそうです。
そこでその方は、自分なりの専門性を持とうと考えました。選んだのは、もともと力を入れていた英語と、資格を掛け合わせる軸です。英語力を伸ばしたうえで資格を取得し、その後は専門性を活かせる職場へ移っています。
英語と掛け合わせやすい専門性
- M&A・クロスボーダー取引:英文契約とデューデリジェンスの経験がそのまま評価される
- 知財・ライセンス:海外の特許事務所やライセンス先とのやりとりが多い
- データ保護・個人情報:海外の規制を読み解く場面が増えている
- コンプライアンス・規制対応:本社のグローバルポリシーを国内に落とし込む
まずは、今の担当業務のうち、どれを英語と組み合わせられるかを考えてみてください。資格と組み合わせる場合は、法務担当が取ると差がつく資格5選も参考になります。
英語力がなくても法務転職で高年収を狙う方法
ただし、英語力がなくても法務・英語・転職市場で年収アップを実現している人は多い。英語以外の強みを活かした転職戦略を理解しておくことは重要だ。
国内取引型の大手事業会社は英語不問が多い
小売・流通・不動産・インフラ・建設・食品などは国内取引が中心だ。そのため、法務部門でも英語を必須とする求人は少ない。それでも法務責任者クラスになれば、年収700〜900万円台は十分に射程に入る。むしろ会社法・下請法・独禁法・労働法などの実務知識を武器にしたい。あわせて契約審査の経験を語れると、評価はさらに安定する。
専門性の掛け算で差別化する
たとえば「IT×法務」「医療・薬事×法務」「不動産×法務」といった掛け算だ。業界特有の規制知識を持つ法務人材は、英語の有無にかかわらず希少価値が高い。したがって、その分野の大手企業・成長企業を狙うのが有効な戦略になる。
法務管理職・ゼネラルカウンセルへのパス
法務マネージャーや法務部長では、英語より別の要素が評価される。マネジメント経験、法務戦略の立案能力、そして経営との橋渡しだ。国内特化型の大手企業なら、英語なしで年収1,000万円以上を目指せるケースもある。
▶ あわせて読みたい:社内法務 vs 法律事務所出身、転職市場でどちらが評価されるか?
今の英語力と経験だと、どのくらいの年収が狙えるんでしょう?
LXキャリア
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英語力を上げながら転職活動を進める現実的なプラン
「英語力を上げてから転職しよう」と考える人も多い。しかし実際には、TOEICスコアを上げながら並行して転職活動を進めるほうが現実的だ。以下のポイントを参考にしてほしい。
英語力と実務経験の両輪で動く
現職でも英語に触れる機会を意図的に作りたい。そのうえで、英語要件の低い求人から動き始めるのが効果的だ。市場で動けば自分の価値がわかる。そして英語力が上がった時点で次に備える、という中長期の設計が有効になる。法務 英語 転職を目指す場合、焦らず段階的に進めることが成功の鍵だ。
英文契約の実務機会を現職で確保する
TOEICスコアよりも、英文契約書を扱った実務経験の有無のほうが選考で評価されることが多い。現職で海外取引や海外子会社の窓口業務に手を挙げてみたい。こうして英語の実績を作る動きが、市場価値の向上に直結する。
実務に効く英語学習法の選び方
| 学習法 | 向いている人 |
|---|---|
| オンライン英会話 | スピーキングの瞬発力を鍛えたい人 |
| 英文契約ドラフティング講座 | 実務直結のスキルを短期間で伸ばしたい人 |
| TOEIC対策講座 | まずスコアで転職市場の土台に乗りたい人 |
目的によって最適な学習法は異なる。転職までの期間と目標スコアを踏まえて選ぶとよい。
よくある質問
ここでは、法務の英語力と転職についてよく寄せられる質問に答える。
Q. TOEICと実務での英語力、どちらが重視されますか?
選考の入り口ではスコアが見られるが、実際の評価は英文契約を読み書きできる実務力だ。したがって、スコアだけでは通用しない場面も多い。
Q. 英語の勉強と実務、どちらを優先すべきですか?
並行して進めるのが理想だ。学習した内容を実務で使う機会を意識的につくると、定着が早まる。
Q. 英語力の証明はTOEIC以外に何がありますか?
実務での英文契約の作成・レビュー経験を、職務経歴書に具体的に記載する方法が効果的だ。案件数や契約金額の規模を添えると説得力が増す。
なお資格としては、TOEFLやIELTS、ビジネス英語検定なども選択肢になる。ただし法務領域では、TOEICが依然としてもっとも一般的な指標だ。
Q. 英語力がなくても管理職を目指せますか?
国内取引中心の企業であれば十分可能だ。今回の集計でも、英語に言及していない求人が1,398件中1,182件を占めている。したがって、マネジメント能力や専門性を軸にキャリアを築くルートは十分に残されている。
Q. 英語要件のある求人は、実際どのくらい狭き門ですか?
件数だけを見れば、母集団1,398件のうち216件(約15%)である。しかし、そのうち媒体Bでは52%が上限1,000万円以上の求人だった。つまり、狭いかわりに年収帯は上に寄っている、という構造だ。
Q. TOEICは何点あれば求人に応募できますか?
求人票に具体的なスコアが書かれているとは限らない。書かれている場合は700〜800点のラインが多い。ただし実際の選考では、英文契約をどこまで単独で扱えるかを問われる。したがって、スコアは入口の目安と考えたい。
📌 この記事の一次情報源
- エージェント向け求人データベース2媒体に掲載された法務求人1,398件の集計(2026年9月・当社実施)
- 当社(株式会社LX)が2026年に実施した法務・管理部門領域の転職相談面談(複数名)。掲載にあたり、氏名・企業名は伏せています
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」最新版 — https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html
※ 本記事の求人データは、エージェント向け求人データベース2媒体に掲載されていた求人を当社が集計したものであり、法務求人市場全体の統計ではありません。また、記載の年収はいずれも求人票上の提示レンジ(募集条件)であって、支給実績ではありません。
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