IT・SaaS企業の経理転職、大手メーカーとどう違う?
この記事の監修者
LXキャリア編集部
経理・財務転職アドバイザー
CA/RA経験が豊富。年間数十件のマッチングを成立させてきた現役人材紹介のプロ
人材ビジネスを0→1で立ち上げた実績を持つ。事業としての人材支援の仕組みをゼロから構築してきた
経理責任者としての実務経験あり。現場目線の転職支援に強みを持つ
この記事でわかること
- IT・SaaS企業の経理と大手メーカーの経理の具体的な違い
- IT業界経理職の年収相場とストックオプションの実態
- 転職に必要なスキルセットとキャリアパスの選び方
- 転職のベストタイミングと進め方
「いまの経理キャリアでいいのだろうか」——そんな声が増えています。「IT企業の経理って実際どうなの?」——よく受ける相談です。大手メーカーや製造業の20代・30代から多く聞く声です。
日本のIT・SaaS市場は成長を続けています。そのため、経理人材の需要は高まる一方です。しかし「メーカー経理とIT企業経理は何が違うのか」という不安もあります。「転職して後悔しないか」という心配も多くあります。一歩踏み出せない方が多いのが現実です。
この記事では、メーカー経理とIT・SaaS企業経理の違いを5つの軸で整理します。また、年収・キャリアパス・転職タイミングまで具体的に解説します。成長業界への転職を検討中の方に、判断材料を提供することが目的です。

IT・SaaS企業の経理はどんな仕事をするのか
まず、IT・SaaS企業の経理職の業務全体像を押さえておきましょう。メーカー出身者が「思っていたのと違う」と感じることが多い領域です。

スタートアップ・成長期特有の幅広い業務範囲
大手メーカーでは「売掛管理だけ」「固定資産だけ」と高度に専門化されています。一方、IT・SaaS企業(特に中堅〜スタートアップ)では事情が異なります。1人の経理担当者が月次決算・税務・資金繰り・管理会計まで担当することが多くあります。
業務範囲が広いため、最初は負荷を感じる方もいます。しかし「経理の全体像が見渡せる」という強みがあります。キャリア開発の観点から非常に有利です。さらに、CFOへのキャリアを目指す場合、この幅広い経験は大きな強みになります。
SaaS特有の売上認識・ARR管理の知識
SaaSビジネスでは、月額・年額のサブスクリプション契約が基本です。そのため、売上認識の処理がメーカーとは大きく異なります。また、ARR・MRR・チャーンレートといったSaaS指標の管理も経理部門が担うことがあります。
収益認識基準(ASC 606 / IFRS 15)への対応が求められます。加えて、複数年契約の按分処理など、最初は戸惑う部分もあります。ただし、慣れると「SaaS経理ができる人材」として市場価値が格段に高まります。
経理DXが最前線で進む環境
IT企業は自社でテクノロジーを活用することへの抵抗が低い傾向があります。そのため、freee・マネーフォワード・NetSuiteなどの導入が進んでいます。Excelの手作業よりも、自動化・データ連携が整った環境で働けるケースが多いです。
「システム導入を自分でリードしたい」という志向がある方に向いています。また、「経理DXを経験したい」という方にとっても、IT企業の経理は理想的な環境です。
大手メーカー経理との5つの違い
大手メーカーとIT・SaaS企業の経理の違いは、主に5つの観点で整理できます。それぞれ詳しく見ていきます。

①業務の専門化 vs 業務の広さ
大手メーカーでは部門別・機能別に業務が細分化されています。そのため「専門性を深める」環境が整っています。一方、IT企業は業務範囲が広く「横断的な経理力」が求められます。どちらが良いというわけではありません。「専門家として極める」か「経理マネージャーを目指す」かによって、選択が変わります。
②決算スピードとIFRS・US GAAP対応
上場IT企業では、Flash決算(月次5営業日以内)が求められる場合があります。また、海外投資家のいるSaaS企業ではIFRS適用が必要なケースもあります。そのため、国際会計基準への理解があると転職時に大きなアドバンテージになります。
③年収水準とインセンティブ設計
IT・SaaS企業の経理は、大手メーカーと比べて固定給が若干低い場合もあります。ただし、ストックオプション(新株予約権)が付与されるケースが多くあります。上場時に大きなリターンが期待できます。また、成果主義の評価が導入されている企業では、年齢に関係なく昇給・昇格の機会があります。
④キャリアパスの方向性
大手メーカーでは「経理部長 → 財務部長 → 執行役員」という安定したラダーがあります。一方、IT企業では経理マネージャーからCFOへの道が、短期間で開かれることがあります。特にスタートアップでは、30代でCFOに就任するケースも珍しくありません。
⑤働き方・カルチャーの違い
IT企業はリモートワーク・フレックス制度が充実している傾向があります。裁量労働制を導入している企業も多く、成果次第で時間・場所の自由度が高い点も魅力です。一方で、変化のスピードが速く「曖昧な状況でも自走できる人材」が求められます。明確な指示系統を好む方には、最初は戸惑う場面もあります。
IT・SaaS企業経理の年収相場
転職を検討する上で、年収の見通しは最も気になる点です。IT・SaaS企業の経理職の年収実態を整理します。
20代・30代の年収目安
経理・財務職の平均年収は中堅レベルの水準です(doda 2024年版)。ただし、IT・SaaS業界では業績連動部分も含めミドル〜シニアレンジが実態に近い水準です。経験・スキルによる幅が大きく、以下が目安です。
- 20代(経験2〜4年): 中堅〜シニアレンジ
- 30代(経験5〜10年): 中堅〜シニアレンジ
- 管理職・マネージャー層: 高水準
大手メーカーと比較すると基本給は同等〜やや低い水準の場合もあります。しかし、賞与やストックオプションを含めた総報酬では逆転するケースが多くあります。
ストックオプションの可能性
上場前のスタートアップでは、入社時にストックオプション(SO)が付与されることがあります。会社がIPOを達成した場合、SOが数百万〜数千万円の価値になるケースも実在します。ただし、SOはあくまで期待値であり、確実なリターンではありません。転職判断の際は、固定給ベースの待遇と分けて考えることが大切です。
IT業界経理への転職キャリアパスと必要スキル
「転職したいが、自分のスキルで通用するか不安」そんな方も多いと思います。IT企業の経理が求めるスキルと、転職ルートを整理します。

大手メーカー経理が持つ「強み」を理解する
大手メーカーで積んできた経理経験は、IT企業側から見ると非常に価値があります。特に評価される経験は次のとおりです。
- 月次・四半期・年次決算の実務経験(仕訳・財務諸表作成)
- J-GAAP・IFRSの知識
- 連結決算・子会社管理の経験
- 税務申告(法人税・消費税)の実務
- 監査法人対応・内部統制(J-SOX)の経験
これらは「経理のコア業務」であり、業界を問わず評価されます。「メーカー経理だから評価されない」という心配は、基本的に不要です。
転職前に身につけておくと有利なスキル
IT企業経理として活躍するために、事前に習得しておくと有利なスキルがあります。
- クラウド会計ソフトの操作: freee、マネーフォワードクラウド、弥生会計など
- Excel/スプレッドシートの応用: ピボットテーブル、VLOOKUP、マクロの基礎
- 英語の財務報告書読解: 外資系・グローバル展開企業では必要になる場面が増えている
- SaaS業界知識: ARR・MRR・チャーン等の基本指標を理解しておくと面接で差がつく
資格面では、日商簿記2級は最低ラインです。さらに、1級・税理士科目合格・公認会計士資格があると選択肢が大きく広がります。ただし、資格がなくても実務経験が豊富であれば十分に転職可能です。
転職のタイミングはいつがベストか
「いつ転職すべきか」というタイミングの見極めも、転職成功に大きく影響します。
30代前半がゴールデンタイム
IT・SaaS企業の経理職への転職は、28〜34歳が最もオファーを獲得しやすい時期です。この年齢帯は「即戦力となる実務経験がある」という強みがあります。また、「新しい環境への適応力も高い」という点で、企業側のニーズと合致します。
35歳を超えると求人の絶対数は減ります。ただし、管理職・経理責任者クラスでの採用は引き続き活発です。30代後半でも、マネジメント経験があれば十分に勝負できます。
転職を検討すべきサイン
以下のような状況が当てはまる方は、転職活動を本格的に検討してみてください。
- 現職で5年以上同じ業務しか担当していない
- DXや新しいシステムの導入が遅く、成長感が薄い
- 昇給・昇格のスピードに不満がある
- 経理の全体像を身につけてCFOを目指したい
- 成長産業でビジネスのスピードを体感したい
転職活動の進め方
IT・SaaS企業への経理転職で成功するためのステップは次のとおりです。
- 自己分析と軸の整理: 「なぜIT業界か」「どんな規模・フェーズの企業か」を明確にする
- 職務経歴書の磨き込み: 担当業務・使用ツール・実績数値を具体的に記載する
- エージェント活用: IT・SaaS企業の経理求人に強いエージェントを活用し、非公開求人にもアクセスする
- 業界研究: SaaSビジネスモデルの基礎知識を仕入れ、面接でアピールできるようにする
- 複数社並行: 最低3〜5社を並行して選考し、内定の比較・交渉ができる状態を作る
まとめ:IT・SaaS経理転職は「成長」と「可能性」を求める人に向いている
IT・SaaS企業の経理は、大手メーカーと比べて業務の幅が広い点が特徴です。また、変化のスピードが速い分、キャリアアップも早い傾向があります。さらに、ストックオプションなど成長業界ならではの魅力もあります。
大手メーカーで積んできた経理実務は、IT企業でも十分に評価されます。専門性を活かして新しい環境にチャレンジしたい方に、おすすめの選択肢です。
一歩踏み出すか迷っている方は、まず情報収集から始めてみてください。さらに、キャリア相談も有効です。実際の求人情報や転職事例を知るだけでも、判断の精度が格段に上がります。
